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恐怖の女怪魔道機


葬儀屋跡地、迷宮入り口で強行突破作戦が行なわれているその頃。

【冥刻界の女王神殿】に侵入した先生たちの前にモアブ伯その人が現れた。


「どうも、急いだ方がよさそうだ。」

地上班から入り口襲撃の知らせを受けたモアブ兵神殿作業班。

モアブ伯の指示を受けて騎士や魔道士たちの動きがあわただしくなった。

床に置かれていた、布を巻いた何かを立てる。

これ? 棺桶の中に入ってたやつか?

もう一つの棺桶がそばに置いてある。

二つ持ち出したって言ってたもんな。

布が巻かれたそれ。中身の形はヒト型?

ミイラ的な感じ。

手早く巻きつけた布を解いていく。

ぐるぐる。いいではないか、いいではないか、あーれー!

その中から出てきたのは、ミイラではなく…

もっとみずみずしい感じの代物だった。


魔道機? いや、人間? ミネルヴァボディよりさらに人間ぽい。

タマちゃんアイ、ズームアップ!

いや、やはり魔道機だ。

つなぎ目が見えにくいけど、緻密な装甲板の集合体。

俺本体と同じ構造…神代魔道機!!

ニュース王子に見せたという、あれか?

思春期王子さまが言いにくかったの、わかるわかる。

先代モアブ伯が取り扱い説明書をエロ本だと思ったというくらいだもんな。

うーん、いや、これ。エロいわ。

これ、子供に見せたの? 犯罪臭しますよ!?

色は白っぽい、象牙色?

彫刻っぽくはあるけど…

そして………エロい!!! 何度でも言いたい、エロい!

いや、これもう完全にエロフィギュアですやん!

モールドがね、本気!

胸ポッチやたてすじまでモールド済み。

そして人工物ならではの理想化を超えた妄想化プロポーション。

夢魔女王メガドーラさんの淫魔ボディをちょっとスリムにした感じ。

これはたぶん可動部を確保するために必要な細さだろうな。

アクションフィギュアは動かしてナンボ。

いわゆるスケベブンドド専用モデル!


ブンドドとは子供が飛行機や戦車のおもちゃやプラモデルを

「ぶーんぶーん、どどどどどぉー」

と戦わせて遊んだという昭和っぽい故事から来ている。

転じて、模型を動かしたり組み合わせたりして遊ぶことを指すようになった。

固定されたひとつの情景をつくる「ジオラマ」に対して動かして遊ぶって感じだな。

最近は自己完結するだけじゃなく、SNS上で発信されて話題になったりもする。

アクションフィギュアを組み合わせて大爆笑ヘンテココントを演出したりね。

フレディ・マーキュリーxブルース・リーとか、アベンジャーズのあれとかね。

あのあたりも一種のブンドドと言えるかもしれない。

そして、そのアレ版がスケベブンドド、説明は要らないよね。

「専用」アクションフィギュアなども発売されている。

「ハゲデブおっさん」「ゴブリン」「触手」とかね。

…特殊すぎるっ!

もっと一般的な…

「幼馴染看病なし崩しセット」とか

「試着室発情声出ちゃうセット」とか

「むっつり風紀委員長逆襲セット」とか

「美人養護教諭保健室つまみ食いセット」とか

「没落アイドル枕営業セット」とか

「オタサー姫お仕置きセット」とか、とか、一般的な小道具を発売して欲しい。

『一般的…とは……?』

何かな? ヘルプ君。

「部活コーチNTRセット」は苦手なのでゴメンこうむりたい。(個人の意見です)

あと、俺は「デッサン用」とか言い張ったりしない!!


この機体、身長も頭身もミネルヴァボディより高い。

そして、胸が…大きい!

うん、まあ、売れ行きに影響するからね、ここは。やはりね。

いや、その胸、可動する?

上下左右に?


だが、実はそのあたりの特徴、エロティックさの印象は次の瞬間ふっとんだ。

最後に頭部を覆っていた布が外される。

ニュース王子は神代魔道機には頭部が無かった、と言っていた。

しかし、今そこには頭がある。

布の下から現れたのは……

機械!! むき出しの機械と配線、配管を組み合わせた、機械頭部。

一切の美観を考慮しない、いかにも間に合わせと言った感じの機械が据え付けられている。

優美で、裸身とも見える女性型ボディと組み合わされたそれ。

頭頂部付近に据え付けられたセンサーユニットが稼働する。

まるで一つしかない目玉のように。

凄まじいグロテスクさを醸しだす。

間違いない、これはミネルヴァのオリジナルボディだ。

鳥型ヘッドユニットを獣機テクノロジーで代用したんだ!

うねる様な配管、配線がまるで蛇のよう。

ゴーゴン?

この世界のゴーゴンは髪の千匹の蛇の二千の目で世界のすべて見る知識神とされている。

だが、こいつはそんな神々しさとは無縁だ。


「ご苦労さま、じゃあ、お願いするよ。」

女性型魔道機体にうなづきかける。

この機体、すでに起動しているのか?

騎士団の一人が慌てた様子でマントを羽織らせようとする。

ああ、この騎士、メカフェチ属性持ちだな。

「う、」

ミネルヴァから伝わって来たのは言葉ではない。

感情? 渇望感みたいなもの。

『あれは…ボクのです…』

い、いかん!

ジョーイ君! ミネルヴァを止めて!!

『はい! 将機ボディ、強制力を発動。ミネルヴァさんの犬獣機部分に停止命令!』

『こ、こら! 放せ!』

『有線経由で強制力排除ツールを実行!』

ジョーイ君の制止を振り切ったパーンサロイドミネルヴァ。

モアブ騎士団の前に飛び出した。


「うわあー! 何だこの魔道機!?」

「魔道機? 獣機!?」

驚愕する騎士団。

「返せ! それはボクのだ!!」

「そのヘンテコな機械アタマを外せ!」

いかん! ミネルヴァにはケースガンが装備されている。

お屋敷攻防戦でのジェノサイドシーンが思い出される。

「いかん、やめろミネルヴァ!」

あわてたエルディ先生が幻惑魔法を解除して飛び出すが、間に合わない。

モアブ伯が一喝した!

「構え! 対光線防御!」

作業に参加せず警備体制をとっていた騎士達の数人が一斉に盾を構える。

祭壇上の魔力核、技術者、他の騎士をカバーして密集隊形を組む。

早い!

ミネルヴァがパルスビーム発射!

だが、拡散反射! 雀竜のウロコを使った盾だ。

こちらの手の内が知られていたのか?

対抗策を用意していた!?

だが、肝心のモアブ伯は悠然と立っている。盾の後ろに隠れていない。

騎士たちもカバーしないぞ?

ミネルヴァが狙いを伯に変更。

マントで顔を覆い、身をかがめて防御体制。

ビームが命中!

マント表面のグレーな皮膜が蒸発する。

気化熱で光線の熱量を低減。

その下から現れたのは銀白色のウロコ。

拡散反射。

さらに魔法が発動! 氷雪虎スノーレパードだ。

ウロコと術者自身を冷却。

三段構えのビーム防御装備。

その隙に騎士隊がマジックアローを放つ!

ミネルヴァに命中!

言っては何だが、ミネルヴァは所詮戦闘は素人。

武器の火力と運動性能は高いが、訓練された兵士の連携には対応できない。

片側のケースガンが外れてすっ飛んだ。

さらにモアブ伯自身がマントを跳ね上げ弩弓を放つ。

肩口に命中した途端、ミネルヴァの腕が部品を撒き散らしながら吹っ飛んだ!

衝撃増強の魔法附与エンチャント

あらかじめ調整された護符とかじゃない。

発射直前に伯自身の手で附与されたものだ。

兵士が使うものより衝撃力が強い。

華奢なミネルヴァボディでは耐えられない!

装備も練度も今までの兵士たちと桁違いだ。

そしてモアブ伯バンカー自身も恐るべき使い手。


ミネルヴァのピンチに見かねたデイエートが矢を放つ!

気持ちはわかるが軽率。

神代魔道機に矢が通用するわけがない。

だが、さすがはデイエート。狙ったのは魔道機じゃなかった。

狙いは敵の首領、モアブ伯。

しかし、伯めがけて放たれた矢ははるか手前で弾かれた。

被甲身バンパー

イオニアさんが使っていた事前詠唱、遅延発動タイプか!?

こうなってはお兄ちゃんハイエートも参戦。

残念ながらいつもの長弓は地下通路内に持ち込めなかった。

狭い通路では取り回しが悪すぎる。

それでもデイエートよりは威力のある弓だ。

水平射! 女型魔道機の頭部を狙った。

だが…こいつ、掴みやがった!

ハイエートの高速射を、空中でキャッチ。

弾くとか受けるとかでなく、飛んでくる矢を横から握り止めた。

高速思考! 俺本体の加速装置に匹敵する運動性能。

「な?」

さすがの先生も顔色が変わった。

「上だ! 魔力核を守れ!」

声を上げたのはモアブ伯。

さすが兄エルフ。水平射直前に魔力核めがけて放物線射撃を放っていた。

魔法照明があるとはいえ薄暗い神殿坑内でそれに気づくモアブ伯。

暗視魔法を使用しているのか?

魔力核の上に盾をかざして防ぐ騎士。

上から降って来た矢がはじかれる!

「く、高さが足りません。」

広大な神殿坑内だが、しょせんは地下。

弾道の高さが限られるため落下速度が足りない。

「ええーい!」

「矢が来るぞ!」

デイエートが連射するが、これを騎士団が盾で防いだ。

ビームを防ぐため立てていたウロコ盾を半回転。

さかさまにして受ける。

その揃った動きが敵ながらカッコイイ。

もちろん格好つけのためじゃない。

ウロコ配置の向きを逆なでにならないように最適化。

先生が火炎魔法をバンパーで受け流したように、斜めに構え矢を上方へ弾いて受け流す。

これではどんな強弓、ハイエートが金属矢を放っても通用しないだろう。


その間に女魔道機体はミネルヴァに取り付いた。

ケースガンを、もう片方の腕を、引きちぎる。

まるで枯木でも折るように。

「あああああーーー!」

ミネルヴァの悲鳴!

凄い怪力だ。俺本体に匹敵する。

そして首を引きちぎった! 振りかざして叩きつけようとする!

全裸女性のような外見、頭部に接続された醜怪な機械群。

エヴ○ンゲリオンのダミ○プラグ的なアレなんだろうな。

そして残忍ともいえる振る舞いと怪力。

身の毛のよだつような光景。


将軍機ジェネラルジョーイが飛び出してきた!

マントは脱いでいる。ベータ君に託してきたのか?

そして振りかざすのは、高周波振動剣!

横薙ぎに振り払うと女怪魔道機が後退してかわす。

と、同時に持っていた首をジョーイ君めがけて投げつけた。

怪力で投じられた首が将軍機に激突、する直前!

空中で接続フレームから分離、鳥型メカに変形するミネルヴァヘッドバード。

姿勢を立て直して鷹狩の鷹よろしく差し出されたジョーイ君の腕に止まる。

「大丈夫ですか!? ミネルヴァさん!」

「ボクの身体があああーーー!」

まったくもー! こいつ!


うなりを上げ振動する高周波振動剣。

さすがの魔道機も警戒して動きを止める。

将軍機の登場で事態が膠着状態に。

「落ち着け!」

モアブ伯の声。拡声魔法?

大声でありながら、低く落ち着いた声。

「下がれ、メデュウサ!」

メデュウサ? こいつの名前か?

女怪魔道機が静かに後退した。

伯が先生の方に向きなおる。

防御態勢を崩さない騎士団だが、伯自身は悠然と立ったまま。

自分の魔法技術によほどの自信があるのか?

「エルディー大導師ですな。お目にかかれて光栄です。」

「ふん、心にもないことを…」

「いえいえ、なりゆき上このようなことになりましたが…お噂は父よりかねがね。」

「ブレビーの息子…どういうつもりなのだ、キサマ。」

と、大賢者エアボウド元学長も幻惑魔法を解いて姿を現した。

そういえば、モアブ伯の教師でもあったわけだな。

「エアボウド大導師、あなたもおいででしたか!」

「ギャザズ将軍といい…どうも私の知らない交通手段をお持ちのようだ。」

幻惑魔法を解いた先生と生臭賢者。

そしてエルフ兄妹も隠形魔法の紙護符がはがれちゃって丸見え。

ベータ君とアイワさん、U-69は隣室で息を潜めている。

? ウェイナさんは?

ジジイ賢者が進み出る。

「モアブ伯、いや、バンカー!」

「おぬし、いったい何をするつもりなのだ?」

「自ら魔王となって、父親が作り上げた王国をぶち壊すつもりなのか?」

モアブ伯が困ったように苦笑い。

「いやー学長先生…まったく申し訳ない…」

「ここで崇高な理想とか、壮大な野望とか、語ることができれば格好いいのですが…」

「要するに成り行きですよ。」

「な、成り行きだと!?」



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