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獣機と戦うよ


エルフ先生の巣穴みたいな感じになってしまっている遺跡。

そこから地上へ、外へ出た途端アンテナが立った。

電波強い、バリ3!

バリ3は死語? スマホは5本だよね、だいたい。

え? なんで俺の表示3本なの? ガラケー?

圏内に入っている? まるで、電波みたい。

いや、電波だこれ! しかも800MHz前後、プラチナバンド。

家屋への透過性が高く、しかも回折効果によってビルの陰にも届きやすい。

移動体通信に最適といわれる周波数帯。

電波が解析できる、すごいぞ、俺。


「ピロリーーーン」

は?

メールが来た!

メール??? 差出人は…【上位存在】

知らない人だ。知らない人からのメールとか、怖くて開けらんないですけど。

ウイルススキャンとかしないと…

始まったわ、スキャン! セキュリティ万全、俺!

『強制力が検出されました』

強制力?

『強制力を削除し内容を確認しますか?』

あー、するしかないだろ、情報的に。

『はい』

内容が表示される。


「殺せ」


いや、なに、これ、怖い!

これ、命令?


電波が来ている、メールが届くってことは、圏内に入っているってことだ。

獣機が活動できるんじゃ? これは獣機への命令? 一斉送信メール?

なぜ? まだ、向こうの山に作ってる段階じゃなかったのか?

いったいどこから来てる? この電波。


景色を見る。ここは丘の上? 今出てきた遺跡を振り返る。

こんもりと盛り上がった半球状の丘、草木に覆われ、遺跡であることは外側からはうかがえない。

半球状の手前の部分、この場所もかなり盛り上がって…

前方後円墳だ!! この遺跡!


「あれがレガシの街。周りに遺跡が多いんでレガシと…」

おやっさんは電波に気づいてない。当たり前だが。

ここからだと見下ろす感じ。

眼下に広がるささやかな平地に町並みが広がっている。

いや、広がってない。ぎっしり詰まってる感じ。

身を寄せ合っている、とでも言えばいいのか、居住区は全部まとめました、と言う感じ。

周りをぐるっと石だかレンガだかを積んだ壁が取り巻いている。

軍事的な「城壁」では無く、魔物とか、害獣とかを「防げたらいいな」ぐらいのゆるい壁。

かろうじて村じゃなくて街と呼べますよ、ぐらい。

「骸骨塔が作られそうな山と言うのは?」

「あそこじゃな、あれの向こうの山に作りかけがある。」

おやっさんが指差す。ここからだと街を挟んで向こう側。

直線距離で10kmくらいか。


…見える! 見えるぞ、電波が。

発信されている電波の強度が通常視界に重ねて表示される。

山のてっぺん辺りに強い発信源がある。

ズームアップ! すげえな何百倍? さすがに鮮明には見えない。

だが、何かがもぞもぞ動いているを確認。

動く?

頭をよぎるのは移動基地局車。

大きなイベント会場に現われるアンテナつきのコンテナ車。

コミケとかでお馴染みだよね。

山向こうの基地局が完成すると同時に送り込んだのか?

最初から街が狙い?

縄張りを拡大して人族と遭遇したから襲ったんじゃなくて、人族を襲うためにテリトリーを拡大している?

しかも、わざわざ急いで…急襲作戦を?


総毛立つ! 毛はないけどね。街が危ない!!

「おやっさん、すでに骸骨塔は作動しています。獣機が来ます!!」

「な、なんだって!?」

「迎撃に向かいます。おやっさんたちは遺跡の中に!」

地下なら電波は届かない。獣機は活動できないはず。

あ、おやっさんって呼んじゃった。

電波の発信体が確認できる、8体。すでに、街に近づいている。

走り出す!

この機体の性能も、敵の性能も把握できていない。

街に関する知識も、ろくにない。

無茶だ! これは無謀。蛮勇だろうか?

だから、なんだ!!

街には人がいる。

こまけえことはいいんだよ!

走れ、メロスみたいに!!


速い、時速でどのくらいだ? 表示される、80km/h。

走りながら相手の位置を確認。相対速度から獣機の速度は50km/hと測定。

設定画面から、武器を検索。ながら運転?

いや、まるで、走る身体とは別に考える人がいるような感覚。

これがマルチタスク? 

武器は何か?

『ライブラリは空です』

ええーそんなあ…

あっという間に街に着く。壁を…飛び越える! 

誰かが『いけますよ』とささやいてくれたような気がした。

地図が! 表示される。遺跡から見た映像と、走る途中に見た映像。

複数の角度から撮影した映像を使って簡易的に3D画像が形成される。

立体地図、かろうじて道と建物の区別がつくくらいで、欠損も多い。

だが、助かる。

一番近い電波の発信体、獣機、をマーク! ルート確定!

道を住民たちが駆けてくる。我先に、とか、パニックで将棋倒し、とかは無い。

そもそも、田舎にはそんなにいっぱい人はいない。

「獣機が来た!」

「逃げろ!」

走る人々は口々に叫ぶ。

いや、気づいていない住民に知らせるため、建物に向かって呼びかけているんだ。

人々? エルフ、ドワーフ、獣人? 人間?

「教会へ逃げ込め!! 立てこもるんだ!」

誰かが大声で叫んでいる。

人の流れに逆らって走る! 

このマント、よかった。あの姿のままだと新しい脅威だと思われたかもしれない。

ありがと、少年エルフ。


いた、獣機! 犬っぽい。大型犬よりは大きい?

成人男性が四つん這いになったくらいのサイズ。

黒い、俺より黒いぞ! 夜間行動用か?

四つ足、ボストンダイナミクス社の牛ロボを思い出す。

だがずっとスリムだ。そして動きが違う! リズムがない! 

俺を見ると警戒するように動きを止めた。ゆっくりと横に動く。

まさに生きている獣の動き。

見ている? 目はどこだ?

頭のように見えるのは三角錐に近い金属のブロック?

ブロックの後ろに耳っぽい突起があるので犬っぽく見える。

メカドーベルマンて感じ。

パカっと口が開く、威嚇するように吠えた!

おかげで下あごと上あごの区別がついた。

獣の声じゃないね、耳障りなギリギリ音。

飛び上がって襲い掛かかってきた! 体当たり!

口を開けて噛みつ… 上あご、というか、頭部の上半分が左右に分かれる!!

ええー? そこ割れるの?

三又の爪、というか三本指のアーム? 住宅解体用重機の爪みたい。

多少はあった犬っぽさや愛嬌が消滅。邪悪っぽい!!

とっさに腕でカバー… 

『腕を使うな』誰かが囁く! えっ?

とびかかってきた獣機に押し倒される。

肩口に噛み付かれている! だが、痛くもかゆくもない。

なるほど、腕に噛み付かれていたら、腕が使えないからな。

前足の付け根、関節部分の隙間に指を伸ばしたまま右手のひらを突き込む!

貫き手ってやつだ!

指に触れるチューブ? パイプ? シャフト? みたいなものを握る。

じる! こじる! 引きちぎる!

広がった隙間に左手もこじ入れると、引きはがすように前足をちぎり取る!

ギアを入れそこなったバイクみたいな音を立てて痙攣? する獣機。

七転八倒! だが立ち上がった、3本足で!

手足をもぎ取られても作動し続ける。

原作版初代鉄人28号から続く由緒正しい設定だ。

だが、コイツは前足を失った後、短時間で3本足での動作を学習し、制御を最適化した。

高度なAIを搭載しているのか? 厄介だ!

再び跳躍! 襲い掛かってくる。

後ろに下がってかわす。

獣機が着地する瞬間、持っていたちぎり取った前足を振って残りの前足を払う。

無様に前のめりに倒れる。

時間はかけられない! 頭アームをつかみ、獣機の背中を転がるように回転。

後ろ足の付け根をつかむ。その回転の勢いのまま担ぎ上げる。

レンジャーロールの応用。

アルゼンチンバックブリーカーの体制!!

ジャンプ!! うおっ、俺、すごいジャンプ力!

落下の勢いで獣機をへし折る!

高々と差し上げ、振り下ろすように地面に叩きつける! 

まだ動いているが、もう移動はできまい。


次だ!!



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