お嬢様がんばる
凄腕猟師兄妹。
仕分けしたお肉は街の業者に卸す。
担いでいくのは俺。
まあ、この辺は力持ちキャラの宿命ですから。
お肉屋さんに納入した後は工房へ行くとのこと。
お風呂ですね!
村長さんのお土産ソープ液でぬるぬるするんですね。
お肉屋さん、魔王城山へ持っていく燻製肉とかを工房へ納入する予定だった。
ちょうどいいところに来たって、にんまり。
え? 俺に持たせるの? ロボ使い荒いよ、みんな。
マビカの案内で工房内を見学していたサンゴロウさんと遭遇。
ミーハ村の女豹戦士ウェイナさんも一緒だ。
「あの人、でかっ!」
おいおい、デイエートぉー。キラすけと同レベルかよ。
「マビカさんのお兄さん、湾岸都市のサンゴロウ騎士ですよ。」
俺が説明する。
デカ騎士もこちらに気づいた。
ヒト離れした美形兄妹にちょっと唖然。
そこに追い討ちをかけるようにウェイナさんがひざまずいて挨拶。
「ハイエート様、妹様、お久しぶりでございます。」
「様、は、やめてくださいよー」
「サンゴロウ騎士、こちらアポロン神の化身ハイエート様です。」
「妹様のディアーナ神の化身、デイエート様。」
「え? ええ? 化身??」
サンゴロウさん困惑してるぞ。
俺の方見て、いたずらっぽくペロッと舌を出す女豹戦士。
人が悪いなあ。
メガドーラ女王さま、レガシにいる間におやっさんと相談して物資の手配をしていたみたいだ。
すでに、工房にはいろんな生活物資が集められている。
エルフ兄妹といっしょに工房へ着いた頃には積み込み作業が始まっていた。
材木みたいな頑丈な荷物だったら軍用獣機ケロちゃんGが使える。
でも今回の荷物は食料や服といったもの。
壊れ物もあるので人の手で積み込む。
俺やタモン兄貴もお手伝い。
え? サンゴロウ騎士も協力してくれる? ええ人や。
イオニアお嬢様も? いやいや、気持ちはうれしいけどちょっと無理では?
先生なんか見物を決め込んでるぞ。
「腰を痛めるといけないからな。」
はいはい。
お嬢様が工具箱を持ってきてくれた。
向こうで軍用獣機を修理するのに使うやつ。
獣機規格の工具が入っている。
これは、操縦席の中だな。
そこ置いといてください。
「ちょっと、重いですわよ。」
いや、お嬢様が持てるようなヤツを「重い」とか言われてもね。
俺、怪力魔道機ですよ。
と、思って持ち上げようとしたら…
「重もっ!」
何これ? あー重量計オン。60キロ? 米一俵!
女の子が一人で持てるような重さじゃないぞ!!
ええ? どーゆーこと? お嬢様、運んできたよね?
「ふふふ、重力魔法。」
「重く出来るんなら、軽くも出来るんじゃないかと思って練習したんですわ。」
ちょっと、これ。凄くない?
お嬢様本人は「重いもの持つのに便利」くらいにしか思ってないようだけど。
飛行ユニットで空を飛ぶ俺。
そして、人工衛星を打ち上げてた元世界の地球。
そこから来た俺にしてみれば、何か凄い重大なことのような気がするぞ。
とか、考えていたら…
「アイザックさんだって、ほら!」
うおう! お嬢様に持ち上げられたぞ!
腰のあたりに両手を回して、ひょいっと。
ベリィトゥベリィスープレックスの体勢! 抱きつき!
あー、イオニアさん、いい匂いする。
先生んちで居候してるから、香水とかあるわけじゃないよね?
本人のナチュラルいい匂い。
そして押し付けられた胸と腕があったかい。
「これ、ここに入れとけば良いですか?」
とか言ってサンゴロウ怪力騎士がクッソ重たい道具箱、軽々片手で持ち上げてハッチにの中に積み込んだ。
あんたも、ちょっと常識外だよね?
これだけの荷物、馬車や荷車で魔王城山まで運べば何日もかかる。
途中は野獣、モンスターも出没するしね。
鉄蜘蛛がなければ運搬は難しかったろう。
俺本体と鉄蜘蛛、馬獣機の一隊は魔王城山までだいたい二日かかる。
明日の朝、出発してあさっての夕方到着する予定。
一方、飛行ユニットで行けば2時間とかからない。
メンバー的にサンゴロウさんはともかく、マビキラは野放しするには不安が残る。
地下住民に迷惑かけてもいけないしな。
到着時間を調整するために飛行班の出発は明後日にした。
エルフ兄妹も積み込み作業中。
燻製やソーセージっぽい保存食品とかを載せていく。
あ、途中のお弁当のおかずもあるのね。
「食料載せてると、空からも来ますよ。」
あ、そうかー。雀竜とかモモンガっぽいヤツとかいるもんなー。
それやこれやをニコイチ号に載せてシートをかけて準備完了。
作業の後はみんなでお風呂。
デイエートお姉さまと一緒でホクホク顔のお嬢様。
ウェイナさんも一緒だし…くっ!
タマちゃんもトンちゃんもミネルヴァの見張り付きなんで活躍する余地が無い。
俺本体も結構汚れてるし、おとなしく男湯へ入りますか。
サンゴロウ騎士も入浴。
貴族なのに全然抵抗とか無いみたいだ。庶民的。
巨漢騎士が湯船につかる。
あふれたお湯でベータ君が流されそうになってるぞ。
「これは良いですなあ…」
ハイエートともお兄ちゃん同士で打ち解けてるな。
「マビカさん、上はお兄さんばっかりなんですか?」
「それで男の子っぽい格好を…」
「最初、男の子と間違えて失礼をねー、しちゃったんですよ。」
兄上騎士、頭をかいてる。
「いや、どうも我が家は武門の家系で…」
「兄弟も無骨者ばかりなもので。」
うんうん、うなづくハイエート。
「うちの妹も、僕のまねをしちゃったのか…」
うんうん、兄上騎士。二人してシスコン談義か。
「マビカとは歳が離れているので赤ん坊の頃は私がお風呂に…」
「それなのに…あんな男に…」
おいおい、兄上! 殺気、漏れてる漏れてる。
お風呂上がりの先生とイオニアさん。
馬獣機に二人乗りで家まで戻ってきた。
俺も一緒にね。
「力仕事をしたら、くたびれたな。」
??? 何言ってんすか先生? あんた見てただけですやん。
しかも最近、移動も馬獣機頼みですよね?
「やっぱりお屋敷で庭を散歩してた頃とは違いますわ。」
ブーツ脱いでベッドに腰かけ、素足を曲げ伸ばしするイオニアさん。
「もう少し鍛えないと…」
ここのところ護衛役のアイワさんに、剣術を教えてくれとせがんでいるらしい。
向上心あふれるお嬢様である。
「疲れたか? なら…」
「アイザックに揉んでもらえ。」
おう! キタ!!
「いいんですの? アイザックさん?」
「いいさ、っていうか嬉しいよな、アイザック。」
先生、言い方!
「え、ええ、じゃあ、お願いしても…?」
「ズボンも脱いだ方がよろしいかしら?」
そそそ、そうですね。
落ち着け、俺! ロボットだから、マシーンだから!
目の前でズボンを降ろすお嬢様。
下穿きと太股が露わになる。
すっと、差し出されるお嬢様素足。
「では、足から…」
ベッドに座ったイオニアさんの前に膝をついて脚をとる。
なんか、背徳的な感じがありますね。
ヒートハンドで温めながら力と振動を加えていく。
足の裏に続いて、指の曲げ伸ばし。
ええー、何か足の指もきれいなんですけど。
爪もつやつやしてるし…
この世界にはハイヒールとかパンプスとか無いから…
外反母趾とかリスフラン関節症とかは無いんじゃないかな。
続いてふくらはぎ…
ちょっと耳元に顔をよせて囁いてきた。
「お姉さまにもこんな風にしたんですの?」
う? 思わず顔を見上げるように頭部を動かしてしまう。
うわ、途中の光景に意識が行っちゃったよ。
持ち上げている脚の付け根。
すなわち股間。
この世界標準の下穿き。つまり紐パン。
すっと力を抜くように脚が広がった。
さりげなく誘惑ですか?
くう! 才能あるわ、お嬢様。
鼻筋に沿って俺のこと、見下ろす目つきがゾクゾクする。
えーっと、先生助けて、と思ったがその先生、机に向かって何やら作業始めちゃってる。
「お姉さまと同じようにしてくださいな…」
ぺろりと上唇をなめる。
…けっこう魔性ですよ、イオニア様。
「では、ベッドの上でうつ伏せになっていただけますか。」
デイエートと同じように……と言っても、足元から始めちゃったしな。
流れ的にはデイエートのときとは逆の流れ。
ふくらはぎから太股へ、足の付け根からおしりへ…
先生とかデイエートとか、エルフな人たちはわりと肩幅広くて腰骨狭い感あるけど。
お嬢様は結構、骨盤大きい感じ? 安産型?
脂肪はそんなに多くないのに女性的な体型。
骨格から来てるよね。
「ん、」
お嬢様の控えめな声。
大臀筋を揉みほぐす的なマッサージをしてると…
なんてゆーか、後ろからくぱぁ的な態勢だよ、これ。
「アイザックさんの手、暖かいのですね…」
「熱くありませんか?」
「大丈夫ですわ、とても気持ち良いです。」
えーっと、こうやってると…おしりの谷間に…
下穿きの布がだんだん食い込んでいってるような…
直した方がいいんだろうか? 俺が?
いやそれまずくね? まずいだろ。
と思ったら、お嬢様が自分で直した。
後ろ手に、キレイな人差し指をお肉と布の間に挿し入れて、下から上に滑らせて、
うん、永久保存シーンだね。
ちょっと名残惜しいけどお尻にお別れして、腰から背中へ…
肩まで揉みほぐしていく。
デイエートと同じだと…前もやらなくちゃならないけど…
「イオニアさん?」
ありゃ、すーすー寝息を立てている。
疲れてるのかな? 今日もずいぶん手伝いを頑張ってたし…
そーっと姿勢を直して毛布をかける。
机に向かってなにやら作業中の先生のところへ。
「イオニアは寝たのか?」
「はい。あの…先生…」
「ん?」
「イオニアさん、ちょっと頑張りすぎじゃないでしょうか?」
先生も、俺のほうに向き直した。
「そうだな。」
「今回のこととか…レガシが攻められるのは自分のせいだと思っとるんだろうな。」
確かに。だが、もうそう言う単純な問題じゃないように思えるが。
「犬獣機の問題が片付いたからな…そろそろ…」
にやりと笑うエルディー先生。
「こっちから仕掛ける算段が必要だな…」
さて、次の日。
出発前に北遺跡でジョーイ君と通信。
職人衆や、ミネルヴァから頼まれたことを伝える。
修理に必要だと思われる部品を用意してもらう。
あらかじめサイト1から魔王城山に運んどいてもらえば時間の節約になるしね。
さて、そろそろ出かけるとするか。
出かけに振り返って遺跡を見上げる。
パラボラアンテナは畳まれた状態だけど、短波用のアンテナは常時突き出している。
現状、獣機保管施設サイト1と北遺跡エルディー魔道研究所は短波通信で音声通話可能。
サイト1と魔王城山は骸骨塔ネットワークでデジタル高速通信が可能。
両者の組み合わせで魔王城山と北遺跡は通話可能だ。
それなのに、むしろ近いはずのレガシと大街道関所、レガシとミーハ村は通信が出来ない。
感覚的になんとも奇妙な状況になっている。
やはり通信システムの構築が急務だなー。
ミーハ村の骸骨塔…あんなに派手にぶっ壊さなきゃよかったよ。
短波音声でいいから、ミーハ村、大街道関所と常時連絡が取れるようにしたい。
どう?ジョーイ君?
『簡易型基地局はありますが…』
鉄蜘蛛に積んでレガシに運んできたやつか。
『サイト1には鉄蜘蛛を操縦できる兵機・将機がもうありません。』
ミネルヴァボディが壊されたのは痛かったな。
ん? そういえば鉄蜘蛛、あれだけの有人マシンなのに通信機がついてない?
モアブ兵は通信してる様子が無かったよな?
『有人の場合は個人用インカム着用での運用が前提ですので…』
鉄蜘蛛には軍用獣機の操縦器の信号を再送信する装置が装備されている。
人間同士の通信も個人用インカムの信号を中継する仕組みだ。
インターフェイスは別だったわけだ。
獣機の発見者がシステムを理解していなかったのか…
サイト1同様廃棄場だったとすれば、インカムは発見できなかったって可能性もあるな。
そうだ、通信といえば……
ヘルプ君、この北遺跡ドームのパラボラアンテナってどこと通信するためのものなの?
『パラボラアンテナ?』
え? 何、その反応? パラボラアンテナ知らない?
『パラボラアンテナは在りません』
いや? だって、ドームのてっぺんについてるじゃん?
『あれはアンテナではありません』
ええ? だってあんな形、パラボラアンテナ以外ありえないじゃん?
あんな形……
……いや、知ってるわ、俺。
あんな形した奴で…アンテナじゃないヤツ
…3つくらい、いや4つ知ってるわ。
一つはゲ○ター線収集装置(新早乙女研究所)、あとの3つは…
メーサー殺獣光線砲(フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ 1965年)とか、
ロリシカ陸軍原子熱線砲(モスラ 1961年)とか、
マーカライトFAHP(地球防衛軍 1957年)とか…
うわ、これ、ヤバ!!
大量破壊兵器! 隠されてなかった!!
『焼き払いますか?』
いやいやいや! 封印! 封印でよろしく!!