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突入!


いつ果てるとも知れない死闘を続ける俺本体と魔王機。

時間は少し戻って、北遺跡基地内部。


その時、タマちゃんであるオレはドームの下部。

管制室からエレベーターで下がった1階部分に居た。

メデュウサの作動停止を確認した後、キラすけ、メガドーラさんは管制室に戻る。

ドームの外壁は二重になっていてその間にメンテナンス用の通路がある。

ミネルヴァと職人衆が遺跡を解析して発見した。

メガドーラさんはすぐに先生とともに馬獣機で出撃。

サンゴロウさんとディスカムが手伝い。

「やれやれ、厄介なことになったの。」

「ま、少しぐらい怪我してもどっちかが無事なら何とかなるだろ。」

「この齢でこんな荒事に手を染めるとはの。」

「それがしも出撃します!」

巨漢騎士が意気込む。

「魔王機相手に人間じゃ無理だ。」

「まだ、魔道士の方が手があるからの。」

「しかし、ご母堂様を戦場に出すなぞ…」

サンゴロウさんにしてみれば仕える主君の母親。

「小僧! 妾の心配なぞ、100年早いわ!!」

メガドーラさんがぴしゃり!

「齢の話はするなー。」

先生ぇ…

二人を送り出す。

「先生! どうかご無事で!」

「ご母堂様! ご武運を!!」

扉を閉めたディスカム。兄上騎士に話しかける。

「大丈夫でしょうか…」

「今はお二人を信じるしか…」

うん? 地下へのエレベーターが動いてる?

ゴンドラが上がってくるぞ?

地下に誰かいたっけ? やば!!

「サンゴロウさん、地下から敵です!」

「何っ!?」


エレベーター乗っていたのはモアブ親衛隊!

複数人が弩弓を構えている!

しまった。連絡通路を使われたのか?

一斉発射! サンゴロウ騎士とディスカムに命中した!!

身体が大きく、武装している巨漢騎士に攻撃は集中。

複数の矢を受けてのけぞった。

軽装鎧では細くて速度のある弩弓の矢は防ぎ切れない。

ディスカムも腹部に被弾。

一旦うずくまったが、必死に身を起こす。

雷神槌サンダーボルト!」

攻撃魔法! 親衛隊がひるんだ。

テーブルを跳ね上げて、サンゴロウ騎士を守るように立てる。

「タマちゃん、みんなに…知らせて…」

足元に血が広がる


うかつ!

迷宮からの連絡通路は隠蔽工作したことで安心していた。

安心してしまったのだ。

モアブ伯は最初から通路の情報を持っていたのかもしれない。

エレベーターシャフトを飛んで管制室へ。

「地下からモアブ騎士団が侵入しました!」

「何じゃと!」

「サンゴロウさんとディスカムが負傷!」

「いやああー」

マビカが悲鳴を上げる。

「いったんゴンドラを上げろ! ここに侵入させるな!」

おやっさんの指示で職人衆がジャッキハンドルに飛びつく。

巻き上げて引き上げ、ロックする。

「二人はどうなんじゃ?」

「重症です!」

「我が行く! 闇の堕界なら!」

「ここはアタシらだろ! そのための傭兵だよ!」

キラすけ、ミーハの戦士たちが逸る!

「相手は弩弓を装備しています。」

エレベーターで下がれば狙い撃ちされる恐れがある。

「くそっ! 何か盾になるものは…」

「待ちなさい。ゴンドラを降ろすのは危ない。」

「ここは私が行きましょう。」

進み出たのは…組合長。

そうか、【霧化】を使えばエレベーター無しでも降りられる。

弩弓も効かないし。

でも、攻撃はどうするの?

「ケガ人がいるんなら……ま、何とかするよ。」

状況確認用にカナちゃんを呼び寄せる。

カナちゃんズの大部分は進攻軍本隊や王子一行の通信に従事。

さすがに手薄になっていた。

親衛隊への見張りがおろそかだったよ。

いや…まさかバンカー魔王機自身が…囮?


【霧化】した組合長。

カナちゃんとともに階下に降りる。

サンゴロウ騎士、テーブルを盾代わりにエレベーターの前に仁王立ち!

軽装とはいえ鎧のおかげで致命傷は免れたのか?

いや、その顔面には深々と矢が突き立つ。

二の腕や肩にも複数の矢が刺さっている。

ハリネズミ状態、痛い!

テーブルの影に倒れているディスカムは顔面蒼白。

目を閉じてピクリとも動かない。

「ディスカムくん!」

テーブルの前に実体化する組合長。

これにはサンゴロウさんもモアブ親衛騎士団もびっくり。

組合長…だよね?


ええ? 若い、と言うかちょっぴり若づくり!

いつものショボクレオヤジ姿じゃないぞ!?

重々しい威厳のあるイケメン壮年ダンディだ。

モアブ親衛騎士が矢を放つ。

が、素通り。

部分的に霧化しているのか?

服装も…ド派手だ!

マントと金モール!

まるで……魔王!?

「な、何者?」

ひるむ、親衛騎士団。

「愚か者め! 我こそは【闇の大公爵(ダークデューク)】ナシオナル!」

バッとマントをひるがえす。

「魔界の黒き覇者! 深淵なる大迷宮の征服王なり!!」

堂々たる名乗りに混乱するモアブ騎士たち。

「ままま、魔王! 勇王ナビンが倒したという…」

「我が迷宮内で狼藉を働く慮外者ども、報いを受けさせてやるぞ!」

「この少年を傷つけたのは誰だ!?」

思わず一人の騎士を見てしまう親衛隊一同。

「え? えええ?」

焦る当人。

「ならば責任をとってもらおうか。」

騎士に向かっては左手を差し出した。

赤い魔法陣が発生。

「命を奪わんとするものは、奪われる事を覚悟すべし!」

「冥刻界の深淵を覗いてくるがいい!」

一方、倒れているディスカムに向かって右手を差し出す。

青い魔法陣が発生。治癒魔法?

治癒魔法陣が輝きを増すにしたがって、騎士の顔色が悪くなる。

剣をとり落とし、膝をつき、突っ伏して倒れた。

さらにその周りにいた騎士たちも次々に変調をきたす。

よろめいて倒れるもの。

うめき声をあげ膝をつくもの。

四つん這いになって肩で息をするもの。

「な、何だこれは…生命力吸収(ドレイン)?」

消耗する親衛騎士に対し、ディスカムの頬には赤みが戻る。

「お、おおおーーー?」

サンゴロウ騎士も驚きの声を上げる。

頬骨あたりに刺さっていた矢が、押し出されて抜け落ちる。

脇腹や腕、肩に刺さった矢も同様。

「こ、これは回復魔法? いや、【奇跡】!?」

「す、すごい。単身で【奇跡】を?」

組合長魔王が振り返って声をかける。

「いや、ま、人の生命力を移し替えているだけだよ。」

いつの間にか地下からのエレベーターが再び動いている。

新手だ。

新たに矢をつがえた弩弓を構えた騎士の一隊が上がってくる。

「もう一度、さっきの攻撃を…」

「いや、あれ治療が終わっちゃうと使えないんだよ。」

「ええ!?」


一方、管制室。

「早く応援に…」

「弩弓が相手じゃ…盾とか用意してないし…」

焦るのはシマックさん。

「サンゴロウは大丈夫なのか?」

ベスタさんもイラついているが…

「ここにも犬獣機を残しとけばよかった。」

ウェイナさんが唇を噛む。

一方、冷静なのはベータ君。

いや、冷静っていうのとは違うか。

「タンケイさん! 分解作業をお願いしますよ。工具の準備を。」

「え? ベータ君? 分解って…」

「ミネルヴァさん、合体準備を。」

「え?」

「な、何をするつもりなんじゃ? ベータ。」

管制室、飛行ユニット滑走路の真ん中に立つベータ君。

器機召喚アポーツ!」

召喚されたのは……女怪魔道機ボディ!!

ハイエートの矢にダミーヘッドを打ち抜かれ、機能停止中。

召喚? ああ、そうか。女神神殿で捕まった時…直接触れていた。

あの、短い時間で引き寄せ認識していたのか!?

「タンケイさん! ダミーヘッドを外してください!」

「わかったっす!」

職人タンケイちゃん。

初めて見る機械。ほんの数秒見つめると…

まったく迷うことなく工具を選び、差し入れ、回して分解を始めた。

凄い速さ。

「タンケイは何でも出来るしな。」

「固有魔法にはそれと認識されておらんものもある。」

先輩職人や生臭賢者の言葉が頭をよぎる。

もしかしたら…タンケイちゃんも…

たちまちダミーヘッドが外れる。

コネクタを引っこ抜く。

「ミーちゃん! オッケーっす!!」

「お見事、タンケイさん!」

合体! パーフェクト・ミネルヴァ!


テーブルの後ろに隠れるサンゴロウ騎士。

天板に矢が突き立つ。

地下からさらに親衛隊員が上がって来た、魔道士だ。

このままでは押し切られる。

せっかく治療したディスカムも危ない。

その時、管制室からゴンドラが降りて来た。

応援か? だれ?

新手の親衛騎士たちが警戒、弩弓の狙いをつける。

脚が見えて来た、白い。

ええ? 裸足? 生足?

それどころかノーパン! ヘソ出し!

下乳、B地区解禁…て、女怪魔道機メデュウサ??

いや、頭部、顔が見えて来た…ミネルヴァヘッド!

奇怪な機械頭じゃないぞ!

オリジナルボディにミネルヴァヘッド!

ヘッドバード、鳥型メカが頭部に変形合体。

髪型部分と目の部分が鳥メカ。

この合体メカニズム。

顔面の下半分に当たるフェイスパネルはボディ側に収納されている。

レプリカである将機ボディのフェイスパネルは、俺本体同様のノッペリパネル。

鼻も口もないタイプだった。

オリジナルボディのフェイスパネルには口がある!

口唇の造形がなされている。

セクシーボディと相まってなんとも艶めかしい。

髪型部分も翼の位置が変わってツインテール感があるぞ。


完全なる神代魔道機。

エレベーターが到着すると同時に飛び出した。

凄いスピードで突進。

親衛騎士が弩弓を放つが…矢などものともしない。

空しく跳ね返った。

隊列に突っ込むと手刀だけで射手を薙ぎ払う。

前衛の弩弓射手を片付けると階上に声をかける。

「弓隊は片付けました。」

管制室からさらに応援が降りて来た。

女豹戦士ウェイナさん、人狼戦士シマックさん、虎戦士ベスタさん。

と、タマちゃんなオレ。

「サンゴロウ! 無事か!?」

ベスタさんは巨漢騎士を呼び捨て?

そう言えばミーハ村で勝負したって言ってたな。

タイマン張ったらマブダチ現象か?

「タマちゃん、偵察頼むよ。地下も制圧する」

オレが地下の陣容を確認。

ウエイナさんの指示でテーブルを盾にして地下に降りる。

後は同じパターン。

ミネルヴァが突っ込んで射手を排除。

そして肉弾戦。

三人そろって本来の連携を見せるミーハ三戦士。

女豹戦士の紙魔法で視界を奪い、人狼戦士がスピードで急襲。

虎戦士と負傷から復活した巨漢騎士。

パワー全開。逃げるところのない地下。

捕まえて放り投げる。壁にぶち当たって昏倒。

元々、そう多くの人数かいるわけではない。

さすがのモアブ親衛騎士団と言えども、もはやなすすべがなかった。


組合長は三戦士が姿を見せると同時に霧化。

戻った時には元のおっさん姿だった。

「さっきのは内緒にしてよ。」

オレとサンゴロウさんに耳打ち。

「あの生命力吸収ドレインはヴァンパイアの能力なんですか?」

「いや、ありゃ単なる治癒魔法だよ。」

「???」

「私がやるとねー、自動的に周りの生命力を吸っちゃうんだよねー。」

「以前、狭い病室で使ったら周りの患者が悪化しちゃって…」

なんとまあ。

「吸収だけってのは出来ないんで、けが人が居ないと使えないんだよ。」

治療が終わっちゃうと続かないってことか。

「いや、内緒にしてっていうのは能力のことじゃなくて…」

ああ、中二病発言の方ですか。


管制室にディスカムを運び上げる。

組合長の治療でケガは回復したが、出血がひどかった分完全回復とはいかない。

朦朧としてる。

「水飲ませろ、水!」

おやっさんが怒鳴る。

怪我は治っても血だらけになった服はそのまま。

「ディスカムーー!」

水精竜ウオーターシュートで水を出しながら泣き出すマビカ。

上下から水漏れ状態。

「おあ、おおう、あおお…」

うろたえて言葉にならないキラすけ。

「大丈夫だ、組合長が治癒魔法を使ってくれたから…」

マビカをなだめる兄上騎士。

「俺の方も心配してほしい…」


その時、ドームに衝撃が伝わった。

な、何だ? 今の振動!?

「う、お!?」

「外はどうなっとるんじゃ?」



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