遺跡を見物するよ
野菜と言えばほうれん草。
ホウレンソウと言えば報告、連絡、相談。
と、言うことでエルディー先生とミーティング。
雷神槌と炎縛鎖を習得したことを報告。
「ほほう、魔法陣を学習して、か。」
「実験してみよう、これは学習できるかね?」
先生がごそごそと取り出したのは例のディスク。
「先生! 動かないでください!」
ちなみに、今、ベータ君が先生の髪を編んでいる最中。
魔法陣を読み取る。
「閃光輝ですか…?」
「古代語が読めるんだな、まあ、当然か。」
古代メカだからね。
「ピロリーーーン」
『閃光輝を習得しました』
「出来ました。」
「素晴らしい! ではこれは?」
先生はパンっと手を合わせる。
ゆっくりと開いていくと、両手の平の間に魔法陣が現れる。
皿立てに並んだお皿みたいに。
5枚の魔法陣がゆっくりとそれぞれ別々の速さで回転している。
「ピーー」
『リソースが不足しています』
『この機能には対応していません』
「学習できませんでした。」
なにそれ? 見るからにすごい! そんなの学習するの、無理じゃね?
「無理かー、いったん定着させたものじゃないと無理なのかなー?」
そーゆー問題じゃないでしょ? 単に複雑すぎるだけなんじゃないかな?
再び手のひらを合わせると魔法陣は消え去った。
「何だったんですか? 今のは。」
「風を吹き出す魔法、金属を腐食する魔法、反応を加速する魔法、を組み合わせたものだ。」
「吹き付けると、鉄や金属を腐食させる。剣や鎧ぐらいなら数秒で錆び落ちて消えてなくなるぞ。」
武装解除用の魔法?
ええ? ちょっ! 怖っ、そんなの、俺、消されちゃうかも?
いや、それって…ルス○○リケーン!
いつか習得する、と心に決める。
「一番外側のは対象物以外への作用を制御する陣と、腐食の時限停止ですよね?」
ベータ君すげえ! そんなこと、見ただけでわかるのか。
「うむ。」
先生も満足げ。
三つ編みも編みあがったようだし。
その後は俺が発掘されたと言う場所を見せてもらうことに。
三人でちょっと歩いて、遺跡まで。
近い、近いよ、すぐそこだよ。なんで家に帰らないであそこで寝てたの?
ものぐさすぎるよ、先生。
「地下はさ、冬あったかくて夏涼しいんだよ。」
もー!
前方後円墳に入り、先生の研究室兼巣穴を通ってさらに地下に降りる。
ハッチ、とういうか蓋を開けて下へ。
「あー、カンテラ一つしかない、どこやったっけ?」
「使ったら元のところに戻さないと、定物定位ですよ。」
ベータ君に怒られてる。
灯りか? 灯り…
おう、光った。目、目みたいなパネルから光が!
サーチライト風ではなく、拡散光。カンテラモード。
便利!
「便利なやつだな。」
「すごいです、アイザックさん。便利です。」
あまりうれしくないな、その褒め方。
あれ、この光?
照らされた俺の身体、全身に魔法陣みたいな模様が浮かび上がって見える。
胸板、両腕、肩にも?
「ほう、魔法光。前、話したろ。」
ああ、これが召喚用の魔法陣か。
「こんな簡単に魔法光が出るのか。他にも使い道がありそうだな。」
ここから先は石造り。ダンジョン? ちょっと歩くとすぐ到着。
玄室…か?
「かなり浅いところに置かれていたんですね。」
「ああ、発見してくれ、と言わんばかりにな。」
どうせ起動できないと思ったのか?
あるいは深い階層まで運ぶ時間がなかった、とか?
前に話に出た壁画を見る。
想像してたのと違うな。
インカとか、エジプトとか、
あるいはモナークが発見した怪獣壁画っぽいヤツ。
みたいな壁画を想像してたんだが…
これは…
鳥獣戯画。
うん、鳥獣戯画だよね、タッチが。
たしかに俺みたいなのが獣機みたいなのと戦っているけど。
俺がカエルで、獣機がうさぎ。
戦っている? 相撲?
「これ、骸骨塔を載せていた鉄蜘蛛ですよ。」
壁画の一部に描かれている。
骸骨塔…アンテナは載せてない。
運んでいるのは、俵? 獣…獲物? 魚、あと、野菜?
「興味深いな。まあ、わからんことが多すぎるがな。」
あと、気になったのが大きい鳥。俺をつかんで飛んでる感じ。
俺、さらわれちゃうの?
こっちこっちと先生が手招き。
扉だ。身長の2倍くらいの高さ。
両開き。いかにも地下に続いていそうなたたずまい。
「ここから先は手付かずだ。と、いうか、開かない、この扉。」
「魔法でロックされてる。ひどく厳重でな。何かわからんか?」
目ライトで照らす。おお、魔法光に照らされて扉に模様が。
扉の表面になにか刻まれているな。え、QRコード?
「ピロリーーーン」
『開錠に必要な要件が満たされていません』
必要な条件て何だ?
『筺体、および関連施設に対する重大な脅威』
『住民の生命に対する現状で対応不可な重大な脅威』
『古の法に基づく【協定】の破棄』
ああ、これ、ピンチにならないと発動しない系のアレだ。
新しい敵とか新幹部とか登場して、一回負けないと出てこないヤツ。
テコ入れ。おもちゃだと後付け、別売り。
…てことは、武器…いや兵器だよな、たぶん。
「今は、開けないほうがいいですね。」
そんなのいらない。必要ない。
「危険なのか?」
「おそらく。」
遺跡を出て、家に戻ると…
家の前でうろうろしてる人がいるぞ。
超爆暴乳ドワーフ、タンケイちゃんだ。
「ああ、居たー! 良かったっすー。」
「おやっさんがこれを持ってけってー。」
「ほほう、これは…」
先生がタンケイちゃんから渡された包みを開けると。
マントだ。フード付きの。
昨日、ベータ君から渡されたマントは戦闘中にどこかにいってしまった。
その代わりか。
「おやっさん、徹夜で仕上げてたみたいっすよ。」
おやっさん、ありがとう。涙出そう。出せないけど。
早速羽織ってみる。いい感じだ。うまく全身が隠れる。
「これなら、街中でも歩けそうだ。」
先生もうんうんうなづいてる。
「すねに傷持つ傭兵とか、ちょっと痛い魔道士とかで、こんなかっこした奴、けっこういるもんな。」
ええ、そんな風に見えるんですか? ちょっとそれイヤ!
「そ、そんなことないですよ! 似合って、似合ってますよ!」
ベータ君が慌ててフォローしてくれる。
まあ、多少の怪しさには目をつむろう。
俺がそのままの格好で歩き回るのは問題あり。
知らない人が見たら、獣機が来た~って大騒ぎになりそうだしな。
…あれ、そうすっともしかして俺、今、解釈的には裸ってこと?
するとこれは裸マント? トキメイちゃって今夜はトゥナイトな感じ?
そういうのは先生にやってもらいた…そろそろ飽きてきたな。
先生の裸は。
見飽きた。
倦怠期。
やはりデイヴィー人妻エルフさんに…ちょっと違うな。
本人が艶っぽすぎるとシチュエーションが意味を待たなくなってしまう。
イーディお姉さん! うん決定。
クール美人が似合うよね、裸マント。
似合うといえば…
「どこかに全身が映る姿見はありませんか?」
「なんだ? 似合うかどうか気になるのか?」
「おしゃれさん、なんすか?」
違いますよ。
「私の機体がどういう構造なのか確認したいのです。」
「なるほど。」
みんな考え込む。
やはり、この世界で大きい鏡は無理か?
ガラスとかあるのかな?
金属を磨いて平滑な大きな鏡を作るとか、難易度高そう。
ベータ君がおずおずと、
「工房の浴場に有りませんでしたっけ?」
「ああ、そうだな!」
「そうだ、有るっすよ! あれ、錆びないように磨くの大変なんすよ。毎日だし。」
それなら早く思い出せよタンケイちゃん、脳みそまでおっぱいなのか?
と、黙り込む。どしたの? タンケイちゃん?
「鏡は、女湯にしかないんすよ…なんで知ってるんすか? ベータ君。」
墓穴! 墓穴を掘ったなベータ君!
「まあ、ベータは小さい頃はイーディに連れられて女湯に…」
「わー! わー! わー!」
真っ赤になって焦る、焦る。
女湯、ショタ連れ入浴! 全女性入浴者待望の夢シチュ
しかも、幼児期美少年エルフが! フルチン!
可愛いわね、何歳なの、まあ、お姉ちゃんと一緒に来たの?
うふふ、おちんちんも可愛いわね、皮をむいて中まで洗った方がいいのよ、
おねえさんが洗ってあげましょうか?
「工房、ですか。」
「ああー、そうだった!」
タンケイちゃん声でかい!
「おやっさんが導師に工房に顔出してくれっていってたっす!」
「うん? 何の用だって?」
「獣機の残骸を回収したから、相談したいって。」
「そうかー…」
みんなで街へ行くことに。
「夕食は街で済まそう。」
え、1日2食、昼飯抜きっすか? この世界!