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兄上VSディスカム



マビカの兄サンゴロウさんがやって来た。

実家のエスブイ家は湾岸都市のバッソ侯爵の重臣。

ただ、マビカの心配だけでやってきたわけではないだろう。


前にも聞いた話ではマビカの上は兄6人。

ハチロウ、ゴロウ、サンゴロウ、サブロウ、ジロウ、ジップロウ

別に六つ子ではない。

命名ルールが日本とは違うぞ?

三男坊のサンゴロウさん、武勇では兄弟一番。

学園寮から妹が家出した知らせを聞いて湾岸都市から王都に向かった。

途中で、誘拐されたと言うウソ情報を受けてロスト地方へ方向転換。

途中で、バッソ侯爵夫人からやっぱり家出で、無事だという知らせ。

ならばいったん王都へ寄ろうと方向転換。

そしたら途中で王都政変の知らせ。

こりゃいけないって、再びレガシに方向転換。

王都の指揮下にある関所を通るのは危険と判断した。

そこで、ミーハ村で出会ったウェイナさんを雇い、大街道を通らずにレガシへ案内してもらった。


「しかし、仮にも貴族の三男がお供も連れずってのはどうなんだ?」

先生があきれる。

「途中まで供もいたのですが…こいつに付いてこれなくて…」

デカ馬くん、ちょっと自慢げにぶひひん!

「えーっとこちらは?」

助けを求めるようにイオニアさんの方を見る。

「こちらは、エルディー導師、私やマビカさんの魔法の師匠ですわ。」

「サンゴロウと申します、妹がお世話に…」

「え? エルディー大導師!? 七英雄の?」

「お目にかかれて光栄…」

先生がめんどくさそうに遮る。

「あー、いい、いい。そーゆーのは。」

「それより、こっちが重要だろ。」

やっぱり初対面は人見知り、先生の陰に隠れてたキラすけ。

だいぶ改善はされたんだけどね。

まあ、兄上…見た目怖いし。

ひょいっと前に押し出された。

「兄上、お友達のキララちゃん。」

「バッソ家、四女キララだ。よ、よろしくぅ」

ビビリがちぃ、キラすけ。

マビカの紹介で、これまたかしこまるサンゴロウさん。

「バッソ侯のお嬢様ですな。マビカの兄、騎士サンゴロウでございます!」

上司の娘さんが妹の友達っぽい複雑な立場。頑張れ巨漢騎士。

その後、俺を見て困惑。初対面のいつものパターン。


実はその間にトンちゃんを飛ばしてタモン兄貴、組合長、おやっさん、エアボウド導師に連絡。

まあ、いつものように工房の食堂に集合することになった。

「ご苦労だったな、ウェイナ。」

「良ければお前も来てくれ、村にも関係あるかも知れん。」

「はい、導師。」

女豹戦士も同行。

サンゴロウさん、七英雄コウベン工匠、エアボウド賢者にびっくり。

タモン将軍に感激。あ、組合長の正体は内緒ね。

工房に並ぶ鉄蜘蛛、軍用獣機に愕然。

モアブ軍の王都制圧のことは聞いていたが軍用獣機現物を見るのは初めて。

湾岸都市のバッソ侯との連携も視野に入れた今後の戦略を話し合うことになった。


……わけなんだが……

その前に、非常に重要なイベントが待ち構えていた。

…ディスカムVS兄上。

傷も癒えて工房で護符製造業務に励んでいたディスカム。

呼び出されて食堂へ。

面々が揃っているのをみて、ビクッ!

見知らぬ巨漢騎士を見て、ビクッ!

「ディスカムー、サンゴロウ兄上だよ。」

ああ、うん。無邪気かつ朗らかに紹介するマビカ。

「あ……に、う! え?」

嫌な感じの汗、だらだら。

結果的に立ち会うことになったレガシの面々にも緊張が走る。

「は、初めましてお兄さん、マビカさんの学友でディ、ディッ! ディスカムと申します…」

顔面蒼白ながらも自己紹介。

「ほほう、君が?……お兄さん?」

すうっっと目を細めるサンゴロウお兄さん。

巨漢兄上騎士の全身から凄まじい圧!が放たれる。これが殺気か!

思わず兄貴とアイワさんが剣の柄に手をかけた。

ディスカム、ヒザがくがく!

「ディスカムさんもエルディー先生のお弟子さん、私の弟弟子ですのよ。」

イオニアさんが助け舟。ひそかに被甲身バンパーを準備してましたね?

「う、む…」

「さ、左様でしたか…」

緊張を解くお兄さん騎士、しぶしぶ。

「若いのに中々優秀な魔道士だ。」

「今はワシの工房で働いてもらっておる。」

「わしが学長だったうちに教えてみたかったわい。」

先生、おやっさん、生臭賢者、全力フォロー。

ふううー、何とかなった…かな?

「そ、それじゃあワシらはちょっと話し合いをするから。」

「お前たちはしばらく席を外せ。」

おやっさん、先生に言われてマビキラ、ディスカム退場。

食堂から出るときに、ひょいっとディスカムの腕にすがるマビカ。

殺気、再び。凶悪な眼差しで見送るサンゴロウ騎士。

マビカー、お前なー。

そして、360度視界の隅にほるほる顔の黒エルフ。

いつの間に? 久々の色恋ネタに満足げ。

「あ、何するしー!」

デイシーシーを放り出した。


魔王城山にいるメガドーラさんに援助物資を送る手はずをおやっさんと相談。

「メガドーラ様? バッソ侯のお母上の?」

サンゴロウさん、またまたびっくり。

「い、いったいどういう街なのですか? ここは??」

そりゃ、びっくりするよね。


その辺の手筈はみんなにまかす。

話を聞くのもトンちゃんにまかせたよ。

俺本体はその間に別の用事を足しにでかけた。

兄妹エルフのところへミーハ村からのお土産を届けに行く。

魔道機体本体が復活してから何やかやと忙しい。

先生んちや遺跡あたりをうろうろしているキラすけとか。

職人衆と一緒に仕事をするタンケイちゃんとか。

この辺はわりとよく顔を合わせてるんだけど、デイエートとは生活圏が重なってないんだよな。

工房やお風呂で顔を合わせることはあってもゆっくり話もしてられない。

心配かけたことを謝ってもいないしな。


街のはずれ、兄妹の家に行くと…

あれ? 留守かな?

と、ちょうど森の方から帰ってきたところ。

二人とも馬獣機に乗り、後ろに獲物を載せている。

実は工房の食堂のみならずレガシの肉の3割近くがこの兄妹によって供給されているという。

獣機の本拠探索で留守だった間、町内の食肉の価格が高騰していたらしい。

馬獣機のもっとも有効な活用法として、この二人に使ってもらうことになった。

って、汚れている! 泥だらけ。血まみれ。

「だ、大丈夫ですか!? お怪我は?」

「いや、いや、大丈夫ですよ、この血は返り血ですから…」

「ちょっと油断しましたねえ…近づき過ぎました。」

「ここんとこ、レッドがいるのに甘えてたから…」

デイエートも汚れまくってウンザリ顔だ。

そういえば帰還後もレッドことU-69はハイエートたちのところで猟犬を務めていた。

あー、メガドーラさんの護衛を頼んじゃったから…


「獲物を処理する前にちょっと汚れを落とさないと…」

二人の家は街のはずれ、すぐ裏に小さな川が流れている。

なるほど、獲物の処理があるから水場に近いここに家を構えたわけか。

裏に回ると川べりに。

上流から樋を使って引き込んだ常設のシャワーみたいなのがある。

太めの打たせ湯ぐらいの太さで、背丈のやや上くらいの高さから水が落ちてくる。

ハイエートお兄ちゃんは服のままその下に入って汚れを流す。

後ろでまとめていた髪をほどいて身体と服を同時に洗う。

肌に張り付くシャツ、透ける。

なんて言うか、色っぽい。

濡れる!(服が、ですよ)

水で流しながら服を脱いでいく。

樋を支えている支柱や物干しっぽいところに引っ掛ける。

下まで脱いじゃうんですか?

先生とタメを張るガバガバぶりですよ。

「そうだ、実はこれ、ミーハ村の村長さんからお土産に…」

「おっと、これはありがたい。ちょうどいいですねえ。」

「あ、これ。泡立つ? すごい。」

「新品種からとったものだそうです。」

「これはさっぱりしますね。」

で、そのまま体を洗うのかと思ったが、

「この後、仕事しますからその後でまた…」

汚れを流したお兄ちゃん。その間にデイエートは家からタオルを持ってきてた。

「はい、お兄ぃ。」

「おっと、ありがと。交代交代。」


ちらっと、いや、じろっと俺の方を見たデイエート。

ポニーテールの留め紐をほどくと、兄に変わって流水の下に身をさらす。

流れ落ちる水が泥や乾いた血を洗い流していく。

同様に上着を脱ぎ、ズボンも脱いで肌着姿に。

シャツ、下穿きの下に薄桃色の突起や縦筋が透けて…

「何見てんの!」

脱いだ濡れズボンを投げつけられた。おっと失礼!

視線をそらしてズボンやシャツを物干し竿に吊るしていく。

ま、久々に360度視界が活躍中なわけですが。

うん、こういうの! 潤いが必要だよね、生活には。

旅の途中は、獣機や野獣を警戒しながらの野宿だったから、期待してたようなシーンは無かったもんなあ。

「アイザック!」

はい、何でしょ?

「これも干して!」

おう! 肌着と下穿きも脱いで俺の方に差し出す。

髪下ろして、濡れるとけっこう長いよね。

そして、見えちゃってますよ、色々。

見せつけてるよな、絶対。

サンゴロウ兄上の反応が頭をよぎって、思わずハイエート兄の反応をチェック。

こっちのお兄ちゃんはのほほーんとしてるな。

濡れ肌着を手渡す…と、俺の手を掴む。

「ホントにもう大丈夫なの?」

「ご心配をおかけしました。」

ちょっと、考えて付け加えた。

「もう、二度とあんなことにはなりません。」

「うん。」

掌を合わせてきた。指を絡めてきゅっと握る。


いったん身体を清めてから、獲物の処理。

あ、れ? ここに貼ってある護符って…遅延魔法タイムラプス

「あ、それ? 女王さんから習ったやつだよ。」

ええ? 俺も習ったけど、脳内魔法陣イメージがむずかしくて習得できなかったんですけど?

お兄ちゃんは出来ちゃうの? できちゃったんですね。

夢魔女王の魔法は【正確な記録】だけでは再現できない。

先生によると、3次元立体魔法陣を超えた4次元図形イメージが必要なのだと言う。

奥が深いよ、魔法。

それをあっさりマスターしちゃった出来る男ハイエート。

流れるような手際で得物を解体、仕分けしていく。

職人!

デイエートも凄腕だ。

俺も手伝ったけど…手伝うというより習ったと言った方が近いですね。

妹エルフの手際を見つめて記録、学習。

そして、前かがみで作業する胸元の隙間から、見えちゃってるのも記録、学習!

うん、生活には潤いが必要だ。


工房では話し合いの結果方針がまとまった。

鉄蜘蛛ニコイチ号に物資を積んで魔王城山採石場に運ぶ。

運転手はタンケイちゃん。職人衆3名乗車。

荷台に席を作り、工兵機サテュロス2体も同行。

作業上必要になる可能性があるのでミネルヴァも。

ケロちゃんGを積んじゃうと物資が積めない。

ゴリ獣機には及ばないが、力仕事担当として俺が同行する。

鉄蜘蛛といっしょなら地上走行で並走すればいいか。

魔王城山の工兵機と協力して、現地で軍用獣機を修理。

軍用獣機と鉄蜘蛛はすべてレガシに回収する。

修理不可能で持ち帰れない場合は採石場のトンネル内に収納。


サンゴロウさん、メガドーラさんに挨拶がしたいと言い出した。

ちょっと、鉄蜘蛛には乗れないよなあ。サイズ的に。

デカ馬で行く、と言ってるが鉄蜘蛛のスピードがわかってない。

最高速度は同じくらいだろうが、鉄蜘蛛、馬獣機は常に高速で走れるし休憩の必要もない。

ちょっと、生身の馬ではついていくのは難しいだろう。

兄上騎士は飛行ユニットで運んでいくことにしよう。

「我もお祖母ちゃんとこに行く!」

キラすけが言い出した。

「ボ…ワタシも行きたい。」

マビカも兄上といっしょに行きたいらしい。

巨漢騎士は重たいけど、マビキラは小っさいから…3人いけるか…

でもキラすけぇー、お前高いとこ大丈夫なのかあ?

プシャーしても知らないぞぉ。


「と、言うことになりました。」

タマちゃんから送られてきた通信を、ハイエートに報告。

「魔王城山ですか… 僕も行きたいですねえ…」

また少し獲物を狩ってもらえば、地下住民も助かるか、肉的に。

「レッドもむこうに居るんでしょ、あたしも行く!」

デイエートも同行決定か。





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