表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/381

治療が終わったよ


阿鼻叫喚。地獄のごとく悲鳴が響いた診察も一通り終わり、前庭の患者さんもすっかりいなくなった。

治療が終わるやいなや逃げ去った、とも言う。救護院内も落ち着いたみたい。

となりの葬儀屋から組合長が食事を持って来てくれた。

パン的なものとかソーセージ? 串焼き? そしてスープ。

炊き出し、日本ならおにぎりが出てくるところ。

先生、バクバク。そういえば今朝から何も食べてないもんな。豪快に噛り付く。

マビキラもご相伴に。小動物的にボソボソ食べる。

治療に協力したマビカちゃんはなんだか表情が明るい。

それに比べ、キラすけの顔が冴えない。正直、役に立たなかったからなあ。

「ミニイ!」

「おかさん!」

デイヴィーさんが前庭に出て来た。ミニイたんが駆け寄ってきたのを抱き上げる。

「アイザックさん、先生、ありがとうございました。」

「なーに、いい子だったぞ。」

「まほうみてた」

後をついて出て来たのは、ベータ君と痛魔道士1号。

「先生!」

「おう、ベータ。頑張ったな。」

「力不足を感じました。痛み止めと血止めくらいしか役に立てず…」

ちらりと隣の痛魔道士1号を見る。歳が近いから対抗心かな。

「焦ることない。魔道士は100歳過ぎてからだ。」

「に、しても…ディスカムと言ったな。まだ学生じゃないのか?」

「王立魔道学園にいました…中退です。」

「ほう、なかなかの腕前なのに。何でやめた?」

「まあ、いろいろありまして…」

いろいろ、が多いな、この世界。って言うか、今までのいろいろ全部、王都だよな?

「ディスカムー!」

マビキラも駆け寄る。

「マビ、ケガ大丈夫? キラも、エルディー導師に変なこと言って無いよね?」

「だ、大丈夫じゃ、我はそんなこと…」

拗ねたようなキラすけ、いや、こいつらの関係が全然わからない。


「うおーい、アイザック。」

タモン兄貴だ。何人かの男たちと一緒に荷車引いてる。

荷車には、雀竜の死骸が山に積まれてる。

「臨時収入だな。タモン殿。」

「正直助かる、何かと物入りだからね。」

なるほど、高級素材だって言ってたな。

「ちょうどカロツェ家の隊商が来てるらしいからな。組合長に預けておく。」

獲物は倒した人のもの、タグを付けておくことで判別できるそうだ。

これは狩人やいわゆる冒険者の最低限の仁義、横取りとかする奴は誰からも相手にされなくなる。

んん? ディスカムくんが唖然としてるぞ。

「タモン…ギャザズ将軍…? ええ!?」

「おっと、ディスカム、他人の空似ってやつだ。そういうことでな。」

先生が口止め? ええ? 将軍って、あだ名じゃなかったの? 兄貴?


「さて、いったん工房へもどるか、デイヴィーはどうする?」

「私はもう少し、ここで。」

「ディスカムさんもお疲れさまでした。」

「は、はい!」

にっこり笑いかけてくれるデイヴィーさんにどぎまぎ。

声が上ずっているぞ、ディスカムくん。

人妻エルフの魅力は思春期ボーイには毒だったか?

マビキラコンビがなんとも言えない顔でにらんでるぞ。

「お前らも来い。夕飯くらい……もらえるだろ。」

おごる、とは言わないんですね、先生。

有無を言わせぬ感じ。痛魔道士3人組に命令。


先生、俺、ベータ君、3人組でぞろぞろと工房へ。

道に出ると、となりの葬儀屋の前を通る。

ん? 兄貴と組合長、それにビクターさんがいる。

「おお、ビクターさん。」

「導師、お疲れさまでした。」

「あなたの警告が無かったら、どれほど被害が出ていたことか…礼を言わせてくれ。本当にありがとう。」

「ど、導師、やめてくださいよ。お礼を言われるようなことではありません。」

「ここは…」

ちょっとはにかんだような表情のビクターさん。

「私にとっても『私の街』なんですから。」


「とりあえず商売はしますがね。」

にやりと笑う。

「工房の分も含めると…値崩れするんじゃないか? 雀竜のウロコ。」

「そこは、うまくやりますよ。工房の分は工房で加工してから買い取ると言うことで。」

「なるほど。」

「ぜひまたお屋敷に。お嬢様が喜びます。」

「わかった。また顔を出すよ。」


「俺も後から工房に行きますよ。」

タモン兄貴に見送られて、歩き出す。

一瞬、兄貴の曇った表情が気になる。

思わずズームマイク起動。

兄貴、ビクターさん、組合長の会話をチェックする。

「隊商の連中に空飛ぶ魔道機や、導師の魔法を見られたのはまずかったな。」

「ウロコの値崩れを防ぐ、と言う名目で口止めはしますが…」

「王都に噂が伝わるのは防げんだろうな…」


いろいろあるようだな、王都。


さて、工房に到着。

中庭にはちょこん、と飛行ユニットが鎮座。

興味津々のドワーフ職人衆がたかっていた。

俺を見て、ビクッとなって離れる。

「こりゃ、導師。アイザック。」

「いやいや、見てただけだから!」

「さわってない、さわってない!」

いや、後ろにヤットコとかねじ回しとか隠したよね。

もう少し遅れてたら、分解されてたんじゃないか?

油断ならんぞ、職人衆。


「これ、あの岩に戻れないのか?」

えーっと?

『再収納は不可』

「無理みたいですね」

まあ、その方がいいか。毎回男湯から出撃とか、すっげー嫌!

これが女湯ならウエルカムだけどな。アニメだったら毎週出撃! バンクは不可!

お色気アイキャッチ・お色気エンドカードをしのぐ人気沸騰シーン!

そうだ! 入れ替えましょう! 男湯と女湯!!


そして、変更に気づかずに女湯に入ってしまうベータ君!

ナイスイベント! 入浴者はダット姐御とデイシーシー。

お姉さんの援護が受けられずに孤立してしまうベータ君。

孤立して起立! 可愛い顔してこっちは凶暴!!

イベントキャストはディスカムくんでも可! 

後から入ってきたデイヴィーさん、岩陰に隠れるディスカム少年!

大ピンチ。マビキラが発見! 定番イベント!

何やってんのディスカム! 隠れて隠れて! がぼがぼ!

マビの胸が…キラのお尻が、アソコがアソコに当たってるよ。

何、硬くしてんの、サイテー! ぎゅっ! 痛たた!

のぼせて、ぷかーまでがテンプレ!


「こいつ、どこに仕舞っとく?」

うーん、女湯は無理か。

『北の遺跡に格納庫があります』

うん、じゃあ、そこに仕舞っておくか。

『埋まってます』

ああー、うん…

「とりあえず、遺跡の近くに停めて置きましょう。」

露天駐車。


マビ公が飛行ユニットを見てびくびくしてるな。

空の旅は快適じゃなかったか?

男湯は天井から壁にかけて半壊していた。

壁が崩れて外側から浴室が丸見え。

あの大岩の上半分が無くなっている。

念のため魔法光を当ててみると…

「魔法陣がきれいさっぱり無くなってるな…」

先生が驚いている。

封印、保管用で、開封したら返品不可って所ですね。


周りにいる職人衆。

「建て直しだなあ。」

「さすがにタンケイ一人じゃ無理だわ。」

「今度はしばらく女湯を時間制で共用か?」

「女湯……」

黙り込んだぞ、職人衆。

「時間割を複雑にすれば…間違って鉢合わせしちゃうとか…」

「うーん、そうゆう事も有り得る可能性もあるかも…」

俺と同じようなこと考えてるな。

何想像してんだよ。無理だぞー。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ