表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

182/371

最終防衛線


遂に決着。俺たちは勝った。

魔王機は遅延拘束魔法により停止状態。


エルディー先生が遺跡に駆け戻って来た。

馬獣機は2体とも破壊されてしまったからね。

息が上がってる。

兄妹エルフは内部通路を通って管制室へ。

俺はドーム下に飛び降りて先生を迎える。

「やったな。」(ぜー、ぜー)

「はい、まあ、やったのはハイエートさんですが…」

「まったく、あいつは…」(はー、はー)

「今からでも魔道士の勉強を…」(ふー、ふー)

ま、しゃべるのは息を整えてからで。

魔王鎧に近づくと、改めて時間遅延拘束魔法を掛け直す。

安全第一、2重ロックだ。


遺跡から職人衆やミーハ三戦士たちが出て来た。

魔王機の周りに集まる。

遅延拘束魔法は1秒間を1時間に拡大する魔法。

先生が二重掛けしたのでさらに遅くなってる。

ハイエートの弓に手をかけ、驚いて離したそのポーズのまま。

ガチョーン!(谷啓) とか、心・配・御無・用!(竹中直人)とか。

そんな感じで固まってる。

「うわでっか!」

「サンゴロウよりでっかいぞ!」

けっこうでかいんだよね魔王鎧。

人力で運ぶのは無理。

「誰も近づけるなよ。見張り頼む。」

俺と先生は遺跡の中へ。

エレベーターの前に血だまりが!

「え? ええ? 何だこりゃ!?」

「な、何がどうした?」

タマちゃんと記憶同期。

ええ? これ、ディスカムの血!?


さすがの先生も焦る!

「だ、大丈夫か? ディスカム!」

管制室に上がると駆け寄った。

「大丈夫です、まだちょっとふらつきますが…」

一方、あんまりみんなから心配されてない感じのサンゴロウさんには俺から。

「大丈夫ですか? サンゴロウさん?」

「いや、アンタこそ大丈夫なのか? それ。」

ああ、俺。改めて見ると…

指はへし折れてるし、わき腹はドリルでえぐられて傷だらけ。

って言うか、穴開いてるぞ。

パワーファイヤの赤い光がチラチラ漏れてる。

とりあえず曲がった指を直す。動かないわ。

大丈夫なの? ヘルプ君、これ?

『修復可能です。しばらく活動停止をお勧めしたい所ですが…』

え、何?

『問題は飛行ユニットです。破損状態がひどいですよ』

『衝撃波によって噴射ユニットの支柱に損傷を受けています』

「………」

まずいことになったな。


女怪魔道機メデュウサ機体がミネルヴァと合体してたのはびっくり。

そして、エロい。

【収納】からマントを取り出して着せる。

嫌がるんじゃない! ミネルヴァ。

公序良俗を乱してますぞ。

「こりゃやっぱり服を着せんとまずいな。」

おやっさんが渋い顔だ。

「ワシのセンスじゃ…タンケイ、なんか考えておけ。」

「そっすねー、ダット姐さんに頼んで……ビキニアーマーとかいいかも!」

それ、地雷。…タンケイちゃん。


「お祖母ちゃんは?」

キラすけが聞いてくる。

あー、そういえば。

「どこまで飛ばされたんだ? アイツ?」

『薄情な奴だの! ここじゃわい。』

おっと、カナちゃん通信。

ちょうど工房近くまで飛ばされた。

職人衆や工兵機サテュロスと一緒に魔王機の電撃で停止した獣機の再起動を実施中。

指揮を執っているのは工兵機スタイルのジョーイ君。

専用端末化した工兵機には、見分けをつけるため職人衆が頭に角をつけた。

「赤く塗るとカッコイイっすよ、きっと!」

タンケイちゃんの主張に、俺も同感だったが時間がないので断念。

塗装を乾かしてる時間がもったいないってことで。

妥協案としてとりあえず右肩だけ赤く塗った。むせる。


「しかし、まさか遺跡突入隊がいるとは…」

「バンカー自身が囮を兼ねていたわけか。」

「あいつら、そんなに人数がいたっけ?」

現状確認のため、北遺跡に突入した親衛騎士を尋問。

時間がないので、メガドーラさんがちょちょいっと…

この襲撃は総力戦。

女神神殿に残っているのは10人足らず。

技術系魔道士など戦力にならない者だけが残留。

あえて言おう、カスであると。


兄貴達に同行していたトンちゃんから連絡が入る。

ニュース王子やイオニアさん、タモン兄貴の説得は成功。

王軍兵士はもちろん投降、というか本来の命令系統に戻った。

同行していたモアブ兵も、錆腐帯結界ラストベルトで武装解除どころかホームレス状態。

降伏するしかなかった。

とりあえず、無事な物資をかき集めてサガっ原から離れ、森に入ってもらう。

サガっ原は戦場になる恐れがある。

文字通り寸鉄帯びてない裸同然の兵士たちには危険すぎる。


本来なら、そこでゴリアテ軍団を空爆するはずだったのだが…

飛行ユニットが破損し、空爆が出来なくなった。

200体のゴリアテ、それも自動攻撃モードを迎え撃つのは難しい。

最終兵器であるパラボラ熱線砲はレガシの街も消滅させてしまう。

こちら側のゴリアテでは数からいって対抗は無理。

魔犬将機ガルムを破壊した今、犬獣機ハウンドは正常化してはいるが…

数は多いけど、ゴリアテには歯が立たない。

俺本体だけで200体を相手に?

スカイエクソンもビームも無しで?

絶望的な状況だ。


「アイザックどのは魔王鎧を使えないのですか?」

サンゴロウさんが尋ねてくるけど、先生が首を振る。

「あれは、時間の流れがゆっくりになっているだけ。」

「拘束を解いたら元通り、言ってみれば先送りしただけだ。」

「あの、でっかい剣はどうなの?」

デイエート、エクソアーマーソードのこと?

あ、ドームに刺さったままだよ。

どうなの? ミネルヴァ?

「あれならボクが使えます。」

ええ? 裸マント魔道機+でっかい剣。

扇情的だな。

『アイザック本体だって使えますよ』

ヘルプ君が補足。

「あ、余計なこと言うな!」

『サポートシステムのくせにオプションを着服…』

「いいでしょ! 1体で戦うより2体の方が!」

それはまあ、たしかに。

ミネルヴァオリジナルボディも戦力になるか…


「あの熱線砲ってちょっと弱く撃つとかできないのかな?」

組合長の質問。どうなの、ヘルプ君?

『1発射あたりの出力は固定です』

うーん、無理かー。

『あ、そのかわり、連発することで高出力化と同じ効果を出せますよ』

えっへんプイな感じで自慢げに言われてもなあ。

どうして強力化の方向へ持っていきたがるのかな?

俺や組合長が聞きたいのはそうじゃなくて…


「た、たいへんっす! ゴリアテが大街道から移動…」

タンケイちゃんの悲痛な声。

カナちゃんズから通信。

大街道からの分岐点がモニターに映し出される。

ゴリアテを乗せた鉄蜘蛛が一台、また一台と西街道に向かう。

サガっ原の惨状を知ってか知らずかはわからない。

おそらく、打ち合わせ通りの時間に出発したのだろう。

「一列縦隊で進むか…けっこう時間かかるな?」

先生の言う通り、西街道は鉄蜘蛛一台分の幅しかない。

30秒に一体出発できたとしても、200体が出発するだけで1時間半はかかる計算。


『西街道を一列縦隊で来るのなら、ちょうど熱線砲の射線に入ります。』

ヘルプ君の言葉に、ちょっと考えてから組合長が

「大迷宮を避けて撃つことは可能かね?」

『発射角度を調整すれば上層だけの被害で済みます。』

上層ってのは「レガシの街」が含まれてるよね…

「なら、大迷宮の中層が避難所として使えるな。」

深層までは3日分の距離があるから、残りの騎士団と遭遇することはないだろう。

「炭鉱は投降した王軍兵士の避難所として使おう。」

「住民はすぐ迷宮内に避難を始める。」

組合長が決断した。

レガシの街を放棄するのか?

街を犠牲にしてゴリアテ軍を葬り去る覚悟。


何か方法は無いんだろうか?

街に暮らすみんなの顔が頭をよぎる。

イーディさん、デイヴィーさん、ミニイたん、ダットさん、デイシーシー。

サジーさん、スカジィちゃん、アイリンクちゃん…

工房の受付さん、お針子さん、食堂のお姉さん…

救護院の見習いさん…アトラックさんの奥さん…

『男のヒトは?』『人妻まで!?』

脳内ツッコミはミネルヴァとヘルプ君。

みんなの街を守れなくて、何が守護魔道機だ!?


拳骨シュートの指は…ほとんど修復されている。

魔力核から魔力が放出されているせいだろうか?

修復が早い気がする。

いけそうだ。いや、行く!

「新型鉄蜘蛛で出撃します。ミネルヴァ運転を頼む。一緒に来てくれる?」

「もちろんですよ。アイザックのサポートはボクですから。」

まだ方法はある。妨害電波、獣機使いを狙う、ハイパー拳骨シュート。

天空無双剣、対双極半月鎌、ドリルアタック…

ミネルヴァだってアーマーソードがあればゴリアテとだって戦えるはずだ。

空爆が出来なくたってやれることをやろう!

砕け散るまで戦う!!

「お、おい! お前だって傷だらけなんだぞ。」

行かせてくださいな、先生。

「強化炎縛鎖護符があれば、僕にだって援護が出来ますよ。」

ハイエートが弓を叩く。

「あたしも行く! 消磁魔法マグセーフなら鉄蜘蛛を止められるんでしょ。」

「導師、護符矢をちょうだい!」

デイエート。

「僕も行きます。僕なら引き寄せ(アポーツ)で爆弾やミサイルを…」

ベータ君。

「我も行く、デスグリップを使えばゴリアテの動きを止めるくらいできるのだ!」

キラすけまで。

「それがしも参ります! キララお嬢様をお護りいたします。」

サンゴロウさん。

先生がぽりぽり頭をかく。

「まったく、しょうがないな。」

「ま、このまま引っ込むのも癪に障る。」

「聞いたか? メガドーラ。」

『ふふふ、頼もしいことよの。鉄蜘蛛とケロちゃんGを回すぞ。』

いいかな、ジョーイ君?

『お心のままに、マスター。』

「私の家に集合だ、作り貯めた護符を渡そう。」

「在庫一掃セールと行こう。」

おーい、翻訳機能? 在庫一掃セール??


ドーム外壁からエクソアーマーソードを引っこ抜く。

時間停止中の魔王機や、魔犬将機の残骸、故障した飛行ユニットをドーム内に収納。

工房から新型鉄蜘蛛がやって来た。

コイツは魔王城山で鹵獲した奴。

職人衆は鉄蜘蛛の荷台に何やら金具をくっつけている。

例の接着剤で。

何これ? 兵装支持架ハードポイント

ミサイルを取り付ける?

爆装ユニットを調べて、同じ金具を作ってた。

油断ならねえ、職人衆。

爆弾も何個か積んでいこう。

「どうやって使うんだ?」

「投げます。」

「掴むにはちょっとでかいんじゃないか?」

投げるのはケロちゃんGにやってもらおう。

ベータ君が追加で爆弾を器機召喚できるという。

頼もしいね。


ちょっと新型鉄蜘蛛内部をのぞいて見る。

中で作業していたのはレッドショルダージョーイ君。

「接続経路を確保しました。」

え? 何の?

「これで、操縦用モニターにカナちゃん通信の映像も表示できます。」

おお、すげえ!

敵方の通信は獣機使いが独占しているらしい。

でも、こっちはカナちゃんズがいればそれ以上のことができる。

「戦闘では役に立てないので通信だけでも…」

助かるよ、ジョーイ君。

犬獣機と一緒に北遺跡を頼むよ。


よし、出撃だ。

さすがにキラすけは置いていこうと思ったけど、聞かない。

「我も行くのだー! 絶対行くー!」

だだっ娘か!?

鉄蜘蛛から出ないことを条件に連れていくことに。

まあ、正直デスグリップは有効だしね。

その代わり、メガドーラさんは残る。

先生と夢魔女王。

スキルがダブってるから別々の場所を担当してもらった方がいい。

鉄蜘蛛内部には先生、ベータ君、キラすけ、ミネルヴァ(運転手)

荷台には俺、ハイエート、デイエート。

サンゴロウ騎士は北遺跡に残す。

強がっているけど、親衛騎士の攻撃で受けた傷がふさがったばかりだ。

それに、今回は長距離支援のできる人じゃなければ無理。


ケロちゃんGも同行、自力走行してもらう。

「メガドーラ、おやっさん、組合長。後を頼む。」

先生の号令で出発!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ