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のんびりと王都へ行くよ


「王都へ行くぞ。」

なにやら手紙を読んでいたエルディー先生が宣言。

飛行ユニットことスカイエクソンは、タモン兄貴やイオニアさんの送り迎えでけっこう王都まで往復してる。

まあ、動かしてるのは俺の分割思考なんで結局オレなんですけど。

この手紙もスカイエクソンが運んできたもの。

「オレばっかり働いてません?」

とはヤツの弁。

あれ? なんか分割思考の独立具合が進んでね?

まあ、王都との連絡を担えるのは今のところスカイエクソンだけ。

ジョーイ君やミネルヴァ、ヘルプ君が進めている獣機、神代魔道機ネットと大街道ネットの接続はもう少し時間がかかるって言うからね。

…なんかあいつら最近好き勝手やってるな?


ところで先生自身は攻略戦以降、王都へは出かけていない。

うっかり顔を出すと仕事を押し付けられそうだ、というのが理由。

その先生がなぜ?

「ベガが王都に戻ってくるらしい。」

バッソ侯ベガ。

七英雄初代バッソ伯プロフィルと夢魔女王メガドーラさんの子でキラすけのお父さん。

王都から一番遠い湾岸都市の統治を任されて単身赴任中。

夢魔族の血を引いているからアラウンド200歳なのに青年にしか見えない美形侯爵だ。

「この騒ぎで同盟都市の統治者が会合することになったらしい。」

はて? それで、政治とかに絡むのを嫌ってるはずの先生がなぜ王都に?

「アンチエイジング魔法をかけてやるって、クオリアに約束したからな。」

ああ、そんなこと言ってた。

クオリアさん、バッソ侯の正妻。

自治権を持つ公爵や侯爵の正妻と嫡男は王都に証人(人質)として在住しなければいけないのが規則。

人間至上主義者が勢力を拡大したせいでバッソ侯は王都に戻りにくくなった。

そのせいで、もう何年もダンナと会ってないという。

当人は人間なので夢魔族のベガさんとの外見年齢の差に悩んでた。

苦労人魔導師エルディー先生は美容魔法で生計を立てていたこともあると言う。

なんかすごい若返り法みたいなのがあるらしい。


「どうやって行きます?」

飛行ユニットで行く? ゴンドラに吊り下げて?

それともベータ君に頼む? 引き寄せ魔法?

人間を引き寄せると引き寄せられた人に魔力酔いが起こる。

それを防ぐためにはキラすけの闇魔法シールドが必要。

まあ、色々調査した結果、元々魔力が強くて扱いに慣れている魔導師マスタークラスだと影響が少ないことがわかって来たけどね。

ちなみに「色々」の実験に使われたのはハイバンド小太り道士、と女騎士。

「私の用事だからなあ…ベータに頼むのは違うような気がするな。」

「それに、イーディがうるさい、きっと。」

そのへん、おやっさんにも相談がてら工房の食堂へご飯食べに行くことになった。


「飛行ユニットは最大どのくらいの荷物が運べるんだ?」

食事しながらおやっさんが聞いてくる。

うーん、どうなんだろ? 拡張機体に収納された後パワーアップしてるみたいだし。

ジェ〇トスクラ〇ダーも途中でパワーアップしたよね?

「空力被甲身(バンパー)があれば空気抵抗は関係ないんじゃろ?」

夢魔女王メガドーラさんもご飯食べに来てた。

あとからやって来た組合長も同席。

メガドーラさんとは離れて座った。

「ベータのアレに使ったコンテナを吊り下げ式に改造してみるか…」

おやっさん腕組みで考えを巡らせている。

ベータ君の引き寄せ魔法用に作ったコンテナ。

王都攻略戦では大活躍だったもんな。

ベータ君の固有魔法はなるべく秘密にしたい。

あのサイズなら人も荷物もいけるし、飛行ユニットで運べれば、確かに便利。

「まあ、補強と金具付けで…二日ってとこか。」

「その後、テストして見て…だな。」


出不精なエルディー先生がなんで王都に?っておやっさんの疑問に事情を説明していると。

「ちょちょちょ! アンチエイジング魔法っとか聞こえたっし?」

い、いつの間に? おしゃべりガングロダークエルフ、デイシーシー!

「相変わらず、神出鬼没ですね、シーシーさん。」

「いやいや、ちょっと聞き逃せないっし。」

そう言えば、服飾工房勤めで資金をためて洋品店兼美容院みたいな店を持ちたいとか言ってたな、コイツ。

「そんなすごい魔法があるっし?」

「いや、そんなにすごくはない。」

「少なくとも魔導師マスタークラスのやつならだれでもやっとるだろう。」

「えええーーーっし!?」

「ある程度魔力の強い魔導師なら体内の魔力の流れをコントロールして、細胞の老化をキャンセルする。」

「治癒魔法みたいなもんかっし?」

「どっちかって言うと回復魔法に近いかな…」

「魔力量だけじゃなく、人体や魔法原理に関する知識が必要だから、最低でも魔道士の勉強は必要だが。」

「重要なのは自分自身の思考・肉体・魔力を認識することだな。」

「コツを掴めば呼吸法みたいなもんで無意識化で常時発動になる。」

「ええ? じゃあ、導師も?」

「いや、ま、それなりにな。」

「ううーん…勉強……っし。」

黙り込んだ、デイシーシー。


しかし、老化をキャンセルって、すごい。

美容とかアンチエイジングってレベルじゃないですがね。

ほとんど不老不死法じゃねえか!

そんなに簡単に扱っていいものなんですかね?

「ほええー、じゃ、魔導師マスタークラスだと千年くらい生きるっし?」

「いや? どうなんだろな? そんなに昔のやつ居るのかな?」

「どうなんだ? メガドーラ?」

長生きっぽい夢魔女王に話を振った。

「はて? 儂も途中から数えておらんしの…」

「いいかげんなやつだな。」

そういう先生はお幾つなんですか? と言う質問は今回も飲み込む。

この世界で元々、桁外れに長命なのが夢魔族とかヴァンパイア。

半分霊的な存在なので老化って事がないそうだ。


あれ? ここでちょっと心配になってきた。

創作物でよく見られるのが、長い人生に退屈した不死者が刺激を求めて厄介ごとを引き起こすってパターン。

大丈夫なんですかね? 組合長とかメガドーラさんとか?

「退屈…のぉ…、いや、まあ、そーゆーのは…」

話を振られた夢魔女王がうつむき加減で首を振る。

苦笑いするエルディー先生。

「そもそも、人間やエルフの魔道士がなんで不死法を使うかって話だが…」

「研究職の魔道士は、この道に入るとまず絶望する。」

「ええ!?」

「なんで研究職を選ぶかっていえば、そりゃ好奇心だよな。」

「ところが世界は果てしなく広いし、真理って奴は限りなく深い。」

「たった数百年かそこらの人生で極めることなど不可能だ。」

この世界の人間(実はヒト系獣人)の寿命は元々長い。

2百年くらいはいけるらしい。

エルフの寿命はさらに数倍だと言う。

それでも足りないってか。

「そこで昔の誰かが考え出したのが不死法だ。」

「とりあえず長生きしとけば研究する時間が稼げるってわけだ。」

「不死法は手段であって目的じゃないからな。」

「その理屈で言えば退屈なんかしてる場合じゃない。」

「研究って奴はなんかひとつ解明するとその十倍の謎が出てくるし。」

「お前の起動実験だけで何年かかったと思ってるんだ。」

「退屈してるヒマはなかったなあ。それに…」

ふっと遠い目をする先生。

「研究には金がかかる。」

「金を稼ぐ時間も必要だ!!」

ああ、うん。貧乏ヒマなし。

「ご飯も食べなきゃいかんしの。」

横から夢魔女王。しみじみとつぶやく。

不死者、せつない。退屈はセレブの特権。

憧れるのは不労所得、不老だけに。

好きな言葉「一攫千金」

将来の夢「左団扇」

言ってみたいセリフ「金に糸目はつけないぜ」


「組合長はどうなんです? 」

ヴァンパイアの組合長。この中では一番の長生きだという。

そして、けっこうセレブ。

レガシの土地はほとんど組合長の持ち物だし、宿屋も救護院も経営してるし。

200年前の魔王騒動以前も資産家だったらしい。

一度は聞いてみたい、「金がうなってる」音。

「ううーん、例の一件以前はけっこうヒマしてたかな。」

「趣味で遺跡めぐりとかしてたぐらいだから…」

そして大迷宮を発見。魔王化。

「レガシの町を立ち上げてからは退屈とは縁が無いね。」

にっこり笑う。

苦労人(行き倒れ経験あり)エルディー先生やメガドーラ流離さすらい夢魔女王とは余裕が違う。


「あれ? エアボウド導師はどうなんです?」

けっこうおジイちゃんしてるよね、あの人。

「アイツはなー、200年前からジジイしてたよな。」

「なんか立場的に年長者であるのが重要なんだとか言ってた。」

マジか!? 見かけ通りじゃないのか?

そう言えば、王立学園の学長とかやってたし。

王都の発展時は政治にも関わってたみたいだから、貫禄や威厳は必要か。

「見かけがジジイだど、ご婦人が優しくしてくれるとか、女学生のガードが甘くなるとかとも言っておったの。」

エロじじい! さすがは生臭大賢者。

尊敬する!



さて、コンテナの改造をおやっさんにお任せした。

俺は先生のお出かけ準備。

同行者はどうします?

「イオニアは、向こうに居るし…メガドーラ、キララはどうする?」

全力で首を振るメガドーラさん。

嫁の実家とか苦手か?

キラすけも同行拒否、父上が王都に来てからにするとのこと。

レガシでダラダラするのに慣れて堅苦しい貴族生活には戻れないらしい。

いや、それでいいんですかね? 心配。


実はイオニアお嬢様、ここしばらくは王都暮らし。

全焼したお屋敷は再建にもう少しかかる。

ご実家の母上とか心配させたくないと。

先生の家もアイザクソンにやられて再建中だし。

避難先にしてる北遺跡は夢魔女王とルームシェアだから教育に悪そう。

王都では正式に王族入りして欲しいと要請されているらしいが、渋っているそうだ。


「すると、ワタシとお前だけか? コンテナでなくてもよかったかな。」

え? 俺もですか? タマちゃんとかでなく?

「ま、けっこう荷物があるしな。」

荷物持ちかよ。

「施術も手伝ってもらうぞ。」

なんか、悪い顔してますよ、先生。

「助手ならベータさんは?」

「……いや、ベータは…ダメだな。」

え? 何で?

「…ま、その……教育に悪い…かな…」

は?


改造と補強の済んだコンテナに荷物を積み込む。

テスト飛行は成功、パワーアップしたスカイエクソンは余裕。

まあ、コンテナは木造なのでそんなに重くないしね。

「窓が欲しいなあ。」

勝手なこと言う先生。

ま、今後の課題ってことで。

なにやら液体の入った瓶をカバンいっぱいに詰め込んである。

「施術に使うポーションだ。」

「……ポーションというよりローションかな。」

は?


さて、直前で予定外の同行者が増えた。

ネコミミメイド2号、スカジィちゃん。

お屋敷再建工事を監督中の支店長ビクターさんからお使いを頼まれた。

インテリア用品とかレガシでは手に入らないものをカロツェ家から取り寄せる。

大街道・西街道経由で到着するのを待ってたら2週間以上先になるからね。

コンテナが使えると言うので、便乗。

……本家のお屋敷へお使いに出すならサジーさんの方が良かったんじゃ?

サジーさんはこっちでの仕事がある?

外すんなら大外れの方が笑って許してもらえる?

「なんか、失礼なこと言われてるかニャ?」

いえいえ、そんなことありませんよ。


そしてもう一人。女騎士クラリオ。

なんで?

「護衛です。」

困惑顔の先生。

悪びれない厚顔女騎士。

「買い出しもあるのでスカジィさんの護衛と案内役と言うことで。」

「アルバイト代が出るのか?」

「え、あ、ままま、まあ少し。」

王都に居るタモン兄貴に会いたいだけだろ、お前。

ダット姐さんに言いつけるぞ。

まあ、スカジィちゃんが行けばイオニアさんも喜ぶだろう。

タモン兄貴はお前が行っても喜ばないぞ、女騎士!


飛行ユニットスカイエクソンがコンテナを吊り下げ上昇。

翼端に収納した魔法石護符で空力バリヤーを発生させる。

パワーファイヤ噴射で加速。

半日程度で王都に到着予定。

今回は偵察ドローンタマちゃんトンちゃん、鳥メカミネルヴァも留守番。

王都には小型ドローンカナちゃんズの一部隊が常駐しているので不便はないだろう。


出発! 王都へGo!







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