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紹介されるよ


目が覚めた、というかスリープから復帰したのはタイマーじゃなかった。

誰かの声とドアを叩くような音。

機体が対応すべき事態と判断したらしい。自動、便利。

何を言っているか聞こえな…聞こえた。ボリュームアップ。

解析、補正が入ったらしく、一瞬ラグの後、声が明瞭に。

「先生! 先生! そこに居られるのでしょう!!」

「開けてください! ご無事ですか!?」

緊迫した声。昨日の考察を思い出す。

危険な実験だから他の協力者を遠ざけ、エルフ女史、一人で実行した。

そのことに気づいた者が駆けつけたってわけだ。

「あむああぁー…」

その当人が目を覚ました。のんきに。

ずるずるとベッドから這い出す。

エルフ耳がピクピクしている。耳は良さそうだ。

もちろん、パンツいっちょ。

手首で変な動き、魔法リモコンで灯りがつく。

壁際までいくと、突き出すように生えているパイプの一本に顔を近づける。

パイプを塞いでいるコルク栓みたいなキャップを外すと、声をかけた。

伝声管か。インターホン。

「ベータかーぁ? 何だよ朝っぱらから…」

「ご無事でしたか!! 朝ではありません!」

そういや、地下だ。時間は不明。エルフ女史が寝るって言うから夜だと思い込んでたけど。

「今、開けるからぁー」

再び変なポーズ。ガチャッという金属音、鍵を開けた? 魔法リモコン便利、変だけど。

えーと、女史… いや先生…か? 来た人、そう呼んでたし。

パンイチ素っ裸なんですけど。開けちゃっていいんですか?

指摘すべきか? もう間に合わないですけどね。

「先生!! 大丈夫ですか!」

走りこんできたのは十代前半くらいに見える少年エルフ。

エルフ先生を見て固まる。

「なんて、格好してるんですかー!!」

あわてて背中を向ける。耳まで(エルフ耳)真っ赤だ。

そのまま、駆け戻る。

「コウベンさん、ちょっと待って待って!!」

他にも人がいるのか。

「おっと、おやっさんも一緒か!? いかん、いかん。」

エルフ先生、あわてて服を羽織る。昨日脱いだ前開きシャツ。

ゆるゆる緩んで、脇から大事なところが丸見えの紐パンふんどしを締めなおす。

「もういいぞー。」

いや、良くないですよ! シャツ一枚にパンツ丸出しですやん。

ロボ相手だから恥ずかしくないのかと思ってたけど、そうじゃない。

いろいろ緩いぞ、この先生。こいつガバガバだぜ!な感じ。

少年エルフが戻ってきた。

エルフ先生のいでたちを見て再び固まる。

「いや、良くないですよ!」

俺と同じ意見。そうだよね。

美少年だ、まさに。

ふわさらな金髪に藍色の瞳、少年らしいすべすべ肌。

性別抜きの愛らしさ! ありがたくめづらし。


続いて入ってきたのは…コウベンさん。ドワーフ?

小さくてずんぐりとした体型。

あれ、そんなに小さくは、ない? 背は少年エルフよりちょっと低い。

顔がでかくて頭身が低いからすごく小さく見えるけど、実際はけっこうボリュームがある。

ゆるキャラの着ぐるみ、現物を間近で見るとそのでかさに驚愕するあの感じ。

ヒゲは…そんなに濃くないぞ。太っている? いや、筋肉質だ。

太い眉、ギョロっとしたどんぐりまなこ、団子ッ鼻。ちょっとユーモラスな感じ。

エルフ先生を見て、やはり一瞬固まるが、すぐ大笑い。

「なんて格好だい、『先生』 もちょっとなんとかせい!」

「あ、ああ、うん。ちょっと待ってくれ。」

もそもそとズボンを身に着ける。さよなら、紐フンパンツ。

コウベンさん、俺のほうを見る。

「で、やっちまったのか?」

「ああ、ついに成功した! 召喚した!」

「笑顔ってことは、たちの悪いもんじゃなかったってことだな。」

「ああ、これなら役に立つかも知れん!」

「その前に、言うことがあるだろうがよ…」

ちらりと少年エルフを見る。

「あ、ああ。すまないベータ、心配かけた。ごめん。」

「先生… 」

美しい師弟愛。

「すまなんだー!」

抱きつく。ノーブラ! 元からブラは無いのかも知れんが、この世界。

押し付ける、埋める、こすりあげる。

真っ赤になってもがく少年エルフ。

「わかりました! わかりましたからー」

鋭敏化した俺の知覚は、一瞬、エルフ先生の顔に浮かんだ邪悪な笑みを見逃さない。

怒られそうだから、逆セクハラでごまかしやがったぞ、この先生! 狡猾!

「しかし、どうしてわかった? 実験してるって。」

「気付いたのはコウベンさんですよ。今朝、工房へ行って、三日休みをとるって話をしたら…」

「おまえさんが、ここまで準備した実験の前に休みを入れるとか、ありえんだろ。」

「まあ、そうだな。」

「長い付き合いだ。」


エルフ先生満面の笑み!

「紹介しよう、神代かみよの守護魔道機体!!」

え、そんなたいそうな二つ名付いてんの? 俺。

「の中の人、アイザックだ!」

「初めまして、アイザックと申します。」

もういいや、アイザックで。ロボにはふさわしい名前だしな。

明らかに戸惑っている二人。

「い、意外と普通だな…」

「そいじゃ、おやっさん、拘束具を外してくれないか?」

「本当に大丈夫なのか? 自由になったとたん暴れたり…」

「心配ない、外そうと思えば自分で外せるんだ、彼は。」

コウベンさんにむかって自由になっている右手を動かして見せる。

「そ、そんな馬鹿な! 外した? あれを?」

慌てて、拘束台に駆け寄る。

暴れるのを心配していたはずだが、すっかり忘れてるのか?

「こりゃあ、外したんじゃない、引きちぎったんだ!!」

「反動も、テコの原理も使えないように工夫してあったんだぞ?」

「ちょっと見せてくれ。」

右手をつかむと覗き込んだ。

「傷一つ付いてない、厚さ1センチの鉄板を引きちぎったのに!」

え、そんな怪力なのか!? 俺? そして頑丈。

「あんたに聞くのもなんだが… ほんとに大丈夫なんだろうな? 正直怖いぞ。」

俺も怖い、作動中の油圧プレス機の隣でサンドイッチ食ってるような気分だろうな。

「損害を与えないよう注意を払います。」

コウベンさん…おやっさん、だな。

それでも、拘束台の留め具を外しにかかる。

台座は鉄製。

両端に穴をあけた鉄板をU字形に曲げた留め具。

それを手首、足首にかぶせるように取り付け、鉄の棒を通して固定。

抜けないように止めピンが挿してある。厳重だ。

たがねの様な鉄棒とハンマーで軽く叩いて外していく。

手際がいい。

「よし、これで全部だ。」

「ありがとうございます。」

おやっさん、びっくりしたような顔してる。

「ありがとう、か。こりゃあいいや。」

「立てるかね?」

エルフ先生が興味津々で聞いてくる。

「その前に、私の重さはお判りでしょうか?」

この身体が鉄の塊だったらすごい重さだ。トン?

「慎重だな、いいことだ。」

おやっさんが、うなずく。

「心配いらん、鎧騎士一人分くらいだ。馬にも乗れる。」

「正直、軽すぎる。理屈がわからんのだがな。」

安心した、ダイエットはしなくて済みそうだ。

「では、立ちます。」

ゆっくり立ち上がる。

アニメだったら目が光るところ、走る稲妻、砕ける波濤!

オープニングテーマ(インスト)

「おお、額のところに光が走ってるぞ!」

「なんだか、かっこいいですね!」

「どういう機能なんだ?」

すいません、たぶん意味はありません。俺の願望が出ているのかと…


ゆっくりと足を踏み出す、一歩前へ。手をにぎにぎする。違和感はない。

「力は制御できとるのか?」

「ちょっと…わかりませんね。」

周囲を見回す。今度はちゃんと首を回して。

「何か、柔らかいものがあれば、持てるかどうかを…試して…」

3人も部屋の中を見回す。

「柔らかいもの…」

エルフ先生がそれを両手で下から持ち上げて、言った。

「揉む?」

揉みたい! 凄く! だが、断る! 制御不能で握りつぶすとかダメ、絶対!

「もっと安全なものが…」

危険、先生のおっぱいは凶器。理性崩壊寸前。

心で血の涙を流しながら断る!

検証後に揉ませてもらえないかな?

もう一度そういう機会があるだろうか?


「紙を折ってみたらどうでしょうか?」

少年エルフが机から紙を持ってきた。わら半紙風。

21世紀生まれはわら半紙なんて知らないよな。

あれ、平成生まれでも知らない?

折ってみる。とりあえず三角折、意外と滑らない。指に何か表面処理が?

ちゃんと感触がある。どういう原理?

あ、爪がある。地肌と同色、モールド? 擬人化? 

爪があると便利、っていうか無いと作業できないよね。

辺をそろえて、正方形に切り出し…カッターとか無いかな? あった!

爪が持ち上がって、すき間から刃が出てきた。ええー!?

机のあたりに置いてないかな? ってつもりだったんだけど。

シュッと切ってもう一回三角折り、調子に乗って折る、折る。

はい、折り鶴完成。

「制御できているようです。」

振り向くと三人がええーって顔してる。

「え? 何それ? どゆこと??」

「ええー? どうなっているんですか?」

「紙を折ってそんな細工を? そんな方法が?」

思ってた反応と違う。

大丈夫そうだ、意外と器用だな、とか。

そんな細かい作業もできるんだ、的な反応を予想してたんだが。

Origami! ファンタスティック!!な反応になってる。

「キミの知識にもがぜん興味が出てきたな。」


「さて、一段落したところでちゃんと紹介してくれんかな。」

と、おやっさん。

「あ、ああ、そうだな。整列!」

三人が横並び。先生が気を付け姿勢で胸を張る。

胸そらすとシャツに浮かび上がるポッチがすごく気になるんですけど…

「こちらがドワーフ工房の工房長、コウベン技師。」

「コウベンだ、よろしく。」

おやっさん。

「私の助手、ベータ」

「見習い魔道士のベータです、よろしく。」

少年エルフ。

「改めまして、アイザックと申します。よろしくお願いします。」

頭を下げる。三人は戸惑っているようだ。お辞儀の習慣はないのかな?

さて、

「ん? あれ、わたし? 」

注目されているのにやっと気づいたエルフ先生。

「まだ名乗ってなかったっけ?」

腰に手を当て、胸を張って、自分ではかっこいいと思っている妙なポーズ。

「おほん、わたしはエルディー。さすらいの大魔導師だ。」





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