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嫁・姑問題


バッソ侯夫人を救出するためエリクソン伯爵邸に突入。

モアブ兵を排除した。


進み出たのは30代くらいのレディ。

若々しさを保っているがしっとりとした落ちつきを感じさせる。

人妻美人! これもいいもんですな。

「クオリア様!!」

サンゴロウ騎士が片膝をついて頭を垂れる。

バッソ侯の奥方、エリクソン伯の娘。クオリア・バッソさん。

「あなたは、たしか…エスブイ家の?」

「湾岸侯にお仕えするエスブイ家の騎士、サンゴロウと申します。」

「サンゴロウ騎士ご苦労でした。キララさん?」

ビクッとするキラすけ。

「は、義母上、ご無沙汰しております……」

だんだん声が小さくなる。

「まったく、心配をかけて…無事で良かった…」

「そちらの方々は?」

先生が進み出た。

「バッソ家の奥方だな。わたしは縁あってキララの魔法指導をしておるものだ。」

「では、あなたが七英雄エルディー大導師!」

「エアボウド導師からうかがっております。」

「娘がお世話になっております。」

静かに頭を下げる。

この異常事態の最中に、まったく落ち着いている。

大したもんだな、この奥方様。

…娘か…キラすけのことも心配していたようだし…

「キララ! キサマー!! どこ行ってたーー!」

凶暴令嬢が敵意むき出し!

「なんだ、お前!? さっきの魔法は? いつの間にあんな…」

「ふっふっふっ! ルミ姉上…」

「エルディーしぇんしぇーの指導を受けた我はもはや昔の我ではないのだ!」

そっくり返るキラすけ。

「闇魔法を自在に操る我はすでに闇の女帝!」

ちょっと間、なんか考えた。

「黒き宝玉~普通魔法が使えなくて虐げられていたけど、学園を出奔して師匠についたら闇魔法で女帝に覚醒!~」

流行りの追放系なろうタイトルか!?

何、キラすけ、この姉上と仲いいのか? イジメられてたのとは別の姉上?

「見よ! 我が下僕しもべたる神代守護魔道機を!」

え? 俺のこと? 誰が下僕だよ!?

「う、お、おお…」

唖然と俺を見上げる野獣令嬢。

必死に目配せしてくるキラすけ!

話、合わせろってかい!?

仕方ないから付き合う。

ダミーアイと額のランプを点滅させ、両手を構えて一声!

「マ!!」

羨まし気に顔をゆがめる姉上凶悪令嬢。

自慢げにそっくり返るキラすけ。


俺とキラすけがコントやってる間に新たな戦いが始まっていた。

クオリア奥方様が気づいた。

「エルディー大導師…するとそちらの方は…」

複雑な表情で立ち尽くしていた夢魔女王。

「ど、ども…」

「顔を合わすのは初めてかの…」

声、ちっさ!

嫁、姑! 初邂逅。

「お義母…さま?」

「う、うんまあ、そうゆーことになるかの。」

なんとも言えない雰囲気、微妙な空気。

さすがのエルディー先生もツッコめない。

世界、異世界を問わず、デェーリケェトな問題やさかいな。

「メガドーラ殿、お久しぶりです。」

声をかけたのは…壮年の紳士。

「エリクソン伯、ご無沙汰しておる。」

この人がエリクソン伯?

そして、凶暴令嬢以外にも子供たちがいる。

男の子が二人。

年長と思われる男の子が進み出た。

「母上、此の方は…」

「お前たちのお祖母さまですよ。」

「え?」

目じりが下がるメガドーラさん。

キラすけの時みたいに抱きしめようとしたが…

思いとどまった。

「えーと? ワシの事は内緒にしてたんじゃ…?」

そういえば…キラすけはお父さん夢魔ハーフだって事知らなかったよな?

「そういうわけでは無いんですが…」

「上の姉二人が…その…至上主義に毒されてしまって…」

「公に出来ない雰囲気に…」

申し訳なさそうに口ごもるクオリア母上。

「ふん、父上が夢魔族の女をめかけにしたんで反発したんだ、姉上たちは!」

「こ、こら、ルミナ。大人の話に口を出すんじゃ…」

言いにくい事をはっきり言っちゃうアニマル令嬢。

対して長男っぽい男子、分別もあるようだ。

「あちゃ!」

側妾を押し付けたのはメガドーラさん。複雑な家庭の問題。

場の空気が重い。

「う、上の二人の姉は…王立学園でいじめに加担していたのがわかりまして…」

「今は湾岸市で鍛えなおしてもらってます…」

え? まさかヨットスクール的な…な、じゃないよね?

「す、すまん。ワシの勝手で苦労をかけたの…」

「すまん、わしのせいもあるんじゃ…」

エリクソン伯も加わって謝罪合戦。

気を取り直して孫たちに向かいあう。

「抱っこしていいかの?」

「お祖母さま…」

男の子二人をぎゅー、でも思春期男子には刺激強いかも? このおばあちゃん。


そんな、温かい家族の構図から外れているのはキラすけと凶暴姉上。

「なんで、こんなヤツに捕まってたの? ルミ姉上?」

「バーンとやっちゃえば…?」

「これだよ! これ!!」

見れば首にリボンが巻かれている。

飾りチョーカーかと思ったけど…模様が魔法陣?

「ほほう、魔力封じだな。なかなかしゃれたものを使ってるな。」

近づいて手を伸ばす先生に警戒感あらわ、身を引いて唸る凶暴令嬢。

「ぐるるる…」

野獣だ! この子。

「この子、トリルミナは魔力が強くて…」

「最初にモアブ兵が来た時に大暴れしたもので…着けられたんです。」

恥ずかしげなバッソ夫人。

「頼もしいじゃないか、さすがメガドーラの孫だけある。」

「ちょっと、触るぞ。」

首筋に触れると小声で詠唱。

たちまち魔法陣が霧散して、はらりとリボンが落ちた。

「ええ?」

「専用の解呪鍵がなければ外れないはずじゃ?」

「まあ、組み立てがわかれば解除もできる。」

驚く夫人、伯を横目に涼しい顔の先生。

びっくりしたような顔していたトリルミナちゃん。

倒れたままのハゲ隊長に視線を移すと…

魔力の回復を感じたのか、いきなりマジックアローを発生させた!

「この一発で!」

固体化した光の矢を槍投げ!

「地獄へ行けえぇーーー!」

トドメを刺そうとぶっ放した!!

おおーう!!

ハゲ隊長の容態を心配していたハイエートがびっくり!

とっさにバンパーでガードした。

「おおっと! 元気がいいですねえ。でも、おいたはいけませんよ。」

さすがお兄ちゃん。野獣の扱いには慣れている。

キラすけを超える危険人物だ。猛獣令嬢。

「邪魔すんな! この…おおっ?」

さすがに美形エルフの美形っぷりにはびっくり。

「ほえーー…」

ぽかーんと口をあけておとなしくなった。

「つもる話もあるでしょうけど…そろそろ、おいとましませんと…」

ハイエートがせかす。

そう、まだ終わったわけじゃないからね。


タマちゃんから連絡、カロツェ家の解放は問題なく終了。

トンちゃんからも連絡、王城の占拠は完了。王族も全員保護。

ミネルヴァから通信、犬獣機→将機ボディ→ミネルヴァ経由。

王都全体の軍用獣機操縦者の制圧完了とのこと。

こうして言うとレガシ勢ばっかり頑張ってるように聞こえるけど。

実際の治安回復に活躍したのは兄貴の指示を受けた王軍。

残留モアブ兵を制圧、拘束した。

だが、まだ一ヶ所残っている…モアブ伯の屋敷。敵の本拠地だ。


「よし、行くぞ! サンゴロウ殿、ここを頼む!」

「キララ、どうする?」

「しぇんしぇと一緒に行く!」

クオリアお義母さんが何か言いたげな顔。

先生が制した。

「大丈夫だ、キララはコイツが必ず守る。」

コイツ? あ、俺ですか。

OK、OK。まかせてーぇ、ちょぉだいっ!

「マ!!」

「よし! メガドーラは?」

「え? いや、何? もちろん行きますですよ、のことよ。」

挙動が不審だ、メガドーラさん。

こういうのファミリードラマ、ほんとに苦手らしい。

「ワタシも行く!!」

「ダメです!」

凶暴令嬢も手を上げたけど、もちろん母上から却下。

よし、行動!


まだ床に倒れている髪薄隊長…

通りすがりに、ふと目を止めたキラすけ。

むき出しになった頭部のむき出しの頭皮に視線が吸い寄せられる。

「…デスグリップ。」

頭部に鉄腕ア○ムみたいな髪形型闇結界ができた。

「うむっ!」

満足げ!

うむっ! じゃねえよ。余計な事すんなよ、お前。(笑)


後で聞いた話だが、さっき居たのは長男のクリエート君と次男のトリニート君。

そしてトリニート君と双子の姉、野獣令嬢トリルミナちゃん。

ちゃん、と言うにはあまりに凶暴。ルミごん!

さらに上に二人姉がいるが、今は湾岸市で更生修業中。

「トリルミナお姉さんとは仲いいのですか?」

「ああ?」

すげえ嫌そうな顔するキラすけ。

「あの凶暴な捕食動物プレデターと仲良くなれる生物などいない!」

そんなにか!?

「まあ、ルミ姉は誰にでも牙をむく! 強かろうが、弱かろうが、誰にでもだ!」

「そこは、評価してやってもいい。」

評価するところか? それ?

うーん、まあ、差別とか弱い者いじめとか、卑怯な真似はしないってことなんだろうな。


次に向かうのはモアブ伯の屋敷。

カナちゃんズ情報で状況を把握。

警護のモアブ軍に王都内から撤退した兵が合流。

かなりの人数が立てこもっている。

ゴリアテが4体、そしてここには鉄蜘蛛がある。2台!

楽勝ってわけにはいきそうもないな。

トンちゃん、タマちゃん、カナちゃんズ、通信機能をフル活用。

手の空いてる人やメカは来てもらえるかな?

『ボクはすぐ近くにいます。』

え、ミネルヴァ? 何やってるの? タンケイちゃんの警護は?

『鹵獲した操縦器を警護獣機ハウンドに繋いで再起動しています。』

『王城ではすでにゴリアテとハウンドが警備にあたっているのでタンケイさんは安全と判断。』

『市内警備してたゴリアテはあちこちに点在しているのでボクが走り回って再起動しているんですよ。』

そっか、軍用獣機の方は重デカいから動かせない。

作業する側が出向くしかないか。

でも、犬獣機の自律CPUでもゴリアテ動作学習には時間がかかったんじゃなかったっけ?

『ケロちゃんGの学習済みデータをコピーしてきました。』

そっか、じゃあ、モアブ邸に派遣できるハウンドゴリアテある?

『今やってるのが再起動できればすぐ向かいます。』

よし、よろしく!



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