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威嚇射撃


モアブ軍先遣隊がレガシを急襲。

特殊獣機により犬獣機の指揮権が乗っ取られた。


ミネルヴァが駆け寄ってきた。

ジョーイ君からの情報は共有しているから、いちいち説明する必要はない。

「急ぎでしたらヘッドバードだけ同行するという手もありますが?」

あ、そうか。北遺跡の管理を考えるとその方がいい。

転送コンテナに駆け込むと頭部鳥メカだけ分離。

飛んできてベータ君の肩に止まった。

「よし、行きましょう!」

いったんデンソー家に寄って、ストラップとヘルメットを再装備。

マッハ飛行でレガシを目指す。

途中、モアブ進攻軍の上空を通過。

進攻軍に潜入しているカナちゃんからの情報を受け取る。

今回はトンちゃんは王都に残し、タマちゃんを連れて来た。

「前の…軍用獣機に占領されたときとは違うんでしょうか?」

ベータ君が心配そうに聞いて来た。

ちょっと俺にもわからない。

犬獣機の数と能力を考えれば、以前レガシを占領した3体のゴリアテよりはるかに脅威だ。

だが以前同様、工房の整備力を当てにしているとすれば迂闊なことはしない…はず。

あとは組合長の手腕に期待するしかないが……


「ミネルヴァ、カナちゃんズネットを通じて北遺跡とつながれるかな?」

フクロウ型ヘッドバードは俺とベータ君の間にはさまれる形で搭乗。

「可能です。」

ヘルプ君はどう?

『可能です、』

じゃあ、敵が北遺跡に近づかないようにする方法、何か無いかな?

『焼き払ってしまえばいいのでは?』

北遺跡のパラボラ形兵器…超やばい!

「それはいい考えです。」

お前ら! この前は仲悪かったくせにこういう時だけ…

それ、絶対レガシの街も消滅するよね。

『肯定』

『軍隊の侵入を防ぐために【協定】に従って設置された兵器です』

『現在、基本照準は大迷宮入り口付近に設定』

え? ちょっ! 組合長のお店直撃!?

だめだめ! 絶対!

他の方法はない?

「威嚇射撃をしたらどうでしょう?」

おう、ミネルヴァ、ナイスアイデア!

ヘルプ君、その線で…人的被害のない感じで一発撃ってもらえるかな?

『了解』

「ボクのアイデアなんだからボクが撃ちます。」

『発射の主体は機動体本体、現在は私の管轄です』

「こ、こいつ! ボクのアイデア横取り…!」

あああ! こいつら!

わかった。わかったから。ひとり一発ずつ撃っていいから!

「ボクが先ですね。」

『作動確認の確実性を考慮すれば私が先かと』

ああああ!


一応、ベータ君にも聞こえるように音声出力しながら通信してた。

あまりに物騒な会話にふるえてるよベータ君。

顔真っ青、見えないけど、たぶん。

「こ、ここは歳の順ということでミネルヴァさんから…」

『ベータさんがそうおっしゃるなら』

え? ヘルプ君? なんで俺のいうことよりベータ君のいうこと聞く感じなの?

「じゃあ、撃ちます。」

ええ? ここから操作するの? 

そりゃ、早い方が良いけど…もう少しレガシに近づいてから…

『あまり近づくと危険です』

えええ? そんな威力? ちょっと、待っ!!

「発射!」

はるか前方、レガシの方向。地平線を越えたあたりから閃光が!

「ひゅーーっ!」

ひゅーじゃねえよ! ミネルヴァあああぁ!

ああああああーーー!

『発射!』

いや、ヘルプ君、待ってって…

再び閃光が上がり、同時にこちらに向かって光線が飛んできた!

うああー! かすめたよ! かすめたあああーー!

『大げさですね、最接近距離でも200mは離れていました』

「なにやってんですか? へたくそ!」

『環境への影響を避けるために山頂付近を貫通するように発射しました』

『山頂付近の形状が変化する事で威力を強調する狙いもあります』

『考えなしに山腹にクレーターを作る誰かさんとは違います』

うあああああーーーー! こいつら…危険だ! 危険すぎる!


しかし、軍の侵入を防ぐ云々て言ってたけど…

組合長魔王のときは対応しなかったのか?

『少人数、あるいは調査目的の場合は攻撃対象になりません』

『組織的な行動が監視対象です』

魔王軍…組織だっていなかったのか…

好き勝手してたって言ってたもんな、組合長も。

そのあとの、ナビン王たちは…ああ、七英雄だけだから軍隊じゃない扱いか。

でも、その後の調査には軍隊が入ったはずだけど?

『魔力核崩壊後は監視対象外になっています。』

ううーん、【古の協定】思ってたよりはるかに複雑だ。

…待てよ? ってことはもしモアブ伯がコアを再設置したら…


レガシに近づく。

今通過した山…山頂がなくなってたよね?

熱線?が通過した部分が消失して、レガシ側から見ると三日月形になってたよ!

その手前…クレーター? すり鉢型にへこんだ巨大な穴が…

中心部はまだ岩とか熔けてマグマ状、真っ赤!

ややや、やばい! 威嚇射撃とかってレベルじゃないですがね。

これ…核爆弾とかよりヤバい?


北遺跡の裏側から接近。

タマちゃんを先行させ周囲を検索。

敵兵士はいないな。

ドームのパラボラ砲が熱を持ったままだ。

接近すると輻射熱を感じる。

徐々に冷えてきているようで収縮する金属から発っせられるキン・キンと言う異音。

こりゃあ、兵士がいても逃げるわ。

ドームオープンは時間がかかるから、前方部分に着陸。

遺跡のドームが乳白色の金属質なのは…熱反射のためだったのか?

他の短波用アンテナ類は全て収納されているようだ。

タマちゃんと、念のため連れてきたカナちゃん数体を街の様子見に放つ。


「よし、ベータさん。ミネルヴァの将機ボディ召喚をお願いします。」

「わかりました。器機召喚アポーツ!」

たちまち、パーンサロイドボディが召喚される。

…あれ?

消えた! 鳥ミネルヴァが!!

そして出現した改造将機ボディに合体済みの状態で出現!!

「ええ!?」

えええ? ミネルヴァもびっくりしたけど、俺もびっくりしたよ。

そして、ベータ君もびっくりした。

引き寄せ魔法は術者のイメージに左右されるらしい。

それは、この間の実験でもわかってたけど、こんな事もあるのか。

…あれれ?

ミネルヴァの将機ボディは、実のところ中々にエロい。

胸の部分の造形は先端部がちょっぴり尖っている。

先っちょが…造形されていると言えば、されているような…

されていないと言えば、いないような…

そんな絶妙にエッチなモールドがなされている。

無理やりキャストオフしたフィギュアに時々あるあんな感じ。

タンケイちゃんの改造を受けた際にその先端部を通過してラインがペイントされた。

世間に配慮して、おヌード感が軽減された。

されど、逆にボディラインとか先端ポッチとかが強調されたような…

そんな、これまた絶妙なペイントだったわけだが…

消えている。いや、無くなっている、といったほうがいいか?

塗装だけ置いて来ちゃったのか? 王都に。

元のおヌードっぽいボディ。

これも、ベータ君のイメージが作用しているのか!?

あ、思わずベータ君のほう見ちゃった。

「え? あれ? いや、その…これは…」

エルフ耳まで真っ赤になってうつむいちゃったベータ君。

いいんですよ。男の子ですよ、ベータ君。


北遺跡内部にはいると短波通信アンテナを出してジョーイ君と北遺跡との通信を回復する。

その間にミネルヴァと相談。

「ミネルヴァ、犬獣機の指揮権を取り返せませんか?」

「無理ですね、上位存在と同レベルでペアリングされているようです。」

『将機と言うより、サーバーを内蔵した移動基地局に近いものと推測されます。』

おっと、ジョーイ君との音声通信回復。

君の記録にないタイプの将機ボディ…なぜ情報が無いんだ?

『軍用獣機と同じ場所に置かれていたとしたら軍事用の機体でしょう。』

『私の記録には軍用獣機ゴリアテについても情報が有りませんし。』

最初から犬獣機と一緒に開発された機体じゃないんだな。

警備警察用に作られた犬獣機。そのCPUはゴリアテより高級だ。

数が多く高性能な警護獣機を軍事用に転用するために、後から作られたって事もありうる。

【魔法原理主義】との対立が深刻化して戦力を増強する必要が出てきた時期に開発された、と考えれば辻褄は合う。

『指揮権を奪還するには再起動が必要と思われます。』

ペアリングと言う点ではジョーイ君の方が先にしていたはずだが…

なんで奪われちゃったの?

『私以外に指揮権限を持つサーバーが存在している事を想定していませんでしたので…』

『セキュリティロックが掛けて有りませんでした…』

ああ、そうだった。以前にミネルヴァに簡単にハッキングされてたもんな。

パスワードが掛けられていないWebカメラみたいな感じで、乗っ取られちゃったわけか。

「ベルちゃんはボクが以前、再起動したハウンドですから…」

「基地局命令をブロックするためにファイヤウォール設定されてますよ。」

あ、そうか!

サイト1を開放する以前に再起動して味方につけた犬獣機は大丈夫って事か。

じゃ、俺が再起動したU-69始め、ハウンドファイブも大丈夫ってこと?

それじゃ、ケロちゃんGも大丈夫って事じゃん! やった!

「ベータさん、コンテナを使わずにケルベロ2号を召喚できますか?」

「ベルちゃんなら、一度召喚してますし可能です。」

ヘッドアームが2本あるケルベロスはふつうの犬獣機に対して圧倒的に有利。

二天一流の使い手だ。よし、こっちで協力してもらおう。

「お願いします。」

「はい!」

召喚! ベルちゃん。

「ぴー?」

いきなり引き寄せられてびっくりしてる。ゴメンよ。

どう? ミネルヴァ?

「大丈夫です、ファイヤウォール有効。今まで意識したことは無かったんですが…」

まずは、

「ドームの管制室に対策本部を設置しましょう。」

うん、対策本部。基本だよね。

ドームに上がると、工兵機が2体!

ああ、お前ら居たんだっけ!

…攻撃しては来なかった。

指令権は奪われているようだけど、特に命令は受けてない感じ?

ボーっとしてる状態だな。

とりあえず、一旦電源を落として再起動してセキュリティを掛け再ペアリング。

作業できる人手はありがたい。人じゃないが。

「犬獣機は以前のように人を襲うのかな?」

『警護モードを解除して殺人機モードにするには、再起動だけじゃなく再フォーマットで初期状態に戻す必要がありますから、それは無いと思います。』

良かった。少し安心したよ。


よし、こっちの準備はOKかな。

「こちらアイザック。先生、聞こえますか?」

『おお、どうだ? そっちの様子は?』

トンちゃんを通じて通信。

王都の状況は記憶共有で把握。

「北遺跡は確保しました。転送が可能です。」

転送は可能だが、ハウンドファイブはちょっと待ってもらう。

コンテナはもう一台あるから、また後でね。

『こっちは準備完了だ。人数が多いんでコンテナNO.1を引き寄せてくれ。』

器機召喚!

ドーム内の格納庫にコンテナが召喚された。

「うん、ドーム内か?」

コンテナから出てきたのは、先生、おやっさん、タンケイちゃん、兄妹エルフ、アイワさん、ミーハ三戦士。

みんな、ちゃんと服着てるな。ミネルヴァみたいな事はないね。

先生ぐらいはおヌードになっててもいいんじゃないかな、ベータ君。

と、女騎士? なんで?

「タモン将軍は断腸の思いで王都に残りました。奥さまは私が守ります!」

うーーーん? どさくさ紛れに恋敵暗殺しようとか思ってないよね?

「あとワタシちょっと…した… いや、何でもないです。」

何だよ?


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