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トンちゃんがんばる


今回は俺本体とタマちゃんは鉄蜘蛛隊と。

トンちゃんと飛行ユニットはマビキラ、サンゴロウ騎士と行動をともにしていた。

ミネルヴァもむこうで作業していたので、守護魔道機が完全にレガシを留守にしてたことになる。

ミネルヴァの話では、クリプス騎士が来ていたらしいが…

キツネっ娘クズノハさんも一緒だったんだろうか?

惜しい事したな。


さて、飛行ユニットはその日の内にレガシに到着。

今回は直接、北遺跡前に着陸。

マビキラ、アンド兄上騎士を下ろす。

「しぇんしぇー、ただいまー!」

先生ん家へ駆けていく。元気だな。

こら待て! 飛行用ハーネス外して置いて…

ああー、行っちゃったよ。

サンゴロウ騎士は行儀良くベルトを外して…

「えーと、これどうしたら…」

あ、俺が預かりますね。

飛行ユニットが脚でつかんで上昇。

トンボ型ドローン、トンちゃんを分離。

飛行ユニットは自動行動で格納庫へ収納する。

「これら…全部、アイザック殿が動かしているんですか?」

唖然とした表情。

「と言うか…全部合わせて私であり、一つ一つも私なんですよ。」

と、トンちゃんが答えるけど…兄上、首をひねる。

まあそうだよね。ちょっとわかりづらいよね。


マビキラの後を追って坂を下ると、先生の家。

先生とイオニアさんがそれぞれキラすけとマビカのハーネスを外すのを手伝っていた。

ベータ君もいるけど、手は出さない。

異性に失礼、もうレディだからね。(笑)

「い、イオニア様にそのようなことを!」

サンゴロウ騎士、恐縮しきり。


おやっさんへの報告もかねて工房へ行ってごはん食べようってことになった。

「お風呂も入りましょう。」

イオニアさんの言に、なぜか兄上騎士が赤くなる。

お嬢さまヌード、想像しちゃった? 純情だなあ。

「我は昨日、魔王城の地下岩風呂に入ったし…」

「毎日入るのです。」

イオニア先生に言われちゃったぞ、キラすけ。

「わたしも昨日入ったし…」

「先生も入るのです。」


……トンちゃんが水中行動できることは知られてないよね。

そして、ミネルヴァはいない。

新型鉄蜘蛛と一緒に移動体通信ネットワークの再建に従事している。

感知能力鋭い奴、デイエートもいない!

ハイエートお兄ちゃんと一緒に魔王城山で狩をしてからだから明後日以降まで帰らない。

これは! これはもしかしてチャンスなのでは!?

刃の下に心と書いて、忍ぶ!

隠にして密!

ひそかに心を決めた!

そんなことはおくびにも出さない。

まあ、トンちゃんボディじゃ出しようもないですが。


お嬢様とマビキラがお風呂の支度をしている間に、先生に耳打ちする。

「先生、ちょっと内密でお話が…」

「ん?」

先生も、察したようだ。

「みんな、ちょっと先に行っててくれ。」

「サンゴロウ殿、イオニアの護衛を頼む。」

「ははっ! 命に代えましても!!」

いや、工房まで行くだけですがね。

ケルベロ2号、ベルちゃんもいるし。


さて、先生にキラすけの闇魔法の件を報告する。

「なるほどな。」

あれ、あんましびっくりしないね。

「以前、マビカがな…」

「ダークゾーンの中では水が出せないと言っていたんだ。」

「それで、そういう事も有るかなーとな、思ってな。」

「わたしも入って見た。」

「そしたら、一切魔法が発動しなかった。」

「自身に魔力を貯蔵している護符は働くようなんだが…」

「マビカは水を出せなかったが、水筒護符からは水が出た。そんな感じだ。」

さすが先生だな。すでに気づいていたのか。

実証も済ませているとは…

「ただ、これが単純な話じゃなくてな…」

「護符自体の作動は問題ないが…起動呪が使えないから発動できない。」

「ああ!」

「それじゃあどうやって水筒護符を作動させたんですか?」

「触媒カマドの着火に使ってる護符があるだろ、あれはくっつけるだけで起動呪が出るからな。」

つまり、ダークゾーンの中で魔法を使うには魔力を蓄えた護符をさらに起動呪護符で発動させなくてはならないわけか。

めんどくさ!!

「今は、範囲が狭いから大した問題じゃないが…」

「魔法戦闘においては脅威となりうる、といっていいだろう。」

「まあ、イオニアの時同様、重要なとこは本人にも秘密にしとこう。」

「絶対、自慢するからな、あいつ。」

うん、先生も俺と同じ意見。


工房の食堂へ行ってみると…

クリプスチャラ男焼け出され店長騎士、まだレガシにいた。

キツネっ娘忍者クズノハさんは来てないらしい、ちっ、残念!

クラリオ宿無し馬獣機乗り逃げ女騎士と旧交を温めていたらしい。

サンゴロウ巨漢騎士とあいさつを交わす。

日本なら名刺交換するところ。

「サンゴロウ・バッソ騎士!? 【海龍殺し】の?」

なんか、物騒な異名が出てきたぞ。


湾岸都市の港の入り口にヤバい感じの魔獣が出没。

交易船とか困ってた。

コイツ、ちょっと知能があって、たちの悪いことに軍船には近づかない。

魔法武装とかの少ない船を選んで襲う。

そこで、サンゴロウ騎士が漁師に偽装。

魔法武器は使わずに銛だけでやっつけた。

「いや、正確に言うと船の櫂に偽装した鉄の棒でぶん殴ったんですが…」

サンゴロウさんがちょっと訂正。

「いい考えだ。」

タモン兄貴がうんうんうなづく。

ぶん殴るの好きだよね、あんたたち。

魔法も使わず巨大な海龍を退治した巨漢兄上騎士の武名は大いに高まったと言う。


「タモン将軍に、【破壊剣士】クラリオに、【海龍殺し】サンゴロウ騎士か…凄いメンバーだな。」

「【破壊剣士】いうな!」

嫁入り前破壊剣士女騎士が抗議。

「いや、この街にも、そのあたりの村にも強い戦士はいるぞ。」

クラリオがちらりと視線を向けたのは、鬼人剣士アイワさん。

「わたしも途中ですごい女戦士に遭いましたよ。」

サンゴロウさんも相槌を打つ。

「まさか、自分と力比べのできる女戦士がいるとは…ミーハ村の戦士だと言ってましたが…」

「ももも、もしかして虎系猫獣人のヒトですか?」

喘ぎ声のカワイイ虎戦士ベスタさんか。

共通の知り合いで盛り上がる脳筋系軍人グループ。


今は筋肉よりお風呂だ!

トンちゃんによる水中警備行動を発動するための計画を策定する。

男湯と女湯の境界。

たとえば湯船の下がつながっているような構造なら話は早い。

潜っていけばいいんだから。

だが、残念ながら男湯、女湯それぞれの浴槽は独立している。

そのあたりはすでに確認済みだ。(すでにね)

女湯の天窓からなら侵入は容易だが発見される確率も高い。

すでに「風呂が先」班の入浴がはじまっているからちょっと侵入は無理か。

出来るだけ水中を経由して行動したい。

と、なれば給湯口か、排水溝か、ということになる。

排水溝は工房の下水に繋がっていて汚水、工業排水とともに沈殿、スライム浄化されてから川へ排出される。

合併浄化槽である。

ゴミの流出を防ぐために金網やフィルターが各所に配置されているし、衛生上も問題がある。

となれば、やはり上水道、給湯経路を辿るのが正解。

工房で使われる水は山からといで引き込まれる。

製鉄用魔法触媒炉の余熱で加熱されてから浴場へ送られている。

浴場への流入量は多く水圧は結構高い。

男湯の給湯口から遡上するのは難しいだろう。

かといって触媒炉周りの加熱器は配管構造が複雑なので侵入は避けたいところ。

途中で詰まったりしたら問題が大きい。(社会的にもね)

どこかで給湯管に入り込めるところはないだろうか?


そういえば、湯温が下がったときのために給湯専用ボイラーがあると聞いている。

念のために作ったが、魔法触媒炉の性能が上がったため、ほとんど使われた事がないとも。

触媒炉の下流に位置しているはずだ。

そのあたりを当たってみるか…


製鉄炉から配管をたどるとボイラー小屋へ。

通気口から小屋の内部へ入り込む。

配管は、ちょっと小型の、ホテルの浴槽みたいなサイズの桶につながってる。

ここは?

なるほど、加熱するだけじゃなく熱すぎる時に冷水を混ぜる事も有るわけだ。

温度を調節するのための混合槽だな。

よし、ここから侵入だ。

トンちゃん、チェンジ水中モード! スイッチオン!

ちゃぽん。

混合槽内を潜水。給湯配管は…

浴場への配管口が二つ並んでいるのが見える。

男湯行きと女湯行きか? どっちが女湯だ?

選択を誤るとちょっと悲惨なことになる。

あ、ちょ! 水圧高い! 流され…

否応なく片方の配管に吸い込まれた!

運命の分かれ道! いかがでしたかっ!?


浴場! お湯の吐出口から流されて浴槽へと落っこちた。

ちらっとみえた吐出口、凝ったデザイン。

うん、ドラゴン? 獅子? マーライオン? の口からお湯出てるよね。

獣機騒動とか飛行ユニットの出撃とかで修理改装を繰り返したからね。

ちょっと変な細工とかやり過ぎ感出てる。

浴槽内ですかさず潜行、湯船の底に着底。

周囲を見渡すと…当たり!

水中女体発見! 女湯ダー!

今、眼前に豊かな肢体が!

あう! ちょうど上がるとこ、ウエスト、ヒップの曲線が眼前を横切って水上へ。

「こら、ミニイ。体拭いてからよ。」

水中ではあるが、音響補正効果で声が聞き取れる。

ええ! その声、デイヴィーさん?

あ、ちょっ! 上がっちゃうの?

水中から見上げようとするが…


水面を見たときに屈折が起きるように、水中から空中へ光が向かうときも屈折が起きる。

ところが入射角48.6度を超える斜めからだと屈折した光は水上へ出ることなく全部反射する。

水中から見ると、水面が鏡のように見えるのだ。

屈折率の高い方(ここでは水)から低い方(ここでは空気)に向かうときに起こる現象である。

双眼鏡でプリズムがミラーの変わりに使われるのも、光ファイバー内をレーザーが伝播するのも、この原理の応用だ。

ちなみに先生が使う鏡魔法もこの現象を魔法的に再現しているのだと言う。


つまり、要するに、簡単に、結論だけ言うと……見えない!

デイヴィーさんおヌード。

この位置からだと…水面が全反射!! 見えないいー!

「おんたくたなきゃはうたよ?」

「そうね、お家帰ってからね。」

ミニイたんがなんか言ってるけど、何?

そして遠ざかる声。

あああ、行ってしまわれた。

もう少し、も少し早く来るべきだった!

だが、この経験、生かすべし。

この位置から、水中からだと体は見えても顔が見えない。

以前、遠足水浴びの際は水中からのトンちゃん映像、空中からのタマちゃん映像が統合されていたため、気にならなかったが…

やっぱり顔や表情が見えてないとちょっと…

デュラハンマニアとか壁尻マニアってわけじゃないし…

全反射が起きないように、入射角が0度(垂直)近くになる位置をとるか?

だが入浴者にも近くなり、発見されやすい。

危険を冒しても、水上に位置を移すべきか…

どこか、身をひそめる場所は…

そろそろ、食事を終えた「ご飯が先」班の入浴が始まる。

移動するならちょうど谷間となって利用者の少ないこのタイミングしかない。

どうする!?

『光学ステルスモードを発動しますか?』

は? ヘルプ君?

トンちゃんボディなのにヘルプ君が起動?

『協定破棄に伴いドローンの機能が拡張されました』

光学迷彩? 透明化?

『センサーから取得した色彩情報を解析』

『装甲表面の光学的特性を変更して最大公約数的迷彩を発生させます』

そんなのあるんだ!

『透明化とはいきませんが発見される可能性を低下させます』

そんな男の夢機能、あったんだ! すげえ!

………制限されてた? 【協定】で?

攻撃力とか、殺傷力とかじゃ…ないよね? コレ。

協定って軍事関係だけじゃなかったんだ?

『協定は包括的、多岐に亘っています』

包括的! 知的財産権とか…表現規制とか…エロい事禁止とか??

単純所持禁止!

俺本体の記憶データベースに記録されたキラすけのたてすじとかが該当!?


まあ、協定を作ったヒトのポリコレ具合は後で考えよう。

透明化ではなく、表面の迷彩だけなら視線の限られた場所が良いだろう。

浴室の壁の隅っこ、ここだな。

おっと、人の気配。来たな。

入浴メンバーは先生、お嬢様、マビキラ、もしかしたらタンケイちゃんやアイワさんもいるかも。

ドキドキ。あと一応女騎士。

女豹戦士ウェイナさんは帰っちゃったらしい、残念。

「あれ、わりとすいてるしー。」

お前かよ! デイシーシー!

おお? 化粧落とす前ヌード。

白いエルフ肌とガングロの対比が…

うん、変。

雪焼けしたスノーボーダーがそんな感じだぞ。

後に続いて入って来たのは先生、キラすけ。

まあ、この辺は新鮮味はないな。

続いてマビカ。

うーん、日々成長してるな。

あれ? これ、兄上騎士にばれたら…オレやばくね?

まあ、いいか。バレなきゃね。

イオニアさんもキマシタワ! ロイヤルな感じで。

そんなに大きくないけど、つんと上を向いたとこがロイヤル。

そして、隠れ巨乳アイワさんと…イーディさん!

これはレアですよ!


湯船に入る前に思い思いに身体を洗う面々。

「これ使ってみろ、シーシー。」

ミーハ村の新製品。ぬるぬるだけじゃなくアワアワなやつ。

手桶に湯をとって髪と顔を洗うデイシーシー。

「おお! 何これ? 泡立つっしー!」

それを見ていた先生。

「シーシー、お前…言っちゃあなんだが…」

「面倒くさくないのか? その化粧?」

「慣れだっしー。」

「でも、毎日は大変そうですわ。」

…先生もお嬢様も、暗にガングロ化粧やめた方がいいよ的なことをほのめかす。

周囲の声をよそにガシガシ洗う黒エルフ。

「あ、すごいっし! これ、すごく落ちがいいしー!」

石鹸は界面活性剤。界面、すなわち表面で汚れを吸収する。

泡立てることで表面積を増やせば、その分圧倒的に汚れを吸収できるのだ。

手洗い石鹸も洗顔料もよく泡立ててね。

たちまち全身泡だらけ白エルフにモードチェンジ。

絶対そっちの方がかわいいと思うんだけど…

「まあ、黒いのが長持ちする方法もあるって言うっし…」

「ケサロンの汁に酒精を混ぜてお風呂に入れると全身黒くなるっし。」

「1週間は持つらしいっし!」

「そうなのか? よくそんなこと知ってるな。」

先生も感心。

「あちし、お祖母ちゃんから習ったしー。」

「ほほう? もしかしてお前のお祖母ちゃんて…」

「本物の【ダークエルフ】だったのか?」

「本物?」

みんな首をひねる?

「ああ、昔はな、夜戦専門の戦士が肌を染めて【ダークエルフ】を名乗って…」

「黒い肌は精鋭のあかしとして、戦場では死神と恐れられたもんだ。」

ほほー、そんな歴史が。

「お祖母ちゃん、昔はブイブイいわしてたって言ってたしー。」

「シーシーのお祖母さまは、以前カロツェ家で傭兵として雇用していたのですわ。」

「ビクターも知り合いだっていってましたし。」

ぜってえ、ヤバい人じゃん! それ!! パネェ!

「しかし、そんな肌の染め方があるんなら…お前、なんでやらないんだ?」

「そ、それは…」

すっかり白くなったむっちりエルフが言いよどんだ。

「粘膜が…」

「???」

「ワックスとかでカバーしないと粘膜も黒くなるって…」

ああー、黒○首に黒○○○かー。

「それは…いやですわね…」

お嬢様も、アイワさん、イーディさんもドン引き。

「試したのか? 手遅れか?」

「や、やってないしー! 黒くないしー! ピンクだしー!」

「ほほう、ピンク。」

「ちょっと見せてみろ、シーシー。」

おいおい、先生。セクハラ剛速球。

「ちょ、何いってるし! 導師!」

「良いではないか、良いではないか!」

「やや、やめ…!」


何やってるんだろうね、まったく。

そうかー、ピンクかー。

しばし、生活の潤いを満喫した。



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