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レガシ急襲


小太り学者エルフ、ハイバンドの証言で色々な事実があきらかになった。


「僕のほうだけじゃなく、そっちの話も聞かせてくださいよ。」

レガシを飛び出して放浪しながら各地の文献を調べていた学者だ。

好奇心は人一倍。

「睡眠学習魔法で発表した以外にも色々あるんでしょ?」

「まあ、お前の持ってる情報と突合せは必要だな。」

先生も生臭賢者も、基本的には学者さん。

この辺から、ディスカッションに。

サイト1、ジョーイ君から得た情報を伝える。

「なるほど…やはり【人間】が異世界転移者だというのは事実だったんですね。」

「解読した史料にもそういう記述があって、バンカーもショックを受けてましたよ。」

「知ってるのか? モアブ伯は!?」

「もちろんですよ。ま、僕が解読して伝えたんですけどね。」

「ショックっていっても…これが明らかになれば至上主義派閥は崩壊…」

「自分の政治基盤がなくなると発掘作業が続けられなくなるっていう心配をしてました。」

んん? なんだか…ショックの受け方が違うぞ?

権力に執着していたわけじゃないのか?


「魔道機を作ったのは【人間】、魔法はそれ以前からエルフが使っていた…」

「古代文明は複数あった、と言うのがワタシの仮説だが…」

エルディー先生の言にうんうんうなずくハイバンド。

「いろんな史料から、大街道は【人間】が来る以前から存在していたのが確実です。」

「そうすると…」

先生が俺のほう見る。

「コイツ、神代魔道機は…大街道文明時代の産物か?」

「違うと思いますよ。」

「神代魔道機に関しては、僕は一つの結論に達しています。」

「ほう? 聞こうか。」

「今までの研究者はこう考えていました。」

「未知の太古文明があったのは間違いない。」

「大街道がその遺物であり実在した証拠だ。」

「だから、神代魔道機が実在する以上、それを作った文明もあったはず。」

「だけどですねえ…」

勿体つけるハイバンド学者エルフ。

「そもそも無かったんですよ、神代魔道機を作った文明は。」

「何? いや、じゃあ神代魔道機は誰が作ったんだ?」

聴衆一同を見回す、得意げ。イラっとくるな。

「魔道機文明を創始した【人間】はどこから来たんでしたっけ?」

「あ! そうか!! 異世界転移…」

「そうです。魔道機文明は担い手である【人間】と【技術】が転移してきて発生したわけですが…」

「神代魔道機は、魔道機そのものが【異世界どこか】から転移してきたんですよ!」

「そうか! それなら、時代的継続性が無く技術的に孤立している説明がつく。」

なんと、俺はオーパーツか!

「神代魔道機ではなく…異世界魔道機だったわけです。」

俺の魂は異世界から召喚された…この身体も昔、異世界から召喚された?

「いつ転移してきたんだろうな?」

「神代…異世界魔道機が最初に…というか唯一記録されているのは…魔道機文明時代。」

「【仲裁者】ですよ。」

ジョーイ君が言っていた、【人間】とこの世界との対立。

のっぴきならない事態になった時に現れ、仲裁したと言う存在。

けっこう新しいの? 俺? この世界ではわりと新参?

「これは、バンカーに拉致される以前に調べていたことですが…」

「色んな記録によると…【人間】と【技術】を受け入れる勢力と、反対する【魔法原理主義】勢力が対立したようですね。」

「【魔法原理主義】勢力は極大魔法を使って【人間】を追放しようと図ったと。」

「追放? 異世界へか?」

「極大魔法については具体的な内容はわかりませんが…鬼人族の術者が関わっていたという記録がありますね。」

鬼人族? 重力魔法!? ブラックホールか!!

そんなもの地上で使ったら…

「これに対して【人間】側も強力な兵器…【ねつかくゆうごうへいき】なるものを用意していたようです。」

「こちらも名前しかわからないんで…ちょっと、どういうものか不明なんですが。」

翻訳機能を使う必要は無かった。日本語だ。

熱核融合兵器…水爆か!

旧ソ連が開発した世界最大の水爆「爆弾の皇帝(ツァーリ・ボンバ)」はヒロシマ型原爆の3300倍の威力を持つと言われた。

そんなものを作った? この世界で…【人間】が?

いや、転移してきた【人間】の都市は、元々は異世界への接続特異点を監視するために作られたもの。

緊急時に特異点を消滅させるために…あらかじめ配備されていたのかも?

まさに、のっぴきならない事態、だったわけだ。


「もっとも、『あった事』は証明できても『無かった事』は証明出来ませんからね。」

「どこまで行っても、僕の『神代文明なかった説』は仮説のままですがね…」

考え込んでいる先生…

「先生?」

「エルディー?」

ハイバンド氏やエアボウド導師が問いかける。

「タイミングが良すぎるな…」

「アイザックは存在そのものが一種の召喚装置…」

ああ、そんな話でしたね、第一話では。

「召喚魔法テクノロジーの存在が前提…」

「最初から仲裁を目的に召喚された…もしくは送り込まれた……?」

え? 何の話です、先生?


今度はタモン兄貴が質問。

「モアブ伯は今後のことについて何か話してなかったか?」

「ロスト地方に自ら出撃するなんて…肝心の王都の警備は手薄だし…」

「何がしたいんだ?」

ハイバンド氏、しばらく考えていたが…

「今にして思うと…彼、過去の愚痴はこぼしてましたが、これからどうするって話は一切してないですね。」

「さすがにその辺は抜け目がないか…」

「王都の再奪還に戻ってきたところをとっつかまえて聞くしかないか。」

腕組みをして唸る兄貴。

ぼそっとつぶやくハイバンド。

「もどって来ますかねえ?」

「何?」

「もう、王都に帰ってくるつもりは無いんじゃないかなあ…」

「これは僕の想像ですが…彼のホントの目的は…王国の掌握とか…権力とかじゃなくて…」

「大迷宮、冥刻界の女王神殿(ヘルズパレス)こそが本命なんだと思うんですよ。」

「な、なんだと!!」

レガシの一同、驚愕!

「バンカーだったら大迷宮の場所は知ってるでしょ…隠蔽したの親父さんなんだから…」

「例の古文書には…魔力(コア)ってヤツも描かれてたんですよ…」

「昔、ナビン勇王が砕いたというヤツですよ。」

「僕が発見できなかったのか尋ねたら…はぐらかされましたから…」

「たぶん、スペアとか予備とか発掘したんじゃないかな。」

「魔力核!?」

唖然とする一同。

エアボウド導師がつぶやく。

「バンカーは…【魔王】になるつもりなのか!?」

「い、いかん。すぐ、組合長に連絡…北遺跡の留守番は誰が…」

あわてる先生だが…

あー、誰も留守番してないや。とほほ。

「ジョーイ君を通じて犬獣機に伝えてもらいましょう。」

…発声機能がないな。

必死にゼスチャーで組合長に伝えようとする犬獣機を想像して、ちょっとなごむ。

タマちゃんもトンちゃんも、ミネルヴァもこっち来てるし…

カナちゃん…カナちゃんに行ってもらうか。

きょとんとした顔の小太り学者。そっか、知らないんだこのヒト。

「どうしたんです? みんな? なんかまずい事でも?」

「大迷宮があるのはレガシの街の地下だ!」

「へ?」

しばらく脳内で情報を整理してたようだ。

「えええーー!」

素っ頓狂な声を上げた。

「ま、まずいじゃないですか? それ!」

まずい、超まずい。


と、そこへ通信が。ジョーイ君?

何だか声が遠くない?

『やっと繋がりました。』

相互乗り入れしている獣機ネットと神代魔道機ネット。

実は接続しているのは北遺跡。

カナちゃんとハウンドは直接通信は出来ない。

すぐとなりに居ても一旦、北遺跡を経由しないと情報交換は出来ない。

もっとも、俺本体とミネルバには接続機能があるので代わりにはなるんだけど。

『今は短波音声通信を北遺跡に送って通話しています。』

『大変です! レガシの街が回線切断。占拠された模様です。』

えええー? ど、どういうこと?

モアブ軍のしわざ?

王都を進発した鉄蜘蛛隊はまだ半分も行ってないはず。

『新型鉄蜘蛛に軍用獣機じゃなく兵士を乗せて、急行したようです。』

兵士だけ? それで街を占拠したの?

レガシにはまだ犬獣機だってケロちゃんGだって残っているのに…

『それなんですが…敵には犬獣機の上位個体、犬将機とでも言いますか…』

『私のデータにはない個体が存在、中継局並みの指令能力を持っているようです。』

『南山基地局を破壊され、レガシ一帯の指揮権を奪われました。』

はいい? それじゃあケロちゃんGを始め工房にいた軍用獣機は…

『自律行動可能のまま、敵の支配下に組み込まれたと思われます。』

あかーん! 軍用獣機の攻略法、兵士から操縦器を奪って無力化って方法が使えない?

いや、それどころか…ケロちゃんGが学習した投石機能…もあっちのものに?

ん? 思われます?

『犬獣機からの情報が得られなくなったので、私にはレガシの現状を確認する手段がありません。』

『ミーハ村基地局から派遣した警護獣機は撃退されました。』

戦闘力も高いのか? そいつ。

とにかく、北遺跡だけは死守しないと…

爆弾やミサイル…最後の切り札とでもいうべき空爆コンテナが使えなくなる。

「どうした!?」

黙ったまま、ジョーイ君と通信してる俺に先生が話しかけてきた。

「レガシから連絡がありました。」

事情を説明。


愕然として思わず立ち上がるタモン兄貴。

「も、もしかして…おびき出されたのか? オレ達?」

「ま、まさか…王都を囮にしたって言うのか?」

頭を抱える兄貴。

「やられた! くそ、レガシに戻ろうにも…王都も放っておけないし…」

「進攻中のモアブ本隊がどっちに行くか見極めなきゃ動けん!」

「とにかく、私とベータが戻る。それからのことは向こうで考える!」

エルディー先生が立ち上がった。

「頼むぞ、アイザック!」


尋問室コンテナの外へ出るとベータ君に声をかける。

「緊急事態です。今すぐレガシに戻ります。」

「ええ?」

「わたしも一緒に行く。」

先生の言葉に驚くベータ君。だが、

「緊急事態…急ぐんなら僕一人の方が…」

「飛行服を着ていない先生が一緒ではスピードが出せないでしょう?」

うーん、冷静だ、ベータ君。

「そうか…よし、向うへ着いたら例の棺桶を召喚してもらうか。」

「キララを呼んでくれ。」

人間を転送するためには闇結界が必要。キラすけの出番か。


「急ぎましょう! アイザックさん。」

うん、イーディさんのことも心配だ。

「はい、行きましょう、ベータさん。」

「先生もですが…レガシについたらまずミネルヴァを召喚してください。出来ますか?」

ミネルヴァはダークゾーンで保護しなくても引き寄せることが出来る。

だが、引き寄せ対象はある程度ベータ君が認識しておく必要があるからね。

「え、ミネルヴァさんを? だ、大丈夫です。」

なんで赤くなるの? ベータ君?

ちょっぴりエッチなミネルヴァボディ、隅々まで認識しちゃってるのかな?

「犬獣機を掌握しているのが将機だとすると…ミネルヴァの将機ボディで対抗できるかもしれません。」

あああ、やばい。無事だろうか、レガシのみんなは?



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