表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

197/371

許されざる者は許さないよ


ムシ(カナちゃん)にたかられて、弱っている凶暴小動物カワイイ。

いや、ルミごんを愛でている場合じゃないな。

『どうです? 私の声が聞こえますか?』

本体からは発声せず、カナちゃんイヤホンに音声を送る。

「おお?」

びっくりしてんな、ルミごん。

目的は軍用獣機ゴリアテの無力化。

理想を言えば、操縦器を奪って機体ごとレガシに持ち帰る。

関所の柵は両脇へ伸びているが、ゴリアテはどっちに居るのか?

あ、そうだ。電波センサーオン。

ゴリアテの操縦器は2.4GHzの電波を使ってる。

それを感知すれば…はっけーん敵の電波。

よし、そっちへカナちゃんズ出撃。

ルミごん担当以外の7体のうち4体をゴリアテに。

残り3体を関所へ向かわせる。


と? 大街道の向こう側から馬車が近づいて来たぞ。

2台の馬車、箱馬車と荷馬車?

護衛と思われる数人の男たちが馬で付き添う一団。

カナちゃんを接近させて様子を窺う。

馬車を王軍の鎧を着た兵士が関所に誘導している。

ドローン経由で映像と音声が送られてくる。


「この関所こんなんだったけ?」

馬車の御者はイヌ科獣人。

両脇に伸びる柵に戸惑っているもよう。

「行商人です。」

「どこから来て、どこへ行くんだ? 手形は有るか?」

兵士はクリプス騎士の部下に比べると横柄だ。

まあ、こっちが普通か。

「手形は、これが。」

「ほう、カロツェ家の手形か。」

「湾岸市から町や村に寄って故郷に帰るところです。」

「湾岸市発行の手形もありますよ。」

手形を確認する兵士。

「一通り荷物と人員を確認させてもらう。」

王軍関所の本来の取り締まりは、人身売買や誘拐に対するもの。

後に獣機に対する警戒が追加されたのだと言う。

「故郷へ帰るのか、どこだ?」

「ロスト地方の端で、レガシって町ですが…知ってます?」

え? レガシの人? この人たち。

あ、ちょっとまずいかな。

「レガシだと!」

案の定、兵士の後方から声がかかった。

王軍兵士とは違う神官ぽい、ゾロっとしたローブを来た男が進み出た。

「全員降りろ! こいつら反逆者の一味かもしれん!」

戸惑っている王軍兵士を無視してローブの男が進み出た。

こいつ、格好からして過激至上主義者の一味。

獣機使いと呼ばれていた奴らだ。

レガシと聞いて逆上している。八つ当たり。

「ええ? 反逆者って?」

王軍兵士も行商人もわけがわからないって顔。

もちろんそんなわけない。反逆者はむしろこいつら。

見捨てられた感じの関所には十分な情報が届いていないらしい。

獣機使いたちに丸め込まれてるのかも。

行商人のほうも長く各地を回っていたらしい。

今、レガシがあんなことになってるとは思わないよなあ。

だが、問題は獣機使いが肩から下げている長方体のケース。

ケースガンだ。

パルスビームを連射できる光線銃。

モアブ伯の親衛隊でさえ装備していなかったのに。

そして、耳に手を当てるような仕草で話をしている。

インカムを装備しているな。

いかん、すぐにゴリアテがもどって来る。

先に操縦者を特定して穏便に済ますつもりだったが、そうも言ってられない。


「ルミナさん、ここにいてください。」

レガシの住人と聞いては静観はできない。

被害が出る前に片付ける。

突進! ブーストをかけて一気にジャンプ。

獣機使いと馬車の間に着地する。

「な、なんだ!?」

「ええ? どこから…」

「こ、こいつは! 神代魔道機!!」

俺のこと知ってるのか、コイツ。

「くそ! くたばれ!!」

いきなりケースガンをぶっ放してきた。

いやいや、周りに王軍兵士もいるじゃんか。

あぶねえ!

「コーナーキューブミラー!」

鏡魔法発動!

三枚の鏡を直角に組み合わせた対光線防御。

モアブ伯が使ってたのをパクった。

入射した方向へ光を跳ね返す。再帰性反射。

自分の放ったパルスビームで穴だらけになる獣機使い。

倒れたヤツに近づいて、ビームガンを回収しようと思ったけど…

あー、穴だらけ。こりゃもう使えないわ。

見回したところ他に獣機使いの一味はいない。

混乱する王軍兵士だが、反射的に俺に切り掛かってきた。

はて、どうしたもんか?

あんまケガさせたくないし。

とりあえず棒立ちで攻撃を受ける。

剣じゃ俺を傷つけることはできないからね。

5、6人掛りで一生懸命ぶん殴る兵士たち。

ガンゴンガツンガキンガキン、うるさいわ!

行商人一行に声をかける。

「レガシの方ですね。私はエルディー導師の魔道機です。」

「ここはあぶないのでしばらく下がっていてください。」

とんでもない事態でも先生の名前を出せばだいたい納得。

主に、危険だなこりゃ方面で。

この辺、レガシの人の共通認識。


だが、いつまでも兵士の相手はしてられない。

ゴリアテが戻って来てしまう。

そこへ飛び込んで来たのが、ルミごん!

兵士の一人に背後から蹴りを入れる。

膝の裏側、ヒザカックンキック。

がくり、と崩れた兵士の後頭部に頭突き! ええ?

後頭部は危険だよ。

昏倒した兵から剣を奪う。

「ええ? な、なんだこの娘?」

驚いている間に流れるような動きで剣を叩き落としていく。

体格差もリーチの差も問題としない。

つ、強ええ! 圧倒的!!

呆然、王軍兵士。あ、俺もね。

「おい! 膝をつけ。」

俺に声をかける。え?

片膝をつくとひょひょいと膝から肩へ駆けあがる。

飼い主を踏み台としか思っていない飼い猫的動き。

「がううっ! 静まれ!!」

大音声!

「大剣豪プロフィルの孫にしてバッソ侯爵家三女、トリルミナ・バッソである!」

「お、おおう?」

呆然としていた兵士たちが思わず片膝をついて畏まる。

凄いぞ、凶暴令嬢。

「王都における反乱は鎮圧された。」

「首謀者バンカー・モアブは死亡! モアブ家はニュース王子の管理下に入った。」

「ヴァイオ陛下は過激至上主義者メギドス団を反逆者に指定。糾弾しておられる。」

「コイツらのことだ!!」

倒れているローブの男を指さす。

「コイツらに味方するなら、オマエらも同罪だぞ!! うががっ!」

え? そうなの? いかんわ、俺。

王国の事情とか、けっこう他人事。さっぱり気にしてなかったわ。

てか、王様の名前も初めて聞いた。二回も宴会でご一緒したのに。

「し、知らなかったのです!!」

「我々は、コイツらに騙されていたのです!」

「そ、そうです、コイツらに脅迫されて!」

「あんな魔道機持ってこられたら、逆らえないし!」

必死に弁明。

実のところ、凶暴だし、キラすけの姉上だしで、あんま期待してなかったルミごん。

意外にもちゃんと侯爵令嬢している。

関所の王軍兵士を掌握しちゃったぞ。

「うわーっ、なんだありゃあ!?」

後方へ下がっていた行商人一行が驚きの声を上げる。

あ、やべ。そっちはゴリアテがいる方だ。

そして柵に沿って移動、姿を現す軍用獣機ゴリアテ。

体高3メートルを超える巨大類人猿型獣機。

初めて見る人は驚愕するよね。

ありゃ、肩口に人が乗ってるぞ。

コイツらの制服?らしいローブ。

メギドス団とか言うのか?

いいね、悪の秘密結社っぽい雰囲気ある名前。

肩に乗ってる?

いや、ゴリアテは馬獣機と違って乗用じゃないぞ。

あんな揺れる場所に平然と立っているとは!

それに、そいつが操縦してるようには見えない。

操縦者は? ゴリアテが手のひらを上にして乗せてる。

首からストラップで下げた操縦器を両手で操作。

通常の操縦器じゃないな? 

複数機体を統合操作できるプロ仕様のやつだな。

もっとも一機しかいないし、鉄蜘蛛も無いからあまり利点は無いけどね。


目視した途端にルミごんが魔力の矢、マジックアローをぶっ放した。

先手必勝が凶暴令嬢のスタイル。

も少し人の話聞こうよ。

だが、被甲身バンパーが発生。

アローを弾き返した。

まだかなり距離があったのに、届くのか、ルミごん。

そして、魔法攻撃を予想していた?

この被甲身、遅延発動詠唱魔法か?

…そう言えばデ○ルアローは超音波だけど…あれ、どのへんがアロー?

ふと浮かんだ疑問はマルチタスクで処理しててね、ヘルプ君。

『デ〇ルチョップはパンチ力ですよ』

ああ、ま、そうだよね。それに比べりゃ大した問題じゃないか。

ま、考えても仕方ないんですが。

だが、こいつ、只者ではない。かなりの魔道士と見た。

魔導師マスタークラスか?

ゴリアテが急制動、スピードを緩める。

さっと手を下ろし、操縦者が地面に降りる。

と、同時に肩の魔導師が飛び降りた。

この高さから? 着地寸前の送風魔法。ふわりと着地。

操縦者に保護バンパーを展開しつつ、マジックアローで反撃。

「くっ!!」

ルミごんを牽制。こっちは周りの兵士にもバンパーを展開。

再びゴリアテが加速、突進してくる。

魔導師もだが操縦者のテクニックも一流だな。

しかも連携が取れている。

さすが、レガシの戦場を逃れて来ただけのことはある。


行商人や一般兵を巻き込むわけにはいかない。

「ルミナさん、下がってください。ここからは私が!」

前面に出る。オーバードライブ!!

派手にパワーファイヤを吹き出して注意を引きつける。

「神代魔道機! くそ! こんなところまで追ってきたのか?」

敵魔導師のつぶやく声。あれ? こいつ、女か?

レガシ遠征軍は野郎ばっかりだったよね?

というか、獣機使いは中二っぽいローブ着てたから体型わかんないし。

まあ、生き残ってる時点でかなり後方に居たってことなんだろう。

野郎の中に女一人。オタサーの姫的な?

いや、魔導師クラスだとすればけっこう偉い?

「やぁっておしまい!!」(小原乃梨子の声で)な感じ?

動きづらいローブを脱ぎ捨てた。

下は…うん普通。

普通のシャツに普通のズボン。

…そこは悪の女幹部的なエロ衣装であって欲しかった。

ハイレグとか谷間パイとか半チチこぼれそうとかそんなヤツ。

がっかりだよ! お前には失望した!!

許さねえ! レガシに攻め込んだお前らは許さねえぞ!


てなことを加速思考しているうちに、操縦者は俺をロックオン。

ゴリアテは自動戦闘モードに移行した。

メカ戦だー!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ