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強行突入作戦


モアブ伯を追って大迷宮に入った先生とタマちゃん一行。

一方、俺たちは力押し、陽動作戦をかねて正面からの強行突破を図る!


川べり侵入班を送り出した後、俺、兄貴、ベルちゃんも出発。

モアブ伯は魔力核以外にもなにやら迷宮内に運び込んでいる。

ただし、犬獣機の指揮権を奪った上位機体は迷宮内に入っていないはず。

地下からじゃ電波は届かないからね。

一体どこに隠れているのか?

俺本体の電波可視化にも反応がない。

南山基地局を破壊して命令を出した後は完全に隠密行動。

中継器を持ってきた犬獣機からの報告だと、すでに南山にはいないようだし。

おそらく、軍用だと思われる機動体。

電波発信源を探知できる敵を想定して行動しているとしか思えない。


馬獣機は先生班に回したので俺達は徒歩。

北遺跡から町へ向かう。

飛行ユニットは上空で待機。

転移は直接ドーム内だったので俺達の存在は気付かれていないはず。

北遺跡周辺には特に見張りとかがいる気配はない。

まあ、あの威嚇射撃の後じゃね。

「ストラダさんと連絡を取らなくてよろしいのですか?」

「うーん、奴の立場が分からんし…正直どうしたらいいか…ギリギリまでやめておこう。」

先生の家を通り越して…

ありゃ? 男風呂覗き隊の箱が置きっ放し。

引き寄せ実験で使ってそのままだよ。

…いや、あの箱。ベータ君が引き寄せ(アポーツ)できるから…

何かに使えるかも!?

まあ、今はそんなこと言ってる場合じゃないか…


レガシに入った新型鉄蜘蛛は6機。

もしかしたら手持ちの新型を全部投入したんじゃないか?

内部搭乗者は3人ずつ、荷台作り付けの座席の搭乗者を合わせても100人がいいところ。

レガシの街全体を見張るのは無理がある。

モアブ伯とともに迷宮内に入ったのはおそらく親衛隊的な精鋭だろう。

新顔のはずのストラダさんが隊長やってるところを見ると人材が豊富とは思えない。

街の入り口に見張りが2名。

迷宮入口周りの警備に比べると明らかに重要度が低い。

このへんは犬獣機に見張らせればいいと思うけど、そこまでは使いこなしてないのか?

配置されてる兵士は騎士じゃなくて平兵士?

騎士のそのまた家来、従騎士ってやつか?

なんか、俺たちを敵とは認識してない様子。

町民と巡回犬獣機だと思ってるみたい。

間合いまで接近を許しちゃったぞ。

「ご苦労! 異常ないか!?」

タモン兄貴が上官ムーブで声を掛けると、思わず反応して敬礼しちゃった。

「異常ありま…、え? あ! ギャザズ将軍!!」

「うわあ! この獣機、頭が二つ…!」

軽ーく雷神槌サンダーボルトで眠らせる。

ぶん殴るって手もあるけど、あまり野蛮なのはね。

フィクションではよくビシッ→カックンてのがあるけど…

意識を失うくらいくらいの強さで殴ると8割方死ぬって、警察の人が言ってたよ。

壁に寄っかかるように座らせて、街に入る。


街に人影はない。

夜間外出禁止令が出ているかどうかは知らない。

元々こんな夜中に出歩く人はいないしね。

悠然と歩を進める兄貴。付いていく俺とベルちゃん。

救護院の灯りも消えてる。

葬儀屋跡地に建てられた天幕の周りにはかがり火。

触媒魔法陣かな?

非番のモアブ騎士団は教会を宿舎にしている。

騒ぎが起これば駆けつけてくるのに5分と掛からないだろう。

もっとも陽動であることを考えれば駆けつけてもらった方がいいのかな。

灯りに照らされた天幕の前に机が置かれている。

その上に広げられた地図? 迷宮のマッピング?

覗き込むようにして何か相談しているのはストラダ隊長。

騎士の一人がこちらに気づいた。

「誰かー?」

顔を上げたストラダさんと目線が合う。

「う、お? しょ、将軍!」

「うーっす、ストラダ。久しぶり!」

周囲の騎士たちが一斉に身構える。

「来てるんだろ、モアブ伯。会いたいんだが…」

「取り次いでくれないか?」

困り顔のストラダさん、左右をはさむように立つモアブ騎士の緊張感が伝わってくる。

「伯爵に遭ってどうされるおつもりです?」

「んーー」

いつもの鉄棍を立てて、片端の石突を地面につき立てる。

「ぶん殴る!」

騎士が一斉に抜刀!

肩をすくめるストラダ隊長。となりの騎士に声をかけた。

「と、言うことだ。俺はここまで…伯によろしくな。」

「お疲れさまでした!」

言うが早いかストラダに斬りかかる騎士。

な、なんだ? 何やってんだ、この人たち??

身を伏せてかわすと、机の下に潜り込み、跳ね上げて騎士に投げつける。

その勢いのまま前転からこちらにダッシュ。

俺がとっさに騎士たちに指弾を放つ!

加減しすぎたか? 鎧に弾かれた。

「飛び道具があるぞ!」

だが、警戒から騎士団の動きを止めることには成功。

鉄棍を構え、腰の剣をストラダに投げ渡す兄貴。

「何やってんだ、お前。」

「モアブ伯とは最初からこういう契約でしたので。」

「行軍経験者が居なかったんで、若い奴をまとめる役割を…。」

「将軍と会うまでって契約で雇われました。」

周りを取り囲む騎士団。応援が来るまで無理に仕掛けないつもりか?

「こっちへ寝返るのは伯の了解済みってことか? おかしな奴だなモアブ伯は。」

「一見まともですが、まともすぎる変人、ですかね。」

お互いの背を預ける、兄貴とストラダさん。

この信頼感、カッコイイね。


だがストラダさん、相手はここまで一緒に行動してきた騎士団。

兄貴にとっても、同じく王都を守って来た兵士だ。

殺し合いの相手としてはやりにくいだろう。

ここは俺とベルちゃんが…

その時!

「うおおおーーー!」

突っ込んできたのは馬獣機に乗った激走女騎士。

「タモン・ギャザズ将軍四天王! クラリオ・ヒタチ! 見参あぁーーん!!」

四天王! かっこいいけど…自分で言っちゃうのはどうかなあ。

あわてて対応するモアブ騎士をぶった切る!

「きえええーーーっ!」

不殺のエンチャントが無かったら首がすっ飛んでたよね、その一撃。

即死レベル。一切のためらい無し。

情緒が無いなあ。

「うわわわー! 何だこいつ!」

「ぎゃー!」

「は、破壊剣士だ!」

「複数で当たれ!」

ばった、ばったと切り倒す!

「く、クラリオが一緒なのですか?」

焦るストラダさん。

陽動もへったくれもないわ。

100人やそこらコイツ一人で十分だったんじゃないの?

後顧の憂い(パンツ)を断って、一切の迷い無し。

「ふはははは、やっぱり斬り心地は人間が一番!」

やべえ! やべえ奴だぞ、皆殺し女騎士!

「獣機に当たらせろ! 魔犬獣機を起動!」

騎士団が後退。同時に街中から電波が発信された。

犬獣機がいっせいにスリープから復帰。

魔犬獣機?

ここからが本番、メカ戦だー!


そして、基地局並みの強い発信源を確認!

コイツがサーバー獣機か!?

え? 北遺跡方面? 発信源って先生の家のあたり?

……あの箱かー!?

すぐそば、通ってきちゃったよ?

箱があったら入りたい。大型ネコ科動物か!?

考えてみればそうだよな、レガシ全体を電波圏内にするなら…

南山山頂か、北遺跡の丘か、それしかないよな。

そして山頂はまだミーハ村基地局の圏内。

他の獣機に攻撃される可能性がある。

サーバー獣機が陣取るなら北遺跡付近しかないじゃないか。

もっとよく考えろよ、俺。


いっせいに集結する犬獣機たち。

つい数日前までのんきに街中を歩いてた奴ら。

今は再び猟犬と化して襲い掛かる。

思い入れがないわけじゃないが…

今は仕方がない。

俺とベルちゃんが前に出る。

ベルちゃん強い!

ヘッドアームが二本あるのは圧倒的。

突きかかってきたのを払いのける。

と、同時にもう一本をドリルアーム。

首筋に叩き込んで、破壊。ヘッドアームをむしりとる。

次にヘッドアームを開いて突っかけたハウンドがつかんだのは…

今むしりとったアーム。

捕まえた! と思ったのは仲間の破損パーツだった。

身をかがめたケルベロ2号、敵の両前足を捕獲。

ドリル回転でいっぺんにへし折った!

片方のアームを開いて回転! ぶんぶんシールド!

敵のヘッドを受け流すともう一方のアームを槍のごとく突きこむ!

強ええ!

ベルちゃんを止めるにはハウンドが複数で掛かるしかない。

だが、そこに殺戮と破壊の権化、狂戦士サイコパス女騎士が!


女騎士は剣を持ち替えた。

電撃剣サンダーブレードだ!

ジャンプしてヘッドアームをを突き出してくる2体のハウンドを剣先で軽々とあしらう。

1体の関節部に剣を突き立てる。

ミーハ村での対戦の時のように深々と突き刺すわけじゃない。

軽く突きこむだけ。そして引き金(トリガー)

雷神槌! 装甲内部を駆け巡る電撃。隙間から青白い光を放って硬直する獣機。

オールドでクラシックなギャグアニメ感電シーンみたいなあの感じ。

骸骨が見えちゃうやつね。しびびびびっ!

刃の根元付近についたショットガンみたいなスライダー、使用済み電撃護符が排出。

次の護符が装填された! ポンプアクション半自動装填!

え? 改良されてるぞ!? いつの間に?

もう一体がぶんぶんアタックをかけようとする。

感電獣機をそっちへ蹴り飛ばす女騎士。

飛んできた仲間をぶん殴ってしまって困惑。

そこへ刺突! 電撃! 再装填!

「これ、最高ー! ありがとう、タンケイさん!」

タンケイちゃんかー、改良したのー。

先生の影響を受けすぎ、心配になってきたって言ってたよ。おやっさんが。


兄貴も鉄棍を振るって応戦。旋回!

舞い踊るような動きで獣機の足元をなぎ払い、打ちのめす。

ストラダさんが、なんかもう、あきれたような悟ったような微笑を浮かべて邪魔にならないように後ろで空気。

そして、俺。

俺もなんもやってない。

というか、犬獣機は俺にかかって来ない。

いっさい攻撃が通じないことは学習済み。

遠巻き。と言うか他の戦いに俺が介入しないように間に入って牽制に専念。

巧みな連携、自分の役目を果たしてる。

これが群団レギオンの真価か。


だが、モアブ騎士団は獣機ほどの知識がない。

騎士が俺に対して攻撃を仕掛けてきた。

弩弓を射掛ける!

そんなの俺には通じない…おう!

凄い衝撃、よろめく!

魔道機に対する攻撃だ、単なる矢ではなかった。

護符が仕込んであったのか?

いやこれは、魔法附加エンチャント

矢の衝撃を増幅させる効果だな。

油断大敵!

でも、この程度じゃな。

スカイエクソン! ビーム発射!

上空からのビームが騎士団の弩弓の弦を切断。

まあ、弦だけじゃなく弓も切れましたけど。

何が起こったかわからず、呆然とする騎士たち。


騎士の攻撃も犬獣機の攻撃も通じない、となれば…

騎士団が後方に引く。

迷宮入り口の脇を固めていた巨体が進み出る。


そう。俺の相手は……軍用獣機ゴリアテだ。



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