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妹エルフのお見舞いにいくよ


魔法を使うと筋肉痛になる。


ロマンもエロスも衝撃の事実の前に吹っ飛んだわ。

朝チュンどころじゃないわ。

まだ鳴いてんな、チュンチュン

? だんだん大きくなってね? チュンチュン!

いや、何これ? ヂュンヂュン!!

「な、に? これはまさか?」

先生の顔色が変わる!

「いかん、ベータ!」

そういえばそろそろベータ君が来る時間。

机の上から魔法ディスクひっつかんで先生が表へ飛び出す。

下着姿も構わず。まあ、それはいつもですが。

あわてて後を追う。

ちょうどベータ君が歩いてくるのが見え…走ってる、全力疾走!

「伏せろ! ベータあぁー!」

上空から翼長5mはありそうな巨大な鳥が急降下!

うわあああー!!

鳥? 翼竜? ウロコ!

ベータ君をかすめる。必死の形相で転がる。

雀竜じゃくりゅう!」

「なんで、こんなところに!?」

ヂュンヂュンヂュン! 威嚇するような鳴き声!

お前かよ! とんだ朝チュンもあったもんだ!

旋回して再び降下の構え。

先生がディスクを投げる! かわす! 機敏だぞコイツ!

「くそ!」

歯がみする先生。

鳥との相対速度が速いせいでディスクの有効範囲に入らない。

「拳骨シュート!」

叫んじゃったよ! これかっこ悪いのに!

左腕を打ち出す。

かわす? でかいくせに空中機動がすごい。

鉄拳をぎりぎりで見切ってかわす。

しまった。これ使っちゃうと腕が使えない時間が出来る。

なら、ビームだ。

発射!命中! 

効かない?? 拡散反射された? うろこの表面がミラー構造なのか?

想定外!


でも、その間にベータ君に駆け寄る。

身体を跨いで仁王立ち。当たらないならそっちから来てもらう。

来いやあー! カモンカモン!!

襲い掛かる爪、右腕でその足をつかむ!

地上ならこっちのものだ。焼き鳥にしてや……

俺の馬鹿、ベータ君の上では炎縛鎖も雷神槌も使えないじゃん。

戻ってこい拳骨シュートぶん殴れ!

おおう? かわされた! 身体やわらかい! グニャリ!

コイツ目がいいのか? 動体視力?

もどれ! ドッキングだ。

くわえた! 

ドッキングしようとスピードを落とした拳骨シュートを銜えやがった!

ええい、片腕でもパワーは十分だ。

引きずり降ろしてやる!

え、あ、いや、俺の身体…浮いて?

翼の力、強いぞこいつ! あーれー!!


「目をつぶれー!!」

先生の叫び声!

閃光輝ライトニング!」

光っ…、うお、まぶし! センサーが一瞬飽和。真っ白に!

こういう魔法か? 習得したっきり忘れてたわ。

目を焼かれた怪鳥が墜落。俺も地面に落下。

ほんの1,2メートルの高さだけど、すげーびっくりした。

つかまえて膝下にしだく。

バタバタもがくが、羽ばたきを封じれば敵じゃない。

銀白色のウロコ。翼は?

膜でも、羽根でもない? 長くなったウロコみたいだ。

元の世界では見たことがない形態だな。


先生が駆け寄る。パンツ下がってる。

「目があー、目がああー!」

そしてベータ君がお約束!

「どうしますか? これ。」

尋ねる。

「イーディの作った朝弁当がダメになった。」

親指を立てて、下に向ける。

「朝食はフライドチキン! 焼け!」

炎縛鎖ファイヤワイヤ


怪鳥は炭になった。朝食は堅いパン。と水。

火力調整に難がある。何か別の方法を考えよう。

肉や骨は炭になったがウロコや羽根ウロコはそのまま残った。

対閃光、耐熱、軽量、高硬度、けっこう凄い代物だな。

「雀竜のウロコは高級素材だぞ。あいたた。」

「おやっさんにお土産だ。集めてもってけ。あいたた。」


筋肉痛なのに無理に動いたせいで先生が使い物にならなくなった。

年寄の冷や水。


夏場のコンビニで常温のお茶が売ってた。

冷たいのを避けるお客がいるそうだ。

冷たいの飲むとおなか壊すと。

現代に蘇る、年寄の冷や水。若者も買うけど。

ちなみにベータ君の目は先生がちょこっと治療。

治療しながら、あいたた、あいたたを連発。

やはり魔法は筋肉!


というわけで、今日は俺とベータ君でお買い出し。

あれ、これって二人きり? まるでデートみたい? どきどきしちゃう。

という、脳内ジョークをぶっぱなしながら街へ。

「ありがとうございました、アイザックさん。助けてくれて。」

「いえ、雀竜を倒したのは先生の魔法ですよ。」

「私だけだと危うく雀竜に連れ去られるところでした。」

「でも、すごくかっこよかったです。」

身長差があるから上目遣い。

可愛い顔でそんなこと言われちゃうと、ほんとにどきどきしちゃうぞ。


おやっさん製マント。フード付き。

肩には雀竜のウロコが入った袋。

古典的なひとさらいスタイル。童話に出てくるやつ。

ユニセックス美少年と並んで歩くと事案!

デートどころじゃねえ! 周囲の視線が痛い!


まずは組合長のところへ行って雀竜の件を報告。

本来、あれの渡りのルートはずっと南の方で、レガシにはめったに来ない。

はぐれだと思うが、町民に一応注意を促してもらう。という先生の言。

組合長は不在。留守番のお姉さんに伝言を頼む。

お葬式が立て込んでるそうだ。ああ…。

ちょっとブルーになる。


次はおとなりの救護院。妹エルフの容態を確認してこいとの指令。

ベータ君がしり込み。お姉さんにつかまると困る。

お弁当をだめにしたし。怪鳥に襲われたことがわかると心配かける。

ふふふ、弟さんは着実に姉離れしてますよ、イーディさん。

先にドワーフ工房に行って待ってると。

フードを深くかぶりなおして院内へ。

驚ろかすといけないからね。

女の子が3人。角のあるお姉さんをつかまえて何か交渉中。

「お姉さまとは面会できないんですの?」

「休養のため、面会禁止の指示が出ています。」

「そんなに重傷なんですの?」

「いえ、治療は終わっているから大丈夫ですよ。あくまで、休養のため。」

「それではしかたありませんわね…」

おねえさま? ですの? わね? お嬢様か? すごいぞ異世界。

お嬢様が実在する! ごきげんよう!

お姉さまって妹エルフのことか? めくるめく百合の世界か?

そういや、お兄ちゃん以外には凛々し勇まし萌える王子系だったもんな。

そう、ボーイッシュ。胸とか。

しかし、どういうグループ? 百合学園が存在するのか? この街。

ブルネットお嬢様と、ネコミミx2。お嬢様は…人間?


おっと、あきらめて引き返そうとする女子隊と鉢合わせになる。

「ひ!」

引かれてしまった。そういう反応、そろそろ慣れたな。

「あ、あなた…は?」

さーて、説明するのがめんどくさいな。よし。

「ワタシ・ハ・エルディードウシノ・マドウキ・デス」

「ドウシノ・メイレイデ・オツカイニ・キマシタ」

「まあ、エルディー先生、本当に起動に成功したんですのね。」

なんだ、知り合いか。

自律行動できるなんてすごい、とか、お使いできてえらいわね、とか言われた。

いいぞ、これ。受けてる。

見た目は不気味だけどブサカワイイとか、こんなの置く所に困るにゃ、とか言われてる。

早く帰れ、おまえら!

鬼人のお姉さん、くすくす笑ってる。

昨日もいた人だから事情は知ってるもんね。


「エルディー先生の指示でデイエートさんの様子を確認にきました。」

「でしたらイーディが説明に。病室でお待ちになったら?」

「面会禁止では?」

「女の子たちは断ってくれと、デイエートさんが。」

そうなのか? まあ、確かにアレに見舞いに来られたら気疲れするか…

お兄ちゃんに甘えてるとこ見られたくないとか?

「実際、他にもいっぱい来ましたし…」

ああ、数の問題か…人気者め。


病室は個室、と言うか、あんまり入院する人はいないらしい。

治癒魔法があるし。魔力の効果で感染症とかは少ないみたいだ。

ドアをノック。

「アイザックです。」

ガタッ ん?

「は、入れ。」

ベッドの上に妹エルフ。大き目のクッションで背を起こしている。

病床の美少女。こういうのもいいね。

窓の外の木の目をやる。

あの最後の一葉が落ちると…

すげー茂ってる。窓の外の木。毛虫とか出そう。

元気そうじゃねーか。

あれ? ハイエート兄は?

「デイエートさん、お一人でしたか?」

「お兄ちゃんはウチ。着替えとか…取りに行った。」

そうか。

…しまった、お兄ちゃんをあてにしてたから、間が持たないぞ。

「……」

う、どうする。

「お兄ちゃんから聞いた。」

え?

「昨日はありがと。」

おいおい、しおらしいな。らしくねーぞ。

「………」

「…見たでしょ…」

え、何を?

「何でもない!」

毛布かぶって顔隠しちゃったぞ!

えーと、俺はどうしたら?

「…おっぱい」

はい?

「おっぱい見たでしょ!」

あー、えー、はい、それは否定しませんがー

「小さいって思ったんでしょ。」

毛布から目だけ出してにらみつけて来たぞ。

くそう、かわいいぞ。コイツ!

気にしてるんだ!?

まあ、周りにタンケイちゃんとかデイヴィーさんとか。

上級国民が存在してるしな。あと、一応、先生も。

だが、なんて答えればいいんだ? こーゆー時。

困った、ピンチだ。かつてないピンチ!

『褒めるんですよ』

おう! ナビ君! ここで?

『とにかく褒めるんです』

いや、そんなこと言われても、もっと具体的な指示を…

『………』

おい!


いや、まあ、思ったことを正直に…

「お綺麗でしたよ。」

何言ってんだ俺。

「宝石のようだ、と、思いました。」

うああーこっぱずかしい!

あきれられてるぞ!

見ろ、毛布かぶっちゃったぞ。

「ばかっ、なにいってんの!」

あうああー、お兄ちゃん早く帰ってきてー

イーディお姉さん早く来てくれー


「……」

「…おしっこ。」

は?

「おしっこ行く。」

は、はい。

ベッドから身を起こす。

前開きのあっさりとした病衣、一枚。

「まだ、ふらふらする。」

「大丈夫ですか?」

「抱っこ。」

はい?

「抱っこして連れてって、昨日みたいに。」

甘えん坊か!?


ああ、俺、勘違いしてたわ。

コイツ、お兄ちゃんの前では猫かぶってるのかと思ってた。

違うわ。

逆だ。

なんでだか、いつもは気を張って強がっている。

お兄ちゃんがいる時だけ安心して地が出るんだ。

こっちが素だわ。甘えん坊だわ。

ん、俺といて、安心してるってこと?

よくわからないけど、まあ、信用してもらえたんなら…

抱っこする。お姫様抱っこ。

抱き着くようにして首に腕を回してきた。

「こっちでいいですか?」

「うん」

ミニイたんを抱っこしてる時みたいな気持ちだな。

廊下に出ると。

「こら! デイエート!」

後ろから声がかかった。フードかぶってるから後ろは見えない。

でも、この声、イーディお姉さんだ。

「自分で歩きなさい! 身体動かした方がいいんだから。」

「ハイエートも甘やかさない! あら?」

俺のこと後ろ姿だけ見て兄エルフだと思ったのか。

「え? アイザック…さん?」

「はい。」

デイエートを降ろす。恥ずかしいからね。念のため片手で支えてね。

お姉さん、俺とデイエートの顔を交互に見比べる。

「あら、あら、へえー…」


その時、

「ぴん、ぽん、ぱんぽーん、ぴーーー」

なんだこれ?

「こちらは町内組合です、ぴー」

「あら、拡声魔法、直したのね。」

そんなのあるの?

「本日、早朝、北の遺跡付近で雀竜じゃくりゅうが確認されました。ざざざざ」

「確認された個体はすでに退治されましたが、ぴー、ぶつ、ぶつっ、」

「念のため外出の際は武器、魔法護符を装備し必ず二人以上で行動するよう心がけましょう。ぴー」

「ぴんぽんぱんぽーん! ぴーーー、ぶつっ!」

ああー、こういうの、よくあった。元世界でも、熊とか。

ホントにしっかりしてんな、この街。

「北の遺跡!?」

あ、いかん。お姉さんが反応してるぞ。

「ご心配なく、ベータさんは無事です。」

「あ、ああ、良かった。あ、もしかして…」

「退治したのって、あなた?」

「私とエルディー先生ですね。」

お姉さんほっとした。ベータ君すぐそこまで来てたことは内緒。

「そういえば先生は? なんで自分で様子見に来ないの?」

「デイヴィーだって忙しいのに来ていったわよ。」

「実は、筋肉痛で。」

「ああー…、まあ仕方ないか、大活躍だったし。」

お、誰か呼んでるぞ。

「イーディさん、お願いしまーす。」

「はあいー。今いくー。」

「デイエートはすべて順調、問題なしって伝えといて。」

「はい。」

忙しそうだ。

ところで、

イーディさんと話してる間、俺にもたれるようにしていた妹エルフ。

腕に抱き着くような感じになってる妹エルフ。

胸の辺りを腕に押し付けるような感じになってる妹エルフ。

薄い病衣ごしに、何か当たってるんだが?

肘のあたりに、何かぷっくりしたものが当たってるんだが?

何かぷっくりしたものがこりこりしてるんだが?

こりこりしたものが、すごくこりこりしてるんだが?

そして気のせいかな?

わざとこすり付けてるよう気がするんだが?

頬が上気して息が荒くなっているように見えるんだが?

「おトイレに行かなくてよろしいので?」

「はひっ」

ビクッとして身体を離した。

「あ、うん、行く、イクイク、一人でイク。」


やめてよ、その言い方。



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