治療を手伝うよ
先生を救護院に送り届ける。
さすが先生、着陸直後はふらふらしてたが、けが人を見るとシャキッと。
すぐに治療に取り掛かった。
飛行機体は、すぐ飛び立って偵察続行。
地上機体の俺が、デイヴィーさんを抱っこで到着。
ちょっと、めまいがする感じ。
二体同時にコントロールするのは忙しすぎる。
パソコンで五つも六つもウィンドウ開いてるうちに、自分がどのウインドウで作業してたのかわかんなくなるあの感じ。
外部接続機体の使い方は、も少し馴れが必要だ。
雀竜たちはすべて落とされるか、逃げるかしたようだ。
飛行機体には工房で待機してもらおう。通信だけに従事。
『自動モードで工房に着陸、待機します』
サンキュー、ナビ君。
意識が一つに統一。
おう? 今まで意識していなかった感覚が戻ってきた!
つまり、デイヴィーさんのお尻の感触と匂い。
柔らかい、暖かい、いい匂い。
やっぱ、同時コントロールはリソース食ってるんだなー、と実感。
でも、ちょうど到着。デイヴィーさんを降ろす。さびしい。
「アイザックさん、すいません。」
いえいえ、どういたしまして。
「ちょっと、ミニイを見ててもらえます?」
「わかりました。」
うはは、最初の怯えられた時に比べて、子守を任せてもらえるまでに出世!
これはもう、混浴も夢じゃないな。うん。
ミニイたん、抱っこしますか?
え、いや? 歩く?
救護院の前庭には順番待ちの怪我人やら、治療が済んで休んでる人とかが。
けっこうな人数。
てくてくと歩くミニイたんの後をついて歩く。
俺一人だと、怯えるとかビクッとされるとかあるんだけど、ミニイたんが一緒だと安心されてるみたい。
エルフ幼女さまさまですよ。
お、マビキラ。治療終わったみたいだな。大きなケガはなさそう。
キララちゃんも落ち着いている。
え、ミニイたんそっち行くの? 危ないですよ。そいつら。
「けがしたの?いたい?」
湿布的なものを顔に貼ったマビカちゃんに声かけるミニイたん。
ほっこりしかけて、後ろの俺に気づいてビクリ! ホッコリビクリ!
「心配してくれてありが…あう、あう! 魔道機! いや、ちびちゃんに言ったんじゃなくいやボクはだいじょぶ!」
一つずつ、一つずつ対応しような、マビ公。
「貴様か、どうやら先ほどのこと、礼を言わねばならんようだな。」
調子戻ったな、黒い…キラすけ。
ミニイたんに紹介しよう。
「こちら、マビカさん、最近、王都から来た魔道士の方です。」
「そして、こちらが、闇の女帝たる漆黒の魔道士【黒き宝玉】さんです。」
わはは、憶えてた。そして、真っ赤になるキラすけ。
さすがに、小っちゃな子にこの紹介されるのは恥ずかしいらしい。
「キララ! キララでいい!」
「あたしみにいよろしく」
「おーい、アイザック。」
エルディー先生が出てきたぞ。
「どーし」
「おお、ミニイ」
かがんでミニイたんとハイタッチ。
どうしたんです? 診察は?
「あぶれた。」
「いや、王都から来たっていう若いの…ディスカムとか言う奴。」
痛魔道士1号の少年か。
「治癒魔法もなかなかの腕前でな、女の患者がみんなそっちに…」
イケメン効果か、そういうもんだ、世の中。
小児科もイケメン医師の方が混み合う。
医者を選ぶのは、子供じゃなくお母さんだから。
「男はみんなデイヴィーの方に…」
やっぱり若い女がいいのか、とかぶつぶつ言う先生。
あれ、先生だって美人ですけど? 何でそんなに差が?
「来ないならこっちから行くことにした。」
手近な所にいた犬系獣人の戦士に声をかける。
「どうした? 肩か?」
ビクッとする戦士。
「ど、導師! いえ、何でもありません!」
「何言ってる、落とされたか? 脱臼だな。」
「アイザック、抑えろ。整復する。」
は、はい。
「いや、俺はイーディ先生にー」
「入れるぞー、そりゃ!」
ごきゅん! いやな感触。外れていた肩関節がもどった。
「ぎゃあああー!」
涙目! 屈強な獣人戦士が涙目!
「はまったな。後は腱と炎症に治癒魔法を…」
マビキラに目を向ける。
「お前ら、ディスカムの連れだな。魔道士だろ? こっちへ来い!」
おずおずと近づくマビキラ。
「ボク、治癒魔法使えない…」
「我も…」
「使えないなら余計だ。見るのも修行だぞ。」
「人が使っているのを見るんだ。魔力の流れを感じながら…」
戦士の肩に治癒魔法陣を展開しながら説明。
ミニイたんもじっと見つめている。
「おかさんとおなじ」
「わかるか? そうだ。きっといい魔道士になるぞ、ミニイ。」
「次はお前だな。」
ドワーフの戦士、うろたえる!
「いえ、治った! 治りました!」
「うそつけ! 傷か? 爪でやられたな。」
「けっこう深い。水で洗ってからの方がいいんだが…」
周りを見回すが、ここは前庭。診察室とは違う。
あ、そうだ。
「こちらのマビカさんが水を出せますよ。」
「え、」
マビ公、突然の振りに緊張。
「ほう? 習得魔法か、固有魔法か?」
「こ、固有…」
「そりゃあいい、ここに水を噴きつけろ。」
「は、はい。水精竜」
ぱん!と合わせた手のひらから、ちょろちょろ水が出る。
「もっと、強く! 洗い流すんだ!」
「は、はい!」
プシャー!
「痛い痛い痛い!!」
悲鳴を上げるドワーフ戦士! そりゃそうだ。傷口に強力水流!
ためらうマビ公にニッコリ笑顔の先生。
「かまわん、やれ。」
「うぎゃあああーーー」
「固有魔法で得られる水は、純粋で清潔だからな、こういう時には最適だ。」
固有魔法。
先生の寝酒に付き合いながらレクチャーを受けた。
魔法には魔法陣を習得するものの他に、生まれながらに持っている固有のものがある。
その才能のあるものはそう多くない。
習得魔法より早く、教育を受ける前の幼少時から使えるようになることが多い。
強さは人それぞれ。今までにはない、まったく新しい魔法が現われることもある。
洗った傷に治癒魔法、見る見る肉芽が盛り上がり、ふさがっていく。
「今、使っているのは、患者の治癒能力を加速するもの。」
「一番、簡単で確実だが、患者自身の体力を使うから、衰弱した患者には使えん。」
「傷は治りました、患者は死にました、では話にならんからな。」
で、ドワーフ戦士は放心状態。
「よし、次だ。」
前庭の患者たちに緊張が走る。
「折れたウロコが刺さった? どれ、太い血管には当たってないな。よし、抜け、アイザック!」
ずるっ!
「あぎゃあーーー」
「洗え! マビカ!」
プシャー!
「いたああーーいいーー!」
「骨が折れて、ずれてる。このままだと曲がってくっつくな。引っ張れ、アイザック!」
ぐいっ!
「ぐわああああー!」
「切れたか? 血止め魔法でくっつけた? このままだと後から引き攣れるぞ。いっぺん開こう。」
ぱかあ! どくどく。
「痛てえよおー! 血があああー」
先生の診察、人気がないわけがわかりました。
女性としての魅力とは関係ないこともわかりました。
よかったね、先生。




