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死闘!



魔犬将機ガルムはハウンドファイブに。

女怪魔道機メデュウサは兄妹エルフとキラすけによって倒された。

残るは魔王機バンカー。


とはいえ、実際の戦闘は順番に起こっているわけではない。

同時進行でやってる。

魔王機と戦う俺、状況確認中のタマちゃん、細かいところを補完するカナちゃん。

北遺跡ドームに迫ろうとする魔王機を俺とスカイエクソンが押しとどめる。

スカイエクソンと俺は意識共有状態。2心1体!

いや? 1心2体? 2体1体? ええ?

ドーム上からのデイエートの射撃とメデュウサの攻防に気をとられたバンカー。

そのすきをついてパワーブースト! 突進!!

被甲身をまとわせた前腕部を回転させ、突き込む!

かつて王城でゴリアテを貫いたきりもみ拳骨シュート!

いかに魔王鎧と言えどもこれなら…

ところが、魔王機の身体に触れた瞬間、被甲身バリヤーが消滅した。

魔力封じマフラー効果か!?

魔力核を手に入れた今、バンカー・モアブの魔力は圧倒的。

こちらの魔法が無効化されてしまった。

ドリル型被甲身を失った拳骨シュート。

いかに回転していようとただの拳。

魔王機の装甲に押し当てて回転しているだけ。ゴリゴリ、ぐりぐり。

「こそばゆいわ!」

うん確かに、そういう感じ。


デイエートの速射矢を遮ったエクソアーマーソードが戻って来た。

あわてて身を離す。

まずい、この魔力封じマフラー、意外と厄介だぞ。

スカイエクソンの衝角アタックも無効化されちゃうかも。

ならばもう一度ドリルアタックパンチだ!

アイザック本体が仕掛ける。

「無駄だ! そんなもので魔王鎧は破れんぞ!」

魔力封じ発動! ただのパーンチ!!

その瞬間、タイミングを合わせてスカイエクソンからビーム攻撃!

魔力封じが働いている間はバンカー自身も魔法は使えない。

魔法以外の攻撃のチャンスでもあるのだ。

こないだのコーナーキューブミラーで再帰性反射されると厄介だからね。

魔王機の背中に命中!

「おお? やるな!!」

だが、すかさずアーマーソードが間に入って防御。

さすが神代魔道機、単発照射で貫通は無理か!

逆にブーストをかけて俺を押し倒す魔王機。 

俺の顔面を押さえつけ、地面に押し付けると魔力封じをオフ。

キューブミラーを発生させ空からのビームを防ぐ。

今だ! 今度は俺が魔法攻撃、手刀、貫き手に魔力バリヤー発生。

簡易型天空無双剣を突き込む!

と、思ったけど腕が上がらない! 動けない?

地面にくっついている。凍り付いているんだ!

氷雪虎スノーレパード!? 魔力封じを解いた一瞬で俺の動きを封じた?

ふりむいてミラーを操作するバンカー。

スカイエクソンはビーム攻撃を断念。

一瞬見えた魔王鎧の背中、さっきのビーム攻撃で傷跡が出来ている。

ヒートボディ! 赤熱! 凍結を解いて身体を転がす。

今まで俺がいた場所にエクソアーマーソードが突き刺さった!

危ねえ! バンカーの魔法攻撃、多彩だぜ。

王都でデスクワークしてた人じゃなかったの?


再びアーマーソードを握り直す魔王機。一振り!

間合いを取り直した。ちらりとメデュウサの状況を確認。

キラすけによるケースガンへの冥刻界結鎖デスグリップ

パルスビーム封じに驚愕。

「な? なにが? 何が起こってるんだ?」

「ビームを封じる魔法か?」

ケースガンを捨てたメデュウサがパワーブーストを発動!

俺もびっくりしたけど、バンカーもびっくり!

「ええ? あんなことできたの?」

あんたも知らなかったんかい!?

だが、チャンス! 加速装置!

いかに魔王鎧のパワーがあろうと中のバンカーは人間。

加速思考のできる俺の方が早く動けるはず。

飛び掛かると腰に腕を回す。

重力魔法グラビトン! 軽量化!

半ばジャンプするように持ち上げると、そのまま後方へ叩き落とす。

重力増加、加速落下!

ジャーマンスープレックスじゃなくてバックドロップ!

いや、魔道機ボディはブリッジ出来ないんですよ。

身体硬くて…

加速して地面に叩きつけられた魔王機。

中身が人間なら、この衝撃でダメージを受けるはずだが…

「何だ? 妙な魔法を使うじゃないか。」

効いてない?

マフラーが発光、魔力封じが起動。

「油断は出来んなあ。」

魔法じゃなきゃいいんだろう!?

超振動波だ!! 最大振動!

温泉地の大岩蜘蛛をも倒した攻撃!

「おおおーーー?」

激しく振動する魔王鎧。

身を離してジャンプ、距離をとる俺。 どうだ!?


だが、魔王機は平然と身を起こす。

その時、ハイエートの矢がメデュウサを貫いた。

「な!」

魔王機が驚いたのは俺の攻撃に対してではなく、倒れたメデュウサにだった。

何? バンカーにはまったくダメージがない?

中の人には、まったく衝撃が伝わらないのか?

『魔王鎧の中は高次元構造。物理攻撃による衝撃は内部には伝わっていないようです。』

まじかよ、ヘルプ君。先に言っといて欲しかったわ。

だが、今の攻撃の間に一つ仕込みが終わったよ。

上手くいくかどうか…


メデュウサに駆け寄る魔王機。

大の字になった女怪魔道機はピクリとも動かない。

「何と言う射手。魔弾の射手か!」

お兄ちゃんエルフの神技に、さすがのバンカーも唖然。

「まさか、魔道機でも魔道士でもない弓使いにメデュウサがやられるとは!」

これで完全に形勢逆転。

魔王機1体に対してこちらは俺本体、スカイエクソン。

さらにハウンド6体。

今、まさにケロちゃんGも駆けつけようとしている。

「このあたりで手打ちと言うのはどうですかね?」

一応、休戦の提案とかしてみる。

「ふふふ、今の私は過剰魔力による魔力酔いの状態ですよ。」

もちろん魔王機には表情なんかない。

だが、今のバンカーが笑っているのがわかる。

「損得や冷静な判断では動きませんな。」

自分で言っちゃうの?

そんなことが言える時点で理性を保っているのがまるわかりだけど。

「あなたは一体何が望み…」

「この程度で優位に立ったと思われても困りますな。」

エクソアーマーソードが発光する。

「雷神剣!」

剣を振ると同時に迸る雷光!

雷神槌サンダーボルトの発展形か!?

威力が桁違い。ハウンドファイブが巻き込まれた!

稲妻が地面をえぐり、白煙が上がる。

ハウンド達は女騎士のサンダーブレードを受けたときと同様に硬直して動きが止まる。

装甲の外側からこの威力!

凄まじい! 白煙に視界が奪われる。

なんてエネルギー。圧倒的だ!

って、あれ? アーマーソードは?

煙の中からすっ飛んできた!

振り切った後、そのまま投げた! それも真っ直ぐ投げたのではない。

ぶんぶん水平回転しながらぶっ飛んでくる!

あっぶねー!

かろうじて避ける。

以前、「空飛ぶ十字剣」を3Dで見た経験がなかったら、まともに喰らっていたかも知れない!

青と赤のセロファンメガネでね。

「雷神剣!」

次の一撃はケロちゃんGを直撃!

これまた一発で動きが止まった。

いや、剣、使ってないですけど? 投げちゃったですけど?

エクソアーマーソードと雷撃、全然関係ないんじゃん!

単なる雷神槌サンダーボルト。魔力核から供給される魔力のせいで威力が桁違いなだけ。

思わせぶりなこと言って、意表をついてアーマーソードを投げつけた。

どうして、いちいちやることがセコいのこの人?

だが旋回するソードはスラスター噴射で加速しながら俺を追尾。

再び、襲い掛かってきた。

垂直ジャンプでかわす!

上空のスカイエクソンの足をつかんで上昇。

間合いを取る。


『護符はくっ付けたか?』

おっと先生。言いつけ通り仕掛けました。

でも、あれ、俺には発動できないんですけど。

『発動は私がする。』

え? ちょっ! 危ないですよ、先生。

『お前はあの魔力封じの布を何とかしてくれ。』

確かに。せっかくの仕込みもあれがあったら使えない。

物は布だから燃やしちゃうのは…炎縛鎖ファイヤワイヤ

いや、発動しないか…

プロジェクションビーム? 再帰性反射されちゃう?

『魔法じゃなきゃいいんでしょ。』

え? デイエート?

『油かけて燃やしたら?』

あー、ごもっとも。

『お酒がいいんじゃないですかねえ? 蒸留酒。』

ハイエート。

『そういや、エルディんちに高そうな酒があったの。』

メガドーラさん。

『え? 何で知ってる? ちょっ! あ! あれはダメだ!!』

でも、背に腹は変えられませんよね。

頼むぞ、スカイエクソン、少しの間魔王機をくい止めてくれ。


魔王機を任せて、俺本体は先生んちに駆け込む。

勝手知ったる自分のうち。台所へ。

台所イコールお勝手ですけど。

戸棚の奥に度数の高い、いいお酒が隠してあるのは俺も知ってた。

どうすっかなー、これ使っちゃうと先生がっかりするよなー。

台所には食用油もあるけど…

食用油の引火点|(火を近づけると燃える温度)は300℃。

40%エタノール水溶液|(酒)なら26~29℃で引火する。

あー、やっぱりこっちを使うべきだよなあ。ごめん、先生。

ちなみに灯油の引火点は50℃、ガソリンはなんと-38℃でも引火する。


いいお酒らしく、この世界ではめずらしいガラスのビン。

って、残ってないじゃん!!

ほとんど空っぽだよ!!

『え? そんなはずは……』

先生の悲痛な声。

『…………』

メガドーラさん?

『いや…そのぉ……高そうな酒があった、と言う過去形…』

あああ!

ええーい、仕方がない!

かめに入ってる食用油を…

まてよ? どうやってぶっかける?

甕ごと持って行ったら警戒されるよな。

かといって中身だけ持っていくわけにも…

『【収納】しましょう』

ええ、ヘルプ君? いけるの?

ええい!

油の甕に手を突っ込む。

吸い込む。

すげー! 収納機能すげー。液体をそのまま収納できるのか!


この間、スカイエクソンは上空からビーム連射。

と言っても、直接狙うと再帰性反射で自分がダメージ食らう。

わざと当てないように威嚇射撃。

最初は効果があったが、すぐにバンカーに見破られた。

ビームを無視して悠然と歩を進める魔王機。

だが、時間は稼げた。


家から飛び出すと追撃。

分割高速思考。

水精竜ウオーターシュートを解析。

魔法構造から、水を召喚して噴出する【ポンプ機能】を抽出。

収納空間から召喚した油を高圧噴射。

ヒートハンド! ロボキュートの応用だ。

油を引火点の300℃まで加熱して噴射!

同時に電撃火花で着火!

火炎放射だ!

燃える油を吹き付ける。

発生時点は魔法だが、魔王機に届くのは物理現象。

魔力封じは効かない。

「何!?」

魔力封じが効かない炎に驚いたバンカーだが、すぐに切替。

魔力封じをオフ。水魔法で消火を図る。

それを見越して炎縛鎖の護符を投げつけた。

物理プラス魔法の二重攻撃。

だが、反応が早い。

ソードでディスク護符をガード!

そこへ飛んできたのはハイエートの矢だ。炎縛鎖護符付!

「なんと!」

正確に首筋、マフラーに命中。

燃え上がる布。

さすがに火炎放射と炎縛鎖の連続攻撃では消火も間に合わない。

首に巻いた布が燃え上がる。魔王機、炎のマフラー。

すぐに燃え落ちた、魔力封じ排除完了。


「む!」

遺跡の扉が開き、先生と夢魔女王が馬獣機に乗って走り出た。

「何? 大魔道師と大魔女!?」

「魔力封じを燃やすのにこだわった事といい……なにか魔法攻撃を仕掛けるつもりか!?」

一瞬で状況判断。

できる男だ、バンカー・モアブ。

そう、実は仕掛けたのは【遅延魔法】。

夢魔女王開発の遅延拘束陣護符タイムラプス

バックドロップを仕掛けた時に魔王機の背中の真ん中に護符を貼り付けた。

なんだか不思議なアスファルトみたいな接着剤で。

工房で炉のレンガを固定するのに使っているらしい。

外骨格の魔道機は身体硬いから背中には手が届かないはずだしね。


遅延拘束なら、魔王機がどんなに強力であろうと拘束できる。

だが、この魔法。俺には発動できない。

時間を操って引き伸ばす魔法だから。

3次元を超えた4次元、5次元的イメージの併用が必要なのだという。

その部分は当然、物質的に魔法陣に描いたり、詠唱魔法化することは不可能。

意識内でしか構築できないイメージ。

それが出来るのは高位魔導師である先生とメガドーラさん。

エアボウド導師ですら無理だという。

「たぶん、人間…ヒト獣人の脳じゃ無理。」

とは、ジジイの弁。言い訳じゃないよね?

魔法の無い世界から来た俺には到底無理。

夢魔女王が言うには魔王城山では多少離れていても発動できた。

魔王城山は全体が魔法石で出来ている。

ある意味、大街道ネットワークと同じで魔力通信が可能だからだ。

だが、この場所でのタイムラプス発動には術者が直近まで接近する必要がある。


触れる? 魔王機に?

ムチャはわかってる。それでもやるしかない。

だが、バンカーは用心深い。

魔王鎧を自分で纏うとか、王都を敵に回すとか、当人の行動は無茶苦茶無謀。

だが他人に対してとか、戦闘時とかはむちゃくちゃ用心深い。

パワーブーストで上昇。先生たちから距離をとる。

「最強とか言っといて、生身の女から逃げるのか!」

先生が煽る。平然と返すバンカー。

「ご婦人方のお相手は苦手なんですよ。私、シャイなもんで。」

そういえば、いい歳して独身?

やっぱりニュース王子とか、ベータ君とか…そっち系のヒトなんですか?



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