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魔王城山へ飛べ!


壊された建物の修理に、モアブ軍の侵攻に対する備えに。

俺も、ケロちゃんGも引っ張りだこだ。

やはり力持ちは貴重。職人衆とともにあちこちの現場で大活躍。


大忙しの職人衆だが、新たなメカの研究にも余念が無い。

ミネルヴァと一緒に俺が破壊した軍用獣機の残骸を調査していた。

工兵機サテュロスの手伝いもあってゴリ獣機の分解まで可能になっていた。

その職人衆に呼び出されたのは、エルディー導師、エアボウド導師、メガドーラさん。

マスタークラスの魔導師たち。

魔法に関する部分で相談があるらしい。

ちなみに先生と夢魔女王は馬獣機で移動。

最近、すっかり歩かなくなってるよ?


おやっさんも同席。司会はタンケイちゃん。

「実はですね、軍用獣機を調べててわからないことが…」


獣機に限らず、魔道機を動かしているのは魔力変換炉。

魔力はこの世界に満遍なく存在している。

空気みたいにある、って言う意味でなく高次元的に存在しているらしい。

この世界の生き物はそれを取り込んで魔法を使う。

ある程度、体に貯めることもできるし、魔法陣で護符に貯めることもできる。

光熱変換魔法陣みたいに他のエネルギーを魔力に相互変換することも可能だ。

まあ、やってるのはエルディー先生だけだが、今のとこ。

ただし、普通の人は貯めずに取り込んだ魔力を直接使ってる。

大規模攻撃魔法とか重傷患者の治癒魔法とか使わない限り、それで十分だからだ。

だが、取り込む魔力以上に使っちゃうと収支がマイナス。

物質的な体力が奪われる。

極端な話、身体を構成するタンパク質が破損することがある。

…ああ、それで筋肉痛……

逆に溜め込みすぎると組合長みたいにおかしなことになったりするそうだ。


魔道機は直接、魔力で動いてるわけじゃなく「動力」と呼ばれる力で動いてる。

魔力を「動力」に変換するのが魔力変換炉。

原理はわかってるけど、微細加工技術が必要で再現できない。

発掘品を使ってる。

犬獣機やゴリ獣機の残骸からけっこう手に入ったので、職人衆はホクホク。

実は生き物ではない魔道機は魔力を「貯める」ことが出来ない。

「動力」は貯蔵が出来ないし、護符で貯めると効率が悪い。

「魔力>魔導師>護符>変換炉>動力だからな。」

「何人も魔道士がつきっきりになるわな。」

現在、稼動している魔道機は大きくても馬獣機サイズ。

使われ方は荷物運びや、荷車引き。

あと、貴族が見せびらかすくらい。

犬獣機も含め、貯蔵しなくても直接変換だけで十分動き続けることが出来る。

そもそも貯蔵する必要が無かったわけだ。

ちなみに、旧型鉄蜘蛛は魔力を「動力」ではなく電気に変換して動いてる。

そして俺の知らないタイプの電池を積んでいた。全個体電池の発展形?

ただし、電池は主にメーターや制御などの電装品につかわれている。

モーターを駆動しているのは直接魔力から変換された電力。

いわゆるマイルドハイブリッド。

図体のでかい鉄蜘蛛だが、基本的に走るだけなので出力のピークは一定。

意外と低燃費。


「軍用獣機はそれだと魔力が足りないんすよ。」

ああ、まあ、でっかいからね…。燃費悪そうだよね。

それに、戦闘時は瞬間的にもの凄いパワーを必要とする。

「どう考えても常時取り込でいる魔力だけじゃジャンプとかできるはず無いんすけど…」

「もしかしたら魔力を貯める装置が有るんじゃないか?って調べたところ…」

職人衆がなんかでっかいタンク?みたいなカタマリを運んできた。

円筒形、真ん中が筒状に彫り込まれてる。

大きさと形がこれ…ゴミ箱MacProチック。

「どうやら、これが魔力を貯めてるみたいなんす。」

「何なんすかね? これ? 導師たちの意見が聞きたいんすよ。」

おやっさんとエアボウド導師がさかんに触ったり、なでたり。

「石?」

「石っぽいですな。」

「何だろ…どっかで見たような気がするんじゃが…」

「すごく見慣れた感じがする…この岩目模様…」

エアボウド導師がポンと手を叩いた。

「あー、王城の石畳の石がこんな感じ!」

「おー、そうか! あれに似とるんじゃな。」

先生と夢魔女王、なんともいえない顔してるな。

「あれって…」

「いや、間違いなくアレじゃな…」

「え? エルディー、メガドーラ、知ってるの?」

あー、これ……魔王城の石!


「え? あそこの採石場の石にそんな効果が!?」

「うーん、普通に石畳に使っちまったぞ。」

「それだったら…閉鎖しとくのはもったいないなあ。」

「何とか採掘を再開できる方法は…」

「いや、待っておくれよ。」

何? メガドーラさん?

「このことはモアブ軍も知っておるのかの?」

「どうだろうな? どこまで軍用獣機の構造を理解してるのか?」

先生が深刻な顔でつぶやく。

「クリプス騎士が…モアブ軍が王城の石を剥がしてると言っていた。」

「獣機の動力に使うつもりだとすれば…魔王城山採石場の石だってことも知ってるだろう。」

「獣機の整備にレガシの工房、基地として大迷宮、エネルギー源として魔王城山。」

「さらに犬獣機の本拠の位置も知ってるとすれば…」

「ロスト地方制圧の理由としては十分すぎるな。」

「魔王城山が危ない……」

夢魔女王が腰を浮かした。

レガシに先遣隊が来たように採石場にも送り込まれているかも?


通信システム作動。

俺から魔道研究所経由でジョーイ君へ。

『ジョーイ君、そっち変わりない? 軍用獣機の動向情報は無いかな?』

魔王城周辺は骸骨塔の電波圏内だから犬獣機によるリアルタイム偵察ができる。

『軍用獣機が大街道を移動していたのを確認しています。』

『獣機と鉄蜘蛛が4機ずつです。』

『付随するヒト獣人を多数確認。』

人間のほうが付随かあ…ま、ジョーイ君的にはそうかもなあ。

4機で行動するのがモアブ軍の基本か?

『今どこにいるかわかる?』

短波による音声通信だから映像とかは送れないんだよなあ。

『旧時代の採石場跡付近です。』

来たわ! ヤバい。心配的中!

「ジョーイ君に問い合わせたところ、すでに先遣隊が採石場付近に。」

「戻らなくては!」

夢魔女王、責任感強い。

だが、魔王城山までだと馬獣機を飛ばしても2日。

『ジョーイ君、魔王城山の住民を守って。』

『了解しました、犬獣機ハウンドを派遣します。』

だが、犬獣機ではゴリ獣機に太刀打ちできない。

「私が行きます!」

止むを得ない! 事、ここにいたっては是非に及ばず。

『ヘルプ君、協定を破棄し、飛行ユニットの空域を開放します。』

『了解しました。』

『現時点を持って【協定】を破棄』

『飛行ユニットの空域制限を解除』

『武器装備の使用制限を全解除』

『ハードウエア召喚機能の新規登録制限を解除』

『外部接続機体の拡張機能をサポート』

『拡張機体の使用禁止を解除』

ヘルプ君? なんか喜んでない? 気のせいかな。

んー、何か色んな項目が出て来たけど…今は後回しだ。


先生、メガドーラさんの馬獣機とともに北遺跡へ急ぐ。

『ミネルヴァ、スカイエクソン発進準備!』

『了解、爆装ユニットはどうします?』

『装備したままで輸送モードは使用できる?』

『問題ありません。』

よし、ならば軍用獣機の4体くらい問題じゃない。

「ちょっと待て、お前が言ってた『みさいる』とか『ばくだん』とかは使えないぞ。」

ええ? 先生、何でですか?

「魔王城山の石切り場は限界近くまで掘られておる。」

「衝撃や振動しだいでは崩落しかねないぞえ!」

ああ、メガドーラさん、そうだった!

『ミネルヴァ、聞いてのとおり、爆装は外して。』

『了解しました。』

こういう時のために北遺跡に工兵機を配備しておいたんだしね。

作業、よろしく。

だが、爆装無しで4体のゴリ獣機と4機の鉄蜘蛛を相手に出来るだろうか?

だが、やるしかない。

一宿一飯の恩義、3泊ぐらいしてますけどね。

「家に寄れ、渡すものが有る。」

先生から渡されたのは、消磁魔法マグセーフの護符。

これがあれば鉄蜘蛛の動きを止められる。

「あと、これ憶えろ。お前なら使えるだろ。」

えーっと? 何ですか、詠唱魔法?

『ピロリーーーン!』

『○○魔法を学習しました』

あ、そうか! その手があったか!


すでにドームは上昇し出撃口がオープン!

エレベーターで上部管制室へ。

飛行ユニットは待機済み。

爆装コンテナは取り外されている。

翼端格納スペースにはトンちゃんを収納。

タマちゃんはレガシで待機。

ミネルヴァはここを頼むよ。

「遺跡のシステムは掌握済みです。」

「協定破棄に伴う機能拡張についても把握を進めています。」

張り切ってるな。

ヘルプ君の台頭とか、ジョーイ君の登場とかで仮想人格キャラの立場が希薄に。

ドールボディを失ったせいもあって、尻に火がついた状態。

頑張らざるを得ないぞ、ミネルヴァ!

「飛行ユニット、輸送モード。魔王城山まで本体を運搬して。」

ホバリングしたユニットが後方から接近、俺のわきの下から脚を通して支える。

外部エクソ接続コネクション機体デバイス接続性改善プログラムが使用可能です』

今度はヘルプ君。おお? バージョンアップしたヤツ?

時間かかる?

『実行に2秒』

おう! やっちゃって!

『インストールが完了しました』

『高機能接続モードへ移行』

おおおー?

全身の装甲板が連携して移動。

背中の部分が開いたように立ち上がる。

飛行ユニットの外板も同様に移動。

吸い付くように背中に装着された。

合体! 合体? いや、融合と言ったほうが近いか。

『高機能接続飛行モードへ移行完了』

見ていた先生、メガドーラさんも歓声。

「おおー凄い!」

「なんだかカッコいいのう!」

ミネルヴァが渡してくれたのは、サイト1から持ち帰ったお土産。

「コレも使いますか?」

使うよ、きっと。


今、行くぞ、魔王城山のみんな!

「頼むぞえ! アイザック。」

メガドーラさんが…おおう! 行ってらっしゃいのキッス!

この辺が先生とは違うとこですな。

「さっさと行け!」

おう! 先生に蹴っ飛ばされた。

発進!! スカイアイザック!


遺跡から飛び立ち、上空へと高度をとる。

うん、怖い! 高いとこ、意識共有の2倍くらい怖い。

膀胱がなくてよかったよ。

あれ? えーっと、この合体って…後で分離できるんだよね?

『……』

ヘルプ君?




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