またまたお風呂に入るよ(オレ以外)
勇ましモードのデイエート。
今日は雀竜退治で大活躍だったしな。
「お体は大丈夫でしたか?」
「大丈夫か? だるさは残ってないか?」
先生も心配そう。
「導師、ありがとうございました。もう、大丈夫。完璧! 弓も引けたし。」
「あんまり無理をするな、あとから痛くなるぞ。」
うん、筋肉痛。今日は先生も大活躍したしな。
「きっと、明日…あさってあたり痛くなる…」
それ、自分のこと言ってるよね、先生。
お兄ちゃんエルフ、ハイエートも一緒だ。
「やあ、こんにちは…もう、こんばんは…かな。みなさん、ベータ君。」
分けたね? お兄ちゃん、ベータ君とそれ以外。
とりあえず、痛魔道士トリオを紹介。
「こちらは最近レガシにやってきた魔道士の方々ですよ。」
「うち、タンケイっす。この工房の職人! 職人っす!」
「ディスカムです! 王都から来た魔道士です! よろしく! よろしく、タンケイさん!」
熱いぞ、ディスカム!
「……こちらはデイエートさん。」
「あ、どーも」
ディスカム、正直すぎるぞ。お前の評価だだ下がり。マビキラと同列だ!
「王都から?」
ちらっと、タモン兄貴をみるハイエート。
兄貴がニヤッとわらったんで緊張を解く。事情を知ってるらしいな。
「ぼくはハイエート、よろしくね。」
今度はマビキラが口あんぐりしてる。
庶民的イケメンのディスカムとは、クラス分けの違う超美形だからなあ。
「こちらマビカさん、と、【闇のじょ…」
「キララ、キララですっ!」
わはは、キラすけ。俺の嫌がらせ紹介失敗。いいじゃん、キララ、かわいい名前だぞ。
「マビカさんは雀竜に捕まっていた子ですよ。」
「ハイエートさんが発見してくれたんですよ。そうでなかったら…」
「ええ!」
ディスカム、感謝しまくり。マビキラも頭をさげる。
「マビカ君ですか、無事でよかったです。こんな可愛い子の救助に力になれたんなら光栄ですね。」
そう言ってマビ公の頭をなでる、兄エルフ。天然女たらしだな。
まあ、完全に子ども扱いだけどね。でも、マビ公のほうは真っ赤になってるぞ。
ん、マビカ「君」?
ハイエートはテーブルをぐるっと回って、ベータ君のとなりへ着席。
…空いてたよね、こっち側の席、いくらでも。
デイエートは、お兄ちゃんのとなりに…行くかと思ったら、俺のすぐ近くに。
ちなみに俺は立ったまま。
疲れないし、スタビライザーが効いて安定してるから、座るの忘れるんだよね。
「今日は、イーディは?」
と、周りを見回しながらハイエートが尋ねる。
「姉さんは、救護院に泊まるって、患者さんの様子をみると」
「そうかあ…ほほう…」
…いかんな、お姉さんバリヤーが無いことを確かめたハイエートの表情が怪しい。
「しかし、やっと女湯の修理が終わったと思ったら、今度は男湯か。」
先生がため息をつく。
「今日は入りたかったが…」
「やってるっすよ。おフロ。」
「ええ? 入れるのか?」
「女湯は無事だったし、男湯も浴槽は使えるんで、今日はやろう、っておやっさんが。」
「あー、確かに今日はみんな汚れたしなー。」
しかし、そうすると、男湯は露天風呂状態か。逆なら良かったのに。
「いいね、そいつは。風情があるってもんだ。俺も入っていこう。」
兄貴は乗り気だね。
「いいですね、一緒に入りますか? うん、ベータ君も一緒に! うん!」
ハイエート…さん? 妙に熱心ですね?
そうこうしてるうちに、おやっさんもやってきた。
おやっさん、ダット姐さん。
おっとデイヴィーさんもいる。救護院の仕事は終わったようだ。
そして、ミニイたんはおやっさんに肩車!
「おお、みんなそろっとるな!」
「そろとうな!」
ミニイたん、偉そうだぞ。
「すいません、工房長。気に入ったみたいで…」
「ちょどいい!」
何がちょうど良いんだ? と思ったら…高さか。
ドワーフの背丈+肩車でお母さんと大体同じ目線の高さ。
なるほどね、俺や兄貴、兄エルフじゃ高すぎるもんな。
ごきげんのミニイたんを上目遣いに見やるおやっさん。
ほのぼのする。
うん、今日は大変だったよね。
ダット姐さんはマビキラ、主にキラすけに目を丸くした。
「あらま、王都から来た子だね。ちょっとその服、見せて。」
「あらあら、かわいい! 汚れちゃったわね。うちの工房で洗ったげるわよ。」
「あっ、そうか。みんなでお風呂入ろうって話をしてたんですが…」
「着替えがいりますよね、女のヒトたちは。」
ハイエート兄さん、よく気がつく。見た目だけじゃないイケメン。
「そうね、後で持ってくるわ。」
自然にタモン兄貴のとなりに座るエルフ妻ダット姐さん。
兄貴が、ディスカムに紹介する。
「女房だ。」
「え…そう、なんですか…」
「エルフハーフだってさ、こいつ。」
「あら…まあ、どっちがどっち?」
「父がエルフで…母は人間です。」
「そっかー…」
「はい。」
まあ、それぞれにいろいろ思うところもあるようだ。
みんなでワイワイ話しながら夕食タイム。
工房の職人たちやお針子さんたちも一緒だからけっこうな喧騒。
ハイエート、ベータ君、ディスカムとイケメンぞろい。
女性陣から熱い視線が。
タモン兄貴も男前だが、奥さん同伴なので注目外。
獣機をコントロールしている基地局、骸骨塔をたどるために遠征したい。
カロツェ家に手形を頼んだ。
同行者が欲しいが、街の警備もある。
組合長とも相談したい。
てなことを先生から。
兄貴も兄妹エルフも乗り気だが、全員はまずいような気がするな。
今回の雀竜みたいなことがあると考えてしまう。
てなことを話していたら、妹エルフの様子がおかしい。
こっくりこっくり舟をこぎだした。
「あやや? すっごい眠い…」
「ほら見ろ、まだ、本調子じゃないんだ。気を張ってる間はいいが。」
「早く帰って寝ろ。」
先生に言われても、首を振るデイエート。
「でも、お風呂入りたいしー…ふにゃー。」
すっかり甘えん坊の地が出てるぞー。
まあ、飲食のできない俺は、ちょっと手持ち無沙汰。
食堂の食器の片づけとか、つい手伝ってしまう。
食堂のお姉さんドワーフとか、目を丸くしてた。
ご飯の後は入浴タイム。
ダット姐さんとタンケイちゃんが服飾工房から着替えを持ってきてくれた。
女の子の分だけね。
「これ、ベータ君の分。」
しれっと渡す姐さん。
「女の子の服じゃないですか! いやですよ!」
失敗! ハイエートもがっかり。
番台は無人だった。
「今日は無料開放でな。」
男前! おやっさん。
入ろうとしたところでひと悶着あった。マビ公!
「こっちは女湯だぞ。」
と、先生。
「こっちですよマビ君。」
と、ハイエート。
「マビカ、女の子」
とキラすけ。
「ええー、すまん、男の子だと思ってた!」
「ええー、ごめん、頭撫でちゃった!」
「ええー、ごめん、着替え持ってこなかった!」
まあ、ボクっ娘やってるマビ公が自業自得なんだからな。
「ごめん、わたし無理かもー」
妹エルフがふにゃふにゃだ。
「帰ろうか?」
心配する兄エルフに首を振る。
「ここで休んでるから、お兄ちゃんは入ってきて…」
「ハイエートさん、私が一緒に居ますから。」
そもそも俺は入浴する必要がない。先生の洗浄魔法受けたしな。
今日は他の入浴者もいるし、俺が入るのは、なんか違う気がする。
「じゃ、じゃあ、お願いします、アイザックさん。」
みんなが脱衣場に入ってしまうと、妹エルフは長椅子でぐでーっと。
俺もベンチに座る。自分の手を見る。
金属性の手。やっぱ、人間じゃないんだよな。
食事も食べれるわけじゃないし。
男同士、裸の付き合いなんてしたら、自分がロボであることを思い知らされるような気がする。
………ナビ君、聞いてる?
『…何でしょう』
外部接続装置ってさ。
もっと小型の無いのかな? 偵察用ドローンみたいなの。
『…何に使うつもりなんですか』
いや、ほら、偵察だよ。
『女湯の、ですか』
だってさ、すぐそこで人妻エルフ、デイヴィーさんがお風呂入ってるんだぜ。
おヌードで。
見たいじゃん! 見たいに決まってる! 世界の真理!
そうだ! 拳骨シュートにカメラとか付いてれば!
なんかセンサー映像を処理すれば映像化できるみたいなのでもいいし。
『付いてません』
何でだ? V3ホッパー! ヘリキャット! 必要だよね! 絶対!
待てよ、上空からだと角度的にいまいち! やっぱローアングルだよね!
『最低《さいっ、てー》』
さいてー言われた! 思いっきり言われた!
なんかゾクゾクきた! 新しい何かに目覚めそう!
あれ? ナビ君ってもしかして…
『……まあ偵察用デバイスは必要ですけど…』
あるんだな! あるんですね!
『教えません』
くっそー!
まあ、仕方ない。少しでも情報を収集しよう。
ズームマイクモード!
音響解析で会話を抽出。
「ちゃんとしたお風呂は、久しぶりです。」
ディスカムだな、この声。そういえばどこで暮らしてるんだ? あいつら。
「ベータ君、背中流しっこしようか、」
「はい、ハイエートさん。」
いかん、こっちは男湯。そして、危うしベータ君。
イーディお姉さん呼んできた方がいいかも。
気を付けてベータ君!
まあ、それはそれとして女湯は?っと。
「なんだ、男の子っぽいカッコしてたくせに、けっこう膨らんでるじゃないか。」
「デイエートよりあるぞ。」
本人がいないと思って失礼なこと言ってるぞ、先生。まあ、俺も同感だが。
「おっと、黒いのも気にするな、これから、これから。」
「デイエートとは違って将来性があるぞ、まだ。たぶん。おそらく。」
あっちにもこっちにも塩を塗りこんでいくスタイル。
「あきゃきゃきゃきゃ!」
これはミニイたんだな。
「泳いじゃだめよ。」
おお、デイヴィーさんの声。
おヌードの声かと思うとありがたみが……
いや、そこまで想像力豊かじゃないな、さすがに。
「びややややーー!」
おっと、どうしたミニイたん? お湯ガボってしたか? 鼻つーんだな。
「なんか、良からぬこと考えてないか? お前?」
おっと、妹エルフが起きた。相変わらず鋭い!
「そんなことありませんよ。」
今はね、さっきまでは考えてたけどね。
まあ、デイエートはお風呂入らなくて良かったかも。
マビ公に負けてショック受けたら、立ち直れなかった可能性がある。
「うーん、背中だるい…」
となりに座るとしな垂れかかってくる。
甘えんぼモードか。人が見てるぞー。
「マッサージでもしましょうか?」
「そんなこと出来るのか?」
「先生やタンケイさんには好評でした。」
「揉んだのか、タンケイを?」
うたぐる様な目つき。
誤解を招きそうな言い方しないでよ。誤解じゃないですけど。
「わたしもやってもらおうかなー」
はいはい。
長椅子にうつ伏せのデイエートの背中を揉んでいく。
まあ、他にも浴場のお客さんがいるから、変な雰囲気にはならないだろう…
背中の筋肉が張っている。
いっぱい弓引いたからな、今日は。
余分な脂肪の無い、弾力のある背中。
健康というものを体現するような肉体だな。
もし、あの時、手当てが遅れていれば、この肉体はもう存在していなかったのだ。
そう思うと、怖い。そして、愛おしい。もうあんな思いはごめんだ。
「ああ、気持ちいいなあ…」
まだ、電マモードが残ってますですよ。
平らか敏感ボディをぶるぶるしてやるぞ。
浴室から出て来たお姉さんたちがこっち見て、ひそひそ。
「まあ、あの魔道機、マッサージまで。」
「デイシーシーが言ってたけど凄いらしいわよ。」
「なんでもタンケイちゃんを絶頂させたとか…」
え、ちょ? 昨日の今日だよね? ガングロエルフ、デイシーシー!!
インフルエンサーか? 今日は姿見てないって言うのに?
どうしてそんな噂になってるの? どうなってるの? ここの女性情報網?
ビクッとするデイエート。長耳ピクピク、耳がいいな。
「何? どういうことだ?」
いや、その…
う? 警報? 飛行ユニットから?
共有モードオフで中庭に駐機したままだが、完全に遮断されたわけではない。
異常を感知すると知らせが入る。
職人さんたちに分解されたら困るしね。
『中庭に不審な動きがあります』
不審な動き?
「どうした?」
「中庭付近で何かあるようです。」
「まさか、獣機?」
「わかりません、見てきます。」
「わたしも行く!」
「え、でも…」
「行く!」
デイエートは、自分の荷物の中から小ぶりの弓を取り出すと手早く弦を張った。
二人で中庭に移動。
見回したところ、これと言って異常は…
…あんなところに箱あったっけ?
でかい木箱。タタミ1畳分くらいある箱だ。
う、動いた? ゆっくりと動いている。
中に何かいるのか?
「ああー、あいつらー」
ん、何? デイエート?
矢をつがえると軽く引いて放つ。
箱に命中! 刺さる。
「こらー!!」
木箱が震えた。
がががっ!っと地面をこすると、バタンッとひっくり返った!
箱の中から5人ほどの女の子がわらわらと這いだした。
そして、蜘蛛の子を散らすように一目散に逃げ去る!
いや、実際、蜘蛛の子逃げるとこなんか見たことないけどさ。
え、何? どういうこと?
「ん!」
デイエートが指さす。
あー、ここ、男湯が丸見えだ。
壁がなくなってるから全開、フルオープン。
お兄ちゃんが気づいた。デイエートに手を振る。
ベータ君が、ひゃっ、て感じでお湯に沈んだ。
のぞきスポットかよ!
箱かぶるとか、スネークちっく。
そうかー。そうだよなー。
女の子だって、見たいよな。見たいに決まってる! 世界の真理!
そして、いた! あの中、男風呂のぞき隊の中に。
「デイシーシーがいたな。」
「いましたね。」




