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大迷宮へ


夜の内におやっさん、シマックさん、ベスタさんを飛行ユニットで運ぶ。

明朝、素知らぬ顔で工房に戻ってもらう予定。

タンケイちゃんは北遺跡に残ってもらうことに。

犬獣機やミネルヴァボディの整備ができるしね。

モアブ伯への対応を協議していると、ジョーイ君から進言が。

『今、将機1体を馬獣機でレガシに送っています。』

将機? ああ、サイト1で戦ったやつ?

『将機なら、敵サーバー獣機のハッキングを受けません。』

『ミネルヴァさんを経由すればカナちゃんネットに接続できますし。』

確かに、アイツなら…

高周波振動剣を使おうとしていたとこ見れば、それなりに戦闘力もありそうだ。

ま、先生には軽くやられてたけどね。

あれ、アイツ頭悪いって言ってなかった? ジョーイ君。

『あの時は緊急起動したので戦闘以外頭空っぽでした。』

『犬獣機や工兵機からのフィードバックを受けてかなり改善されましたが…』

が?

『どうも自律CPUの出来が悪いみたいで…マルチタスクが効かないんですよ。』

ハイパースレッドがオフになってる?

オーバークロック耐性が低いんだろうか?


インテルのCPUとかでは同じ設計で作ったはずでも、個体差がある。

分子の数が数えられるほど微細化された配線や壮絶なまでの回路数を集積したせいで、製造上どうしても揺らぎが出るのだ。

同じ工場、同じ設計、同じ時期に製造したにもかかわらず出来のいい奴と悪い奴があるという。

出来の悪い奴は動作クロックを落として計算速度の遅い、安いCPUとして出荷されるという噂もある。

まるで畑で収穫されたわけあり野菜みたいな。

「十分に複雑化した機械はまるで生き物のように振る舞う。」

これは俺が勝手に考えた【第四法則】だ。

自作PCとか組んでると実感する。

どうしても動かなかったやつが3日ぐらいすると【自然治癒】するとか…

なんでだよ!?

ま、個人差はあるよね、ロボにも。

アトムとコバルトだってそうだったですね、手塚先生。


よし、振動剣はアイツに返そう。

俺には天空無双剣があるしな。

『そのネーミング…』

ん? 何かな、ヘルプ君? 俺のネーミングに?

『いえ、なんでもないです』

タマちゃんは川べりの洞窟をチェック。

赤外線探知と電波走査で異常なしを確認。

男型将機…アイツにも名前が必要だな。

ジョーイ君|(上位存在)の下だからカイ君|(下位)…。

『……』

ん? 何かな、ヘルプ君?

まあ、本人に聞いてからにしよう。


さて、いよいよモアブ伯と直接対決。

その前にベータ君にタモン兄貴とエアボウド導師を王都から引き寄せてもらう。

使用したのは棺桶。

冥刻界結鎖デスグリップで真っ黒になった二人が棺桶から這い出してきた。

ガタイのいい兄貴が入るとけっこうきつい。

「う、むむ。なるほど気分が暗くなる。」

「うーん、なんとも…」

デスグリップの副作用もけっこうキツい。

そして、先生+夢魔女王の時とは違う。

お二人の時は美女密着、百合リリスなちょっといけない感じ。

今回、狭い箱から出てくるのはマッチョ+ジジイ。

ちょっとイケてない感じ。けっこうキツイ。

さらに、兄妹エルフの要望でU-69も召喚。

他のハウンドファイブはベータ君が個別認識できないんで無理だった。

コンテナごとなら引き寄せられるけど、まだ王都に残しておきたい。

イオニアさん、ビクターさん、メガドーラさんは王都に残った。

犬獣機が要所を固めているとはいえ、まだ政情に不安はあるからね。


あらためて作戦会議。

川べりの洞窟から迷宮内に侵入する班。

先生、兄妹エルフ、鬼人剣士アイワ、女豹戦士ウェイナ、エアボウド導師。

タマちゃん、U-69、組合長。

え? 組合長? 大丈夫なんですか?

迷宮内には一番詳しいので、案内役。そうですか。

そして、ベータ君。

え? 危険じゃ…

「大丈夫です。」

きっぱり、ベータ君。確かに…ゴリ獣機すら屠る腕前だが…

そして女騎士クラリオ。

え? こっち? てっきりタモン兄貴と同行するのかと思ったけど?

なんか、身をよじって悩みながら苦悶しながら選択してたけど?

洞窟で男将機も合流する予定。

ミネルヴァに高周波振動剣を渡す。

将機に返しといてね。

あと、これも…持って行って。

「え? いいんですか?」

タンケイちゃんは北遺跡に残ってもらう。

いろいろ、やってもらう事はあるからね。


そして俺と兄貴、ケルベロ2号は上から。

モアブ騎士団とゴリアテ、ハウンドが守る大迷宮入口から突入する。

まあ、要するに陽動なわけだが。

だが、退くつもりはない。

そのまま突き破って進入するつもり。

迷宮内部は、この間組合長から教わったから俺が案内できる。

ここで重要なのは敵を引き付けること。

できれば、犬獣機の上位機体、サーバー獣機を叩いておきたい。

うまいこと誘いだされてくれないかな?


工房に戻ったおやっさんからも情報が入る。

ケロちゃんGは工房内で待機中。

モアブ兵は操縦器が無いので判断に困ったらしい。

職人衆がうまいこと言いくるめて電源を切ったという。

正直助かった。

ケロちゃんGのCPUはベルちゃん同様、サイト1正常化まえにミネルヴァが再起動したもの。

ファイヤウォールがオンになっていたので敵のサーバー獣機に乗っ取られずに済んだ。

操縦器と自律CPUを内蔵しゴリアテの弱点が無いケロちゃんGは敵に回すと手に余る。

味方としてはすごく頼もしい。

いざと言うときにはみんなを守ってくれよ。


工房でもサーバー獣機の居場所はわからないそうだ。

どこに隠れているんだ?

どうもコイツ、電波発信を最小限に抑えてるらしい。

戦闘が始まって犬獣機に指示を出せば電波可視化で位置がつかめるんだが…

いかんせん、電波可視化ができるのは俺本体だけ。

遺跡内いると外部の感知ができないんだよね。


例によってわりとざっくりとした作戦が決まる。

向こうのことがよくわかんないから仕方ないよね。

そして、夜。

闇に紛れて行動開始。

先生たち下から突入班は北遺跡を出ると街の外側を回って川べりの洞窟へ。

タマちゃんが同行。と言うかあえて意識共有はカット。

タマちゃんなオレは、本体な俺とは分離独立思考する事にした。

もちろん、連絡は取り合う。

以前、戦闘中に記憶共有でビジー状態になった経験がトラウマ。

『大丈夫なのに…』

不満そうだなヘルプ君。


ところで、見張りがついているはずの組合長はどうやって抜け出すの?

本人が大丈夫だと言うので任せたけど…

洞窟に近づくと、女騎士の態度がますます不穏に。

何なんだこいつ?

「そそそ、それでは私、先に行って偵察を…」

いや、いや、それならタマちゃんがやるから。

と、言おうとしたらかまわず駆けだした。

河原で走ると危ないぞ。それに砂利の音がするだろうが。

さすがにこんなとこモアブ騎士はいないだろうけど、犬獣機が見回りに来るかもしれないだろが。

「ちょっ! あひゃ!」

でかい声出すな!

挙動不審女騎士が驚いたのは、洞窟前に立つ馬獣機。

そして馬上には魔道機体。

「あ、あれ? アイザックどの?」

違うよ、たしかにちょっと見はそっくりだけど。

「あ、これ、獣機の本拠地にいた銀色魔道機!」

男将機、間に合った。

まあ、連絡を取り合ってたんでここに待機してたわけですが。

「間に合いましたね。」

あれ、しゃべってる? と言うか…ジョーイ君の音声通信か?

いや、短波音声通信じゃないな。声が明瞭だ。

獣機ネットとカナちゃんネットの相互接続のため指向性中継器をもった犬獣機を南山に送ったとの事。

レガシ全域をカバーする事は出来ないが、北遺跡との接続は確保。

サイト1>ミーハ村基地局>南山中継機>北遺跡交換機>カナちゃんネット。

メンドくさい。

「どうも、自律行動がうまくいかないので、私が直接操作することにしました。」

「地下での通信はそちらのネットワークででお願いします。」

そう来たか。

さらに、カナちゃんネット>ミネルヴァヘッド>ミネルヴァ将機ボディ>男将機。

超メンドくさい。

戦闘になる可能性もあるんだが、これだけ複雑だと遅延とか大丈夫なの?

回線品質の悪いクラウド・ストリーミングゲームみたいになったりしない?

「その辺はなんとか…私が行動決定、反射神経は内蔵自律CPUが担当します。」

うーむ、まあ、人間も同じようなもんか。

まあ、ゲームと違って往復応答する必要はないもんね。

さっそうと、馬獣機から降りるシルバー将機。

今のこの将機はジョーイ君。

いや、将機よりさらに偉そうだから…将軍機。

そう、キミは将軍機ジェネラルジョーイ!


その間に、女騎士が洞窟内にそーっと入っていく。

だが、中は真っ暗。何かにつまずいた音、ガッツン!

「あああ、痛あぁー! 小指! 小指がああー!」

あなたが蹴った小指(足)が痛い。

何やってんだコイツ? うるさい!!

タマちゃんライト!

「あああ、ちょっ! ちょっと待ってくださいぃーー!」

照らし出された洞窟内にはパンツ!

物干し紐に吊るされたパンツ!

けっこうな数、十枚以上パンツ!

貯め込んだ洗濯物パンツ!

洗っても黄ばみが落としきれないパンツ!

干したまま、忘れて王都に出撃してしまったパンツ!

なんとか人に見られる前に取り込みたかったが失敗したおパンツ!

「いいい、今、いま片付けますのでえぇぇーー」


パンツ取り込み女騎士にあきれ返るエルディー先生。

「たかが洗濯物で大騒ぎするな!」

「そんな理由で、こっちに来たのか!?」

「ちょうど将機が乗ってきた馬獣機がある。」

「洗濯物を取り込んだら、タモン殿の方へ回れ!」

「ははは、はいぃー!」

怒鳴りつけられ女騎士、情けない!

「何だ、この剣…ここに置きっぱなしだったのか?」

あ、それ、雷撃剣サンダーブレード

ちなみに王都へ持って行ったのは不殺のエンチャントを施した別の剣。

「犬獣機と戦闘になるかもしれん、こっちも持っていけ。」


洞窟の行き止まりの前に立つ先生。

「さて、あまり大きな音は立てられんしな…」

もう立てちゃったけどね、パンツ騎士が。

「やれやれ、間に合ったね。」

おおう!? 組合長? いつの間に!?

トンちゃんでさえ、全然気づかなかったぞ。ええ?

いや、これだけの人数が洞窟内にいるのに、誰にも気づかれずに先生の隣に立ってる。

ええ? 瞬間移動? まさか?

「ほう、これが【霧化】。ヴァンパイア特有の能力…初めて見た。」

身体を霧みたいに変化させ、すき間を通り抜けると言う。

す、すごい能力。

「久しぶりに使ったねー、できるもんだね、けっこう。」

「バラバラに吹っ飛ばされても復活できたのはこの力があったから?」

「まあ、そんなとこ。」

もっとも、突風に飛ばされて隣村まで行っちゃったことあるそうだ。

なので、屋外では普通に使わない。

「棚の裏に物を落としたときくらいかな、役に立つの。」


「じゃあ始めるか。当初の予定より楽が出来そうだ。」

進み出たのは将軍機ジョーイ君。

その手には高周波振動剣。

「よし、ここと、ここ。後は、ここと、ここだな」

突き当りの壁に振動剣を突き立てる、将軍機ジェネラル

さすがに厚みのある壁をすっぱり切り取ると言うわけにはいかない。

隔壁の何カ所かに、水平よりやや斜め下に向けて穴をあけていく。

と言っても貫通するわけじゃない。

「さて、うまくいくかな?」

水筒護符から水を注いで…

氷雪虎スノーレパード!」

急速冷却! ミシッと言う音。

膨張した氷の圧力によって隔壁にひびが入る。

「なかなか、いけるじゃないか。」

何回か繰り返すと壁がグズグズに崩れ始めた。

破片を取り除くと、ぽっかりと穴が。

この先が大迷宮。

この方法がうまくいかなかったら…どうするつもりだったの? 先生?

「そん時はあれだ…」

あれ?

「ぼーーーんっと…」


「よし、ジョーイ、前衛を務めろ。」

前に出ようとする将軍機に、ミネルヴァがマントを差し出した。

「これは、雀竜のウロコのマント…」

「みんなを守れ、とアイザックが。」

「敵方にビームガンがある可能性は否定できません。」

決然とした様でマントを羽織るジョーイ君。

かっこいいぞ、シルバーナイト。

「なるほど、これなら影武者にもなる…向こうは混乱するだろうな。」

「ウェイナ、隠形魔法の用意をしろ。みんな、準備はいいな!?」

先頭は将軍機ジョーイとU-69。

弓を構えるハイエート、デイエート。

アイワさんが構えるのは秘伝の日本刀。

エアボウド導師の手には魔法杖マジックワンド

ベータ君は防刃の飛行服。

ミネルヴァの腰にはビームガン装備。

組合長と先生はいつも通りだな。


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