タンケイちゃんとの帰り道
さて、その頃、俺本体は鉄蜘蛛4台とともにレガシに向かっていた。
ハイエート、デイエート兄妹は地下住民の食肉調達のため一日遅れる。
鉄蜘蛛の運転に一番慣れているのがタンケイちゃん。
他の3人はまだ初心者ドライバーだ。
魔王城山から大街道へ出るまでが厄介。
道が狭いし、舗装もされてない。
昔は石畳に舗装されてたらしいけど剥がして王城に再利用されたらしい。
その頃は魔法石としての効能は知られていなかった。
大街道への合流点はモアブ兵が作った仮道。
ここが一番の難所だった。
大街道に出てしまえば、後はまっすぐなので何とかなる。
先頭車両への追従モードとか無いのかな?
元俺の時代より後の技術ならなら自動運転とかありそうだけど…
自動運転レベル3「特定の場所でシステムが運転、緊急時は人間ドライバー」くらいのやつ。
トラック用の後続隊列走行支援システムがあれば良いのに。
あれ? 鉄蜘蛛は要するにトラックだから、有るかも…
大街道に出たところで休憩。操縦系統にコネクトしてみると…
おお、あった、あった!
これならタンケイちゃんが先頭で、後続はほぼ自動で追従する。
職人衆3人はずいぶん楽になるはず。
「アイザックさんも乗れるっすよ。」
あ、そうか。各機一人しか乗ってないもんな。
じゃあ、俺はタンケイちゃんと一緒にドライブ。
タマちゃんと工兵機もそれぞれ運転席に乗り込んで通信担当でよろしく。
工兵機の短距離通信機能は450MHz帯? 特定小電力トランシーバーかよ!
あったねー、そんなの。携帯電話が普及する前にあったんだよね。
え? アナログ通信なのは音声だけ?
ふだんは5GHzと2.4GHzを使ってる?
軍用獣機より通信は高性能だって?
そりゃ失礼しました。
……あれ? 工兵機くん? 何か伝わってきたぞ?
キミたち…自意識がある?
ひょっとして…職人衆に仲間扱いされてるうちに学習したのか?
そういえばU-69とか、犬獣機も…どんどん生き物っぽくなってきてるもんな。
通信のおかげでみんな和気藹々、退屈せずに大街道を進む。
『タンケイちゃん、もっとスピード出すでやんすよ!』
あっし君、若者特有のスピード感覚。気をつけて。
一人で運転してる時より大人数の時の方が暴走しやすいんでやんすよ。
『もっとゆっくり行け、タンケイ。荷物積んでんだぞ。』
先輩職人、安全運転を指示。
「ウチどしたらいいんすかー!?」
その日は再び湯治場で一泊。
湯治場の宿泊施設はバンガロー。
まあ、3畳ワンルームくらいの小屋なんだけど。
職人衆は各々《おのおの》個室でのんびり熟睡。
「個室は贅沢でやんすね。」
ま、無断使用ですがね。
「お前、イビキうるさいから…」
「え? あっしイビキかいてるでやんすか?」
本人にはわからないからね、睡眠時無呼吸症に注意。
俺は見張りと火の番。
バンガロー前の広場で一人、触媒焚き火を見つめていた。
まあ、周囲の警戒は怠らない。
こないだの岩蜘蛛みたいなモンスターがいると困るし。
うん? どしたの?
「眠れないんですか? タンケイさん。」
タンケイちゃんが起きてきた。
下着姿に毛布を羽織ってる。
お腹の前で合わせてるんだけど…
はみ出している! 毛布から胸が!!
「アイザックさんは寝なくて平気なんすか?」
大丈夫、メカだからね。
「よっこらせ! えへへ。」
ちょこんと俺のとなりに座る。
「運転、お疲れ様です。」
「ずっと座ってるのって、意外と疲れるっすね。」
そうだよなあ、街から遠出したことが無いんなら、移動のため長時間座ってたことはないしね。
工房での作業は立ったり座ったりだし。
映画もテレビもないこの世界では、長時間座ってること自体めずらしいことなんだな。
「大丈夫ですか?」
「んー…」
おっと、俺に寄っかかってきた。
肩をくっつけ、頭も押し付けるようにして、ぐりぐり。
え? 甘えてるの? タンケイちゃん?
対格差があるし、俺ボディはがっしりしてるから遠慮無しでオッケー。
「大丈夫じゃないっす。」
「腰とか背中とかカチカチっす。」
「兄弟子たちは昨日、揉んでもらったって…」
おう、地底温泉マッサージ。男衆限定だったからね。
「昨日は入浴時間が別でしたから…」
「ウチは揉んでもらってないっす。」
ぐりぐり。
拗ねてるの? かわいいなあ、もう!
そんなことされたら…
「バンガローでマッサージしますか?」
ぱっと笑顔のタンケイちゃん。ああ、もう!
「いいんすか?」
「あ、でも、見張りは…?」
「タマちゃんがいますからね。」
駐車中の鉄蜘蛛の方からタマちゃんが飛んできた。
オレ達の前でホバリング。
「何かあったら知らせてくれますよ。」
先に立ち上がると手を差し伸べて、立つのを助けると、そのまま…
あ、いけね! 抱き上げちゃった。
「ひゃ、」
お姫様抱っこ。
ドワーフタンケイちゃん小さいし、あんま可愛いからさ。
ついね。
でもこれ、完全に…事前!
赤くなって腕の中で丸くなってるぞ。
二人でバンガローへ。
中には触媒ランタンが吊るしてあるのでけっこう明るい。
作り付けのベッドはあるけど敷布団はない。
無人だった間にボロボロになってたのを、この前先生が吹っ飛ばしちゃったしね。
今は野宿用に持参してきた敷物、何かの毛皮を敷いてある。
タンケイちゃんをベッドに下ろすと…
いや? ベッドに下ろすと…
すごく、ますます、事前状態。ムーディだよね。
「や、やっぱり座りましょう。」
ここはまずいったん椅子に座ってもらって…(ヘタレ!)後ろへまわる。
定番の肩から背中へいきますか。
うわ、背中カチカチだよ。
やっぱ、運転は大変なんだ。
これは、揉むよりまず温めたほうがいいかな?
ヒートハンド! 背中と肩に添えるように触れていく。
俺ハンド、温めると遠赤外線出るんだよな、材質的に。
「あー、暖ったかいー、気持ちいいっすー」
だいぶ体の強張りがほぐれたな。
じゃあ、今度はベッドへ寝てもらって、うつ伏せに…
うつ伏せ? このおっぱい、邪魔になるんじゃ?
えーっと、ちょっと俺にはわからないぞ? こういう感覚。
巨乳になった経験が無いからね。
たぶんデイエートにもわからないぞ、きっと。
毛布を丸めてクッションにして…まあ、大丈夫そうだ。
マッサージ機能全開!
肩、背中、腰!
むっちりおしりを経由して太股、ふくらはぎまでじっくりと。
タンケイちゃんのおしり、どっちかって言うと筋肉質。
工房では重い物結構あるしね、足腰強くなるよね。
「ふにゅううぅーー…」
すっかりリラックスしたな。
これで、良く眠れるだろう。
「他に揉んでほしいところはありますか?」
「えーっと、じゃあ、おなかを…」
え? お腹?
「さっきの暖ったかいやつ…おなかもやって欲しいっす…」
コロリと寝返りを打って仰向けになるタンケイちゃん。
下着シャツをめくりあげ、トランクス風の下穿きをずり下ろす。
お腹とおへそがむき出しに。
ほどよくむにっとしたお腹、でもその下の筋肉をはっきり感じさせる起伏。
第10肋骨の出っ張りと鳩尾から続く腹筋上部の張り。
おへそへと続く白線のへこみ。うっすらとうかがえる腱画の区切り。
腹直筋と外腹斜筋の境目もわかる。
締まってるね、タンケイちゃん。
そしてちょっとふっくらした下腹部。
このなだらかな曲線の集合。
「えへへ、ちょっと恥ずかしいっすね、これ。」
いや、なんともステキですよ、タンケイちゃん!
「全部脱がさないのがエロいんだ」とか
「スカートはいたままが良いんだ」とか言う人がいる。
「全部脱がすより高尚だ」的なこと言う奴。
何、言ってんだお前! わかんねえよ! そんなの!
何だ、腰巻フ○○クって? 僕には全然わからんね!
ウエストとお腹とおへそを隠しちゃダメだろ!!
着衣エロならたくし上げ+ずりおろしに限定だよ!
透視図? 淫紋? 余計なもん描いちゃいかんよ、エロ漫画家!
デカールも貼るな!
美少女フィギュアの「格」はお腹の造形で決まる!(個人の意見です)
そのまんまが最高だなんだよ!
なんて美しいんだ! 女の子のおなか!!
そっと手を添えて温める。
「アイザックさんの手…温かくて…すごく安心するっす…」
いや、まあ、安心されるようなことは考えてないですがね。
ドワーフ体格、小柄なタンケイちゃん。
かなり大柄な俺。掌も大きい。
置いた手がすっぽりとお腹を覆う。
両手を使っておへその上下を温める。
温かさを伝える? いや伝わってくる?
手のひらを通じて一つになったような感覚。
まるで血液がめぐっているようだ。
うん? たくし上げたシャツのすそからのぞいているのは…
だっこしておんぶしたタヌキさんがいたのはおっぱい山だったっけ?
『ちがいますよ』
すそからのぞいているのはおっぱい山の麓、すなわち下乳。
そしてずり下げたパンツのすそに見えるのは…
骨盤の上前腸骨棘の盛り上がりによって腹直筋下部の両側に出来た窪み。
股関節へと続く窪みと、ローライズなパンツラインの隙間が醸しだす危うさ。
否応もなくその奥にあるものを意識させずにはおかない。
お腹に置いた両方の掌を広げるように滑らせれば…
左手は下乳の折り返しと渓谷に。
右手は隙間の奥にある神秘空間に入っちゃうぞ。
すごい誘惑!
滑らせたい! この手のひらを上と下の夢の国へ!
「アイザックさぁん…」
タンケイちゃんが俺の手の上に手のひらを重ねてきた。
赤らめた頬とうるんだ眼。
「この前みたいに……胸も…」
おねだり上手だタンケイちゃん!
うおわおああああーーーー!!
ガマンするとか無理でした。
…でも、タンケイちゃんが嬉しそうだったからいいか。
(自己正当化)
一夜明けて、爽やかな朝!
「さあ、もうひとっ走り! 頑張るっすよー!!」
「おう!? 何だタンケイ、元気いいな。」
さあ、元気はつらつ。レガシに向けて出発だ。
夕刻に到着した鉄蜘蛛隊。
4台の鉄蜘蛛と2体の軍用獣機。
その威容に工房の居残り職人衆やレガシの住民も圧倒された様子。
鉄蜘蛛に積んできた軍用獣機や犬獣機の部品に大喜び。
「コレがありゃあ、アレが…」
なにやらまた、職人衆の暴走が…
だが、遠征組の3人はさすがに疲れた。
なれない鉄蜘蛛を運転して丸2日。
その前も、魔王城山まで行きの行程と現場作業。
神経も体力も限界だ。
元気なのはタンケイちゃん。
鉄蜘蛛の運転には一番慣れていたので余裕がある。
昨晩のアレも効いてるのかな?
「タン吉ぃ、お帰りっしー。初めての出張はどうだったっし?」
「面白かったっす。サイコー!」
気分がハイだぞ!
「ご苦労だった、明日から二日は休め。」
「ええー? いいんすか? やったー!」
俺本体とトンちゃんなオレとの記憶も統合。
ナビン王の血族疑惑。
ええ? イオニアさんにそんなことが?
トンちゃん記憶から新たなドローンの存在を知った俺本体。
先生と一緒に北遺跡に赴いた。
例の封印扉の前。開ける? 開けちゃう?
ちょっと怖い。とんでもない代物が隠されているような気がする。
「何やっても開かなかった扉だが…お前の言う【協定】とやらが関係してるのか?」
「ええ、たぶん。」
魔法センサー起動。QRコード的なものを読み込む。
『第一階層を開放します』
ヘルプ君。
がっこん! と作動音がして扉が揺れる。
「………」
「開かないじゃん!」
先生があきれたようにつぶやく。
ええ?
『手動ですよ』
あ、そうですか。いかんな、文明病。
「うわ、これ、重い!」
俺の怪力でも苦労するレベル。
『注油が必要ですね』
意外とローテクだ。
とりあえず人が入れるだけの隙間を開けると滑り込む。
装甲板スライド、スリムモード。するっとね。
「ええ? 便利なヤツだな。」
先生はおっぱいがつかえた。
でも柔らかいから大丈夫、むにゅっとね。
暗い。真っ暗。ライトオン!
第一階層? 倉庫だよねこれ?
あ、ミサイル、爆弾も。在庫はここに置いてあるのか。
あれ? これ…ケース型ビームガン?
ミネルヴァが使ってたのはお屋敷での戦闘で壊れちゃったから…
職人衆が喜ぶな、穴あけ機として。
『ドローンて…どこ? ヘルプ君。』
『いや、私に聞かれても…目録にあるって言うだけで…』
そうかー探すの大変そう。
『命令すればいいのでは? 自分で動くでしょう?』
あ、そうか。
いや? でも、トンちゃんタマちゃんみたいに繋がってる感じが全然ないけど?
『ドローン、カモン!』
う? 倉庫の奥から…なにやら唸る様な音が…
これ…羽音?
ちょ、何!? 飛んできた!
なにやら小さいのが! たくさん!
ぶううううぅぅーーーーーん!
たくさん!? うわあああああーーーー!!
「うわああああーーー!!」
先生も悲鳴を上げる。
「ひいいいぃーーー!!」
小さいぞ! このドローン!!
タマちゃんの5分の1くらい? カナブンサイズ!
そして多い! 多いぞ!! 何百? 千?
高度に制御されているらしく、先生や俺の体にはぶつからない。
けど…気持ち悪い!! ひいいぃーーー!
身体の周囲をぶんぶん羽音をたてて飛び回る。
1匹あたりの音はそんなじゃないんだろうけど、とにかく数がががが!
視界が遮られるほどの数だああああ!!
「ストップ! ストップ! 待機待機!!」
這々の体で扉の外に逃げ出す。
「あああ、虫! 虫ぃい!」
先生も四つんばいでガタブル!
あの数! 生理的に無理!
「ちょ、ちょっと1、2体だけ、来てもらえるかな?」
扉の隙間から2体がちょろっと出てきた。
カナブンとテントウムシの中間みたいなスタイル。
ほぼ、楕円半球型。カイコの繭を縦長に半分にしたようなカタチ。
『映像と音声を記録する単機能タイプのドローンですね』
『トンちゃん、タマちゃんからコントロールが可能です』
『自己保存、帰還、自動周回等、最低限の自律行動が可能です』
偵察っていうか…盗撮メカじゃん!
【協定】で禁止されるわけだよ!
ふと見ると、ちょっと開いた扉の両脇にびっしりくっついてる。
ぞわぞわ! 光学センサーは…三つ目? じーっとこっち見てる。
最低限の自律行動? ホントに?
「と、とりあえず100匹もいれば十分だろう。」
じゃ、じゃあ、100匹…100体ついて来てくれるかな?
『………』
ど、どーした?
『8の倍数でお願いします』
えーい、メンドくさい! じゃあ、切りのいいとこで128体!
だーっと出てきたカナブンメカ。たちまち16x8で列を作る。
意外と地上走行速度も速い。
カナちゃんズ。
カナブンぽいからカナちゃんズと命名。
この扉は…ま、探検は後にして閉めとくか…
閉めようとして中を覗くと…
中からこちらを見つめる無数のカナちゃんズアイ。
こ、怖いよ! 集合体恐怖!
えーっと、連れ帰るっていっても…この数、どうしたら?
袋とかカゴとかにざらざら入れる?
壊れないかな?
上側は甲虫スタイルで頑丈そうだけど、腹側はデリケートっぽい。
トンちゃんタマちゃんみたいな変形機能は無さそうだし。
と、思ったら。2体が互い違いに腹合わせに合体。
球体、というか繭型に。
昔なつかし楕円型ガチャサイズ。
なるほど、これなら腹側もガードできる。
『この状態で飛行や水中行動が可能です』
ほう。いや、ますます盗撮メカだなあ…(肯定的な意味で)