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家に帰るまでがまでが遠足ですよ


なんやかんやとあったけど、夜明けが近い。

デイエートは寝る場所を俺の横に移してくーくーと寝息を立てている。

空が明るくなってきた。ようよう白くなりゆく山ぎは。

んん? 今度起きて来たのはベータ君。

顔を近づけて小声。

「みんなが起きる前にちょっと体を拭いてきます。」

あはは、そうだよね。それがいい。

「わかりました。覗こうとするやつがいたら実力で阻止します。」

「え?」

ベータ君、目を丸くして苦笑い。

「お願いします。」

行ってらっしゃい、ごゆっくり。

おっと、イオニアさん。薄目開けてるな。

毛布から顔だけ出して俺を見る。

ダメですよっと首を横に振る俺。

ちょっと口をとがらせて不満顔。

王子系お姉様だけじゃなくてショタもいけるお嬢様。

なかなかの人材だ。

もうすこし毛布かぶって寝ててください。


帰り道、食料は食べちゃったのでだいぶ荷物が減っている。

下り坂は体力的には楽でも、膝や腰への負担はむしろ大きい。

山歩きのプロであるデイエート、種族的に有利なアイワさん、メイドコンビ。

若さで押し切るベータ君。ちょっとヘロヘロな先生。

だいぶヘロヘロなイオニアさん。ヘロヘロが黒い服着てへばってるようなキラすけ。

「大丈夫か? イオニア。」

「だ、だいじょうぶ、ですわ。お姉さま。」

「大丈夫か? 黒いの。」

「………」

返事する元気が無い。

インドア派が、限界間近。

「仕方ない、抱っこしてやれ、アイザック。」

え、いいの? デイエート。

昨晩のことでバランスが取れたらしい。

今度はにらまれずに済みそうだ。

キラすけを抱っこする。

…抱っこするなら、お嬢様のほうが良かったなあ。


街道が見えてきた。

すでに馬車がスタンバイ。御者は犬系獣人アトラックさん。

「助かったニャー」

おっと、スカジイちゃんもけっこうバテてた。

サジーさんも控えめにため息。

「ご苦労様、アトラック。」

「ははは、お嬢様、導師、皆さまお疲れさまでした。」

「さあさ、お乗りください。」

馬車に乗り込む女性陣。

「ベータも乗れ、私は御者台に乗る。」

先生が指示を飛ばす。

デイエートとアイワさんは徒歩。もちろん俺もね。

先生が御者台なのは用心のためか?

「家に帰るまでが遠足だからな。」

そうだね、トンちゃん、タマちゃん、偵察よろしく。


帰りの馬車の中はみんなうとうと状態で会話も弾まない。

無事、カロツェ家のお屋敷まで帰還。

ビクターさんが出迎えてくれた。

「お疲れさまでした。湯が沸かしてありますので皆さまもよろしければ…」

おお、浴場があるのか。でっかいお貴族浴場か?

「ありがたい。助かる。」

先生も、今回は遠慮しない。

「サジー、スカジイも一緒でいいでしょう?」

お嬢様のお願いに、ビクターさんが肩をすくめる。

「よろしいですよ、今回は特別です。」

「やったにゃ! お風呂!」

まあ、お貴族的にはけじめみたいなものがあるんだろうけど。

「お姉さまも、アイワさんも!」

アイワさんがビクターさんの方を見る。

ちらりとアトラックさんとも視線をかわして

「邸内は大丈夫。」

警備を確認か、用心深い。

「じゃ、私も。正直、汗だくだ。」


みんな、そろってベータ君を見る。

ビクッとするベータ君。

「ベータさんは客間の浴室をどうぞ。」

「チッ!」

誰だ? 今、舌打ちした奴。


お風呂かあ…

『女湯は偵察禁止ですよ』

念を押されちゃたよ。

「チッ!」

舌は無いけどね。


先生がポンっと俺の背中を叩く。

視線をビクターさんに、向ける。

ああ、報告ね。わかりました、お風呂入ってる間にしときます。


ビクターさんに襲撃団撃退の報告をした後、情報収集。

キラすけの実家、バッソ家のこと。

バッソ侯爵は現在、王国の都市の一つである港湾都市の統治を任されて赴任中。

10年近く王都を留守にしている。そんなわけで通称「港湾侯」と呼ばれている。

実の所、初代バッソ家当主は建国の英雄「勇王」とともに戦った戦士。

現当主は二代目。

イオニアさんの父上「勇王」が亡くなると直後に「港湾侯」に任ぜられて王都から遠ざけられた。

派閥闘争には興味薄だが、他種族との親交は深く、心情的には融和派に属する。

「マビカ嬢のご実家、エスブイ子爵家は港湾侯の組下ですな。」

「港湾都市は遠いのですか?」

「王都から一番遠い城塞都市ですので…」

「王都のバッソ家はどうなっているのです?」

「なにぶん、残って居られるご正妻の実家が至上主義派閥に属しているので…」

うーん、やっかいだな、王都。

ついでに、王国の身分制度も聞いた。

元から土地や城塞都市を治めていた豪族が協定によって王国の下についたのが公爵。

王国から任命されて都市の自治を任されているのが侯爵。

領地はあるけど、普段は王都にいて政策を担当するのが伯爵。

公、侯、伯の部下となる貴族が子爵。

元々は平民だけど、功績によって世襲の貴族になったのが男爵。

主に政治的功績によって一代限りの貴族になったのがサー

もっともこれ、翻訳システムが王国の制度に日本語を割り振った結果。

なので単なる目安に過ぎないんだけどね。

さらに、都市の統治の仕方とか人によって違うのでかなりいい加減。

地方統治は部下に任せて、ずーっと王都に居る公爵とかもいる。

そして男爵は大商人とかがなる場合が多くて、伯爵より金持ちもいる。

カロツェ家はこのポジション。

ふむふむ、記憶、と言うか記録はしたけど、理解できたかって言うと怪しいわ。


お風呂入って、お茶をして解散。

デイエート、ベータ君はそれぞれに帰宅。

アイワさんは…

「救護院に寄っていく、イーディに報告を…」

ああ、うん。ベータ君は無事でしたよ。

「私らは、工房に寄っていこう。おやっさんに相談…」


お風呂とお菓子で回復したかに見えたキラすけだったが、歩き始めると見る見るへばり始めた。

いわゆる、「だめだこりゃ」

「キララさん、おんぶしますか?」

「ああ、うう~」

プライドと疲労がせめぎあい。

「が、頑張る~」

ほどほどにな。


工房でおやっさんとミーティング。

ちょうどタモン兄貴がいたので合流。

おやっさんに経過を説明。

破損獣機が合体して移動行動することを報告すると困惑。

「ううーん、まずいかも…」

「どうした?」

「いや、職人どもがな、壊れてない部品を組み合わせれば1、2体は復元できるんじゃないかって…」

「やってるのか?」

先生が驚く。

「まず、バラすための工具を作ってたんじゃが…昨日あたりから分解作業に取り掛かっとる。」

使われているネジやボルトの形状に合わせた工具を作ってたと。

「バラすだけにしといてくれよ。」

「動き出しても大丈夫なように注意はしとく。」

…注意はするけど止めないのね。

危ない。マッドなのは先生だけじゃなかった。

分解か…心躍るワード。うん、好きだよね、男の子。

俺も混じりたい。

「二足歩行の獣機か、工兵機だな。」

タモン兄貴、知ってるの?

「軍で獣機討伐した時に見た。壊れた獣機の回収に来てたな。」

「それ自体は獣機より弱いんだが…夜中にそーっと回収されると防ぎようが無いし…」

鉄蜘蛛の中に何かいるかも、って話をする。

「マジか? 御者ぎょしゃが乗ってる?」

「もしかして…」

え?

「いっぺんだけ報告があったんだが…」

「獣機を指揮しているような人そっくりの魔道機を見たって…」

「それっきりだったんで、兵機の見間違いだろうって話になったが」

「電波とか基地局とかの話を聞いた後だと、そういうのがいるかもって。」

全隊的な命令の届かない所でも独立して行動の取れる指揮官。

そういうのは必要だろうと。

「獣機を軍隊だと見なせば、って話だが…」

「救出…回収に来るってことは数の少ない貴重な機体なんだろうな。」

「うーん、ワシも見てみたい。」


とりあえず、今はあのハッチを空ける方策が必要だ。

「溶接? 出先でか?」

「ビームを使って加熱します。」

「出来るかなあ、そんなの。」

「穴を開けたりボルトを通すよりは時間がかからないかと」

「ハッチを開けた後、閉まらないようにつっかえ棒とかいるんじゃないか?」

あ、そうか。

「アイザックが持ち上げて開けるとすると、その間すごい無防備だぞ。」

うう、確かに。

「まあ、防壁は私が張るが。」

「ワシも行った方がいいんじゃ…」

「俺も行った方がいいんじゃ…」

心配してくれるのはありがたいが、危険ですよ。

心配だけじゃないよね。目がキラキラしてるよ、好奇心で。

「そう言われても、飛行魔道機は二人くらいしか運べないだろ?」

先生が俺の方を見るのでうなずく。

「二人…俺とおやっさん…、導師とアイザックは抱っこ走りで地上から…」

「行けそうじゃな。」

おやっさん。

「行けるね。」

兄貴。

「吊り下げは今回の遠足用に作った籠を改良すればすぐ出来るな。」

「明日までに作っとく。」

是非に及ばず。決定事項。


おやっさんにお土産のワイヤーを見せる。

「こりゃあ…、何で出来てるんだ? 強いだけじゃなくて柔らかい!」

「これ、アレだな、あの空飛ぶパンチと組み合わせると面白いんじゃないか。」

「リール、巻き取り式…釣用のやつが使えるかも…」




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