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アイ・ザクソン!



遂に出現した拡張機体エクステンドボディ

神代魔道機の最終兵器だ。

かつて【仲裁者】と呼ばれたのが、これか?


でかい! 20メートル以上あるぞ。

少なくとも俺の10倍以上。高さ1.5ガ○ダムくらい。

ああ、そうか。

この巨体を納める格納庫は当然でかい。

空洞のままだと時間経過によって陥没したりする怖れがある。

それであえて内部を埋めていたのか。

拡張機体、色は俺っぽいダークグレー。

だが、デザインは俺本体とは全然別。

猛禽類のくちばしとも、鮫の頭ともつかない頭部形状。

巨大な肩あて、船の舳先みたいに尖って突き出した胸。

足は巨大ロボお約束の末端肥大的どっしりスタイル。

ふくらはぎの部分に噴射ノズルっぽいものが見える。

飛べるのか?

腕は拳…じゃなくて尖ってるぞ!?

三角錐型、明らかに突き刺す系。

指とかは?と思ったら開いた!

犬獣機のヘッドアームみたいな三本指だ。

あちこち尖ったり、角が付いてたりするぞ。

広い面積がノッペリしてるとさびしいからスジボリとか増えてる感じ。

インフィニ…(略)

さらに背中には翼的なものを背負っている。

翼、じゃない。これ…腕だ!

かなり長いが両腕と同様の形状。

四本腕のうち二本を背中に背負ってる感じ。

とても正義の巨大ロボには見えないね。

むしろメカゴ○ラ的な…尻尾が無いのがせめてもの救い。

いやこれ…魔獣ロボだよ!


一歩を踏み出す。

身体についた土くれが振動で滑り落ちる。

長いこと埋まっていたにしちゃ表面がずいぶんキレイ。

いや、これ、摩擦係数コントロール?

俺本体と同様の機能があるのか。

地響きを立てて歩き出した。

ゆっくり、に見えるけど、歩幅が10倍。


電動車椅子やシニアカーの最高速度は時速6kmと定められている。

歩行者扱いとするための安全上の制限。

歩きの速度はこのくらいって判断だ。

その10倍とすれば時速60km。けっこう速いわ!

えーっと…かなり気をつかって歩いてますね。

街をよけて、川沿いに西街道に向かう。

え、ちょっと、ずっと歩くのかよ! 飛ばないの?

がっかりだよ!

『いや、あそこでパワーファイヤ噴射したらレガシの街、吹っ飛びますよ』

え? そうなの。

身長が10倍って事は体重は10の三乗、1000倍。

飛行ユニットが1000機で一斉噴射したら……そうですね。

街を守るためにこんな苦労してるのに自分でふっ飛ばしちゃいかんよね。

東の川から西街道へ。

奮闘を続ける俺たちの方へと歩を進める。

スピードアップ!

巨人早歩き、時速100kmを超えるぞ。


『ななな、なんじゃありゃあーーー!!』

『す、すごく大きい!!』

『ほふひーーー!』

『これはまた、大人げない代物ですねえ。』

『アイザックが動かしてるの!?』

途中すれ違った鉄蜘蛛班が驚きの声を上げる。


エルディ魔道研究所、北遺跡ドーム。

そこでも、出現した拡張機体に驚愕。

故障した飛行ユニットを滑走路に収納。

ドームの発着スリットを開いている状態。

拡張機体が立ち上がるのを直接目視していた。

「なんてこった! あんなもんが埋まってたのか!」

帰り着いたエアボウド導師、イオニアさんたちも唖然。

「あれって、み、味方なんすよね?」

タンケイちゃんもうろたえる。

「す、すごい! あれこそ【仲裁者】!」

ハイバンド道士、興奮!

「仲裁者? あれが伝説の?」

ニュース殿下も大興奮!


レガシの街で住民避難を進めていたのはおやっさん、組合長。

ミーハ三戦士。それに、帰還したストラダ、アルパン、クラリオ騎士。

振動とともに北の丘陵に出現した拡張機体。

これまた唖然として見上げる。

「なんとまあ、トンデモない物が出てきたのお。」

「まさか、あんなのだったとは…予想外…」

「予想? 組合長、あんた何か知ってたのか?」

「いや、工房長、気づいたのは最近だけど…」

「そもそも、大迷宮に北遺跡。これだけ重要な遺跡が直近にあって…」

「何も関係ないなんてことがあるはずないですよね。」

どういう事?

魔力核コアが利用していた女神神殿ヘルズパレスの魔力って…」

「地脈とか龍脈とかのエネルギーじゃなくて…」

呆然として拡張機体を見上げるおやっさん。

「あれか! あれのエネルギーを……」


巨大ロボは兵器として有り得ないとか、そもそも非現実的とか言う人いる。

でも、俺は予言する。

それを実現する技術が蓄積された時。

実用性や、費用対効果を無視して、巨大ロボは必ず出現する。

なぜなら、それは人間の、そう、男の夢だから!


そして、今、俺の眼前にはそれがそそり立つ!

空にそびえるくろがねの巨体。

えーっと、これどうやってコントロールするの?

有人? て言うか…乗り込むのかな?

『合体です!』

おお! 合体!!

「来い! 拡張機体! フェーーード、イ…合体だ!」

胸を張り、ぶおおおおおーーーんて感じのうなりを上げる。

突然、身をかがめると俺につかみかかって来た!

ええ!?

腕の先端が三本爪の指に分離して開く!

犬獣機のヘッドアームを思わせる構造だ。

がっちりと掴まれた!

う? 動けない!

ひっつかんだまま、再び直立!

顔面のパネルが割れて口?が開く。

上側がバイクのヘルメットバイザーみたいにはね上がる。

バイザー? いや、違うな…

下あごも開いて、巨大な鳥のくちばしを開けたような感じ。

その内部に球体みたいなものが見える。

複雑にスライドして割れると内部に空洞が。

コックピット?

思ってたのとかなり…すごく違う。

操縦シートとか無いし。

なんか、内側にみっちりトゲトゲが突き出している。

いやこれ、トゲって言うか…触手!?

拡張機体はその中に掴んだ俺を突っ込んだ。

うわあああー!

フェイスパネルが閉じる。

『融合を開始します』

ええ! ちょ!

強制的に装甲板がスライドアウト。

オーバードライブモードでもないのに。

生じた隙間にトゲトゲが突き刺さる!

ごはあっ!

いやーん!

ああ、だめ! 挿入ってくるぅ!

熱いのが…入ってくるのぉー

当たってる。奥の…大事なとこ当たってるのぉ!

断面図っ!

『やめてくださいよ、気持ち悪い』

いやいや、気持ち悪いのは俺だよ。

何これ? もちょっとカッコ良く行かないの?

これじゃまるで…


撤退中の鉄蜘蛛から合体シーンを見ていたみんな。

ゴリアテ軍を見張っていたトンちゃんも合流した。

「あああ?」

「あ、アイザック、食べられちゃった!!」

「ええ? 何がどうなってるんですか?」

ああ、やっぱりそう見えるよね。


だが、次の瞬間!

俺の視界が変化した。

視点が高い。地面が遠い。

これは……拡張機体からの視点か!?

自分の手……三本爪を見つめる。

今の俺は…巨大ロボ!

流れ込んでくる膨大なエネルギーを感じる。

これこそが神代魔道機の真なる姿か!


アイザック拡張機体エクステンドボディ接続オンライン

AIZACK EXTEND BODY ONLINE

AIZAXON!

アイ・ザクソン!!


いま、俺は、異世界召喚ロボ、アイザクソン!!

拡張機体の表面に赤いラインが走る!

オーバードライブモード!

頭部に、両腕に、肩に、背中の翼腕にパワーライン!


足元には軍用獣機の群れ。

ゴリアテの体高は3メートルほど。

直立しても5メートル弱。

今の俺の膝くらいしかない。

蹴り飛ばす!

高々と舞い上がった!

サッカーボールキック。

だが落下したゴリアテは弾まない。

部品をまき散らして地面に激突した。

群がる獣機にかまわず歩を進める。

押し倒された機体を踏む。

ぐにゃりと曲がる装甲板、圧し潰ぶす。

迂回する形でレガシに進もうとするゴリアテを捕まえる。

2体同時に。

掴み上げて、地面のやつに叩きつけた。

蹴散らす!

一方的とか言うレベルじゃない。

虫! ゴリアテが虫けらだ!


鬱陶しい!

神大雷神槌ゴッドサンダー

手甲に発生した魔法陣から電撃が放射された。

俺と同じ魔法が使えるのか?

いや、違う。使っているのは俺だ!!

西街道に並ぶゴリアテと鉄蜘蛛をなめるように。

吹っ飛ぶ。

まるで重力が遮断されたかのように爆風で舞い上がる。

あるものは衝撃で破壊され、あるものは高熱で灼かれた!

残骸の中を歩みを進める。

視界に入ったのはエネルギー切れで停止したケロちゃんG。

放射! 青い魔法陣、回復魔法?

掌から魔力とも【動力】ともつかぬエネルギーが放射される。

一瞬で魔力が充填され、ケロちゃんが立ち上がった。

どういうことなんだ? この機体…まるで魔力核みたいな…

どうして俺、こんな使い方知ってるの?


街道上のゴリアテを破壊しながらサガっ原に到達。

西街道が狭いせいで、まだかなりの数のゴリアテが出発できずに残っていた。

そして鉄蜘蛛はそれ以上の数。

獣機使いと呼ばれる、至上主義者の兵たち。

車外に出ていた奴らが、俺の姿を見て愕然となる。

『頭部二連装ビームが使用可能』

発射! 頭部のビームランプから閃光が放たれる。

マキシマム・ビーム!

俺本体、飛行ユニットのそれをはるかに超える大口径ビーム、一閃。

射線上にあった軍用獣機や鉄蜘蛛はその一撃を受け一瞬で蒸発。

半身を残して消え失せた。

1トンを超える金属が気化したのである。

周囲にいた獣機使いは、超高温の金属蒸気に晒され、これまた、一瞬で爆発するように蒸発した。

さらにその外側にいた兵士は高温の熱風により生きながら発火。

火だるま、いや、たちまち炭化した。

金属の一部は空気中の酸素と化合してさらなる熱を生み出す。

あるいは冷やされ固体に戻り灼熱の微粒子となって拡散する。

兵士たちは、肌を、目を、肺を焼かれて絶命した。

あるものは化学反応によって酸素を失った酸欠空気を吸って意識を絶たれた。

即死を免れた兵とて無事では済まない。

治癒魔法の使い手も、十分な数がいるわけではない。

そもそも、この状況下では救助が来るはずも無い。

全身を焼かれ激痛に苦しみながら死ぬのだ。

生き残った者にも希望はない。

吸い込んだ金属微粒子はその重さゆえに肺に沈着し排出されることはない。

様々な重篤な肺疾患を発症し、苦しみぬいて死ぬことになるだろう。

圧倒的な死! 呆然とアイザクソンを見上げる獣機使いたち。

鉄蜘蛛に逃げ込むことすら忘れたように。

死の化身降臨! 絶望が戦場を包む。

頭のどこかから誰かの声が響く。


死なり! 我は死なり!

抗うものすべてに苦痛と死を与えん!

従うものすべてに安息と死を与えん!


すごい威力!

やりすぎだよ、アイザクソン!

頭部二連装ビーム?

同んなじものが両腕にも肩にも、翼腕にもあるんだけど?

これ、全部いっぺんに発射したらどうなっちゃうの?

軍用獣機も至上主義者の兵もまったく敵ではない。

いや、王軍すべてが、全都市が総力を挙げたとしても問題としないだろう。

まさに神にも、悪魔にもなれる力だ!

【仲裁者】?

この力に異を唱える事のできる者などいない!

独裁? 圧政? いや、絶対者だ!


「上帝」と、言う言葉が頭をよぎる。

19世紀、聖書を中国語に翻訳する際、「GOD」の訳語について論争があった。

「神」とするか「上帝」とするか…長く対立が続いたという。

「上帝」

その絶対感! 不寛容(イントレランス)さ!

もし、日本に伝わる際に「上帝」が採用されていたら…

その語感ゆえに、日本神話の八百万神と相容れることなく、拒絶されていたかもしれない。

そして、今の俺は絶対者。上帝ロボだ!


神か、悪魔か!?

いや、選ぶ必要など無い!

我はすでに超えたり!

我は神なり! 悪魔なり!

神にして魔! 魔にして神!

すなわち魔神!!

ひれ伏せ! すべての者どもよ!

こうべを垂れ、膝をつき、額を地に擦り付け、その身を大地に投げ出せ!

我に踏み拉かれ、真なる死を賜るが良い!

永遠の安息と平穏を与えん!

我が与える究極たる幸福を甘受せよ!!

この世界を! 惑星を! 宇宙を!

真なる世界に統合するのだ!

すべてを!!


いやいや、まって、待って!

おかしいぞ、俺!?

変になってる!!

分割思考がアラーム鳴らしてる!

キラすけあたりが言いそうな、こっ恥ずかしいこと言ってるぞ!

拡張機体エクステンドボディから流れ込む膨大なエネルギー!

ああ、これが魔力酔いか!

『取り憑かれるぞ』

組合長の忠告の言葉を思い出す。

これ、魔力自体が何らかの方向性を持ってる?

意思を持つエネルギー?

混沌からの誘惑。

増大するエントロピー。

加速する破滅。

お約束の主役メカ暴走だ!!

「やめてよ!」

思わずシンジ君の声で叫んじゃう!

誰か助けてー! 止めてー!


先生たちの乗った鉄蜘蛛はアイザクソンの後を追っていたが…

ケロちゃんGとミネルヴァも合流したがとても手が出ない。

「てな、感じです。」

ここは鉄蜘蛛の中。

トンちゃんなオレが俺本体から伝わってきた現状を先生に説明。

みんな頭抱えてる。

「あのバカ…」

「一難去ってまた一難…」

「ベータ、器機召喚でアイザックだけ回収出来ないか?」

「だ、だめです。魔力核と同じで…魔力が濃すぎて…」

苦虫を噛み潰したような表情の先生。

「今は我を忘れているけど…アイザックと同じ魔法が使えるとしたら…」

「重力魔法や飛行制御があれば、王都だろうと湾岸市だろうとひとっ飛びだ。」

「ゴリアテなんぞとは比べ物にならない脅威だぞ!」

ミネルヴァが突然。

「北遺跡に戻りましょう!」

「アレから回収命令が出ています。」

回収命令? あ、トンちゃんなオレにも来たぞ。

拡張機体に神代魔道機全機を収納する、と言う意思。

「故障中の飛行ユニット(スカイエクソン)と通信途絶中の魔王鎧エクソアーマーを優先的に回収するはずです。」

「あいつは一旦、北遺跡に戻るってことか?」

先生が納得したようにうなづく。

「…そうか、すべての神代魔道機はあのデカブツに収納された状態で異世界転移してきたわけだな。」

「いったん、すべて回収するつもりか。」

「待てよ? 神代魔道機…すべてって言った?」

兄貴があわてて聞き返した。

「旧首都市の博物館のヤツや、聖堂都市のご神体とかも?」

「アレが偽物じゃなければな。」

「いかん、こりゃホントに全土の危機だわ。」

「あいつがゴリアテを片付けている間に北遺跡に戻ろう。」

鉄蜘蛛はUターン、大急ぎでレガシに引き返す。



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