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パーンサロイド!


数日後。

さて、タモン兄貴とエアボウド導師は王都で情報収集と根回しに当たることになった。

送っていくのは被甲身バンパーバリヤーで音速飛行が可能になったスカイエクソン。

さすがに人を乗せてマッハは出さないけどね。

新型の小型ドローンカナちゃんズを大量に搭載。

カナちゃんズは常に2体セットで行動するというので、128組256体に出動してもらう。

爆装コンテナからミサイル、爆弾を下ろしてカナちゃんズを詰め込む。

おやっさんが調整してくれたコンテナ対応ストラップを装着。

今までのパラシュートタイプのハーネスを改良。

吊り下げゴンドラに座っていく形に変更された。

4点支持シートベルト、長距離飛行でも快適。

カップホルダーまでついてるぞ!

さらに空力バリヤーで保護しやすくもなってる。

出発準備完了。


タモン兄貴とダット姐さんのしばしのお別れ。

それじゃ、行って来る。気をつけてね。チュッ!

危ない事しないでね。王都の様子を見てくるだけだよ。チュッ!

寂しいわ。俺も寂しいよ。ムギュ!

そんなに長くはならないわよね。ああすぐ帰るさ。ブチュー!

周囲のイラつきは最高潮。リア爆!

危うくビーム発射するとこだったですよ、スカイエクソン。

「さあ、行くぞ~。準備出来たぞ~。」

すでに、飛行ユニットにぶら下がった生臭賢者がせかす。

「将軍、お気をつけ……」

「気をつけてね、タモン。」

女騎士が掛けた声にダット姐さんがかぶせる!

意外と大人げないです。


飛行ユニットは発進。

頼むよ、気をつけてね。

トンちゃん、タマちゃんも収納されて同行。

ここんとこ、分割思考と並列状況把握に慣れていたので、すっかり寂しくなった。

まあ、カナちゃんズがまだいっぱいいるんですが。

カナちゃんズ、数が多すぎるので並列思考が出来ない。

リアルタイムではなく、必要に応じて記録情報を渡してくれる感じ。

王都での集計はトンちゃんタマちゃんが行ってくれる。

ご苦労さま。

はて、俺本体はちょっとヒマ?

北遺跡地下の倉庫の探検でもしようか…

倉庫からビームガンを持ち出して、工房に穴あけ工具を設置しよう。


てなわけで、北遺跡に。

ついてきたのは…キラすけ。

なんだお前、ヒマなの?

「なんでついて来るんですか? キララさん。」

「い、いいだろ!」

マビカは実家への手紙を書いてる。苦戦中。

まだ書いてるのかよ!

飛行ユニットが帰ってきたら次は湾岸都市へ行く。

たぶん、明日には出発するぞ。

イオニアさん、ベータ君は先生の手伝い。

だから、相手してくれる人がいないのか。

お祖母ちゃんはどうした?

息子のバッソ侯への手紙を書いてる? 苦戦中?

うーん…

いや、キラすけだってパパへの手紙書かなくていいのかよ?

もう書いた? ホントかよ!?

お前、ジジイに託した王都への手紙はちゃんと書いたんだろうな?

お義母さんに事情説明したよな?

目をそらしたね。

まあ、その辺はジジイ賢者が説明してくれるだろうけど…


北遺跡の地下に降りる。

魔法照明を着火。いつまでもカンテラじゃ不便だからね。

職人衆があちこちに照明を取り付けた。

地下倉庫の入り口、封印扉の前。

「ほほう? ほほほーう!?」

でかくて立派な封印扉。

何より「封印」と言うのが心の琴線に触れたらしい。

キラすけさん、テンション上がって来ました。

俺がQRコードを読んで解錠しようとすると…

「開け! 神代の古き扉よ! 永劫の封印を解いて、我が前にその叡智を示せ!!」

中二ポーズ! ゴゴゴゴゴ……的な効果音が聞こえてきそう。

いや、お前、口で言ってるよね?

「ゴゴゴゴゴゴゴゴ……」

いや、お前がなに言おうと関係ないんですけど?

解錠するのは俺なんですけど?

「迎えよ! 数千年の時を超えて、今、汝の前に降臨せる闇の女帝たる漆黒の魔道士【黒き宝玉】を迎えよ!!」

ノリノリだな。いや、初めて開けるわけじゃないから。

カナちゃんズ取り出すのに開けちゃったんだよ、もうすでに何回か。

両手を広げ期待に満ちた顔、キラすけ。

いつまで待っても開かない。当然だが。

「ん?」

期待したような…困ったような顔で俺のほうを見る。

「すいません、キララさん、これ手動なんです。」

傷ついた的な表情。

がつん! 蹴るなよお前!! 俺のせいじゃないぞ。

よっこらせ!っと扉を開ける、重い。

待ちきれず、ちょっと開いた隙間から中を覗きこむキラすけ。

邪魔! じゃまだから、そこにいると。

扉を開けると、中は真っ暗。

途端に後ずさるキラすけ。俺の後ろに隠れる感じに。

さっきまでの威勢はどうした?

ふつふつといたずらごころが湧き上がる。

カモン! カナちゃんズ!!

キラすけにたかってやれ!

いつかカブトムシをたからせてやるって約束してたよな。

その約束、今、果たすぜ!


来た来た! カナちゃんズ!

ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ!

唸りを上げる羽音。

「ふひ!?」

雲霞うんかのごとく飛来する小型ドローンズ。

「あひっ!? ふひいぃぃーーーー!!」

たちまち、取り巻かれて見えなくなるキラすけ!

「何これー!? むしいぃいいいーーー!」

「ひふっ! ひふうううぅーーー!」

手を振り回して振り払おうとするが、カナちゃんズの飛行性能、半端ない!

周囲を飛行しつつも体には触れないし、振り回す手も回避。

それでいて、お互いがぶつかる事もない。

フライング群団レギオン

カナちゃんズも群団制御されている独立連動メカだ。

パニック、キラすけ!

「助けてーー!」

わはは、この辺で勘弁してやるか。

また、おもらしされても困るしな。

ところが!


闇の岩戸(ダークゾーン)発生!

嵐のごとく吹き荒れるように湧き出した。

たちまち闇結界に包まれるドローンズ。

通信も魔力補給も遮断されて、バラバラと地面に落ちる。

なおも膨張するダークゾーン。

暗黒嵐界ダークストームだ!

「おおう!?」

俺の謎通信も遮断された!

『異常事態発生』

『施設内で高次元撹乱現象が発生』

『発生源の排除を要請』

『防衛モードを作動しますか?』

あ、いかん! これ、あかんやつ!!

あわてて突進、キラすけを抱き上げると扉の外へ。

ダークゾーンは物質には作用しないから実行動には影響がない。

闇のカタマリに包まれたまま封印扉から逃げ出した。

「大丈夫、もう大丈夫ですよ、キララさん。」

「ふ、ふひっ、ふひいぃーー。」

あー、泣かせちゃった。ごめんなー。

「ふひっ! ふひっ!」

抱っこされたまま、俺の事ポカポカ殴ってくる。

ははは、ごめんなー。ま、全然痛くないけどね。

よっぽど、腹が立ったとみえて腕の中から見上げる感じで睨みつけてきた。


う? あれ!?

これ?

夢幻投影ドリームキャスト

眠ってもいないし、スリープモードでもないのに?

安静にしていなくても侵入できるのか!?

夢魔女王が睡眠学習魔法を改良したって言ってたけど…

キラすけ、すでにその境地へ?

あれ? 体勢はそのまま。

キラすけ抱っこのまんまだ。

ありゃま、あったか柔らかいぞ。

「ほぐっ!」

ちびっ子パンチが顎に入った。

結構痛い!

あわてて下ろす。

「あ痛ぁーーーっ!!」

蹴られたわ! 思いっきり、スネのあたり!

夢幻投影の中だから、生身の体だ、俺。

この感覚、久しぶりだから、すげー痛い!

そして、キラすけ…

夢幻モードじゃない!! 現実キラすけそのままの姿だ!

「いいかげんにしろよ、お前!」

「怖かったんだからな!」

いや、現実そのまま…じゃないな?

服がね…

服だけ夢幻モード。

胸の大きく開いた、スリットの入った黒ドレス。

いや、開いたって何かあるわけじゃないですけど。

平らで。

どうやって引っかかってるんだ? その服。

いやいや、可愛いですよ。頑張った感がなかなか。

「ごめんごめん。」

とりあえずあやまる。

「反省してない! 誠意がない!」

ローキック!

ぺちーんって音がした。あ痛ったあー!

あれ? 俺、裸だよ!

まあ、夢幻投影の時はいつも裸ですがね。

でも、この状態で攻撃されると、すごく痛い!

ダメージじゃなくて、純粋に痛い。

つづいて逆水平チョップ!

水平とは名ばかり。実際には平手を胸板に打ちつける。

パチーン! いい音!! プロレス会場の隅まで届くぞ。

天龍チョップだ!

「かんべん、かんべん! まいった、マイリマシタ!」

ぷんすかキラすけ、気が済んだか?

ま、久しぶりだね。この「痛い」って感じ。

痛いのは痛いけど、悪くない。

生きてるって感じしたよ。

ま、可愛い女の子に叩かれてるからこその余裕ですがね。

M! 俺は電人M!!

ん? 可愛いぞ。

夢幻投影で変身してなくても可愛いだろ? お前。

組合長も、将来きっと美人になるって言ってけど。

今のままでもでも十分可愛いぞ。

意地悪したくなるのも可愛いからだぞ。

え? 許してくれる?

そりゃどうも。(ちょろい)

抱っこ?

ああ、現実に帰るのに同じ体勢の方がいいってか?

よいしょ! 魔道機ボディより力弱いんだよ生身俺。

生身の身体で抱っこ…しかも俺、ヌードだし…

お前のカッコもけっこうきわどいし…

ちょっと犯罪臭くない?

ちょっとじゃないな。事案…いや、事件!

ぎゅってしろ? わかったよ。ぎゅっ!


おっと、現実へ回帰。

むふーって自慢げな顔で見上げるキラすけ。

わかった、わかった。すごい能力ですよ。

ま、探検はまた今度にして、ビームガンだけ持って帰りますか。

抱っこして行け?

いや、抱っこしてたらビームガン持てないだろ?

扉だって閉めなきゃいけないし…


工房へビームガンを持って帰ると職人衆大喜び。

穴あけ作業に時間がかかるせいで雀竜のウロコ加工とか滞っていたらしい。

「こりゃ助かるわい。ここんとこ他の仕事も多くて、時間が足りんからな。」

おやっさんも喜んでくれた。

その「他の仕事」が中庭に出来上がっていた。

コンテナ?

これ、そのまんま某救助隊の2号機が使ってる感じのコンテナだ。

小屋?ってくらいの大きさ。人間や犬獣機が何体も入れるサイズ。

2個が完成してるが他にも作りかけが何個かあるぞ。

それぞれにナンバーがふってある。

そして表面になにやら魔法陣が描き込まれている。

これ…生臭導師が見せてくれた引き寄せ用認識魔法陣だ。

ってことはこのコンテナ…ベータ君が使うのか?


そんなこんなしてるうちに…

おう? これは?

電波?

『ぴろりーーーん!』

おう来た! メールだ、ジョーイ君から!

『基地局通信網が回復しました。つながりましたか?』

つながりましたよ。

南山の基地局が開通したらしい。

『まだですよ。』

今度は音声通話。ミネルヴァだ。

『設備は鉄蜘蛛に積んだままです。』

『手伝いに来てください、アイザック。』

はいはい。ケロちゃんGはいらないの?

『そんなに重い物はありません。むしろ細かい作業の方が多いです。』

了解、すぐ行きますよ。

すぐと言っても、走っていくからちょっとかかるよ。


夕方までに南山基地局が完成。

これでサイト1、大街道関所、ミーハ村、レガシがいつでも高速通信可能になった。

あれ? 俺っていうか神代魔道機…もう獣機たちに通信で負けてない?

主にサービスエリア的な部分で?

外部接続機体エクソコネクションデバイスとの通信を獣機ネットワークに接続できます』

おう? ヘルプ君。

それじゃあ、お願いしようかな…MVNO的な格安スマホちっくな感じだ。

作業を終えた俺はミネルヴァの操縦する空荷になった新型鉄蜘蛛に乗ってレガシに戻る。

工房に入ると職人衆が鉄蜘蛛の周りに群がって来た。

「おおー、これが新型!」

魔王城山遠征班から話は聞いていたけど、稼働してる現物を間近で見るのは初めてだからね。

前、レガシに来た奴は俺が粉々に爆破しちゃったから。

「ミネルヴァさん、お帰りなさい。」

「うーっす。お疲れさんした!」

あんま、おだてないでよ職人衆。

コイツ増長してますから。

けっこう留守にしてたよな、ミネルヴァ。

「あ! ミーちゃん、お帰りなさい!」

「タンケイさん、ただいま戻りました。」

タンケイちゃん、お休みのあいだ中ずっと工房で作業してたような気がするぞ。

ちゃんと休まないと…

「ミーちゃん、こっちこっち。」

「ん? なんです?」

手招きするタンケイちゃんの方に飛んで行く鳥ミネルヴァ。

なんだ?


先生やお嬢様、夢魔女王もやって来た。

「なるほど、これが新型か。」

先生は新型見るのは初めて。

「アーキテクチャが全然違うな。これ、消磁魔法マグセーフ通じるのか?」

「駆動部は犬獣機と同じようですから…効かないと思います。」

「やっかいだな。」

「でも、開錠魔法は通じました。」

「まあ、あれは大っぴらにはできんからなあ…」

そうだよね、「たいていの鍵」が開いちゃう魔法が流出したら…

世の中、大変なことになっちゃう。


てなことを話していると…

ん? 今、後ろの方、何か通った!?

360度視界が、奇妙な物体を捕らえたぞ。

なんかすごいスピードで中庭を横切った!

そして、戻って来た。

ええええ? ミネルヴァ!?

ミネルヴァボディだ!

鳥型メカが変形して頭部にドッキング。

ほっそり華奢なドールボディ。

色あいが肌色っぽいのと各部のちょっと凝ったモールドがエッチぃ…

いや、塗装されてるぞ!

両サイドからバストトップにかけて赤いラインが追加されおヌード感が減っている。

逆に色っぽくなったような気もしないでもないが。

そして!!

え? 下半身…下半身が獣機! 警護獣機ハウンドボディだ!

ケ、ケンタウロス? セントール?

いや、パーンサロイドだ!!

「ええええ? ええ?」

先生もびっくり。

「ど、どういう事だ??」

「タンケイさんに修理してもらいました。」

あとを追っかけてタンケイちゃんがやって来た。

「えへへー、どうっすか? 調子は? ミーちゃん。」

「すごいですよ。元の3倍は速く走れます。」

こ、こいつ。速いぞ! そして(一部)赤い!

「脚は修復不可能だったんで、犬獣機のボディをくっ付けてみたんす。」

「上手く動くか不安だったんすけど…大丈夫みたいっすね。」

「ステキです、タンケイさん。」

四本脚でぴょんぴょんその場飛びジャンプ。

重心も問題ないようだ。

「それ!」

ええ!? バク宙!

犬獣機の制御ユニットは優秀だったけど、ミネルヴァの演算装置はそれ以上。

最適化されて、ものすごい運動性能だ。

警護獣機の腰の両脇にはオプション用のマウンタがある。

実は北遺跡倉庫には複数のビームガンが保管されてた。

ここにビームガンを装備すれば…

お屋敷攻防戦でのジェノサイドシーンが記憶再生される。

対人戦闘なら圧倒的過ぎるな…

王都攻撃に持ち込むべきだろうか? 悩む。


「こんな工夫をしてたのか…すごいぞ、タンケイ。」

エルディー先生べた褒め。照れ照れタンケイちゃん。

おやっさんがちょっと微妙な顔してるな。

「エルディーみたいな危険人物になられても困るんだが…」

うーん……


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