ドラゴン現る!
ドラゴン墜落現場を視察した俺たち。
俺本体、先生、タモン兄貴、デイエート、あとスカイエクソン。
ドラゴンのお肉採集に現れたオークの一団と遭遇。
だが、そこに新たなドラゴンが飛来した!
分別感あふれるオークのボスはすぐさま森へと逃走!
同じく分別のある先生、デイエート、兄貴もオークボスの後を追う。
なんやかや言いながらボスは地元民。
一番周辺状況に詳しいからね。
俺も正直逃げたいところだが、旅客コンテナをほっぽって行くわけにもいかず。
とっさにコンテナの影に隠れる。
武器は・・・えーっと。
『王機聖刃剣が【収納】されています』
よし、最高! 戦闘になったら頼むよ、ケンちゃん!
上空を通過したドラゴンが戻って来た。
大魔竜ズゥーンの死骸上を旋回。
状況を確認しているらしい。降下して来た。
着地する・・・が? あれ? こいつ、なんか小さくね?
ズゥーンが体高50m級。
怪獣サイズだったの対し、このドラゴンは体長30m級?
インフィニティ設定のマジンガーサイズ?
『たとえに出すなら拡張機体でしょ』
いや、ま、そうなんだけど。
かなり小さいぞ、感覚的には半分サイズ。
『体重で言ったら1/8ですからね、別種でしょうか』
形態は魔竜ズゥーンと変わらない。
角と翼の生えたティラノサウルスって感じ。
魔竜が昭和ゴジラ風に直立気味だったのに対し、こっちは前傾姿勢。
ドラゴンの生態はあまり知られていない。
目撃されることはあっても観察してる余裕はないからね。
この間、俺本体は動いてない。棒立ち状態。
こっちは魔竜以外のドラゴンを見たことない。
けど、むこうも魔道機とか見たことないはずだし。
動かなければ見逃してもらえるかも。
死骸を確認したドラゴンが唸り声を上げる。
『なんてこった! こいつ【蒐集者】じゃないか!』
うわお! 翻訳システムのドラゴン語ライブラリが翻訳開始!
竜版バウリンガル?
『ええ! これって・・・殴り殺された!?』
『頭蓋骨がグチャグチャなんだけど!?』
独り言、言ってくれるのは助かるけど、ドラゴンって独り言多い生物?
『この化け物を殴り殺す存在が居るってこと?』
『ちょ、冗談じゃないんですけど!!』
『ま、まさか近くに居ないよな?』
きょろきょろと周囲を見回すドラゴン。小物感。
そういえば蒐集者こと魔竜ズゥーンは、数百年前に現れたときにはもっと小さかったと言う。
ドラゴンの常識的にもかなり巨大な個体だったという事か?
そうこうしてるうちにこちら、と言うか旅客コンテナに気が付いた。
『なんだ、これ? ヒト族の道具か?』
翼をたたんで近づいてきた。
今更だけど、前足(腕?)があるのに翼もあるってどうなんだろう?
まあ、魔法生物にそんなこと言っても仕方ないけど。
『巨大ロボの方がよっぽど非常識ですしね』
辛辣! ヘルプ君。
旅客コンテナを覗き込むドラゴン。
『箱の上に乗ってるのは何だ?』
『魔道機ってやつか? いかにも飛びそうな格好だが・・・』
しまったな、スカイエクソンの翼を畳んどけばよかったか。
『これは? ヒト族の形してるけど? これも魔道機か?』
あ、俺のことですか。
前足で恐る恐る突っついてきた。
完全に動きを止めていたので、そのまま倒れる。固定ポーズ。
『お? いや、人形? 作動してないのか。』
改めてズゥーンの死骸を見やる。
『森の木の倒れ具合から見るに不時着したみたいだな・・・』
『む、尻尾がない・・・切り取られてる?』
首を上げて周囲の森を見回す。
ドラゴンの視覚がどんな能力を持っているか未知。
そのころ、オークボスを追って森に逃げ込んだ先生たちは太めの木の影に身を潜めていた。
状況を知らせてくれるのは先生やデイエートが装備しているカナちゃん。
ちなみにオークボスも一緒。
分別のあるボスはドラゴンをより大きな脅威と認識。
得体のしれないヒト族がくっついてきても声も上げずじっとガマンしている。
ほんまに理性的なヤツである。
一方、とっさに隠れたせいで体勢的にデイエートの目の前にボスのイチモツがぶらぶらしてる。
非常にいやそうな顔をする妹エルフ。
こっちの理性はやや心配である。
『そこか!?』
何らかの熱感知によるものか、心拍、呼吸音などの音響感知か?
いや、大魔竜は魔力の流れを感知していた。
ドラゴンは生物の魔力そのものを感知できる可能性もある。
とにかく、先生たちの存在をとらえたようだ。
森に向かって一歩踏み出す!
こうなっては是非もなし!
スカイエクソンは旅客ユニットを切り離して離陸!
俺本体も始動! 飛び起きると【収納】からケンちゃんを取り出した!
王機聖刃剣!
その柄を握るとセイバーと俺本体のブースターを併用して飛び上がる。
『な、なに!?』
こちらに向き直るドラゴン。
その最大の脅威は何と言っても竜息吹。
地上への被害を警戒して、ドラゴンの注意を引き付けるため、あえて目立つ上空で合体。
スカイアイザックwithキングセイバー!
『動ける? いや、飛べるのか? あの人形!』
驚くドラゴン。
とは言え、サイズ的には圧倒的差がある。
こちらをそれほど深刻な脅威とは思っていないはず。
ここは交渉だな。幸い言葉が通じるし。
もちろん普通の人間ならドラゴン語を発声できない。
声帯の構造も違うし、そもそもサイズ的に音声の帯域がずれている。
ドラゴンの独り言にも人間の可聴周波数外の低周波音がかなり含まれている。
魔竜ズゥーンも人間語を話すときは直接発声せず音響魔法を使っていたし。
だが、俺はその辺はいいかげん。
聴覚は広帯域センサーで、発声はスピーカーだしね。
重低音もけっこう出るよ。
『こちらには敵対する意志はありません。』
大ボリュームで拡声音。ドラゴン語で話しかける。
『な、ドラゴンの言葉を話せるのか!?』
これには唖然とするドラゴン。
まあ、表情は正直わかんないけど気分的に。
『この【蒐集者】を殺したのはオマエか?』
『いや、まあ、そんなわけはないか・・・』
『オマエの関係者がやったのか?』
うーん、どう答えたものか・・・
拡張機体がやったんだから俺がやったともいえるけど。
今のサイズで言っても説得力がないよな。
『直接手を下したのは私と同系統の魔道機です。』
『アナタと同じくらいの巨大な機体ですが。』
『そ、そんな存在が居るのか!?』
狼狽するドラゴン。けっこう弱気だなこのヒト・・・竜?
『この巨大ドラゴンはヒト族の集落で多大な損害を出していたため、駆除されました。』
『すべてのドラゴンを敵視するつもりはありません。』
しばらく黙り込む。
『まあ、コイツは無法者だったからな。ドラゴン界隈でも嫌われ者だ。』
そんな扱いなの、大魔竜ズゥーン?
『常識外れの巨体と魔力を持っていたから、横暴で残忍だった。』
なるほど。
「気は優しくて力持ち」という言葉がある。
ジェンダー運動以前の、【男の理想】をもっとも素朴な言葉で表した言葉だ。
それが【理想】なのはそれが「有り難い」ことだったからに他ならない。
力が強ければ、驕り、他者を圧倒し、我を通し、暴力に訴える。
そして弱者への思いやりを失う。
それは人間だけの話では無いだろう。
ほとんどの動物でも、強い個体は他者を排除することに熱心だ。
高い知能を持つドラゴンの世界でも例外ではあるまい。
『率直に言えば、ざまあ見ろってところだな。』
ぶっちゃけてきましたね。
『もともと強いところへ、ヒト族の古代魔法を身に着けて手が付けらえなかった。』
『コイツのヒト族への干渉が、ドラゴン全体への敵意につながるのではないかと、心配する長老もいたし。』
だが、ちょっと安心した。
ドラゴンが皆、ズゥーンみたいなヤツだったら人類の危機。
『圧倒的な力を持つドラゴンがヒト族の敵意を恐れるのですか?』
『圧倒的? まあ、今のヒト族はどうか知らないけど・・・』
『大昔のヒト族は恐ろしかったってジィちゃんが言ってた。』
『そもそもドラゴンは数が少ないし。』
・・・まあ、たしかに北遺跡のビーム砲みたいなのが10基もあったら・・・
少子化ドラゴンなんぞひとたまりもないか・・・
だがこのドラゴン、わりと話が通じる。
もう、王機聖刃剣はしまっちゃって、着陸。
『【蒐集者】・・・ヒト族は大魔竜ズゥーンと呼んでいたんですが・・・』
『アナタのことは何とお呼びすれば?』
『呼ぶ? 私は他者からは$$$$と呼ばれているが。』
うわ、ダメだ。ヒト族じゃ発声出来ない周波数。
うーん、じゃあ心の中で【グルーヴ】さんとお呼びしよう。
『なんでですか』
おう、ヘルプ君。なんとなく・・・かな。
『ズゥーンの巣穴に【蒐集物】があるんですが・・・』
『ドラゴン側で何か権利主張とか有りますかね?』
『はあ?』
『あんなガラクタに権利????』
心底意味が分からんという態度のグルーヴ・ドラゴン。
うーん、「アンタが死ねばただのゴミ」現象。
コレクターの切なさ。ドラゴン界隈でも変わらない模様。
ズゥーンの死骸はどうしよう?
同胞の遺骸がオークのご飯とか、ヒト族の素材とかにされたら嫌だよな。
『え? 死んだら? 腐ると困るときは焼くかなあ・・・』
ああ、まあ竜息吹があるしね・・・
『いや、死なないしね、普通。』
ま、それもそうか。
死ななきゃ葬儀も遺体の弔いの習慣もへったくれもないよな。ドラゴン界隈。
その後、さらに情報交換。
ズゥーンの悪行を伝えると、さすがにあきれたグルーヴ。
『集落を滅ぼした!? そりゃ恨まれるわけだ・・・』
『だが、コイツを殺した巨大魔道機ってのはヒト族の支配下にあるのか?』
これまた説明しずらい。
『そういうわけではありません。』
『えーっと・・・協力者って言うか・・・たまたまむかついたからぶん殴った感じですかね。』
『なるほど?』
『おい、どうなってる?』
おう、先生が通信で割り込み。
分割思考でグルーブと話しながら、先生にも経緯を説明。
『出て行っても大丈夫か?』
聞いてみます。
『実はヒト族の連れがいるんですが・・・』
『あっちの森の中だね。』
やっぱりわかるのね。
『ヒト族の魔力は独特だからねえ。』
大丈夫だということで、森からみんなが出て来た。
さすがの兄貴、デイエートも腰が引けている。
オークボスは出てこなかった。そりゃそうだ。
でも逃げずに木の影から様子をうかがっている模様。
「お初にお目にかかる、ワタシはエルディー。エルフの魔道士だ。」
堂々と挨拶する先生。
さすがの度胸。伊達に巨乳ではない。
いや? 膝が震えてるな。恐怖より好奇心が勝った感じか。
「おい! 通訳。」
あ、はいはい。同時通訳。
「ドラゴンと会話できる機会を得られるとは思っても見なかった。」
「光栄に思う。」
『いや、こちらこそ光栄です。魔導師殿。』
あ、れー? なんか先生に対して妙に丁寧だぞ?
「貴公はかなりヒト族について知識があるように見受けられるが・・・」
「過去にも交流があったのだろうか?」
『以前暮らしていた土地では、竜を崇める風習があったようでわりと身近に暮らしていたのです。』
グルーブさん、なぜか先生に対して敬語。
「なるほど、それでは信仰の対象であられたのか?」
『いや、祀られていたのはもっと高齢の長老竜の方です。』
『私は齢500歳ほど、まだ若輩者にすぎません。』
『ドラゴンは通常、年長者に対する尊敬と礼儀を欠かしません。』
『このズゥーンの様な無法者を除いての話ですが。』
ほほう、なかなか立派な種族じゃないか。
『魔導師殿はヒト族でありながら年長のお方とお見受けします。』
「う、あ!」
先生が歳の話をされて焦る。
「え、えーと。見てわかるものですかな?」
『先ほどお話ししたようにドラゴン界隈では年齢差が重要なので・・・』
『自然と魔力年輪を鑑定する能力が身につくのです。』
挙動不審になる先生。
俺がドラゴン語でフォロー。
『ヒト族の女性には年齢の話を嫌うヒトがいるのです。』
『おっと? これは失礼。』
ここんとこは翻訳しない。
その後、先生はドラゴンの生態について幾つか質問。
知識欲を満たしてほくほく顔。
ドラゴンの飛行能力を考えると、全く未知の領域に関する情報もあるんじゃないかな。
その、竜を崇めている土地というのも聞いたことないし。
先生に提案してみるも、ここは渋い顔。
「この世界は文明圏の断裂が起こって長い。」
「うかつに他の文明圏に接するのは危険だ。」
あー、そうか。
実は王都や旧主都市をはじめとする【大街道文明】領域は意外と狭い。
湾岸市は海に向かって開かれているが、他の大陸から船が来るようなことはないそうだし。
海でも陸でもモンスターや魔獣の脅威が俺の地球とは桁違いだからだ。
数千年前の【人間】による【魔道機文明】時代、さらにそれ以前の【大街道文明】時代に、すでに分断が起こっていたとしたら・・・
他の人類圏との遭遇は異星人との接触と同じくらいリスクフルな事態なのだ。
下手するとどこかに未来テクノロジー国家が存在していて、こっちを原始人扱いして来るかもしれないし。
まあ、グルーヴ氏の話を聞く限りではそこまでのことは無いようだが。
この年齢になって人生で一番仕事がつらい。
なんか時間経過の感覚も無くなってるよ。
気が付けば1週間が終わってる・・・




