引率するよ
ベータ君は帰宅、ディスカムは今夜もおやっさんとこへ泊まる。
寝る支度、また寝室にでかい毛皮を敷く。
もちろん敷いたのは俺。
工房のお風呂は今日は休み。
男湯修理の都合でお湯が止まっちゃうので、女湯も休業ってことに。
先生とマビキラ、寝る前にお湯を沸かして身体拭こうってことになった。
もちろん沸かすのは俺。
「ん、」
なんだキラすけ? なんでまたパンツ脱いでんの? 脱ぐの好きなの?
「ん、」
なんでマビ公も脱いでんの? たてすじ発表会か?
そして、どうして脱いだパンツを俺に渡す?
「洗って、パンツ」
こいつら…
ダメすぎる! 今までディスカムに洗わせてたのか?
なんて不憫なんだ、ディスカム!
いいか、マビ公。
も少し育って、たわわに実ったら揉ませてやるんだぞ。恩返しに。
キラすけは… まあ、無理は言わん…
「ん、」
そして先生、便乗して来たな。パンツ差し出す。
一緒にしちゃだめなんじゃないかな、このヒトたち。
沸かしたお湯をせっせとたらいに移す。
この辺、すげー不便。何とか工夫したい。
女性陣はお互いの背中拭いたり、じゃれあったり。
すっかりなじんだなマビキラ。
三人できゃっきゃっうふふ。
おっぱいは大、中、小。
いや違うな、大、小、無。
おみくじで言ったら大吉、小吉、凶!
すると、デイエートは大凶!!
どうでもいいこと考えながら、たてすじ鑑賞。
360度視界でチェックしながら、後片付けもこなす。
体を拭き終わったら寝室へ。
誰も服着ようとか、パンツ履こうとかしないんですが。
「若い子の肌はしっとりスベスベだなー。」
「マビの傷も痕になったりはしないだろ、これなら。」
「導師、おっぱいでかい。」
「ほわわーやらかい。」
じゃれあってるみたいだな。
仲良きことは良きことかな。
そして俺はパンツを洗う。
この世界の洗剤とか良くわからん。
マビキラのパンツ…なるほど高級っぽい。シルクっぽい肌触り。
だいぶ擦り切れてる感。図らずもすけすけチック。
あー、少女パンツの感触を楽しむおっさんと言う最悪の構図だ、これ。
絹はお湯ダメなんだっけ? 蚕の糸ってタンパク質だよな?
高温で変質する? 変質者が変質の心配すると言う感じの状況になってるな。
俺が思いっきり絞ったらあっと言う間にボロボロになるよな。
ダット姐さんに洗濯方法聞いとけば良かった。
うーん、うん? 音波洗浄とかどうだろう?
眼鏡のクリーニングとかするやつ。
マッサージ機能のバイブレーションをもっと細かくする感じで。
たらいに水を張り、パンツを浸けて両手を突っ込む。
ぶるぶるぶる
うわわー、水跳ねる跳ねる!! タンマタンマ!
もう少し細かい振動から始めなきゃダメか。
ぶるぶるぶるぶぶぶぶびびびびびいいいいぃぃぃーーーん
振動周波数を上げて行く。おお、いい感じ、汚れ落ちてる。
「ゴモ○! 超振動波だ!!」
とか、つぶやきながら洗濯終了。
最初の水ハネでびしょびしょになっちゃったよ。
ふと思い立って…
超撥水! 機体表面の水が一瞬で水滴に戻る。そしてコロコロと転がって落ちる。
蓮の葉っぱの上を水滴が滑り落ちるように。
一瞬で体表面が乾燥状態に。
ユニットバスの床とか、自動車のフロントガラス加工とかみたい。
摩擦係数を調整できるみたいだから、もしやと思ったけど。
撥水性までコントロールできるのか!?
この機体の装甲はナノスケール構造で表面特性を変化させることが出来る。
すごい技術だな。
『こんなことができるなんて』
おいおいナビくん、君が言うなよ。
『こういう使い方は想定されていません』
『振動を洗濯に使うのも想定外』
魔法は使い方しだい、って先生も言ってたな。
十分に発達した科学は魔法と見分けが付かない。
クラークの第三法則。あー、うん、第一と第二は知らない…
それすなわち、魔法もまた科学と見分けがつかないってことだな。
この機体も使い方次第ってことか。
これが使いこなせていれば、機体の絶縁性が担保できた。
デイエートを感電させることも無かったかも知れない。
後悔に唇を噛む。唇はないですけどね。
パンツを吊るし干しにしながら寝室の様子を窺う。
すっかり静かになった。寝息が聞こえる。
ダット姐さんの伝言、先生に伝えてないな。
まあ、今日くらいはいいよね。
次の日、朝やってきたのはベータ君だけ。
「マビさん、キラさん、服着ましたか? 着てますよね。」
念を押しながら入ってきた。紳士だな。
まあ、先生のこと聞かなかったのは失敗。
マビキラがちゃんと服着てテーブルについているので、油断した。
まるだし先生がふらふら出てきて、水飲んで、また寝室へ。
「先生!」
「いや、わたしは聞かれなかったし…」
ディスカムは組合長の所へ行って家探しの相談だそうだ。
「疲れがたまってる、筋肉痛だ。眠い。お前らどっか遊びに行け。」
と、言うことで追い出された。
先にマビキラ、ベータ君を外に出した後、ダット姐さんの伝言を先生に伝える。
「ふーむ、貴族の娘とかなのかも知れないな。まあ、その気になれば本人が話すだろ。」
あんま、こだわらないよね、先生、そーゆーこと。
さて、俺は工房で仕事があるし、ベータ君も同行すると。
マビキラは…、どうした? キラすけ? しょぼくれてるな。
「マントがない…」
ええ? マント無いとダメなの? 【黒い宝玉】!
「陽光の元では我が秘力は発揮できない…」
そーゆー設定…と言うだけでは無さそうだ。
マビ公を見ると…
「ぼ、ボクもマント無いとだめ!」
言い張った。
キラすけ、人見知りっぽいしな。
何かトラウマ的なものがあるのか?
知らない人の前ではフードかぶってないとダメなんだろうか?
マビ公はキラすけに付き合ってるような感じだな。
ディスカムもいないし…
無理させることはないか…
「では工房へ行ってダット姐さんに相談しましょう。」
「服を洗ってくれたお礼も言わないと。」
借りた服も返さないと…洗ってから返した方がいいか。
せっかく音波洗浄をマスターしたし。
「私も、ベータさんも一緒だから大丈夫ですよ。」
「ん、」
納得したようだ。ええ? 手をつないで来たぞキラすけ!
おっと、反対側からマビ公も!
「ふふ、アイザックさんは頼りになりますからね。」
ベータ君がにこにこ顔、面白がってるね。
幼稚園の先生みたいな感じになってるぞ、俺。
工房へ着いたら、仕事を口実にマビキラをベータ君に押し付けよう、と思ってた。
しかし、ベータ君が服飾工房へ行くのを嫌がった。強硬に嫌がった。
仕方ないので、俺が引率して行くことに。
「どしたの? アイザック。」
ダット姐さんに事情を説明。
「それで、マントのようなものを貸していただけないかと…」
「やだね!」
断られた。
「あんなのはウチにはないし、あっても女の子に着せたくないね。」
うん、まあ、ポリシーとして反するのはわかります。
可愛くないからね。
「被れるものなら何でもいいのではないかと思うのですが。」
「精神的なものだと思われますので…」
「うーん、それなら…、おーい、デイシーシー!」
「はーい、なんだしー、姐さ…げ!」
いたな、黒エルフ! お前には言いたいことが…いない!?
一瞬、顔出したが、俺を見た途端消えた。
速いな。のぞきの一件を追及されると思ったのか?
「シーシー??」
「………」
「デイシーシーさんは用事があるって帰りました。」
エルフの女の子が出て来た。なかなか可愛い子だな。
って、おまえデイシーシーじゃん!!
わずか1分で化粧落としたな。すごいぞ。
ガングロ落として、そんなもんでごまかしたつもりか!
こないだ風呂ですっぴん見せてるじゃん!
「ああ? あー?」
ダット姐さん困惑。
「かわりに私が御用を承ります。デイエイティさん。」
しゃべり方変えても無理だぞ。
シーちゃん。ちょっとプルプルしてるぞ。
「ああ、まあ、いいや。」
何やら相談。
「でしたら、こちらなどいかかでしょう。」
つば広の帽子、黒い麦わら帽子みたいな感じ。
「いいわね、ちょとこうすれば…」
黒いレースの…なんて言うんだっけ? ベール?
「修道院用のシスターベールね。」
ダット姐さんが帽子にかぶせて…
さらに黒いリボンをくるくるっとコサージュ風に編んで丸める。
横っちょに糸でとめて、
「うん、こんな感じ。」
ふわっとキラすけにかぶせる。
おお、いい感じ。黒いぞ! しかも痛くない。上品だぞ【黒き宝玉】!
「とてもお似合いですよ、お嬢さま。」
そのキャラ押し通すつもりなの? シーちゃん。
キラすけ、うんうん、満足げ。
ベールで顔隠れる感じなのがしっくり来たらしい。
まあ、外から見ると透けて見えるんだけどな。
さて、マビ公だが…
こっちは困った。
フードっぽいものをいくつか試したが、ボーイッシュが災いして似合わない。
防災頭巾、うん、そんな感じ。
黒いのがいけないのかって白いの試したら、今度は上杉謙信みたいな感じに。天と地と。
灰色のストリートのラッパーみたいな感じのフード。
俺はいいかなと思ったけど、姐さん、シーちゃんが反対。
可愛い大好きダット姐さんが反対なのはわかるけど、黒エルフが反対するのはおかしくね?
お前のガングロも大概だぞ。
結局、マビ公のかぶり物は無しで。
シーちゃんが髪をセット、可愛いピン止めを付けた。
さて、マビキラ、言うことは?
「服、洗っていただいてありがとうございました。」
「帽子も…ありがとうございました。」
よし、言えたな。
ダット姐さん、お支払いは、後でディスカムとも相談して…




