最終回
更新再開しましたが、この回は残しておきます。
仮面ラ〇ダー龍〇劇場版先行最終回的なアレで。
今、俺達がいるのは元モアブ伯爵領。
通称【荒野】
人どころか野獣や魔獣もおらず、植物もボソボソとしか生えない不毛の地。
鉱物資源とかも今のところ見つかっていない。
ここは「獣機保管庫サイト2」
正式には「軍用獣機処分計画一時保管仮置き場」
バンカー・モアブの部下だったという翻訳能力者。
彼がその一員だったという狂信的人間至上主義者集団。
彼らがここを発見したことが今回の騒動の発端だったわけだが…
もしかして彼らは自分たちが【人間】によって造られた【ヒト獣人】であることを知っていたのかも。
知ったけど、認めたくなくて暴走したのかも知れないな。
なんやかんやを片付けて、やっと時間ができた俺たち。
かねてから懸案のサイト2を調査するために遠征して来たってわけ。
そのメンバーは…
まず俺、助手としてミネルヴァヘッドバード。
エルディー先生、助手のベータ君。
おやっさん、助手のタンケイちゃん。
エアボウド生臭賢者、小太り魔道士ハイバンド。
魔道機オタクニュース王子殿下、護衛の女官さん。
王都、レガシ合同調査団だ。
移動手段はアイザクソン。
魔力の出力を絞った…と言うか拡張機体の出力はカット。
逆に俺本体から供給する魔力で動かしてる。
でっかい魔王鎧と言う扱い。
やっと動く…くらいのパワーだけど、まあ、十分だよね。
重力魔法を併用でのんびり飛行。
引き寄せ魔法用コンテナを改造拡張した旅客コンテナ。
通称「ネコバス」を両手にぶら下げてここまで飛んできた。
内装の座席とかカーテンとかをダット姐さんが担当したので、ファンシーでカワイイ感じになった。
……ちょっと気になったのはバス内部に設置されたトイレ。
下へ素通しですよね? 昭和の列車と同じタイプ。
いわゆる開放式、垂れ流し式とも言う。
当時の国鉄線路管理部門、いわゆる保線区。
その職員は線路のことを「黄金メッキ」されてる、と称した。
なるべく街の上空は飛ばないようにしよう。
そして、調査団以外にも同行者がいる。
作業要員としてケルベロ2号ベルちゃんと工兵機数体。
ベルちゃんのヘッドアームは修理して2本にもどした。
戦闘時も有用だったけど、作業用としても便利だからね。
そして名目上は護衛として…
兄妹エルフ、兄貴将軍、くっ殺女騎士。まあ、この辺はいいとしよう。
あと、キラすけはデスグリップ要員だから仕方ないけど…
マビカ、ディスカム、メガドーラさん、そしてデイシーシー!
完全に見物人。
イオニアさんは王都で催しがあって不参加。
地団太踏んでくやしがってたけどね。
王子様は出なくていいの?
ああ、モアブ伯の領地は王子が一時管理することになったので、現領主って事ですな。
責任があると。だからこれは公務だと。はいはい。
デイシーシーは勝手について来た。
得意のステルス行動でコンテナに潜んでた。
恐ろしいヤツ!
サイト2があったのは砂漠の真ん中、およそ人が来るような場所じゃない。
位置がわかっていなければ、とても見つからないだろう。
一応、地下に隠されているけどコンクリートのサイロみたいな入口からすぐ入れる。
サイト1と違って稼働中のサーバーとかは無かった。
ジョーイ君みたいな管理者もいない。単なる倉庫だな。
軍用獣機は複数自動行動モードで収容作業を行ったのかな?
そして、紙資料。印刷されたマニュアルが大量に保管されていた。
かなりの物は王都のモアブ伯邸に運ばれたはずだが、まだこんなに残ってるのか。
「うっひょー! すごいー!」
ハイバンド道士が目をキラキラさせているけど…
「封印だな!」
先生は渋い顔。
「ええ? そんなぁ…」
泣きそう、ハイバンド。
鉄蜘蛛や、ゴリアテの操縦法マニュアルだけじゃない。
ここにはない機械の取扱説明書なんかも保管されてる…って言うか積んである。
サイト1のサーバーを操作して設定変更した方法もここで学んだわけだな。
そのサイト1の位置もここで知った。
地図。紙の地図に印がつけてあった。そして壁に貼ってある。
うーん、セキュリティ担当者の悪夢みたいな施設だな。
だが、ジョーイ君はサイトは三つ有るって言ってたけど?
3番目のサイトは記入されてないな?
「一時保管仮置き場」か…
「人間」たちの終活は色々と間に合わなかったみたいだ。
まだけっこう残っているゴリアテや鉄蜘蛛。
工兵機が組み替え修理を行なっていたサイト1とは違う。
動かない機体はそのまま残してあるようだ。
でもこれ…職人衆や工兵機が修理したらかなりの数が復活するんじゃ?
突然、ミネルヴァが騒ぎ出した。
今回はヘッドバードだけで同行。
オリジナルボディはエロすぎるから。
その上、ミネルヴァは「機能が制限される」とか言って服を着たがらない。
むき出しで歩き回って、よくおやっさんや組合長に注意されてた。
「ネコバス」はせまいし、教育に悪いので今回は北遺跡に置いて来た。
「どうしました? ミネルヴァさん?」
「ベータさん! こっち、こっち!」
「魔道機体があります!」
倉庫の奥に詰まれた荷物。まだ手付かず?
整理、調査が進んでないのか?
その中の一つを突っつくミネルヴァバード。
近接無線通信かなんかで反応して発見したらしい。
けっこう下の方の箱だよ?
えっちらおっちら荷物をよかして引っ張り出す。
もちろん働いたのは俺。
この箱…ずいぶん厳重に梱包されてるな?
なんか丈夫なシートで包んでロープが掛けてある。
ああ、こら! ベルちゃんや工兵機がビリビリ破いて開ける。
このロープや包み紙だって遺物だぞ!
え? 違う? このロープは最近の物?
いっぺん開いて、また封印したのか?
この箱は…保存魔法付き小型コンテナ?
この箱自体も魔道機だ!
この施設はジョーイ君のサイト1と同様、保存魔法施設。
それなのにコンテナにも魔法?
コンテナっていうか、棺桶サイズ?
荷札が貼ってある。古そうなヤツ。
これ…魔道機文明時代の荷札?
『サイト3へ移送』
移送? 最終処分地が決まってたのか?
おっと、魔法施錠されてるぞ。
「開けろ!開けろ!」
あーミネルヴァ、破壊しようとしない!
俺が開けるから。
QRコードを読んで開錠。
おっと、このQRコード、付帯情報があるぞ。
『あなたは18歳以上ですか?』
ペアレンタル? フィルタリング?
…………あれ、これ。開けちゃまずいヤツでは?
でも開けるよ、『はい』。俺は18歳以上だし!
ぐんと興味もわいて来たからね!
レッツオープン!
箱の蓋がはね上がる!
横に開くと思ってたら縦だった。
予想外に長辺方向に開いた。
蝶番の位置が思ってたのと違う。
そっちに開くのかよ!!
開いた蓋がのぞき込んでいた興味津々女騎士を直撃。
もんどりうって倒れる!
中身は……
「ひゃっ!」
「おおっ!?」
「こりゃあ、また…」
「ななな!」
一瞬、コールドスリープしてたのかと思った。
『魔道機体、システム的には将機ボディですね』
しょ、将機? これが?
いやこれ…女体だ!
って言うかプロポーション的にはオリジナルボディのレプリカ?
3Dスキャンするとサイズの類似性が確認できる。
でも…オリジナルボディと色が違う。
あっちは大理石っぽい感じだったけど。
こっちはちょっと赤みがかった…
うん、ペールオレンジ、薄茶色、キャラクターフレッシュ1。
いわゆるひとつの一般的によく言われるところの肌色。
そして着色。塗り分けられてるぞ。
ところどころが…ピンクとか…先っちょとかね。
いや、これ…シャドー吹いてあるよね?
エアブラシかなんかで…
人肌感が…すごい塗装テク!
そしてこれ………シームレスボディだ!!
装甲板に継ぎ目がない! っていうか装甲板じゃないよ。
柔らかい! シリコン装甲!?
エ………エロい!!!
ん? ちゃんと頭部があるぞ。
ミネルヴァ合体用じゃないのか?
こっちも人間そっくり…
ほんのり紅を注した口唇。形の良い鼻梁。
ベリーショートのシルバーヘア。
のぞいているのはウィッグ接続用ジョイントか?
将軍機と同じスタンドアローンタイプ?
『自律CPUは入っていません。以前のミネルヴァボディと同じです』
『近接無線接続ですね、合体する必要はありません』
『ミネルヴァかジョーイ君なら操作できます』
ヘルプ君が解説してくれる。
なんで自律CPUが入っていないんだろう?
『自意識化するのを避けるためだと思われます』
………ああ、うん…なんとなくわかるかな…
相手に人格とかあると…ちょっと…できないプレイとか…あるもんな。
「接続開始、行動プログラムを解析。」
ミネルヴァが早速接続を試みる。
ちょっと待ちなさい!
変なプログラムが仕込んであったらどうすんの!
だが、聞かない! 起動!
ぱちりと目が開いた……いや、違うな。
ぽかっと目が開いた。
ひどく機械的に半身を起こす。
うわっ! 何このやな感じ。
すっげー、不気味! 不気味の谷か!!
機械や模型を人間に似せると好感度が高まる。
だが、似せすぎると、ある時点で急に不気味に感じるようになる。
ろう人形とか、下手な3DCGとか、中途半端なリアル顔のフィギュアとかのあの感じ。
これが「不気味の谷」。
さらに似せると最終的には見分けがつかなくなる、だから「谷」
この現象、実は新しいものじゃない。
相馬御風(1950年没)は随筆「実物と模型」の中でこの現象に触れている。
「『たましひ』の無い模型は、実物に近ければ近いほど却つてますます実物から遠ざかつた怪物となるのである」
まさに不気味の谷現象。
もっともこの随筆のキモは「たましひ」の無い「教育の模型」によって生み出される「模型人間」。
今まさにそこにいる機動体が醸しだす不気味さ。
「レッツコネクト!」
ミネルヴァが無線接続。
「接続完了! ボディコントロール」
接続完了!
一瞬、目を閉じると再び開く。
「やった! 動く!」
動き出すとまったく印象が変わった。
ミネルヴァが接続したことで「たましひ」が入った!
情熱、パッション! リビドーとも言う!
「谷」を越えた、いや、超えた! ぶっちぎり!
うーん、これ…何に使う機体なんだ?
偽装潜入用? 暗殺機だろうか? ガミ○Q3?
ははは、そんなわけないよね。
ごめん、わかってないふりをしました。
考えてみれば、これを作った【人間】は俺の地球…
しかも日本から来たんだよな。
作るわ! 絶対、作るわ! 確信!
俺は予言する!
それを実現する技術が蓄積された時。
道徳的ナンヤカンヤとか、費用対効果とかを無視して、セクサロイドは必ず出現する。
なぜなら、それは人間の、そう、男の夢だから!
コンテナから立ち上がると、ぴょんと飛び出す。
ああ、揺れるから!
オリジナルボディと同じ妄想プロポーション。
ゆさゆさっとね!
デイエートと女騎士の表情が明らかに歪む。
女官さんがニュース王子の目を塞いでる。
そして、ディスカムの目にはダークワールド発生。
フィルタリング!
もともと人間の「そのへん」についてよくわかってないミネルヴァは新ボディに大喜び。
「このボディ、前の将機より手が込んでますよ。」
「情報収集中…オリジナルボディの…デザインレプリカ。」
「3Dスキャンで型取りしてシームレス外皮を形成…」
「…運用を禁止!?」
「変ですね? どうして運用されなかったんでしょう。すごく調子いいのに。」
男衆、眼を逸らしている。ベータ君も真っ赤だ。
「そりゃおまえ、こんなエロいもの…」
先生がはっきり言う。
「これは隠したいだろう…隠すしかない! 言い訳が効かん。」
うん、同感。見つけちゃってごめんね。【人間】のヒト。
「あ、すごい。この胸部装甲突起、柔らかいですよ。」
「緩衝機能でしょうか?」
「あれ? 先っぽだけ硬くなってきた? スイッチ?」
揉まないで! やめたげて!!
「内蔵アタッチメントが交換可能…ここの部分が?」
「自動洗浄機能? ちょっと用途不明ですが?」
「すごい! これはオリジナルボディにもない機能ですよ!」
やめて! やめたげて!! ミネルヴァ!
「え、前も……後ろも?」
いやあーーーー!!
『機体内のメモリーから情報を収集』
『【協定】によって運用が禁止されたようですね』
お、おう、ヘルプ君。
なるほど、規制されたわけだな。
製作者、お気の毒。
「おーい、ちょっとこれ見て。」
どうしたの? 兄貴。
ミネルヴァ生エロボディから眼を逸らそうと必死に地図をにらんでた兄貴。
軍人の兄貴から見れば、この詳細な地図は興味深いだろう。
「地図のこれ…ここ【美術館】??」
美術館があるの? この世界。
「孤島だよな、ここ…こんな行きにくいとこに?」
「印の…マークがサイト1、2と同じなんだけど…」
さすが兄貴、もしかして…ここがサイト3?
みんな地図の前に立って覗き込む。
ミネルヴァ生ヌードエロボディも並ぶ。
横に並ばれて、ビクッとする兄貴。
鼻の下伸びてる、生臭導師と小太り。
頭の上にヘッドバードが止まってる。
すげえシュールな光景。
「ここ、サイト2が【軍用獣機処分計画一時保管仮置き場】」
「サイト1が【警備用獣機処分計画一時保管場】になってるのに…」
「なんで、【美術館】? 美術品は隠蔽しなくていいだろう?」
「何か、他の施設とは扱いが違いますね。」
『収集したデータによると…』
『趣味と…芸術に関するものが収納されているようです。』
おっと、ヘルプ君から情報。
スピーカーから音声出力して、みんなにも聞いてもらおう。
「趣味? サイト1、サイト2と同様に機動体が保管されているんじゃないのか?」
『ですから…趣味…芸術に関連した機動体が…』
ああー…あれかー、エロフォルダに【美術】とかフォルダ名をつける的な。
「この将機ボディ…サイト3へ送るはずだったんだな…」
「つまり、この手の…?」
うーん、心情的に破壊、廃棄しにくかったのはわかる。
すごく、わかる。
かといって見られたくないから孤島に秘匿…
魔道機文明…【人間】のエロ遺産かあ…
俺、思うんだ。
縄文土器とかの造形力とか見ると、これきっと…
エロいの目的で作った人いるよね、と。
縄文のビーナスとかよりもさらにリアルなヤツを作った人が。
いる! 必ずいた!! 確信!
人型土偶は必ず壊された状態で出土すると言う。
宗教的、呪術的な理由があると考えられている。
きっとエロいヤツは徹底的に壊され、厳重に闇に葬られたに違いない。
いや待てよ。
俺がこの世界に召喚された後の俺の部屋…
エロ本とか…フィギュアとか…PC内の特定のフォルダとか……
ああいうの、どうなってんの?
いかん、いやな汗出て来たぞ。
ま、汗はかかないですけど。
いや、俺に限らず、異世界転生とか転移とかした主人公。
たいてい突然だよね!? 大丈夫? 君のエロ遺産。
「ミネルヴァのオリジナルボディもだが…」
「聖堂都市の【ご神体】もけっこうアレだったし…」
「神代魔道機もエロけりゃ、魔道機【人間】文明もエロいか…」
「ぶはは、男どもはいつの世でも変わらんの。」
夢魔女王メガドーラさんが吹き出す。
「いつの世も、どこの異世界でもな。業が深いなあ。」
先生、あきれ返る。
『ソフトボディは女子型だけじゃなく男子型も製造されたようですよ。』
「何!?」
「なんですと!?」
先生&メガドーラさん。鋭く反応!
「そりゃあそうか…転移してきたのは男だけじゃないだろうし…」
「将軍機は男性型だったしな。」
「それって…アイザックのレプリカ、とか、かの?」
「ミネルヴァみたいにアイザックが操作できるとか?」
「リアルタイプ? オリジナルにもない機能付き?」
「そりゃあ、がぜん興味が湧いて来たなー」
「まったく、オバさんたちはしょうがないしー。」
でも、お前も俄然前のめりだよな、デイシーシー。
『他にも散逸した神代魔道機のオプションパーツも保管されているようです。』
なんですと? 新たな外部接続機体が!
「まさか、また拡張機体じゃあるまいな?」
「あんなデカぶつは一つで十分だぞ。」
『詳細は不明ですが…』
『わざわざサイト3に保管…秘匿されているわけですから…そういった種類のものかと…』
え? もしかして…アレ的なパーツ?
「アイザック。お前も興味がわいて来ただろう?」
にやにや顔の先生。
「我も興味ある!」
なんだ? キラすけ、いきなり。
お前には早い!
「うん、何だか興味あるわね。」
なんだよ? デイエート?
「それは興味深いっすね。」
ええ? タンケイちゃんまで?
「ボクも大いに興味あります。」
ちょっ、ミネルヴァ??
『機能拡張には興味がありますね』
ヘルプ君?
地図を再確認するエルディー先生。
「どの辺だ? うお、遠いな。」
「準備を整えて出直さないとな!」
この世界での俺の冒険は……
まだまだ、始まったばかりだったみたいだ。