表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

177/371

ストライクスカイエクソン空爆


エルディー先生が発動した錆腐帯結界ラストベルト

その予定外の威力にサガっ原は阿鼻叫喚。

とうとう鉄蜘蛛が崩れ出した。

発電機以外は魔法技術のほとんど入っていない旧型鉄蜘蛛。

モーターのコイルが腐食して駆動力を失いへたり込む。

さらには関節や脚の先端が崩れ始めた。

積んでいたゴリアテが転がり落ちる。

パニックに陥った兵士たち。

もはや軍隊の体を成していない。

ベルトやボタンの金具まで腐食して、ズボンずり下がり前ぱーぱー。

泣き叫ぶ露出変質者前開きコート男集団。そんな感じ。

せっかくニュース王子に来たもらったのに、説得するとかそーゆーレベルじゃない。

「落ち着くまでしばらく時間をおいたほうがいいか…」

連絡を受けてため息をつくエアボウド導師。


だが、そんなこと言ってられなくなった。

大迷宮内で動きがある。

エレベーターが作動したのだ。

上層にあったゴンドラが無人のまま降下を始めた。

カナちゃん→タマちゃんへ連絡。

「魔道士がいたからね。動かし方を解析されちゃったかな。」

組合長が困り顔。

「ま、私ん時の配下の魔道士でも解析できたくらいだから…」

「王国の精鋭魔道士じゃ仕方ないか。」

…先に言っといてくれませんかね、そゆこと。

先の電話会談の時、バンカーはまだ女王神殿にとどまっていた。

迷宮を戻るよりエレベーターを使ったほうが速いという判断があったからか。


当初、サガっ原の兵士はまず説得。

言うこと聞かない場合にだけ空爆する予定だったが…

説得は後回し。先にサガッ原のゴリアテを破壊する。

スカイエクソン発進!

モアブ軍・王軍の駐留するサガっ原へ急行。

あー、近いわ。

ここんとこ、王都とか湾岸都市とか遠いとこばっか行ってたから。

すぐ、目と鼻の先。

逆にこんな近くまで軍隊が攻めて来てるってことに驚く。

ちょっと威嚇って言うか…注目を集めるために小細工。

錆腐帯結界ラストベルトで混乱を極める兵士たちは空なんか見て無いしね。

実は飛行ユニット、推進機関はほぼ無音。

ジェットエンジンみたいな音はしないんですよ。

仕方ないから合成音を拡声魔法で増幅。

轟音発生。

ハイブリッドカーは低速走行時エンジン音がしないから歩行者が気付かない。

危険回避のため2018年以降、新型車には車両接近通報装置が義務付けられている。

そんな感じで爆音を発し兵士たちの注意を集めながら上空を一回通過。

「なんだ!? あれは?」

「空を見ろ!」

「鳥だ!」

「飛行機だ!」

「いや、スー…飛行魔道機だ!」

『勝手にウソ言わない。この世界に飛行機はないですよ。』

ヘルプ君。いい感じでツッコめるようになってきたね、最近。


錆び落ちてへたり込んだ鉄蜘蛛。

荷台から転がり落ちたゴリアテを立て直そうとさらに2体が取り付いている。

そこをめがけて爆弾投下!

3体のゴリアテが吹っ飛んだ。

空爆コンテナの積載量は限られている。

投下爆弾3発とミサイル4発で12体のゴリアテを破壊しなくちゃならない。

無駄には出来ないんだよね。

多少、人間兵士や鉄蜘蛛を巻き込むのは大目に見てもらうしかない。

ピンポイント爆撃とか民間人の被害を最小とか…

所詮は幻想か。

悲しいけど、これ、戦争なのよね。


上手い具合にきちんと整列していたゴリアテ。

列のど真ん中に投下!

吹っ飛ぶ。

獣機は一部破損でも動けるから、完全に行動不能になったかはわからない。

だが、それぞれ手足の一本ぐらいは破損している。

離れた場所にいるやつめがけてミサイル発射!

1体づつ破壊していく。

「軍用獣機から離れろー!」

「狙われてるぞー!!」

「たすけてくれー!」

兵士たちの悲鳴。

轟音と閃光、爆炎と黒煙。

炸裂するたびに襲い来る熱風と飛礫に、うずくまる兵士たち。


正直これ、あんま気持ちのいいもんじゃない。

敵に反撃手段がないから「戦ってる」感がない。

うん、殺戮。

無人攻撃機のオペレーターが精神を病みやすいって言う理由がわかるわ。

全部、片付いたかな?

あーと、まだ1体残ってた。

全弾使っちゃったよ。


ならば! 空力バリヤー作動!!

飛行ユニット単体では魔法が使えない。

格納した被甲身バンパー護符を使って流線形型障壁を発生させることで空気抵抗を低減していた。

バリヤーの形状は何種類か用意した護符を使い分けることで決まる。

今回、念のために用意してきた護符がある。

王城でゴリアテと戦った時にきりもみ拳骨シュートに使ったドリル状バンパー。

あれの応用。スカイエクソン全身に発動。

急降下から低空飛行で突っ込む。

ゴッドバーーー…げふげふ! 衝角ラムアタック! 照準セット!

ボディ中央を貫く!

装甲を引き裂かれバラバラに散乱するゴリアテ!!

ラーーーイ!


任務完了。

後はお任せしますよ、タモン兄貴、イオニアさん、ニュース殿下。

研究所へ帰還だ。魔王機バンカーを迎え撃つ!


一方、北遺跡エルディー魔道研究所の管制室。

トンちゃんから送られてきた爆撃映像をモニターで見ていた。

みんなドン引き!

「こりゃ、ひどい。」

顔をしかめる先生。自分の事は棚に上げてるな。

「たしかに威力はあるけど…ちょっと見境無しな感じがするよ。」

組合長も渋い顔。

「迂闊に使っていいもんじゃないな…」

おやっさんも厳しい。

「こ、これ、あんな危ないものだったんすか?」

タンケイちゃん、職人衆も物理的にドン引き。

後ずさって、置いてある爆弾から距離をとる。

まあ、正直タマちゃんなオレも同感ですわ。

街中や遺跡の周辺では使えないな、これ。


「飛行ユニットが帰還しだい、爆装コンテナを外してください。」

タマちゃん状態で指示。

コンテナ付きじゃ合体できないからね。

スカイエクソンが格納庫に滑り込むのと、迷宮の上りエレベータが到着するのがほぼ同時。

ギリギリだ。

職人衆が取り付くと手早く爆装コンテナを外す。

身軽になったユニットが再発進するのと、迷宮出入り口から魔王機が姿をあらわすのが同時。

俺本体は北遺跡の前で待ち構える。

ドームはパラボラ熱線砲を収納済み。

急いで格納庫のスリットを閉じる。


迷宮出入り口の脇を固めていた自律CPU内蔵ゴリアテ。

魔王機に対してあえて攻撃を仕掛けない。

手を出しても勝ち目は無いし、街中での戦闘は避けたい。

となりは救護院だしね。

魔王機バンカーは手を出して来ないゴリアテに、ちょっと驚いたようだったが悠然と歩を進める。

付き従うのは女怪魔道機メデュウサ、魔犬将機ガルム。

むこうも総力戦の構えだな。

出入り口まで付いてきた親衛隊員はバンカーを見送るとすぐ迷宮内へ戻った。

カナちゃんからの映像を見ると、内部で待機。

いつでも出撃できる体制。

俺本体を片付けた後、北遺跡に突入するつもりか。

メデュウサは白磁のような官能ボディをマントに包んでいる。

教育に悪いからね。…いや、このマント、人間バンカーが使っていた対ビーム装備だ。

マントの前開きからチラチラと見えちゃうのがなんとも…

うん、裸マント! これで頭がこんなじゃなきゃあね。

魔王機とガルムもマント?

いや、これはただの布?

これ、メデュウサを包んであった布か?

マントって言うよりマフラーな感じ。

このセンス、カッコいい!

風になびくボロ布マフラー、手には巨大な剣。

バイオレンス・ジャ○ク?

ブラック・ゲ○ター?

狂気をはらんだ無双スタイル。


レガシの街から北遺跡、エルディー魔道研究所へ続く斜面の途中で魔王機を待つ俺本体。

飛行ユニットはドームの反対側、見えない位置で待機。

北遺跡へは登り坂。俺のほうが位置的には上。

腕を組んで睥睨する。

正直言うとビビってます。虚勢。

『ただの布じゃないぞ。迷宮出入り口に仕掛けたトラップ魔法陣が起動しなかった。』

タマちゃん通信で先生の声。

え? あの布が? 魔法センサーに反応。

この布、全体に魔法陣が描かれているぞ。

魔力封じか? 野獣令嬢ルミごんの首に巻かれていたのと同じもの。

有り物の布に魔法陣を描き込んで作成したのか。

護符攻撃の発動を無効化することが出来るわけだ。

そして、いつの間にかトラップを仕掛けてたんですね、先生。

『手段を選んでられないからな。』

先生のそれはちょっと怖い。

でも、これだと防御は完璧だけど、自分も魔法使えないよね?

と思ったらセンサーの反応が消えた。

女神神殿の床に描かれたのと同じ、魔力を流すと作動する魔法陣か。

バンカーの意志で魔力封じのオン・オフができるわけだ。

何それ、ずるい!

まあ、手段を選ばないのはお互い様か。


「お待たせ。」

魔王機バンカーが片手を上げて、挨拶。

なんとも食えないお人だ。

「君ひとりかね?」

「こっちは3人、いや、2人と1匹…かな。」

「こっちの魔道機はあなたがたが壊しちゃったじゃないですか。」

「それもそうか…」

俺の後方、北遺跡を見やる。

「導師たちは遠距離支援かね?」

ぎくり。お見通しか。だが…

「3対1は不公平かと思ったが…始めようかね。」

「今度こそ魔道機最強を決めようじゃないか!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ