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魔犬将機


大迷宮入口(葬儀屋跡地)の門番を務めるのは2体の軍用獣機ゴリアテ

操縦器は犬獣機ハウンドに接続され、自律行動のとれる状態。

犬獣機ボディを失ったケロちゃんと違って操縦器は外付けだ。

王都で見た時はゴリアテ作動中はハウンドの方はまともに動けなかった。

だからこの時点では動きの鈍っているハウンド側の操縦器を破壊することで何とかなると思っていた。

電波可視化! 2.4GHz帯の電波を感知。

位置をスカイエクソンと共有。

上空からビーム発射!

操縦器を狙撃、破壊!!


……できなかった!

かわされた!

素早い動きでサイドステップ。真上からのビームをかわす操縦器搭載ハウンド。

な、何!? 何でお前らそんな華麗な動き!?

同時コントロールできないんじゃなかったの?

『あの2体、ケロちゃんGのデータコピーじゃありませんよ』

おう、ヘルプ君!

そうか! こいつら工房で接続されて、ずっと外付けのまま成長学習したんだ。

ゴリアテとしてはケロちゃんGに及ばないが、ハウンドを同時制御することが出来る。

うわ、厄介!

『それだけじゃありません、他の犬獣機とセンサーを共有してます』

何?

ハウンド達は兄貴やベルちゃんとの戦闘から身を引いて後方に下がった。

ゴリアテと入れ違いで迷宮入口を守っている。

『複数のハウンドが上空のスカイエクソンを監視しています』

その情報でビームを回避してるわけか。

静止することなく、巧みにステップを踏む操縦器ハウンド。

蝶のように舞い、蜂のように刺す!

スカイエクソンの機首ビームの照準が定まらない。

さらにこいつら、入口周辺の犬獣機と合流。

混ざるようにぐるぐる回って…シャッフル!

入口の周りでフォークダンス始めました状態!

シャッフル! シャッフル!

うわあああ! 楽しそう! コンチクショウ!


イワシのような小魚は群れることで捕食大型魚が目移りして的を絞りにくくする、と言う生存戦略をとる。

スカイエクソンの処理能力がアップアップ。照準が定まらない。

どれが操縦ハウンドだか、わかんなくなっちゃったよ!

何でこいつら、こんなに組織だった動きが出来るんだ?

今までもデータ共有や協力プレイはしていたけど、今はもうまるで一つの生物みたい。

群団レギオンとしてのレベルが一つ上がった感じ。

カナちゃんズに匹敵するような動きだぞ。

『サーバー獣機…犬将機の機能でしょうか』

そう、そしてさっきから感じる!

800MHz帯の電波発信源。

電波の発信源は、なんと先生の家!

電波感知と同時にカナちゃんを派遣していた。

映像が送られてくる。

男風呂のぞき隊御用達の木箱。

それをぶち破って出現したのは…犬将機!?

デカいぞ、コイツ。

成人男性並みの大きさがあるハウンド、犬と言うにはかなり大きい。

そのハウンドより二回りは大きい。

黒いのは同じだが、装甲がかなり凝っている。

俺本体の装甲に似た密閉度の高い装甲。

そして体に沿って走るグレーのライン!

カッコイ……くは無いな…ちょっと変!?

ああー、これ…Dライン…某phone6で不評だったアレ。

電波を通すためのアンテナ素材かー。

ダッシュ!

戦闘の現場に向かって駆けだした。

サーバーとして犬獣機を指揮するだけなら現場に近づかない方がいいのでは?

と、思ったけど…速い!

運動性能がハウンドを凌駕!

コイツ単なる移動サーバーじゃない。自身が戦闘メカだ!

まずい! 女騎士や兄貴、ベルちゃんじゃ太刀打ちできないかも!


実のところ、ハウンドや犬将機の状況は伝わった来ていたが、俺本体はゴリアテとの戦闘の真っ最中。

余裕がない!

人間が操縦している時とは段違いの性能を発揮する自律ゴリアテ!

自動攻撃モード並みの動きを高度な判断で実行する。

今までとは全くの別物だ。

じりじりと距離を詰めると、両手を広げ構えをとった。

殴りつけるとか、掴みかかるとかだけだった時とは違う。

こっちから仕掛ける?

いやこうなると、体格差って奴は絶望的だな。

踏み込んで間合いを詰めると地面すれすれを薙ぎ払ってきた。

グラビトンで受け止めるか? いや、動きを止めるのはまずい。

ジャンプでかわす!

が、そこへもう一体のラリアート!

こいつら連携を!?

オーバードライブが間に合わない!

被甲身バンパー

展開角度を調整してわざと上空へ弾かれる。

すっげえ衝撃。10メートル以上吹っ飛ばされた。

だが、この間にオーバードライブ発動!

ブースト! さらに上空へ。

操縦ハウンドはあきらめてスカイエクソンと合体!

犬将機の戦闘力が不明である以上、兄貴たちを迷宮内に入れるのが急務だ。

電波の都合上アイツは地下へは入れないはず。

「タモンさん、道を開きます! 地下へ!!」

「おう!」

迷宮入口周りでラブラブオクラホマミキサーしてる犬獣機たち!

リア充吹っ飛ばす!

空力バリヤー展開! スカイエクソン旋回急降下!

地上すれすれに突っ込んでハウンドも天幕もすっ飛ばす。

ガンゴガゴン!

「ピーーーー!」

悲鳴?が上げる! 我ながら乱暴だわ!

弾き飛ばされたハウンドがとなりの宿屋やお向かいの家に突っ込む!

被害がないといいけど。

すかさず突入する兄貴、女騎士、ストラダさん。

ベルちゃんは…入口前に仁王立ち!

ダブルヘッドアームを開いて、騎士団やハウンドを威嚇!

追撃を阻む!

よっしゃっ! ベルちゃん、ナイス!

相手はゴリアテ2体とハウンド多数。

だが、位置関係は逆転。

入口を守るのは、今度は俺たちだ。


とは言ったものの、自律ゴリアテ相手は荷が重い。

隙が無い。

思えば、操縦モードではしょせん人間の操作スピード。

自動攻撃モードではディフェンスが一切できてなかった。

ハウンド並みの動きをする巨体ゴリアテ。

ビーム攻撃も関節部を狙うか、連続照射をするかしなければ効果薄だ。

よし、頭部センサーを焼いて動作を鈍らせるか。

ビーム照射!

おう! ガードされた!!

両腕を固めて顔面をビーカブーガード!

両腕から拳にかけて当たったビームが拡散反射!

反射しきれなかった熱が装甲を虹色に変化させる。

集束ビームを乱射すれば破壊できるだろうが、この街中で乱射?

となりは救護院だぞ。


くそ! 来た。犬将機が到着!

ブラックボディにグレーのライン。

大通りで立ち止まる。

デザインもハウンドとはかなり異なる。

ヘッドアームではなく、かなり犬、狼?的なきちんと造形された頭部。

結果として犬っぽくなったハウンドとは違い、最初から犬をイメージした造形だ。

グレーラインが……光った!

青白く発光! 燐光!

夜光怪獣、バズカヴィルの犬だ!

魔犬将機! 冥刻界の女王(ヘル)の番犬、ガルム!

ピロリーーーン!

おう! これ! 久しぶり。

メールが来たわ。強制力付き。

『我に従え!』

ベルちゃんに送ったのか!

だが、ベルちゃんはセキュリティ対策済み。

強制力は無効だ!

イラついたように首を振ると、飛び掛かった!

魔犬将機ガルムの頭部、犬っぽく造形された顎が開かれる!

そして上顎部が左右に分かれる!

あ、やっぱりそこ開いちゃうのね。

迎え撃つベルちゃん。

片方のヘッドアームでガード。

だが、かみ砕かれた!

ドリルやハンマーとしての強度を持つヘッドアーム。

それを易々とかみ砕くとは!?

高周波振動牙か!!

もう一方のアームで殴りつけて振り払ったベルちゃん。

いつの間にかボディにもざっくり切り込みが入っている。

爪も高周波振動?

いかん! 相手にならないぞ! 警備用と軍用の違いか!?


身をかがめてせまるゴリアテ。

ガードした両腕を下げると、内側から右腕を振り出した。

ちょうど裏拳を打つ格好。

むう! ブーストして後退。

だが、さらに踏み込むと左を振り出す!

ワンツーパンチ!

グラビトンバンパーで受ける!

ここで吹っ飛ばされたら救護院に突っ込む。

一旦上空へ逃れ、空中から攻撃しよう。

グラビトンを解いてブースト。と思った瞬間、ゴリアテの肩越しにハウンドが飛びかかって来た!

背中を駆け上がって死角からの攻撃!

ゴリアテだけでも厄介なのにハウンドと連携とか!

ヘッドアームが俺の首を捕らえる。

もちろん、俺の装甲には効果は無い。

だが、一瞬抑え込まれたところにゴリアテの腕が振り下ろされる!

パワーブースト! スカイエクソン全力噴射!

危ねえーーー!

こいつ! ハウンドもろとも俺をぶっ潰そうとしやがった!

合体していない本体だけの加速だったらやられてた。

いかん、救護院の前庭に入っちゃったぞ!

こんなとこで戦闘したらイーディさんに怒られる!!

上昇! まだくっついたままだぞハウンド!


360度視界にベルちゃんの苦戦が!

ガルムに圧倒されるベルちゃん。

ぶんぶんハンマーシールドで必死の防戦。

いかん! 拳骨シュート!

ハウンドを掴んだ状態でシュート!

引きはがすとそのまま推進!

拳骨シュートのブースト付きでガルムの不意をついて叩きつけた。

もつれて転倒するハウンドとガルム。

ベルちゃん! 君も迷宮に入って!

ガルムは地下には入らないはず。

兄貴たちと合流してくれ。


よし、上空から操縦ハウンドを確認して再チャレンジ…

俺本体なら電波が見えるから発見は容易、なはず。

あれ? いない? 2.4GHz電波発信源が見えない?

そんな馬鹿な。ゴリアテはまだ動いているのに?

電波は…

ゴリアテのうち1体が四つん這いになっている。

その下か!?

こっちの策を読んでガードを!?

上空からじゃ無理か?

だが、場所がわかっていれば…

そこへ飛んできた! ハウンドが!!

ちょっ! ジャンプして届くような高さじゃないぞ。

あれかー! パーンサロイドミネルヴァと同じ戦法!

投げた! ゴリアテがハウンドを!

無茶しよりますがな!!

そして命中! 狙いが正確。

バンパーが間に合わない。

スカイエクソンの羽部分噛み付かれた。

翼端噴射ユニットと機体をつなぐ支持アーム。

がっちり噛み付かれちゃった。

そこには手が届かないよ、俺、身体硬いし。

バランスが崩れる。

やべ! 家に突っ込みそうになってあわてて機体を立て直す。

何とか、道の上に不時着。

ユニット分離!

ヘッドアームを引きちぎってハウンドを引っぺがす。

だが、その間に地上を走ってハウンドがせまって来た。

ええー!?

ちょっ! お前ら!

ぶん殴る! 蹴り飛ばす! だが数が多い!

しかもこいつらの目的は俺じゃない。

飛行ユニット。それも破壊じゃなく取り付くだけ。

噛み付いて離れない!

あ、こら! そこへ食いつかれたら合体できないぞ。

合体不可! やられた!

飛べスカイエクソン! 上昇!

犬獣機を3体ほどぶら下げたまま上空へ。

あ、一体落ちた!

他のヤツもなんとか振り落としてきてくれ。

その間に迫って来たのは、ゴリアテとガルム!


まったく、予定通りには行かないもんだよね。

操縦ハウンドを軽く片付けて、ゴリアテを無力化。

サーバー獣機も軽く破壊する予定だったんだけど。

こんなことなら、キラすけを呼び寄せてダークゾーンしてもらえば良かった。


……ええ? 俺、キラすけを当てにしている?

キラすけに頼っちゃう?

ええ!? 何それ、すっごいプライド傷つく!

脳裏に…いや、星空に浮かぶキラすけのドヤ顔が俺を見下ろす。

『ふふーーーーん!』

『我の能力に替わりは無いからの。』

むかつくわー! コイツ!

まあ、確かに魔力遮断とか電波遮断とかは便利だけど…

いつか俺もダークゾーンを習得してアイツを絶望させてやる!


電波遮断?

ゴリアテを操縦しているのは2.4GHz帯の電波。

WiFi。IEEE802.11g

そうか!

その手があったか…

両手をゴリアテに向かって突き出す。

じりじりと歩を進めていたゴリアテが突然停止。

いや、まだ動いてはいるが、ぎこちない。

動作がカクカクしている。

効いてる、効いてる。

かつてお風呂を沸かそうとして失敗した電子レンジ機能。

日本の電子レンジのマイクロ波は2.45GHz。

WiFiの2.4GHzと極めて近い。

そのため電波干渉が起こるのだ。

スマホやタブレットで動画見てる時に電子レンジ使ったら、動画がカクカクになっちゃった。

なんて経験ないかな?

ま、俺はIEEE802.11a、5GHzを使ってたんでそんなことは無かったですがね。

いまでもテレビや家電では2.4GHz帯を使ってるのが残ってるから気をつけてね。

よっしゃー!

ゴリアテの動きが止まった!

そこにいるな、操縦ハウンド。

飛行ユニットから操縦器をかばうため四つ這いになったゴリアテ。

加速装ぉー置! ま、奥歯はないんですけどね。

一気に距離を詰める!

【収納】から取り出したのは雷神槌護符。

女騎士の電撃剣に使われているカッターナイフ替え刃型。

これ自体、投げナイフとして使えるエルディー先生謹製の優れもの。

投射!

ハウンドの背中にマウントされた操縦器に命中、電撃が走る!

魔道テクノロジーの獣機に比べ地球科学製の操縦器回路は電気に弱い。

2体とも完全停止したゴリアテ。やったね!


次の相手は魔犬将機ガルム

なかなかにとんでもない機能の持ち主だ。

ジョーイ君と基地局に成り代わって警護獣機ハウンドを掌握。

ケルベロス2号を圧倒する戦闘力。

指揮下に入ったハウンド、ゴリアテを手足のごとく使う指揮能力。

もともとが軍用ということになればジョーイ君の指揮下に組み込む事は難しいだろう。

もし、コイツが王都に戻ったら、ハウンドによって王都が再び奪還される可能性もある。

危険すぎる。破壊するしかない!

すでに攻守は逆転。

タモン兄貴達への追撃を防ぐために、俺は大迷宮入り口を守る立場になっている。

常にガルムと入り口の間に位置を取る。

上空にはスカイエクソン。

ちょっくら街の外まで飛んでハウンドを振り落としてきた。

入り口に近づく奴は対地ビームで攻撃頼むよ。


【収納】から頑丈剣を取り出す。

被甲身バンパーのフィールドを纏わせる。

天空無双剣!

『それ、本決まりなんですか?』

おっとヘルプ君。嫌そうな声だね。

残念ながらネーミングの変更は月一回までと決まってるんだ。

(第10話)

そしてひと月たったころには頭の中で定着しちゃって変更不可という罠。


魔犬将機が再び発光!

ピロリーーーン!

おおっと、またメールだ。

『神代魔道機体を破壊せよ』

来たな。俺本体に目標を絞ってきた。

犬獣機がじりじりと迫ってくる。

だが、なかなか攻撃して来ない。

コイツらは個体間で情報を共有している。

ヘッドアームじゃ俺を破壊できないことは認識済み。

元々、王都へ出撃するためにレガシに残っていた犬獣機はそう多くない。

兄貴や女騎士の活躍もあってかなり数を減らしたが…

それでも一人で対処するには十分きつい数。

さっきみたいに自分の機体を犠牲にして俺の動きを止めに来る可能性もある。

侮れはしない。


「どんなぐあいですか?」

大迷宮入り口から顔を出したのは、空気読めない女騎士。

「中は制圧しちゃいましたよ。」

そりゃ、アンタがいれば騎士団とか試し斬りの巻き藁同然だろうけど。

「ストラダのヤツ、降伏勧告とか余計な事を…全部斬ってしまえば…」

なんかぶつぶつ言ってるぞ。

「クラリオさん、軍用獣機の制圧は完了しましたが…」

「今、ちょっと緊迫してるので穴に戻っててもらえませんかね。」

引っ込めよ、お前!

やっと、魔犬獣機に気付いた女騎士。

「ひょっ!? ななな、何です、アイツ?」

「犬獣機を乗っ取った敵の将機です。」

「ふうーーーむ?」

ぐるりと周りを見回す。

「も少し、犬獣機の数を減らした方がいいですかね。」

「えっこらしょ!」

縦穴状になってる入り口から登ってきた。

なんだか嬉しそう。斬り足りないのか?

「ちょっとお手伝いしますよ。」

まあこの際、狂戦士の手でも借りたいとこだしな。


ちょっ! ひょいひょい無防備に進み出る女騎士。

犬獣機が飛びかかって来た!

突き出されたヘッドアームを無造作に払いのける。

と、同時に前足の付け根、肩口に剣先を突っ込む。

電撃! 護符排出! 再装填!

次々に襲い掛かる獣機。

だが、まったく同じパターンでたちまち3体が停止!

ええ? どどど、どゆこと? 鮮やか過ぎる!?

「この子たちのパターンですよ。」

今度はドリルアームで飛び掛かる。

軽く右に弾いて反らす。

「アームを払いのけられると、踏ん張って姿勢を戻そうとする。」

「その動きがいつもまったく同じなんで、そこに剣先を置いておくと…」

肩口に剣先を突き刺す。

「自分から刺さりに来てくれるわけです。」

自動姿勢制御、オートバランサー。

獣機自身にもどうしようもない機械的動作。

そこを読み切っているわけか!?

「そして電撃!」

しびびびび!

「動きは左右対称なのでどっちでも…」

5体目が停止。しびびびび!

「飽きてきましたね、これ。」

こ、この女! ポンコツパンツ騎士のくせにぃぃ!!


ハウンドが攻撃をやめた。

こいつらには自己保存本能も恐怖もない。

だが、無駄な消耗を避けるという合理的な行動原理を持っている。

俺本体に対してむやみに攻撃してこないのと同様、女騎士に対しても通常攻撃は無効と理解したらしい。

魔犬将機が再び発光。

ハウンドのフォーメイションが変化。

横一列に並んで密集隊形、それを2段構え。

前3体、後ろ4体、そしてその後ろに魔犬将機!

スクラムか?

突進してきた!

「あ、ちょわ!」

たまらず変な声を上げて女騎士が避ける。

そのまま、俺に向かってきた!

天空無双剣! 横薙ぎに払う。

最前列の3体が足を切断され、前のめりに転倒。

すでにそれを予想していたのか、2列目が跳躍して飛びかかってきた。

飛び掛かる? いや、ヘッドアームは使っていない。

体当たり! バンパーを展開して受け止め、横殴りに振り払う。

そこへジャンプしてきたガルム! 攻撃、ではなかった。

ハウンドを飛び越えてから、俺を踏み台にさらにジャンプ!

後方へと飛び越えた!!

「俺を踏み台に!?」

あー思わず言っちゃった。これ負ける方のセリフ。

そのまま、見事に迷宮入口の穴に飛び込んだ。

直接カップイン!

い、いかん!! 兄貴とストラダ騎士が!

追いすがるハウンドを振り払って迷宮へ突入。

女騎士もあわてて後を追う。

まさか電波基地獣機であるガルムが指揮を放棄して地下に入るとは思わなかった。

「タモンさん! 大丈夫ですか!?」

「将軍んーーーー!」

通路の奥、兄貴とストラダ騎士が呆然と立っている。

「将軍ーーん! ご無事でしたか!」

「い、今の獣機…あれが上位犬獣機か?」

「俺たちには目もくれず走って行ったが…」

魔犬将機、ハウンドの指揮も放棄してどこへ…

モアブ伯のもとへ向かったのか?

あれが合流されると、先生たちが危ない。


「私たちも【冥刻界の女王神殿】に急ぎましょう。」

組合長は、まともに降りると3日かかると言っていた。

ガルムが最高速、一切迷わず最短距離を行ったとしてもかなりの時間がかかるだろう。

「先回りします。」

組合長から教わったエレベーターを使って移動だ。

ケルベロ2号ベルちゃんは、魔犬将機との戦闘でダメージ大。

工房へ戻っておやっさんと相談してね。

交代してケロちゃんGに来てもらった方がいいかな。

あれ? 周囲を見回すと…

ここ、倉庫にしてたところ…

食料とかお酒とか運び込んでいたはず。

無くなっている?

そうか、モアブ伯が兵糧として待って行ったのか。

抜け目がないぞ。

食料の代わりに転がっているのはモアブ騎士。けが人。

剣に施された不殺のエンチャントのおかげで死んではいないようだが…

ダメージ大。

「ストラダ、ここは頼む。」

困った顔する元隊長。

降伏した騎士たちに声をかける。

「いろいろ、言いたい事はあるだろうが…」

「見ての通り、この人たちが相手じゃどうにもならん。」

「動けないヤツを担いで宿舎へ戻れ。」

兄貴がストラダさんの肩をポンとたたく。

「すまんな。」

俺のほうに向き直る。

「行こう!」



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