決闘!
ついに対峙した俺と魔王機。
「魔道機最強を決めようか!」
魔王機バンカーがエクソアーマーソードを構える。
一対一の決闘!
ピロリーーーン!
は? メール?
魔犬将機からの強制力付きメールか?
『われに従え! 魔道機体を攻撃せよ!』
ちょっ! 最強を決めよう!とか言っといてこれ!?
レガシの街から何体もの警護獣機が駆けてくる。
3対1は不公平とか言った舌の根も乾かないうちから、この仕打ち。
この人! まったく信用ならねえ!
ま、もっともこっちもスカイエクソン隠してますが。
そして、女怪魔道機がマントを開いた!
白いボディがむき出しに。
裸マントを全開、野外露出痴女アクション!
このボディ、なんかもう不必要に凝った造形なんだよな。
先っちょとかたてすじとかまでモールドされたエロ機体。
将機ボディミネルヴァの少女体型ボディも確かにエロかった。
けど、アレはヒトを選ぶエロさ。
ロリ+メカフェチだったらジャストヒットだけど、属性のない人には「ふーん」で流される。
だが、このオリジナルボディは問答無用。
ゴージャスプロポーション。
ヒト族の根源的生殖本能に訴えかけるよ。
そして、今その腰にはベルトが巻かれていた。
オールヌードより、何か一品、身につけるとエロさが増すと言うアレ。
スイカに塩かけると甘みが増す的な。
…え? そんなの知らない?
いや、ほら。
品種改良や出荷前検査技術が進む前のスイカは今のより糖度が低くて…
西瓜ってより瓜? みたいな奴が混じってることが…
少量の塩をかけると甘みが強調されて…甘いスイカのような気がするって言う…
昭和か!
いやいや、とにかくメデュウサの腰にはベルト。
そのベルトに下げられていたのは、ケース型ビームガン!
あー、ミネルヴァがやられた時に落っことしてきた奴。
修理できたのか? ま、出来たから持ってきたんだろうけど。
そして構えて連射!! あちあちあち!
ケースガンのパルスビームは俺の装甲を打ち抜く威力はない。
でも熱いもんは熱いよ。
とっさに【収納】からおやっさんマントを取り出してガード。
将軍機に貸してたの忘れずに回収できてよかったよ。
同時に氷雪虎で冷やす。
これはバンカーがやってるのを見て学んだ。
「なんだ? そのマント、今どこから出した?」
バンカーが驚く。
教えません! てか、それどころじゃない。
この人、自分で質問しながら同時にソードを投げつけてきた!
いちいち、相手の気をそらす攻撃。
ビーム連射と空飛ぶソードを同時にかわす。
ていうか、転げまわって逃げ惑う感じ。けっこう悲惨。
こっちもビームだ!
スカイエクソン発進! ビーム発射。
これはメデュウサがマントでガード。
この隙に手近にあった建物の影に逃げ込む!
はい、先生んち。
『あ、こら! そこに隠れたら……』
先生から抗議の声。
連射! メデュウサ。穴だらけ、先生宅。
『あああああ! わたしんちがあああーーー!』
家の影に隠れた状態で、スカイエクソンと連携!
俺本体とユニット、それぞれ別方向に飛び出す。
飛行ユニットが別行動すれば3対2。
そうこうしてるうちに街から駆けつけて来たハウンド。
6体がガルムの周りに集まる。
俺に向かって一斉にヘッドアームを開いて威嚇。
ハウンド6体、ガルムにメデュウサ。
そして一撃必殺のエクソアーマーソードと魔王機。
大ピンチ!!
『抹殺!』
ガルムの命令とともにハウンドがいっせいに飛びかかった!
…ただし、飛びかかった相手はガルム。
集まってきたのはセキュリティ設定オンのハウンドファイブだった!
途中までガルムの命令に従ったようなフリをして接近したのだ。
謀リ事多キハ勝ツ!
レッドことU-69が、ホワイトが、イエローが、ブラックが、グリーンが一斉攻撃。
おっと、ブルーことベルちゃんもいるぞ。ヘッドアームが一本しかないけどね。
ま、全員色つきマフラーは外してるんで誰が誰だかわかんないんですけど。
一斉攻撃と言ってもそれぞれの役割を分担。
ガルムの動きを止める。
四本の脚をそれぞれがヘッドアームで捕らえて固定。
完全に動きの止まった魔犬将機。
高周波振動ヘッドファングを開いた。
前足に取り付いたハウンドを排除しようとするが…
そこへ、俺の拳骨シュート!
左腕をぶち込む! ヘッドファングが吹っ飛ぶ。
最大の武器を破壊!
四本足を固定してなお、こっちの方が2体多い。
追加戦士がいて良かった。
ぶんぶんハンマーで脚をへし折り、ドリルアタックで腰の辺りを貫く!
アンテナラインが断末魔のように発光!
『ヤ、メロ……』
命令を発するが、効果なし。
むなしく停止した。
チームワークの勝利!
戦隊アタックだ! 袋叩きとも言う。
混戦状態になると、味方に当たるおそれがあるから飛び道具は使えない。
メデュウサはみすみすガルムを見殺しにするはめになった。
だが、この間に魔王機バンカーはパワーファイヤでブースト。
北遺跡のドームに迫る。
俺は、拳骨シュートを回収。
オーバードライブ! パワーブースト!!
魔王機バンカーを追って突進。
逆方向からはスカイエクソンが衝角アタックをかける。
進路をふさがれ着地する魔王機。すでにドームが近い。
ガルムをあきらめたメデュウサ。
地面を走って意外なスピードで追従する。
足速いぞ! そして揺れる。
ぷるんぷるん揺れてるぞ?
ええ? 直接触ったベータ君に確認したところでは別に柔らかくはなかったって…
何でそんなこと確認したんですかね、俺。
じゃあそれ、装甲板を能動的にスライド動作させているのか?
重力による揺れをサーボアシストで再現しているのか!?
必要なの? その機能?
無駄! 無駄無駄無駄アァーーー!!
だが、それがいい!
作った人に感謝したいよ。
ダミーヘッドも見慣れてくるとそれなりに魅力があるような気もするしね。
メデュウサはケースガン連射でスカイエクソンを牽制。
だが飛行ユニットは普通の飛行機とは違う。
空気抵抗を使った操舵翼で方向を変えるわけじゃない。
両翼端の噴射ユニットによって進行方向を制御する。
ハンドルとタイヤによって方向を変える自動車ではなく、
キャタピラの回転によって方向を変える戦車みたいなものだ。
いわゆる超信地旋回が可能。
その軌道は弧を描くのではなく鋭角的に変化する。
UFOの動きだね。
その高機動にケースガンはついていけない。
人型魔道機が構えていることで追随性に限界があるのだ。
かつて獣機本拠地で将軍機が拳骨シュートを追い切れなかったように。
的を外れたパルスビームが遺跡ドームに着弾。
『こら! こっちに撃たせるな!』
俺もヒヤッとしたよ。
ドームの外装はビームを弾いた。
雀竜のウロコと同様の拡散反射。
熱線砲の高熱に耐える外装だけのことはある。
『その白いの、何とかするわよ。』
その声、デイエート?
遺跡ドームの上部にあるのはパラボラ熱線砲だけじゃない。
短波アンテナやマイクロ波アンテナが収納されている。
そのアンテナ用の小ハッチが開く。
姿を現したのはデイエート、とキラすけ!?
あぶないぞ! なんて無茶な。
「ホントに大丈夫なんでしょうね? 黒いの。」
「『黒いの』ではない! 【黒き宝玉】!」
ドームの構造材内部に通路があったのか?
メンテナンス用?
ハッチから身体を引き上げるデイエート。
すっくとドームの上に立つ。
その足元に首だけ出して外を見るキラすけ。
その奥にはメガドーラさん?
「ビーム以外の攻撃には儂が被甲身を張る。安心しろ。」
「頼むわよ、ホントに。」
妹エルフが続けざまに矢を放つ。
予知能力があるとしか思えない先読み。
メデュウサの頭部、ダミーヘッドに矢を集中。
女神神殿では兄エルフの矢を掴んで見せた女怪魔道機。
だが、ケースガンを抱えているので両手が使えない。
しかも野外、解放空間では分が悪い。
弾道射と水平射、しかもドーム上からの撃ち下ろし。
使い分けながら矢継ぎ早に射撃!
使う弓の大きさもあるけど、連射能力では兄エルフをも凌ぐかもしれない。
多様な角度から降り注ぐ矢を全力で避け、振り払うメデュウサ。
「む、う!」
見かねた魔王機がエクソアーマーソードを投擲。
「たかが弓使いが!」
ぶつけるわけじゃない。
デイエートの前面を横切るように通過させる。
わずかに矢が途切れた瞬間を利用してケースガンを構えるメデュウサ。
危ない、デイエート!
「来るわよ、黒いの!」
パルスビームが発射!…されなかった。
いや、発射された。
だがビームは銃口レンズを出た途端に消滅。
いつの間にかケースガンの先端部が黒く変色。
いや、闇に染まっていた。
「冥界の黒き呪い、常世たる闇の鎖。縛れ【冥刻界結鎖】!!」
ハッチから半身を乗り出したキラすけ。
自信満々で中二ポーズ。
いや、ポーズより先にもう発動してたよね?
デイエートに向かって必死にパルスビームを放つメデュウサ。
発射されたビームはすべて闇に消える。
「な? なにが? 何が起こってるんだ?」
さすがのバンカー・モアブもキラすけの固有魔法に驚愕。
エルディー先生でさえ見たことが無かったと言う希少魔法だ。
「ほほう、何だかわかんないけど…やるわね、くろ…キララ。」
「お前の弓もなかなかだぞ、大平…デイエート。」
「今、なんて言おうとした! お前、人のこと言えないだろ!」
「ふふーん。我は最終的にはお祖母ちゃんみたいなボインボインになる予定なのだ。」
「お前とは違うのだ!」
「こ、このクソチビ!」
あー、もめない、もめない。
女怪魔道機はケースガンを投げ出すとドームに突進。
まさか?
装甲板がスライドして背中とふくらはぎにスリットが!
パワーファイヤを噴射! ブーストジャンプ!?
だが、そこにデイエートの速射矢が降り注ぐ。
これを両腕ガードで防ぐ。
その時! もう一つの小ハッチがはね上がる。
…兄エルフ! ハイエート!
「よいしょ!」
相変わらず緊張感てものとは無縁。
体重を感じさせない動きで、ひらりとドームの上に立つ。
自分の背丈を超える愛用の長弓を構える。
並みの射手では引くこともできない強弓だ。
難なく引き絞ると妹に劣らぬ速さで続けて矢を放つ。
金属製の矢。
女神神殿ではメデュウサにキャッチされてしまったが…
一本目の矢をブーストし高機動でかわすメデュウサ。
二本目の矢は払い落された。
三本目の矢。
余裕を見せるようにキャッチ、だが矢の先端に魔法陣が発生。
弾き飛ばされるメデュウサ!
地面に墜落した。
衝撃増強の魔法付与!
「ひっかかりましたね。」
デイエートの速射も、ハイエートの1、2本目の矢も囮だった。
あえて、普通の矢を続けダミーヘッドのAIに偏った情報を学習させた。
ダミーヘッドのAIがどの程度のものかはわからない。
だが、今まで弓矢で攻撃された経験なんかないだろう。
2016年マイクロソフトが開発したAI会話ソフト「Tay」はネット公開からわずか16時間で削除された。
ネット上の悪意に触れて、ヘイト発言やネオナチ思想を垂れ流すようになったからだ。
与えられた情報が誤っていれば高度な学習能力は、むしろ欠点にしかならない。
そして、実は3本目の矢も囮だった。
矢の速度だ。
ハイエートはあえて地下神殿での射速と同じ速度を続けていた。
次の4本目の矢はお兄ちゃんの全力射撃。
剛弓! 女神神殿に持ち込んだ弓とは比べ物にならない威力。
弓矢の速度は弓道でもアーチェリーでも時速200km強だという。
武道やスポーツでの話だ。
戦場で命を懸けて矢を放つ、達人と言われた武士のそれがどの程度のものだったか?
今の俺には知る由もない。
だがハイエートのそれはまぎれもなくヒト族最強レベル。
ラグビー猪の分厚い角頭骨を一撃で打ち抜く。
矢の威力とは、すなわち速度に他ならない。
狩猟神の化身が放つ神の弓だ!
メデュウサは機械学習をはるかに超える、その速度に反応できなかった。
矢が深々と地面に突き立った!
外れた? いや違う。
ダミーヘッドを貫いて突き抜けたのだ!
機能を失い地面に倒れ、大の字となるメデュウサ。
完全に動きを止めた。
うーん、ヌードで大の字はどうなんだろう。
はしたないですよ。
どうだ!? バンカー・モアブ!
だれが3対1だって?
俺の仲間は凄いだろう!