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先生を背負うよ!


先生んちに帰宅。

キラすけはおんぶ。限界でした。

先生がちょっと羨ましそうにしてたけど、スルー。

家ではディスカム、マビ公が待ってた。

「キララちゃん! どしたの?」

「疲れたあ~ぁ」

大の字、床に大の字。

「おう、ディスカム、家の手配はどうだ。」

「はい、組合長のおかげでいつでも引越しできます。」

「あとは、寝具とかだな…。」

「マビカとキララのはうちの敷物を持ってくとして…」

「ええ! あんな高級品いただくわけには…」

「いいんだよ。田舎は相場が違うんだ。」

恐縮しきり、ディスカム。

「お前のは…ハイエートんとこに何かあるか…」

「明日は私も、おやっさんも用事があるから、明後日引越しだな。」


ディスカムが帰った後、先生にお話があります。キラすけの件。

マビ公は知ってるってことなので、立会い。

夢魔ハーフの件をお伝えする。

「何だって!? 能力が発現してるのか?」

「そりゃあ、凄い!」

あれ? 驚く所が違う?

「? 気づいておられたのですか、先生?」

「? ん、いや、気付くも何も…バッソ家なんだろ? お前。」

「? え、そう…だけど?」

話が噛み合わない。

「えー、と。ベガ坊やはお前のおじいちゃんだっけ?」

坊や? ベガって現当主の侯爵だよね。

「? ベガはお父さん。」

「え?」

なんか指折って数えてる。

「男どもは…どいつもこいつもいい歳こいて…」

「まあ、いい。それならよけいにそうだ。」

「ベガの母親は純血の夢魔族だからな、クオーターってことになるか。」

「ええ!」

キラすけ驚愕!

「なんだ知らなかったのか?」

「お、お母さんが夢魔族の血を引いてるって聞いてた。」

「何?」

今度は先生が驚いた。

「そういうことか。なるほど。」

「母親の違うお前の兄弟で能力の出てる奴は居ないんだな。」

「い、居ないと…思う。」

「夢魔族の血を引くものはけっこう居るが、能力を発現できたものはほとんど居ない。」

「父系と母系、両方が血を引いていることが発現の条件だとしたら…大発見だぞ! これ!」

なるほど劣性遺伝。

この「劣性」は遺伝形質が「発現しにくい」ことを表している。

能力的な「優劣」とは関係ない。その語感から、世間的に誤解、誤用されてもいる。

例えば「金髪ブロンド」は典型的な劣性遺伝で両親とも遺伝子を持っていなければ発現しない。

(白人のブロンドも実は染めている人が多い。)

「優性-劣性遺伝」を「顕性-潜性」に言い換えようとの提案もあるが、異論もありまだ定着していない。

呆然としてるな、キラすけ。

至上主義がはびこる王都で、自分の出自に悩んだかも知れない。

兄弟に引け目を感じることがあったかも知れない。

だが、その前提条件がひっくり返った。

「母親はどうしてるんだ?」

下向いちゃったぞ、キラすけ。

マビ公がちっさな声で

「5年前に…」

きゅっと胸が痛む。キラすけ…

「つらかったな。」

先生が抱きしめる。

「何をやっとるんだ、男どもは。ナビン、ベガ、エアボウド…」

「どいつもこいつも…」


「そういえば…」

先生が思い立ったように尋ねる。

「お前、妙な二つ名を名乗ってたよな。」

ああ、闇の女帝たる漆黒の魔導士【黒き宝玉】

「それ、自分で考えたのか?」

「…夢で見た。」

「いつ頃だ?」

「えーと、お母さんが死んですぐ。」

「黒いドレスを着た綺麗な女の人が夢に出てきて…お前は闇の一族の女王になるんだって」

「【黒き宝玉】の称号を与えるから誇り高く生きろって…」

うなづく先生。

「やっぱりな、あいつ、来ていったんだな。」

「??」

「ベガの母親、お前のお祖母ちゃんだ。」

「あいつは夢魔族の女王を名乗っていてな。」

「もっとも、他に夢魔族を見たことがないんで本人が言ってるだけなんだが。」

「黒き新月、無慈悲なる夜の女王【真黒しんこく女帝エンプレス】を名乗っていた。」

あー、そのセンス。

「お前のこと心配で見に来たんだろう。」

「夢をみせてはげましたつもりなんだな。」

「お祖母ちゃん…」

センスはともかく、ちょっといい話。

「あいつ、ベガを生んだ後、行方をくらましたんだ。」

「当時は…今もだが、夢魔族に偏見を持つ奴もいるからな。」

なるほど、それで身を引いたのか。

「いや、めんどくさくなって、逃げた。」

あー、うーん。

「漆黒の魔道士云々もその女性が?」

「そこは我が自分で考えた。」

キラすけ、得意げ。

あー、血縁。


ついでだからマビ公にも聞こう。

「ところで、マビカさんの一人称が『ボク』なのには何か理由が?」

急に話を振られてあわてるマビ公。

「あ、うう、その、上の兄弟…」

「お兄ちゃんが6人…」

ああ、男言葉が伝染った的な。

親御さんも、ずっと男ばっかりで女の子の育て方がわからなくなった的な…


「でも、イオニア様がいたのはすごくびっくりした。」

キラすけの言に驚くマビ公。

「え? イオニア様??」

「そう、イオニア・カロツェ様。勇王ご息女!」

「ご病気で静養中って話じゃ…この街に?」

「元気! すごい元気!」

「すごーい! え、エルディー先生のお弟子さん!?」

「すごい!! すごいすごい!!」

おお、マビ公もすごいすごい反応してるぞ。

…語彙少ないな、おまえら。

「んー? 何だ、王都ではイオニア、有名なのか?」

こくこくうなずくマビ公。

「人気あるよ!」

「人気? 王位継承権とかあるわけじゃないんだろ?」

「えーっと、そーゆーのじゃなく…」

「イオニア様待望論と言うのがあるのだ。」

? 何だよキラすけ、そりゃあ?

「勇王の子供も孫も男ばっかり、女の王族はイオニア様だけ。」

「華やかさに欠けると言うので、早く王都に戻ってきてほしいと言う声がある。」

なるほど、社交界的な事情。

「あと、その…」

マビ公が遠慮がちに言いよどむ。

「王族の男子は…顔が…みんな…」

「不細工なのか?」

はっきり言わないで! 先生。

「いや、そこまでじゃないけど…」

「四角い!」

きっぱりと言い切るキラすけ。

「四角いのだ! みんな!」

天を仰ぐ先生。

「似てるのか…ナビンに…」

四角いのか…勇王…



次の日、キラすけは休む! 目が覚めない。寝てる。

「キララちゃん起きない。」

マビ公が困惑。ま、寝かせといてやれ。

先生は起きてきた。

死んだように寝てるキラすけを見て、

「若いっていいなあ…ま、寝る子は育つって言うしな。」

うん、年寄りは目が覚める。寝坊はしても昼まで寝るのは無理。

キラすけが復活したら、家を見に行くということなので二人は置いて行く。


先生と俺は工房へ。

飛行ユニットは昨日は工房においてきた。

タモン兄貴とおやっさん用の吊り下げベルトを付けるため。

工房ではすでにおやっさん、兄貴がスタンバイ。

「ついでにこんなのも作った。」

何これ? 背負子しょいこ

ああ、先生を乗せる用か。

なるほど、これなら走行中も両手が使える。

他にも荷物があるから便利だ。

「ありがとうございます。」

「人間用だと強度と軽さで悩むんだが…」

「今回は頑丈さ優先したんでちょっと重いぞ。」

その辺は俺のパワーがあれば問題ない。

俺は日本出身。

日本の国土は山有り谷有り川有り、更に海辺は砂浜なもんで「馬車」が使い物にならなかった。

荷車や牛車も市内移動用途に限られる。

町村間の輸送の多くは牛馬に直接背負わせるか、あとは人力。

特に山間地、山越えの輸送では人が背負うしかなかった。

歩荷ぼっかと言う。

現代でも、登山道の山小屋への日常輸送などで活躍中。

そして、今の俺は歩荷!

後ろ向きに座った先生を背中合わせに背負って立つ。

「強力伝」(新田次郎)! いや、そんなに重くないですよ、先生。

チラっと、今村昌平監督の「楢山節考(1983年)」が頭をよぎったのは内緒。

「なんか言ったか?」

いえいえ、大丈夫ですよ。ちゃんとつれて帰りますから。


さて、先生と俺は先に出発。今度は山越えルート。

距離は長くなるけど、道はこっちの方が走りやすいからね。


さてさて、人間体の俺は自動運転状態。

意識のメインは飛行ユニットに移行。

「さて、私たちも出発しますか。」

「アイザック…なのか?」

しゃべる飛行ユニットに驚くタモン兄貴。

兄貴に飛行ユニットの動作見せるの初めてだっけ?

「同時に2箇所に存在できるってわけか? 便利だなあ。」

兄貴とおやっさんがそれぞれに固定用ハーネスを身に着ける。

太腿、腰にもベルトが回るパラシュート用みたいな感じ。

飛行ユニットにもベルトがまわしてある。遠足用とはもう、別物だ。

遠足用荷物バスケットには各種工具入れに利用し、人輸送用のベルトは全部追加した感じ。

たった半日でこんな物作っちゃう職人衆、恐るべし!


その職人衆は全員集合。見物モード。期待に目キラキラ。

おう、タンケイちゃんもいるな。ダット姐さんに黒エルフ。

ディスカムまでいるぞ。

「じゃあ、行きますよ。」

ホバリング、頭上に浮かんだ。

「おおおー!」

職人衆が興奮。

カラビナ状の金具でおやっさん、兄貴を固定、吊り下げ。

「では上昇します。」

「お、おお、やってくれ。」

「すげーわくわくする。」

翼端からパワーファイヤ噴射。

自分で言うのも何だけど、これ、いったい何なんだろう?

熱くないんだよな、さわっても。

上昇、二人の足が地面を離れる。

「おおおおおおー!!」

みんな大興奮!!

タンケイちゃんもぴょんぴょん跳ねて興奮してる。

そんなに跳ねたら、胸が大変なことに!

そしてディスカム!

神代魔道機脅威のメカニズムを眼前にして、ドワーフおっぱいを優先するお前の視線。

嫌いじゃないぜ!!


ゆっくりと上昇、十分な高度をとる。

「大丈夫ですか?お二人とも。」

おやっさん、兄貴の順で前後に並んでぶら下がる。

「問題ないようだな。」

「余裕余裕。」

「では進みます。」

前進、加速。目的地に向かう。

「おおお、鳥になった気分じゃな。」

「爽快だぜ。」

「風は大丈夫ですか。」

「大丈夫じゃ、そっちこそバランスは大丈夫か? 重心は?」

飛行ユニット、翼は前後にも稼動するので調整は出来る。

でも、その必要もない。ベルトの取り付け位置が絶妙だ。

「まったく問題ありません。どうやって調整を?」

「ま、見ればだいたいわかるしな。」

「金具を取り付ける所をいくつか並べといたから、一人乗り、二人乗りで調整できるだろ。」

さすがだ、おやっさん。先の先のことまで考えてる。

「南山を越えますよ。」

「おおおー、絶景じゃわい!」

「くわー、最高だー!」

はしゃいでるなあ。男の子ですね。


その頃、南山山頂付近を通過中の地上の俺、と先生。

最初は揺れたけど学習機能のおかげでスタビライザーの効果向上。

今はゆったり座ってるね、先生。

「飛行ユニットが見えますよ。」

見上げる先生。

「私もあっちの方がよかったなあ」

そんなこと言われてもね、順番、順番。


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