将機を再起動するよ
飛行ユニットの俺、さすがに3人は重い。上昇速度が遅い。
だからといってブーストをかけたりはしない。
事故の原因だからね。
自動車もそうだけど重くなると挙動がかわる。
普段ひとりで運転してるドライバーが自分以外に4人乗せたらどうなるか。
だいたい250Kg、車が重くなる。1/4トン。
アクセルを踏んでもいつものように加速しない。
だからといってうかつに多めに踏み込むとどうなるか。
加速は鈍くなるけど、最終的に踏んだだけの速度は出る。
気がつくと凄いスピードが出てるってことに。
あわてて減速しようとしても車重のせいで今度はブレーキの効きが悪い。
ハンドルも同じだ。
いつもと違う感覚にパニックになり、そして、事故る。
大勢乗せて事故ったんじゃなく、大勢乗っていたから事故になった。
免許とりたての若者が友達いっぱい乗せて事故る。
ニュースでは「若者の暴走」扱いされて終わってるけど、そう単純な話じゃない。
俺はベテランドライバーだから大丈夫。
もっとも最近はベテランのほうが危ないが。
降下する時も気をつけないとな。地面に激突とかやだからね。
コンビニアタック注意。
ゆっくりゆっくり行きましょう、おやっさん。
「いっぺん工房へよってくれ。荷物を下ろそう。」
ヒト以外にも工具とか荷物積んでるからね。
「あれ? 俺の鉄棍、重いかな。」
今さら何言ってんの、兄貴。意外と神経細い。
先生のセクハラで削られたのか?
「これはいいなあ、高いとこ飛ぶのは初めてだが…気分がいい。」
先生に喜んでもらえて光栄ですよ。
地上の俺のほうはひた走る。
将機ボディ、先生より重い。金属製だからね。
ビームガンもけっこう重い。
これと同じもの? が俺の額のサイズに収まってるわけだから、やっぱすごいね、この機体。
しかも威力はこっちの方が上だしな。
打ち合わせの結果、将機ボディは北の遺跡に運ぶことになった。
あまり人に見せないほうがいいだろうってことで。
走ってる最中もバックグラウンド処理で作業が進んでいるらしい。
『フォーマットが完了しました』
『再インストールを開始します』
うん、順調。
工房へ着陸した飛行ユニット。
帰ってくるのを見かけると、また職人衆が大興奮でお出迎え!
「おまえら、ちゃんと仕事しとったのか?」
おやっさんもあきれるほど。
「いいなあ、ウチも乗ってみたいっス。」
タンケイちゃんが指くわえてる。
大歓迎ですよ、タンケイちゃんなら。
「俺らも乗ってみたい!」
「俺も!」
「オイラも!」
野郎どもは遠慮しろ!
道具を下ろすと再出発。
今度は先生が先頭。兄貴、おやっさんの順。
セクハラ防止体制。
北遺跡へ向かう。
将機ボディを積んでいるんで、地上体は街中を通るわけには行かない。
外壁を迂回する感じで遠回りして北遺跡に。
飛行ユニットは到着済み。合流。
「さてさて、中に運んでくれ。」
遺跡内部に将機ボディを運び込む。
かつて俺を固定していた拘束台に座らせる。
さて、進行状況はどうかな? ナビ君。
『再インストールが完了しました』
『再起動が可能です』
先生たちにどう説明したもんかな?
「この、頭部の鳥型魔道機はどうやら神代魔道機らしいです。」
先生が首をひねる。
「何で獣機世代の身体とくっついていたんだ?」
「遺跡から発掘したものを中心部品として代用していたと思われます。」
「処理を行ったので飛行ユニット同様、私が動かせるはずです。」
おやっさんがうーん、って感じで腕組み。
「ホントに大丈夫か? 念のため台に固定するか?」
『大丈夫ですよ』
「大丈夫です。」
ナビ君のセリフをいちいち俺が繰り返すのも何か面倒だよな。
ナビ君がじかに会話できればいいのに…
鳥型メカをぐるぐる巻きにしてたロープを外し、将機の頭に乗っける…乗っからないな?
起動してからじゃないとドッキング形態に変形できないのか。
膝の上に置いて、とりあえず、…トリだけに
『おっさんギャグしつこい』
言われた! 辛辣。
再起動開始!
PCの立ち上げみたいに時間かかるかと思ったが、そんなことなかった。
『外部接続機体、通信状態』
エクソ・コネクション・デバイス・オンライン!
鳥型メカと視界が共有!
って、ウインドウ表示だな。しかもウインドウ小っさい。
おかしいな? トンちゃんタマちゃんより一体感がないけど。
『将機と合体します』
おお合体!! 感激!
すぐ動き始める鳥型。翼を広げると、羽ばたかずにホバリング。
おお、飛行ユニットと同じ動きだな。
将機頭部に移動すると、脚を伸ばして首の部分のフレームを掴む。
ひきつけるように合体。顔部分のパネルと一体化した。
パイル○ーオン!!
翼を顔の両脇にたたみこんで収納。
あれ? 俺何もしてない…よな?
全然コントロールしてる感じがないけど…
「おおー」
先生が感心したように声を上げる。
タモン兄貴は緊張して鉄棒を構える。
胴体部分が鳥型からの信号で起動。
『動かしてみてください』
よし! じゃあ右手上げて…ん?
動かない。つながってる気がしないぞ。
飛行ユニットやドローンの時と全然違うよ。
繋がってないよ、ナビ君。
「ええ? おかしいな。そんなはずは…」
右手が上がる。
「ちゃんと動きますよ。」
「……」
ナビ君?
「え? あれ?」
今、音声でしゃべったよね。しかも将機のスピーカーから。
「ええー?」
将機ボディは動き出した。手を挙げて自分の手の平を見つめる。
そして指をわきわき。右手と左手を交互に見る。
「これ、どうなってるんですか?」
俺の方を振り返って見る。
「いや、それは俺…私が知りたいですが。」
ぴょこんと拘束台から飛び降りて、ちょっとよろめく。
小っちゃいから俺用の拘束台だと大きすぎる?
「動く!」
「すごい、すごい! 思った通りに動く!!」
ぴょんぴょん飛び跳ねる。
身長が低いせいもあって、なんかすごいカワイイ動きだぞ。
「身体? ボクの身体!!」
感動したように、自分自身の身体を抱きしめる。
そっか、ナビ君には自意識がある。
でもその気持ちまでは思い遣れていなかった。
ごめんな。
考えてみれば、俺の機体の中に閉じ込められていたも同然だもんな。
先生、おやっさん、兄貴はなにが起こってるのかわからないで唖然。
「お、おい。お前が動かしてるんじゃないのか?」
「ええっと、違います…いや、違わないんですが…」
「???」
「えーと、つまり、この機体の中にいる私以外の別人格が動かしているって言いますか…」
「???」
先生はナビ君の存在を知らないんだから、ちんぷんかんぷんだよな。
あれ? もしかして…起動直前に俺が「直に会話できればいいのに…」とか思ったから?
そういや、「拳骨シュート」登録の時もけっこういい加減て言うか…
先走ってくれるようなとこ、あったよね。
「しゃ、しゃべってるが…獣機なのか?」
兄貴が判断しかねている。攻撃態勢のままだ。
「あー、大丈夫です。危険はありません。」
「どういうことなんじゃ?」
悪戦苦闘して状況を説明する。
「つまり、アイザックの魔道機体の中にいろいろ説明、助言してくれる親切な別人格が居たと。」
「その別人格が鳥型機体に移ってこのヒト型機体を動かしていると。」
そういう感じです。
あれ? そうするとナビ君は俺の中からいなくなっちゃったの?
『そういうわけではありません』
『鳥型神代魔道機と意識共有が出来るようになっただけです』
よかった。そんなの寂しいからね。俺、ナビ君大好きだしね。
「そ、そうですか?」
ちょっと照れたように身をよじる。
リアルボディ初心者なのに感情表現豊かだな。
「なんだか、意外だが面白いことになったな。」
先生、将機ボディの横から腰辺りの可動部を覗き込む。
ナビ君が恥ずかしがるようによけるのが微笑ましい。
「そうはいっても、見た目は獣機の仲間だし…出歩かれるわけにもいくまい。」
と、おやっさん。
「しばらくは、この遺跡の中に居てもらうしかないだろう。」
「せっかく動けるようになったのに申し訳ないが…」
先生、優しいこと言ってくれる。
「いや、待ってよ。」
思いついた様に兄貴が横から意見。
「頭…鳥部分だけで動けるんでしょ? そこだけなら大丈夫なんじゃない?」
「ああ、そうか。アイザックの肩にでも乗っけて…」
「こうですね。」
鳥メカが分離、ひと羽ばたきして俺の肩口へとまる。
こうやってるのを見るとフクロウっぽいな。ちょっと鷹っぽくもある。
そして俺は鷹匠っぽい?
「なるほど、違和感ない。」
「これなら、我が家に置いといても大丈夫だな。」
頭部分の無いまま、将機ボディはとことこ歩いて拘束台に座りなおす。
「ほほう、分離しとっても動けるんじゃな。」
「電波で繋がっているようですよ。」
遺跡内なら外部からの電波は心配しなくていいし、ボディはここに置いとけばいいか。
「ところで…」
何? 先生。
「何て呼べばいい? 君のこと?」
「え? 名前…ですか?」
鳥型でしゃべられると奇妙な感じ。
「私はナビ君と呼んでいました。」
「ナビ…航海士のことか? なるほど、船長や操舵手じゃなくて航海士か。」
「でも、あの機体だと女の子にしか見えないが…もうちょっといい呼び方ないかな…」
「ナビンと紛らわしいし…」
「まあ、とりあえず、よろしくな。」
すっかり受け入れてるな、さすが先生。
もう一つ、上部格納庫についておやっさんに説明。
登るための梯子について相談する。
「上かー、そりゃワシも気づかなかったなー。」
天井の入り口を見せ、ドローン、タマちゃんで調べた寸法を記入した図面を渡す。
「ふむ、考えとく。」
すいません、おやっさん。ご迷惑ばっかり。




