女の子は大変ですよ
えっちらおっちらベースキャンプ、滝まで戻る。
さすがにみんな疲れた。水浴びしようって話が出ない。
残念!!
それでも汗はかいてるから、それぞれ思い思いに濡らしたタオルで身体を拭く。
襟を開いたり、ズボンを緩めたり。
うん、これは、これで!!
チラリズム。いいですよ!
デイエートがイオニアさんのシャツの裾から手をつっこんで背中を拭く。
「くすぐったいですわ。」
きゃっきゃっ、うふふ。
すごく、気持ちよさそうですね、お嬢様。
ちょっと、意味の違う気持ちよさそうな顔ですが。
「今度はわたくしが…」
「ああ、頼む。」
いや、お嬢様、目つきが、表情が…はあ、はあ、
あぶなーい! デイエート、後ろ、後ろ!
「お姉さま、腕を上げてください。」
「いや、イオニア、そこは。前は自分で拭くから…あんっ、」
ほほう、敏感なところに触ってしまったようですぞ。
先生はシャツをめくり上げて、おっぱいむき出しで脇とかふくらみの下とか拭いてる。
チラリズムでも何でもないですね。
キラすけはちゃんとたてすじ拭くんだぞ、漏らしちゃったんだから。
アイワさんもさらしを緩めて谷間の汗を拭き拭き。
これは見逃せないですね。
ひたすら空気になろうとしているベータ君がかわいい。
背を向けて黙々と顔をあらう。5分くらい洗ってるような気がするぞ。
『バックグラウンド解析の許可を請求』
え、お、何? ナビ君。
『収集した情報や、受けた攻撃を解析しデータベースに登録します』
おお、そんなことが出来るの?
『普段使っていない余ったリソースを使って解析します』
どのくらい余ってるの?
『リソース使用量、日常動作で0.2%』
え? その位しか使ってないの?
『高速思考で20%、オーバードライブモードで30%』
『外部接続装置の複数制御で50%』
ほほう、やっぱり使うときは使うんだね。
一番リソース食う作業って何かな?
『エッチな妄想で70%』
ほほう? ……ほほう。
夕食後は女子トーク。
「あの鉄蜘蛛は明らかに技術的な世代が違う。」
「動力源には魔法炉を使っているんだろうが、駆動装置はアイザックが言う所の電気?を使っている。」
「ほとんど魔法装置は使われていないし、獣機との共通点もほとんどない。」
「これで少なくとも4世代の技術が存在したと言うことがわかる。」
「4世代?」
「アイザックが属する神代魔道機、鉄蜘蛛の電動?世代、獣機が属する魔道機世代。」
「そして今、細々と使われている遺産的魔道機だな。」
「遺産世代は獣機世代と連続性があるが…それ以外はどういう順番で発生したのか?」
「共通性が少なすぎてさっぱりわからない。」
全然、女子トークじゃないよね、これ。
そして、俺の知ってる地球文明は鉄蜘蛛世代の前に位置する。
鉄蜘蛛の構造を見てしまった後では、俺の世界と連続性がないとはとても思えない。
ここは未来の地球?
重力も同じだし、月もある。
ふむふむと先生の講義に聞き入ってるのはベータ君とイオニアさん。
他のメンバーは聞き流してる感じ。
キラすけは舟こいでるし。
日が落ちると、みんなすぐ床につく。まあ雑魚寝ですが。
俺は見張り。
デイエート、アイワさんが代ると言ってきた。
だがリレーアタック獣機を見た後だと、ここは譲れない。
骸骨塔の圏外だからと言って完全に安心だとは言い切れない状況。
あらかじめ中継器を配置してからスリープ状態にし、タイマーで一斉起動する。
と言う手順を踏めば、事前の電波発信なしで奇襲が可能だ。
あくまで可能性ではあるが、電波探査だけに頼るのは危険。
目視による探査のためドローンでの警戒を強化する必要がある。
頼むぞ、タマちゃん、トンちゃん。
さすがに疲労があるようだ。みんなよく寝てる。
お嬢様は後ろっからデイエートに抱きついてる。
そしてうなされてるデイエート。うーん、うーん。
たぶん、子泣きジジイ的な悪夢。
スカジイちゃん、大の字。薄い敷物だけなのによく熟睡できるな。
キラすけもよく寝てる。なんかウニュウニュ言ってる、解読不能の寝言。
動く人影、誰?
「おしっこ」
先生かよ! まあいいですけど。
「灯り、頼む。」
はいはい。? エルフは夜目効くよね? けっこう月明かりもあるし。
先生と連れション。川べりへ。
「明日、いったん帰ったらなるべく早く出直すぞ。」
おっと、内緒の相談か。
「飛行魔道機、お前と私、二人運べるな?」
「大丈夫です。」
昨日…一昨日? 襲撃団の二人を運んだしね。
「あのハッチの中、鬼が出るか、蛇が出るか… 鬼は味方だけどな。」
さらしを巻いた鬼はね。
「問題はあける方法だが…何かあるか?」
あのハッチ、持つ所がないんだよな。
指くらいは引っかからないといくらパワーがあっても無駄。
「ビームで溶接を試してみます。」
「適当な鉄材を工房からもらいましょう。」
中に何か居るとしてもパワーは大したこと無いやつだ。
ハッチを内側から自力で開けられないくらいだからな。
だが、兵機みたいな奴だったら武器を持っている可能性がある。
兵機どもはワイヤー銃だったが…最悪ビーム銃くらい装備していたとしても不思議がない。
まあ、電波なしでどこまで自立行動できるかにもよるが。
「危険です、先生。私だけで対応した方がいいのでは?」
「こんな面白いこと独り占めするつもりか?」
うーん、そーゆー人だったね。
「よいしょ、あっち向いてろよ。」
下穿きを下ろしてしゃがみこむ。え? 口実だけじゃなかったのね。
「溶接でダメだった時のために接着できるものも用意した方がいいか…」
「うーん、くっ付ける魔法…なんかあったっけ?」
うーん、出しながら会話するのはどうかと思うんですよ、レディとして。
みんなのところへ戻ると…今度はデイエートが起きて来た。
お嬢様を起こさないようにじりじり動いてやっと抜け出したようだ。
「なんだ? 用足しか?」
先生、小声。
「う、うん。」
「灯り…アイザックいるか?」
俺、カンテラ扱い。
「う…、うう、来て…アイザック」
歯切れ悪いな、ぎりぎりなのか? 決壊寸前?
ダム崩壊、メガロ、危なーい!
足元を照らしながら川べりへ。
あれ? 先生が濡らしたとこどこだったっけ?
踏んづけるのはさすがになあ。理論上は俺、裸足だもんね。
妹エルフが用をたしている間、俺どうしよう?
こいつ、先生と違って恥ずかしがりやだし。
「私は、向こうへ行っていますね。」
「ん、んんー、いや、その辺に居ろ!」
「でも、こっちは見るな! 音も聞くな!」
わがままだなあ、意地悪しちゃうぞ。
「すいません、聞こえ方は調節できないんです。」
念を押す。
「耳は、すごくいいです。」
「えあ! くっ!」
くくく、もがいてる、もがいてる。
ホントは滝の音があるからちょっと離れると聞こえないんだけどね。
擬音発生節水装置、と言うものがある。
初めて発売されたのが1988年。
最初聞いたときは何の事だかわからなかった。
音で? 水を節約?
男子にはあまりなじみがない。
主に女性用トイレに設置されている。
女性は水音を消すために事前に水を流す。
1回、用を足すたびに2~3回水を流すという。
その水の使用量を減らすために開発されたのが「水音」を発生させる擬音装置だ。
最初は「トイレの流す音」を使っていたが、今は「川のせせらぎ音」が使用されている。
このように、女性にとって水音は世界、異世界を問わず重大問題なのである。
断言! (先生を除く)
「ああ! もう!!」
デイエートは靴を蹴り捨てると、革ズボンを下穿きごと下ろして脱ぎ捨てた。
え? 靴も?
そのまま、川の中に踏み込む。
腰まで水につかって、小刻みにプルプルと震える。
ええー? プールでアレする的なアレ?
振り返ると照れたような、勝ち誇るような複雑な笑み。
「これなら聞こえなかっただろ!」
いや、確かにそうだけどさ。
「冷たくありませんか?」
「冷たい。」
そういいながら川から上がってきた。
まっすぐ俺のほうへ歩を進める。
むきだしの下半身を隠そうともしない。
すらりとした脚が月明かりに映える。
胸がくっつくまで近づく。
まあ、こいつの場合、胸がくっついたら全部くっつくわけだが。
「暖っためてくれるんでしょ。」
ええっと、腰から下を暖めるとしたら……
「膝…座る。」
あー、はいはい。
俺は胡坐をかくように腰を下ろす。
デイエートはぺたりと膝の上に座ってきた。
むき出しの濡れた素肌がくっつく。
こんなん絶対アレがアレしてしまう。
まさか、おティンティンが無いことに感謝するハメになろうとは。
ヒーター機能、オン。
あー、これあの時の体勢だ。
「あの、黒いのばっかりかまって…」
小さい声。ぐいぐい押し付けてくる。
「もっと、わたしのことも、かまえ!」




