三人組の話を聞くよ
工房の食堂で痛魔道士トリオとお茶することに。
こっちも色々聞きたいけど、向こうも色々聞きたいことありそう。
「あ、あの…あの空飛ぶ魔道機はエルディー導師の?」
「んー、私と言うより、このアイザックのものだな。」
「アイザック…さん?」
ちゃんと挨拶も紹介もしてなかったからな。
さっぱりわかんないよな、ディスカムくんにしてみると。
とりあえず事情を説明。
「するとアイザックさんは、エルディー導師の命令で動いているわけではなく、自分の判断で?」
「あの空飛ぶ魔道機はアイザックさんが動かしていると?」
まあ、大体そんな感じ。
がばっと頭を下げた。
「マビを助けてくれてありがとうございました。」
「マビ、キラもお礼を…」
「さ、さんきゅー!」
「我の感謝の念を受け取るがいい…」
マビキラ! こいつら! ダメさ際立つ! だいぶ調子出て来たな!
「裸に剥いたり、カブトムシをけしかけたり…しない?」
つぶやくマビ公。憶えてたか。
「あれは反省を促すために言っただけで、本当にやったりしませんよ。」
カブトムシ集めるの大変だからね。まあ、お前らの今後の態度次第だがな。
「それに、あれはキララさんに言ったんですから。」
「ふひいっ!」
キラすけ、びくりっ! とした。
「うぃーす!」
タモン兄貴がやってきた。ディスカムくんがあわてて立ち上がって直立不動。
「か、閣下!」
「あー、何のことかわからんなあ。誰かに似てるのか?」
ポンと肩を叩いて座らせる。
「ここじゃ、そんな昔のことは関係ないぞ。」
かわいそうなくらい緊張してるな。がくぶる状態。
兄貴もすごい過去がありそうだが…そのうち聞く機会もあるだろう。
それに比べてマビキラのさっぱりわかってない感が、凄い。
「しかし、おまえらの関係が全然わからんのだが、どういうチームなんだ?」
先生もそう思うよね。
「お前ほどの魔道士が、なんで中退? こんな田舎に?」
「え、と。僕は、その…エルフハーフなので…」
髪をたくし上げて耳を見せる。
言われないとわからないくらいだが、なるほど、とがっている。
「今の王都には居場所がないのです。」
ちっ!と兄貴が舌打ち。
「そんなにひどいのか? 今は。」
「ええ、まあ、閣僚のほとんどは至上主義の貴族になりましたから…」
至上主義?
「人間至上主義、のことだ。他の種族を『亜人』呼ばわりして見下したり、排除しようって輩だ。」
ああ、この世界でもあるんだ。そーゆうの。兄貴のイラつきもわかる気がする。
「至上主義自体は大したこと無いんだ。」
先生が補足。
「エルフにもエルフ至上主義者がいるし、ドワーフにだってそう言う考えはある。」
「めずらしいもんじゃない。」
タモン兄貴が補足。
「王都の至上主義者が厄介なのは、それと貴族、王族の権力争いが連動してるってことなんだ。」
「派閥を作る名目に利用されたり、気に食わないヤツを排斥する口実にされたりする。」
「さらには強硬外交政策や、軍事行動を正当化する屁理屈になる。」
なるほど、そんないろいろがあったのか。
「差別意識なんて誰だって持ってるもんだよ。誰だって自分が可愛い。」
「その延長線上で自分の種族が、一番だと思いたいさ。」
「だが、それは感情の問題なんだ。理論的でも理性的でもない。」
「ちゃんとした大人は口に出したりしないし、態度にも出さないもんだ。」
達観したように語る先生。老けて見えますよ、そーゆー態度。
「女の胸に欲情したからって、ちゃんとした大人は態度に出したりはしないだろ?」
ぎくり!
両手で胸を持ち上げて、突き出し、ディスカムくんに見せつける先生。
眼が泳いで…いないなディスカム。釘付けだぞ、態度に出てる出てる。
新たなセクハラ対象に食いついたな、先生。
そして、自分の胸をチラリ見おろすキラすけ。
これから、これから。ドンマイ!
「げふっ!」
マビ公のツッコミ貫手が脇腹に入って、むせるディスカム。
気を取り直して。
「まあ、そんなわけで、王都を離れて身を立てようと…」
「期待されて送り出されただけに、故郷には帰りにくいこともありまして。」
「以前、治安がいいと聞いたことのあるこの街へやってきたわけなんですが。」
「で、そっちの二人は? 人間だろ?」
マビキラは後輩。
個性が強くて学園内で孤立していた二人を、生来、人のいいディスカムが何かと面倒を見ていたらしい。
それで懐かれた。懐かれてしまった。
まあ、程よくイケメンだしな。
「僕が辺境へ行くと言うんで、その……えーと…心配してついて来てくれたんですよ。」
ついて来ちゃったのかー。優しい言い方してるけど。ついて来ちゃったんだなー。
「その歳で女難か…」
先生も絶句。
「マビは水魔法、で、そっちの黒いのは何が出来るんだ?」
「あるんだろ? 固有魔法。魔力の流れが独特だ。」
「わ、我は…」
コミュは苦手そうだよね。キラすけ。で、助け舟。
「キララさんのはすごいですよ。闇が出せるんです。」
「闇?」
「これ。…いでよ、│闇の岩戸」
手のひらの間に例の黒い霧が発生。
「おお、なんだこれ!!」
先生が思った以上に反応してるぞ! 大興奮!!
「すごい! 始めて見たぞ、こんなの!」
「あんまり役に立たない…」
キラすけが暗い。キャラ付けとは別の意味で暗い。
救護院でも役立たずだったのがこたえてる。
先生、興奮して聞いてない。
手を突っ込んだり、息を吹きかけたり。
「光を透さないのか? ちょっと来い、表で…」
キラすけを表に引っ張り出すと、すでに西に傾きつつある太陽に向かって展開するよう指示。
「すごい、この薄さで完全に光をさえぎっている!」
そう、改めて見ても紫外線も赤外線も透さない。
俺の視覚センサーでもまったく感知できない、真の闇だ。
「おい、アイザック、あれ射ってみろ!」
あ、そうか。ビームなら波長変更できる。
低出力で波長を変えながら、照射!
まったく貫通しない。ええ? これほんとにすごい!
「次は高出力で行きます。」
パルスビーム! 獣機を屠る一撃。
消えた。闇に呑まれた。貫通どころか何の影響も与えられない。
「これ! 凄すぎますよ。先生!」
俺も大興奮!!
「まてよ、デンパ! 電波はどうなんだ?」
「あれ、光の一種だって言ってたよな。おまえ。」
「だったら、これで遮れるんじゃないか?」
ああ、そうだ! そうなれば獣機対策にも使えるかも!
これで波長の短い方、エックス線とかガンマー線の遮蔽まで出来たら現実世界でもガチ役に立つんだけどなあ…
「すごい、すごい!」
ああ、もう、ピョンピョンしちゃうぞ!
思いがけない高評価に、キラすけ呆然!
「いやあー、思いがけない才能と言うものはあるものだ。」
興奮しすぎてちょっと疲れた先生。
食堂にもどって水分補給。
「そんなにすごいんでしょうか?」
ぴんと来てないディスカムくん。
「魔法というものは、組み合わせて使うものだからな。」
「固有魔法を持っていると組み合わせの幅が桁違いに広がる。」
「私ですら今まで見たことがない魔法だぞ。」
「私は固有魔法、無かったからなあ、うらやましい才能だぞ。」
キラすけ、マビ公と顔を見合わせている。
褒められたのはうれしいけど、こっちもピンときてない感じだな。
「そっちの水魔法も、固有魔法としては珍しいものじゃないが、実用性ではピカイチだからな。」
「で、でもボク、他の魔法うまく使えない…」
「わ、我も、まあ、ほ、他はそれほどではないな。」
へっぽこ火球とかだもんな。
「んん? 何言ってる。固有魔法持ちってそういうもんだぞ。」
「ええ?」「ふえ?」
「固有魔法は持ち主にに最適化されているから、魔力がそっちに流れやすくなってバランスが崩れるんだ。」
「でかい穴が開いてるせいで、他の穴に水が流れない、って感じかな。」
「特に体の成長期の間は他の魔法はいっさいまともには使えないと思った方がいいぞ。」
「ええ? そ、そんな…そうだったんですか?」
「なんだ? そんなことも教わってないのか? 何やってるんだ、エアボウドは!」
「あいつだろ! 王立学園の学長は!!」
「え? い、いや、エアボウド導師は10年ほど前に、定年で引退を…」
「学長が変わって、ずいぶん学園の様子も変わったと聞いていますが…」
先生唖然。
「え? あいつ、定年? あれ? あいつそんな歳だっけ? え? 10年前?」
「え? 待てよ? あいつとパーティ組んだのがー…、え? そすっと私は?」
何かショックを受けたらしい。自分の世界へ閉じこもった。
ああ、タイムスリップですね。私も経験あります。
ついこの間だと思ってた平成仮面ラ○ダーの10周年記念ムックとか見た時に。
え? 10周年? 10年前?? 俺の10年どこへ行ったの??? って感じで。
うーん、仕方が無いので、今までオブザーバーに徹していたベータ君に話を振る。
「ベータさんはどうなんです?」
「う、僕は、今は魔法理論の習得に専念しろと、先生が。」
そういえばベータ君の魔法、まともに見たことない。
固有魔法持ちなんだな、たぶん。どういう魔法?
我に返った先生が横から口を出す。
「ま、まあベータはエルフだから急ぐことは無いからな。寿命的に。」
隠そうとしてるな? なんかヤバいのか? ベータ君の固有魔法?
「固有魔法にそんな…学園では、それで見込みがないって辞めちゃう子とか、けっこういたんですが…」
「もったいない話だ。固有魔法が強いほど普通の魔法習得は遅くなるが…」
「それを排除してたら新しい魔法の可能性は無くなってしまうぞ。」
「ま、そんなわけだから、お前らも焦ることはない。じっくり理論から学んでいけ。」
マビ、キラがこくこくうなづいてるが、ホントにわかってるか? お前ら!
「アイザックさーん」
おう、タンケイちゃん。仕事終わり?
「タンケイさん、お怪我は無かったですか?」
「大丈夫っす、すごかったっすねー。アイザックさんの投石!」
「導師の魔法も、この世の終わりかと思ったっす。」
ん? おーいディスカム! 口開いてるぞ。
「空飛ぶ魔道機がびゅーんて…」
ぶんぶん振り回すタンケイちゃんのおっぱいに眼が釘付け。
その動き、一挙乳一投パイから目が離せない。て言うか離れない。
おーい、態度に出てるぞ。さっきの先生の話聞いてたかー?
ああ、そうか。お前…そうなんだな…
おっぱい星人。
それなのに、マビキラの面倒見て…いい奴。
で、ついて来たのがボーイッシュとロリゴス中二病。
報われない。まったくもって報われない。
いいんだ、いいんだぞ。この街には、タンケイちゃんもデイヴィーさんもいる。
デイシーシーだっていいもん持ってるぞ。あと、一応、先生もいる。
工房の受付さんとか、救護院の見習いさんとか、お針子さんとか。
俺がブックマークしといたお姉さんたちもいるぞ。
『そんなことしてたんですか』
おっと、ナビくん。してたんですよ。
ディスカム! お前の、いや、俺たちの青春とおっぱいの旅はまだ始まったばかりだ。
「おい、アイザック。誰だ、こいつら?」
胸に個人差のある妹エルフ、デイエート!
今日は甘えんぼモードではなく、凛々し勇ましモードだな。
おっと、ディスカムが、デイエート(の胸)を見て、イケメンに戻った。
理性を取り戻したようだ。
正直者だな、お前!




