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王都奪還計画


順調に自己改良を進めている飛行ユニット側に対して、レガシの俺本体側では問題発生。

イオニアさんやクリプス騎士、サンゴロウさん、ビクターさんが手紙を書いてくれたんだけど…

「どうやって渡すんだ? これ?」

タモン兄貴が疑問を提示。

「いきなり空飛ぶ魔道機とかが手紙差し出しても受け取ってもらえるか?」

ああ、うーん。たぶん逃げるよね、たいていの人は。

あるいはいきなり攻撃されるとか…

「トンちゃん、タマちゃんにそーっと置いてきてもらうって言うのは…」

「信じてもらえるかな? そんな手紙。」

「やっぱり誰か行かないとダメなんじゃ…」

やっぱ、俺が行く?

「いや、大して変わらんだろ。獣機と間違われて攻撃されるんじゃないかな?」

「やはり人が行かなくちゃならんだろう。」

兄貴…自分で行く気ですね。

王軍にも協力者が必要。

バッソ家、カロツェ家にも顔が通ってる。

何より今の王都は危険だ。

「だったらワシも行ったほうがいいんじゃないか?」

とエアボウド導師。

王立学園の元学長だ。魔道士には顔が効くかも。

それに魔法使える人が一緒なのは心強い。

「なるほど、事前工作にはその方がいいか…」

「どうだ? アイザック。」

「二人くらいなら、輸送には問題ありませんが…」

飛行ユニットで兄貴とジジイ賢者を送るか…色気のないチームだ。

「しかしお二人、有名人ですから…目立つんじゃないですか?」

クリプス騎士、もっともなご意見。

「そこはワシを信用してもらいたいな。目くらましなら得意じゃ。」

「ああ、おまえ、得意だったよな昔から…お風呂のぞく時とか…」

先生が何気に過去の悪行をばらす。


しかし、やっぱり通信は重要だよな。

スカイエクソンのスピードがあれば、モアブ軍より圧倒的に有利なんだけど…

それでもやっぱり、俺としてはリアルタイムに通信が出来れば、と思わずにはいられない。

短波通信装置を王都に持ち込むか…

でもレガシからの距離を考えると工兵機サテュロスの通信機じゃ受信は出来ても発信は難しい。

ジョーイ君と相談してみるか。

獣機ネットワークは王都方面には伸びてないしな。

骸骨塔基地局を王都まで増設するとなれば何年もかかりそうだし…


あ、いけね! ミネルヴァを手伝いに行かなきゃならないんだった!!

おやっさんに頼んで鉄蜘蛛ニコイチ号に軍用獣機ゴリアテケロちゃんGを積んでもらっている。

そろそろ出発しなくては。

「南山で基地局建設を手伝うんでした。行ってきます。」

中庭に行くと準備完了してた。

おやっさんが一緒に来てくれる?

「ミネルヴァや工兵機がどういう仕事しとるのか、見てみたいしな。」

ありがたい。

鉄蜘蛛の運転手はあっし君。

「あれ? お休みでは?」

「他に行くとこもないんで…」

「工房へ顔出したら、運転手がいるって言うんで…」

「おやっさんにつかまったでやんす。」

ワーカーホリックだぞ! 職人衆!!

タンケイちゃんと言い、あっし君と言い…


南山山頂付近でミネルヴァの新型鉄蜘蛛と合流。

基地局建設作業に従事。

鉄塔をたてる土台作り。

力仕事担当は俺とケロちゃんG。

土を盛り、軍用獣機の巨体でふみふみ、踏み固める。

さらに周囲に石を積んで土台を作る。

おやっさんが指示を出してくれたんで段取りが良い。

「あの石、次はこれ。それは右の方が良いな。」

「すごい、もう出来ちゃった!」

ミネルヴァもびっくりだ。

「便利じゃな、コイツ(ゴリアテ)は。戦争になんか使うのはもったいないわい。」

おやっさんの言葉だけに重みがあるね。

実は軍用獣機ケロちゃんG、自律演算装置付き操縦器を内蔵化に成功。

まあ、装甲の隙間にうまいこと突っ込んだだけなんですが。

もともとの軍用獣機のシステムは犬獣機のシステムより単純だ。

攻撃と警護。破壊と他者保護という目的の違いから言えば当然だが。

軍用獣機の自動攻撃モードは味方の鉄蜘蛛を巻き込むほどお粗末な代物。

犬獣機は殺さずに手加減して相手を無力化する制圧モードすら備える。

複雑な思考力と言う点では比較にならない。

え? でもこのボディ、パワー有り過ぎて手加減が難しい?

まあ、気をつけてね、ケロちゃん。


あっという間に土台は完成。あとは基地局設備を据え付けるだけ。

でも、その設備を取りにいったんサイト1に戻らなくてはならない。

ミネルヴァはぶつぶつ言いながら出発。

「鉄蜘蛛も自動で動くようになればいいのに…」

「あ、アイザックも早く運転おぼえてください!」

はいはい。

「『はい』は一回!」

はいはいはい。


あっし君の運転を見ながら工房へ戻る。

実は、タンケイちゃんの運転も見てたから、やればできると思うんだよね。

でも、これ以上仕事増やすのもなあ…

おっと、この感覚は…飛行ユニットが戻って来たな。

メガドーラさんも到着。

よし、記憶共有。

え? 空力バリヤー実験、成功? マッハ1(時速1234.8Km)を達成!?

ちょ、何やってんの!?


サンゴロウさん、メガドーラさんに息子のバッソ侯へ手紙を書くように頼んでた。

嫌そうな顔するお祖母ちゃん。キラすけとそっくりだよ。

飛行ユニット(スカイエクソン)が単独行動、音速飛行できるようになった事で、湾岸都市へも日帰りが可能。

手紙だってどんどん届けますよ。

南山基地局が完成すれば警護獣機のネットワークでデータ通信が可能になる。

ミーハ村近くの基地局はアンテナの向きを変更、増設。

この事でサービスエリアは縮小したけど、村、関所が圏内になった。

面積は減ったけど、人口カバー率が上昇したってやつだな。

あとは王都との通信だけど…

なんか良い方法ない? ヘルプ君。

『外部接続機体の中継機能が使用可能』

中継機能? そんなのあるの?

『外部接続機体を直列に並べる事で接続範囲の延長が可能です』

それって…? リレーアタック方式?

でも、トンちゃんタマちゃんくらいじゃ…

『カナちゃんズでも可能です』

ええ?

王都へ向かいながら途中にカナちゃんを一匹ずつ落としていくのか?

ヘンゼルとグレーテル方式。

……いやいや、せつなすぎる、そんなの。

もっと別の方法を考えようよ。


結局、王都にはタモン将軍とエアボウド大導師が赴くことになった。

クリプス騎士も交えて細部を詰める。

夜間にスカイエクソンで空から侵入。

まずはクリプス騎士の実家、デンソー家に入る。

その後、状況を見てバッソ家、カロツェ家、エリクソン伯と連絡を取る。

最終的に王族を取り込み、王軍を味方に引き込む。

レガシ、ロスト地方へ大軍が進発したのを見計らって、王城を奪還。

攻撃の主力は犬獣機、あらかじめ自律行動で王都周辺に潜んでもらう。

王都に残った軍用獣機は操縦器を奪って無力化。

王都に立てこもって、あわてて引き返してくるモアブ軍を迎え撃つ。

城壁すらないレガシとは違って、王都は防衛施設が整っている。

軍用獣機が相手でも持ちこたえられるだろう。

奪った軍用獣機はその数しだいでは、引き返してきたモアブ軍と嚙合わせる。

自動攻撃モードを使えば、操縦が未熟でもなんとかなるからね。

最悪の場合はスカイエクソンで爆撃。

あんまりやりたくはない。被害が甚大になる。


ま、王都での情報収集しだいだけどね。

「まあ、正直こっちに攻め込まれたら困るしな。」

「まったく厄介じゃのう。権力争いなんぞ王都の中でだけやっておればいいのに。」

わりと無責任、先生と夢魔女王。

あ、そういえば…

「魔王城山のモアブ兵は、今大丈夫なんですか?」

「あ、ああ。ま、その、うん…なんとかな。」

口ごもるメガドーラさん。

「おまえ…また…」

先生が咎めるような視線。

「し、しかたないじゃろ。安全のためじゃし…」

ああ、洗脳しちゃったんですね…

「まあ、しかたないか…」

先生もわりとゆるい、その辺。

以前、使うのを咎めたのも、相手の人権を気にしたってわけじゃない。

洗脳魔法の存在が危険視されるのを危ぶんだってのが主な理由。


先生がつぶやく。

「いっそのこと、攻撃の前に本当の事を教えてやるか…王都中の人間やモアブ兵に。」

「今の人間は魔道機文明を創始した【人間】とは別種であること。」

「獣機にヒト族を襲わせたのは至上主義者であること。」

「モアブ伯の【大義】って奴をぶち壊してやるか…」

まあ、たしかにそれなら相手の士気は下がるだろうけど…

「ついでに建国英雄ナビンは鬼人ハーフだったということ。ま、証拠は無いけど。」

「そんなもの、聞く耳もたんじゃろ。」

おやっさんが首を振る。

「そんな都合の悪い話、信じる奴はおらん。」

「聞かせるわけじゃないよ。」

夢魔女王の方を見て、

「ちょうどメガドーラもいることだし…」

ああ、アレね。睡眠学習。

「妾も研究を続けていたが…まあ、眠ってないやつにも効くようになったぞ。」

「ほほう、さすがだな。」

何やってんですかね、隠しようもない危険人物だ。この人たち…

「せ、先生…王都中の人間を洗脳するつもりですか?」

「洗脳とか、人聞きの悪いことを言うなよ。知識として【教えてやる】だけだ。」

「ま、一度憶えると絶対忘れないんだけどな、これ。」

にっこり。


「やるとなると…王都の真ん中でやらんとな。」

「王城じゃな? そうなると。」

「しかし、攻撃より前に王城へ侵入できますか?」

首をひねるタモン兄貴。

くっころ女騎士も身を乗り出してきた。

「おおお、王城に侵入するなど無理だ!」

「大賢者が設計し、伝説の名工が施工、幻の大魔導師が魔法防御を施した、難攻不落の城だぞ!」

「美人に大賢者とか言われると、照れるなー」

と、生臭賢者。

「で、伝説? そんな事になっとるのか?」

と、おやっさん。

「幻って言うな!」

と先生。

ああ、そういうことなのね。

意外と簡単に入れそうだ。

くっころ騎士は置いといて、メガドーラさんが話を続ける。

「あれだけ複雑な術式を使うとなると、邪魔されない場所が必要じゃぞ。」

「うーん、【休憩室】を使うか…」

「お、そうじゃな。アソコなら見つけにくい場所にあるし、何重にも魔法防御がかけてあるしな。」

休憩室に魔法防御?

「……サボリ部屋じゃな。どこにそんなもの作ったんじゃ?」

おやっさんが顔をしかめた。

「どうりでおまえら、あの頃、時々いなくなると…」

「い、いや、いや、だって、忙しかったんだよ、あの頃。もうウンザリするほど…」

「そ、そうじゃ。ちっとくらいゆっくりできる場所があったっていいじゃろう!?」

先生…メガドーラさん…


大体の大雑把な行動計画が決まった。

かなり大雑把。そんなにうまくいくかなあ?

準備に取り掛かるのはエアボウドジジイ賢者とタモン将軍兄貴。

「わたしも一緒に参ります! 将軍!!」

意気込む、凄腕剣士片思い女騎士。

なるほど、役に立つかどうかわからんけど、王都の事情知ってる護衛がいたほうがいいか…

俺的には2人でも3人でも大して変わらないしな。

「そうだな…」

クラリオ女騎士を見て思案する兄貴だったが…

その視線の向こう、女騎士の背後にダット姐さんが!

すうっと目が細くなる姐さん、怖い!!

「い、いやいや。やっぱり人数は少ない方向で!!」



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