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イオニアさんのルーツ?


次の日、先生の家にビクターさんがやって来た。


ちょうどこの日は、実力テスト。

留守中に受けた講義の内容がどのくらい身についているかをチェックする。

マビキラが魔王城山へ遊びに行ってる間に密かに先生とエアボウド導師が問題を作成。

一夜漬けを許さない抜き打ち。

絶望の表情、マビカ。逃走を図ってつかまるキラすけ。

試験の監督をベータ君に任せて、北遺跡に移動。

ここなら機密が守られるからね。

デイシーシーも入って来れない。

ちなみにアイツのステルススキルはお祖母ちゃんから習ったらしい。

口の堅さはまったく習わなかったらしい。


ビクターさん、タモン兄貴、サンゴロウ騎士も連れてきた。

先生とエアボウド導師、そしてトンちゃん状態のオレ。

お嬢様の今後や王都の事を相談する。

ちょっと深刻な話になりそうだ。


「あちこち手を回しましたが…王都が封鎖されている状況ではどうにもなりません。」

「カロツェ家ゆかりの者から情報を集めてはいますが…」

ビクターさんが弱気だ。

「バッソ家の奥方とも連絡が取れません。」

兄上騎士も困った様子。

「クリプスがモアブ兵を尋問した内容や、デンソー家からの伝書鷹の情報によると…」

「王都が落ち着き次第、こちらに大兵力を送る予定だと…」

「迷惑な話だ。どうも、モアブ伯…なんていったかなブレビーの息子は?」

「バンカー、バンカー・モアブ。」

先生の問いにエアボウド導師が答える。

「そのバンカー坊主…妙な所にこだわりがあるよな。」

確かに、イオニアさん暗殺に執着してたし、今度はレガシに執着してる感じだ。

魔王城山まおしろやまを襲った兵の隊長によれば…」

「当座のエネルギーとなる魔法石は王城の敷石で十分なようですが。」

「頭が良すぎて先読みしすぎてるのかな?」

「どんな奴か知ってるか? エアボウド。」

「まあ、頭は抜群に良かったよ。ちょっと夢見がちなとこはあったけどね…」

先生がしみじみつぶやく。

「しかし、先代…ブレビーほどの男でも、息子の教育には失敗するか…」

「いや、いや。」

生臭賢者エアボウドが異議。

「そうは思いませんね。この企てが成功すれば結果として大英雄ですよ。」

「さすが、ブレビーの息子ってとこですな。」

敵のことほめてどーすんの。

でもそんなもんかもしれないな。

利害が一致すれば英雄で、対立すれば大悪党か。

歴史上の英雄は、大抵のところ、他国にとっては侵略者だ。

「どっちにしろ、こっちとは相容れんのは間違いないな。」


「王軍はどうなんだ? タモン殿。」

「モアブ軍の風下に立つのをよしとはしていないでしょうが…」

「王城と王族を押さえられていたのでは従うしかないでしょう。」

「王城か…」

先生が考え込んだ。

何か物騒なこと考えてるよね、その顔は。


「しかし、お嬢様の固有魔法には驚きました。」

ビクターさんが話を変えた。

イオニアさんの方を見て頭を掻く。

「長くお仕えしている私めもまったく気付きませんでした。」

「本人のわたくしが知らなかったくらいですもの。」

「エルディー導師は早くから気付いておられたんですね」

うなづく先生。

「イオニアが子供の頃、魔法を使えなかったんでな。固有魔法の存在を疑っていたんだ。」

「それに、物体の落下に関する法則…重い物も軽い物も落下速度は同じ…」

「それを知っていなければ気付きようが無いからな。」

「物の重さを重くしたり、軽くしたり…自分でも不思議ですわ。」

正確に言うと、質量は変わってない。物体に働く重力を増減させているわけだが。

「軽くもできるとは思わなかったな。意識した途端に見事に使いこなしたな。」

「師匠としても鼻が高いぞ。」

イオニアさん褒められて照れる。

「まるで、おとぎばなしの小槌こづちの英雄みたいですなあ。」

ビクターさんが感心した様子。

「小槌の英雄?」

「鬼人族のおとぎ話ですよ。」

「鬼人族の勇者が秘宝の小槌を使って自分の体を重くして…」

「何倍も大きなドラゴンを押さえつけてやっつけると言う話…」

打出うちでの小槌? 一寸法師のバリエーションか?

そういえば打出の小槌は元々、鬼が持っていた秘宝だよな。

それを一寸法師が譲り受けた…

「でも、おごった勇者が、自分より小さな戦士に小槌を騙し取られる、というオチがつきます。」

ああ、うーん。鬼側から見ればそんな話だわ。

でもこの世界には魔法があるからなあ。

ただのおとぎ話じゃないのかもしれない。

自分を重くしたり軽くしたりする…

過去にイオニアさんみたいな重力魔法の使い手が居たのかもしれないなあ。


そういえば、夢魔族にも同じ様なことが…

キラすけの闇魔法ダークゾーンに似たおとぎ話があるって言う話。

いや? キラすけは夢魔族だけど、イオニアさんは鬼人族じゃないぞ?


「ほほう? 鬼人族の伝説…鬼人族に?」

先生も疑問に思ったようだ。

んん? 何か…何かが引っかかるぞ!?

「先生! 勇王ナビンというヒトは強かったんですよね!?」

「え? ああ、なんだ突然?」

「そりゃあ強かった…人間の域は軽く超えてたな。」

「私も晩年、お手合わせをしましたが、圧倒されました。」

鬼人ハーフのビクターさんをも超える強さ。

「ナビン王のご両親についてご存知ですか?」

「うん? 母親は早くに死んで、父親は知らんと言っていたが…」

「そのお母上は人間だったのですか?」

「ああ、そう言っていた……あっ!」

気付いたな、先生も。

「そうか…そう言うことか…」

オレに向かってうなづいてみせる。

「?」

「何の話ですの? お父様が?」

「あいつ…もしナビンが鬼人ハーフだったとしたらどうだ?」

「ええっ?」

「ああ!?」

「母親が人間だった場合には子供に角は無い。そうだよな。」

話を振られたビクターさんがうなづく。

「なるほど、それならあの強さも…ありえますな。」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ。」

タモン兄貴が慌てて口をはさむ。

「だったら、何で隠してたんですか?」

先生がこともなげに答える。

「そりゃあ、冒険者、傭兵時代は命のやり取りは日常茶飯事だ。」

「手の内を隠し、相手を油断させる…良い手だよ。」

「しかし、そんなことになったら…王都の至上主義者は…ただのバカってことになる。」

「ああ、肝心の初代王様が異種族ハーフってことになればな。」

「でも、いまさらそんなの証明出来んでしょう。」

「さっきの話ですとナビン王自身も知らなかったんじゃ?」

「それはどうかな? ビクターさんはなぜナビンに仕えるようになった?」

「それは…鬼人の里に依頼があって…角の無い、人間に見える人材をよこしてくれと…」

「まあ、実際そういう需要は一定数ありましたから…特に不思議には思いませんでした…」

「ハーフの事情を知っていて、尚且つ鬼人族とのコネは持ってたわけだな、あいつ。」

「あ、確かに…」

「カロツェ家の方は古くからの大商人、家系図とかはしっかりしてるんだろ?」

「え? あ、はい。爵位を賜る際にも調査したと言っていましたから…」

「鬼人族はいたか? 先祖に。」

「いえ、そもそも鬼人族自体が少数民ですから…」

「ナビンの子供や孫、王族で女の子はイオニアだけと聞いたが?」

「ナビン王の直系では、イオニア様だけですね。」

「そこだ! もし、イオニアが結婚して子を成して…その子供に角があったらどうなる?」

ざわつく!

そうだ。角があるのは母親が鬼人族の血を引いていた場合だけだという。

母親が鬼人族ハーフ、またはクオーターだった場合はどうなのか?

詳しい調査があるわけじゃないだろう。

だが、角のある子供が生まれる可能性はある。

イオニアさんが鬼人族の血を引いているということになれば、それはナビン王の血に他ならない。

建国の原動力となったナビン王の強さが、鬼人の血によるものだとしたら…

王都の人間至上主義派閥はバックボーンを失うことになる。

それどころか至上主義そのものがたわごとだったと言うことになるのだ。

「先代のブレビーはもちろん、今のモアブ伯バンカーも、ナビンに直接仕えた男だ。」

「どこかで、このことを知ったか、思い至ったのだとしたら…」

エアボウド生臭賢者も声を上げた。

「いや、もしかしたら……」

「旧首都市や、他の都市の領主、貴族を説き伏せたのは実質ブレビーだった。」

「人間種の多い貴族たちを説き伏せるのに…」

「ブレビー自身がナビンにルーツを隠すように指示したのかも…」

ビクターさんも愕然とした表情。

「執拗にイオニア様をつけ狙った理由は…これですか?」

「もちろん、これからも女の王族が生まれることはあるだろう。」

「だが、子供が生めるようになるのは十数年先だ。」

「時間稼ぎにイオニアを処分しようとしたのかもしれん。」

「ま、証拠があるわけじゃない。仮説にすぎんがな。」

思いもかけない話に、自分の手を見つめるイオニアさん。

「鬼人の血。わたくしに…?」

重力魔法も過去の鬼人族の英雄から受け継がれたものかもしれない。


「そうなると…」

兄貴が深刻な顔。

「最終的にはイオニアお嬢だけじゃなく…」

先生も苦い顔。

「王族の嫁に鬼人族を迎えれば隠蔽できるが…」

「それは至上主義とは相入れないしな。自縄自縛って奴だ。」

「…最終的には王族は全部片付ける必要があるってことになるな。」


「ま、ナビンの身内と言うことになれば放ってもおけんか…」

兄貴の方を見て問いかける。

「どうする?」

「む、う…」

言葉に詰まる兄貴…ギャザズ元将軍。

王都を出奔した身だ。いろんな思いがあるだろう。

「バッソ侯の奥方や子息を放ってはおけません!」

サンゴロウ騎士はまっすぐだ。

「イオニア様のお母上もおりますし…カロツェ家への恩義もあります。」

ビクターさんも義理堅いお人だ。

「あいつらの思うがままってえのは、気に食わねえな。」

退職金半減の恨み、忘れてない、エアボウド大賢者。

三人の視線を向けられた兄貴将軍、ごく自然に指揮官に認定されてるよ。

先生に尋ねる。

「方策がありますでしょうか。」

「ま、ちょっと前ならどうにもならんかったとこだが…」

「今はアイザックも警護獣機ハウンド達も居る。」

「メガドーラもいるしな。」

悪い笑みだ。


「なんにしても、も少し情報が欲しいな。」

オレのほうを見て…

「ドローンに王都まで行ってもらうか…」

そうだなあ、情報収集ならトンちゃんタマちゃんだよなあ…

飛行ユニットに収納していけばひとっ飛びだし…

もっとドローンがいっぱいあればいいんだけど…

『ありますよ』

ヘルプ君? おう?

『協定破棄により北遺跡内の機体が使用可能です。』

マジすか?



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