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タマちゃんがんばる


魔王城山での鉄蜘蛛、軍用獣機修理は完了。

軍用獣機、何か呼び方考えないとなー。

メカニコ○グ? ノオ!

イエティ…いや、それじゃゾ○ドだよ。

斉天大聖……大げさだな。

サスカッチ……ゴリラ…

ゴリアテ。

うん、軍用獣機ゴリアテでいこう。


鉄蜘蛛の荷台に軍用獣機を積み込む。

機体2体と部品で、鉄蜘蛛3台の荷台がいっぱいになった。

それぞれ職人衆が運転してレガシに帰るわけだが…

「え? 一台一人で運転するんでやんすか?」

新人ドライバー。みんな不安そう。

タンケイちゃんだけは余裕の表情。

でも鉄蜘蛛はニコイチ号もあわせて5台。運転できるのは4人。

「1台余っちゃうっすね。置いていくんすか?」

「ここに残しておくと…逆に物騒じゃな。」

女王様も渋い顔。

モアブ兵士なら運転できる奴がいるだろうけど…

こいつらに鉄蜘蛛任せるのはちょっとためらわれるな。

「アイザックは運転できないのか?」

いや、俺、習ってませんし。

「新型のやつにはコネクタがついてるっすけど…」

「ミーちゃんなら、接続して操縦できるんじゃ?」


新型鉄蜘蛛はミネルヴァが直接コントロールすることになった。

ジョーイ君の希望で一旦サイト1に寄ってもらう。

中継器や簡易基地局を積んで、工兵機とともにネットワークの再構築に従事。

よろしくね。


予定の作業は終了。明朝、出発してレガシに戻る。

そして宴会、バーベキュー大会が始まった。

まあ、俺は飲食できないんで焼く係。

焼肉奉行!

はいはい、それはもう良いですよ。

あー、それまだ生焼け! 

レバーはちゃんと火を通してね。

こら、キラすけ! それ、サンゴロウさんが育ててたやつ!

マビカ! 野菜も食べなさい。


てなことをやっている間に、偵察ドローン・タマちゃん、トンちゃんは別の仕事を実行中。

採石場の空間の正確な見取り図を作成してもらう。

地下空間は下の方に立体的に広がっているし、光が差し込まないから方向がわかづらい。

人の手で全体像を把握するのはかなり難しい。

ドローンの音響測位エコロケーションと慣性センサーを使って3Dマッピングを行なう。

応力と強度の正確な計算が出来れば採掘可能な場所が特定できる…かもしれないからね。

わかってはいたけど、やはり外部エクソ接続コネクション機体デバイスとの通信は電波じゃない。

電波を通さないはずの岩盤の向こう側でも問題なく通信できてる。

なのに、距離が離れるとダメなんだよなー?

ベータ君の器機召喚アポーツは距離は関係ないって言ってたし…

もしかして……原理の問題じゃなく…俺の認識の問題?

起動直後の時、カメラのシャッター音が消せなかったみたいな?

魔法学的思考のできているベータ君。

元地球科学の固定概念に凝り固まった俺とでは根本的に違いがあるのかもしれないな。


キミたちはどのくらいの距離を認識できてる?

たとえば地球。

キミは地球をイメージできるかな?

はい、今、キミがイメージしたのは地球の「画像」。

本当の地球は、キミの足元にある直径12,742kmの岩の塊。

一万km、と言う長さを「このくらい」と認識できる人間がいるだろうか?

30cmならこのくらい。

100mトラックはこのくらい。

駅からアパートまで徒歩1km。というくらいなら実体験として認識できるかもしれない。

だが、電車で10km移動した時、新幹線で100km移動した時。

ホントに10~100kmって距離を「このくらい」と認識できているんだろうか?

ちなみに、海岸に立って見渡せる水平線までの距離はたったの5kmくらいらしいぜ。

もしかしたら、外部接続機体との通信距離は魔道機の限界じゃなくて、「俺」の限界なのかもしれないな。


ごはんの後はお風呂。

普段は日替わりで男女入れ替えらしいけど、今日は時間制で入れ替え。

女性陣が先ですか?

メガドーラさん、タンケイちゃん、デイエートに、マビキラ。

女王様の副官扱いのドワーフっ娘やエルフっ娘も一緒。

わらわらと地下浴場に入ってきた。

入浴スタンバイ状態でね、すなわち全裸。

…入ってきた? え? この視界って…

おう! ちょうどタマちゃんが最下部の浴場を測量しているタイミング。

いや、いや、狙ってたわけじゃないんですよ。ホント。

「うわー、すごい! ひっろーい!」

マビカが歓声を上げる。

「地下迷宮なのにお風呂すごいねー!」

いや迷宮ってわけじゃないんですが。

キラすけの影響だな。

「岩盤そのものをくりぬいて湯船が作ってあるんすか?」

興味深々だ、タンケイちゃん。身を乗り出して浴槽を覗き込む。

前かがみになると後ろから見えちゃうよ、色々。

むっふっふてな感じの表情でそれを見やるメガドーラさん。

デイエートの時といい、先生との関係といい、百合っけ多いんですかね? 夢魔女王。

個性的なメンバー揃ったな。

メガドーラさん、堂々たるゆさゆさ。

タンケイちゃん、無邪気プルプル。

キラすけ、お子様感つるつる。

マビカ、高度成長期ふっくら。

デイエート……は、まあ、アンタッチャブル。

「あ、コイツ!」

おう! 見つかった。

「あれー? タマちゃん、なにやってるんすか?」

「また、のぞきか!?」

「言ってくれれば本体でもかまわんのにのう。」

「いえ、今は地下空洞の測量中でして……」

言い訳しようとしたが、ずずいっとキラすけが進み出た。

たてすじ、仁王立ち!

「コイツめ! 黒き宝玉の呪いに依りて、この者を閉ざせ!闇の堕界(ダークワールド)!」

右手をかざして固有魔法発動!

お祖母ちゃんにいいとこ見せようってか。

タマちゃんにまとわりつく闇結界ダークゾーン

何にも見え…


おう? 俺本体とのコネクトが切断!?

遅延拘束護符タイムラプスの時とは違う?

完全切断!

これ…闇魔法の効果か?

光や電波だけでなく、神代魔道機同士の謎通信まで遮断できるのか!?


本体と切断されたタマちゃんは自律モードへ移行。

分割思考が起動した。

…けど? 動けない?

『魔力枯渇、行動不可、緊急用補助貯蔵魔力で思考のみ稼働中』

何? 通信だけじゃない? 魔力そのものを遮断しているのか!?

三次元より上の高次元で遮断しているってことか!?

キラすけの闇魔法、思ったよりはるかに恐るべき能力だぞ!!


「あ…れ? タマちゃん動かなくなっちゃった?」

マビカの心配そうな声。

「壊れちゃったんすかね?」

タンケイちゃんの声も聞こえる。

声は聞こえるんだな。まあ、空気は遮断されて無いしな。

「そそ、そんな…我は、ただ…」

「こここ、コイツがお風呂に侵入するからー!」

あせってるな、キラすけ。大慌て!

「だだだ、ダークワールド解除ぉ!」

おお、視界がもどる、通信も魔力も回復。

「あ、動いたっす!」

「だ、だいじょうぶっすか? タマちゃん?」

心配そうにのぞき込むタンケイちゃんのパイ。

ぷるんぷるん、のしかかる感じ。

タマちゃんローアングルだから迫力あるよ。

そして、しゃがみこんでるから、ちょうどね、見えちゃってるんだよね、下の方も。

「だ、大丈夫です。」

飛行モードのまま落下したもんで翅が出しっぱなし。

収納、地上蜘蛛モード。

「メガドーラさん…」

夢魔女王に視線を送る。

いや、視線たって蜘蛛モードだからわかってもらえたかどうか。

そこは、エルディー先生に匹敵するマスタークラス魔道士、大魔女メガドーラ。

今起こったことの重大性に気付いたみたいだ。

唇に指を立てて、黙ってろサイン。


幸い他のメンバーは気付いてない。

「邪まな考えを抱くからだ!」

デイエートが睨んでくる。

タオルで胸元をガードしながらつま先で突っつく。

もっとも、下の方は見えてますがね。

ローアングルってすげえな!

「メガドーラさんとかタンケイとか見たかったんだろ!」

「やっぱりオマエもデカイのがいいのか!?」

キラすけも非難に加わった!

マビカが加わってないのは成長中の余裕か?

たじたじ! 変形! 球体モード!

ローリングダッシュ! 転がって脱出だ!

「あ、逃げた!」



女性陣と入れ替わりで男性陣の入浴タイム。

俺本体もご一緒。

さすがに職人衆も疲れた。

2日間、鉄蜘蛛で走りっぱなしの後作業だからね。

サンゴロウ騎士も力仕事を手伝ってたし。

貴族って言うより軍人だし、共同作業には慣れてる感じだ。

すっかりみんなとなじんでる。

「いや、バッソ侯のご母堂にお会いするのは初めてですが…」

「あんな美しい方とは思いませんでした。」

みんな、夢魔女王の姿を思い描いたが…

振り払うように首を振る!

うん、あんまし想像すると硬くなってしまうしね。

「わしらもびっくりしましたよな。」

「おやっさんや、エルディー導師と昔っから知り合いなんでやしょ?」

「おいくつくらいなんでやんすかねえ?」

あっし君の軽口に先輩職人が釘を刺した。

「レガシで生きていくんならエルディー導師の齢には触れんことだ…」

先生…何かやったんですかね?

その後、マッサージ機能で男衆を揉みまくりましたが、その辺は割愛させていただきます。


マビキラは夢魔女王の部屋で眠りこけている。

今日一日、手伝いは出来なかったが、地底探検で歩き回っていたからね。

空中散歩からの地底探検。楽しんでもらえたならいんですが。

俺は、前回同様SMルームで待機。

そーっとメガドーラさんが出てきた。

「ご苦労じゃったな。」

差し向かいに座る。

「さっきの事ですが…」

俺アンドタマちゃんがキラすけの闇魔法で体験したことを報告。

「ううーむ…まさか、こんなことが…」

「可能性としては、あらゆる魔法を遮断することが可能になるかも知れませんね。」

「力の源である空間中の魔力を遮断されれば魔法は発動できなくなるしのお。」

「ダークゾーンの範囲が機体全体を覆うほど大きくないので、今まで気付きませんでした。」

「もし、展開範囲が拡大されれば…」

「魔道士だけでなく、獣機や…神代魔道機にとっても脅威ですよ。」

「あまり大っぴらには出来んな…特に本人に。」

あー、うーん。アイツ、自慢するよな、絶対。

お祖母ちゃんもちょっとの間に孫の性格把握してるな。

「エルディーには伝えといてくれ。あいつの考えも聞きたい。」


さて、次の日の朝。

ニコイチ号を初めとした鉄蜘蛛隊4台はレガシに向かって出発。

俺本体とタマちゃんも同行。

新型鉄蜘蛛とミネルヴァはすでにサイト1へ向かった。

マビキラ、サンゴロウ騎士を乗せた飛行ユニット&トンちゃんも出発する。

お祖母ちゃんと別れを告げるキラすけ。

「ま、こっちが落ち着いたら、またレガシに行くよ。」

チラッとこっち(飛行ユニット)を見るメガドーラさん。

「迎えに来てくれるじゃろ。」

はいはい、もちろんですよ。

あれ? 兄妹エルフは?

「僕らはもう一日、狩をしてから帰りますよ。」

地下住民たちから歓声が上がる。

肉やでえー!



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