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本拠地突入



獣機たちの本拠地。

そこは軍事施設ではなく廃棄場?


夕暮れ時、台地を下り獣機の本拠、保管施設へ接近する。

先日から着用している認識阻害スーツ。

肩のラインを消し、木の葉や小枝でシルエットを崩す。

わさわさした感じ。女騎士のムダ毛に匹敵。

「ななな、何か言いましたか?」

いやいや、言ってませんよ。

ヒトの目から見ればかなり子供だましだが、なぜか獣機には効果満点。

シルエットの喪失や視覚的ノイズが効いてるらしい。

ガチ○ピンの相棒ム○ク? いやもっと不気味。

うん、ワイアール星人。

ハイエートお兄ちゃんの射程内に入ったところで、兄妹エルフは待機。

馬獣機、ハウンドファイブも待機しててね。

U-69だけ同行してもらう。

トンちゃんもここで待機ね。俺との通信よろしく。

夜半過ぎ、俺、先生、女騎士はさらに接近して施設内に侵入する。

「夜目は効くのか? 人間だろ。」

「だだだ、大丈夫です。暗視護符を買ってあります。」

「言ってくれればただで譲ってやったのに…」

「あうっ!」

ワサワサスーツに覆われて顔しか見えないけどハイエートと視線を交わす。

行ってきます! 気をつけて!

ってな感じの無言の会話。

デイエートが何か言いたそうだったけど…無言でうなづいただけ。

さて、行きますか!

念のため、腰のポシェットを確認。

魔王城の石の余りで作った新兵器。

小型護符……麻雀点棒型護符をチェック…って?

あれ? 無い!

ここ、入れといたよね?

『収納しました』

はい? 収納? どこへ? いつの間に?

『ここ』

腰、と言うか太股の外側のあたりがパカッと開いて点棒が出てきた。

『取り出し時、種別を選択可能』

えええー? どうなってんの?

メガドーラさんも言ってたけど、底が知れないぞこの機体ボディ

ちょっと、怖い。


先頭はU-69、続いて女騎士、先生を挟んで、後ろが俺。

監視をかいくぐって施設に近づく。

……いや? 監視は無いな。

まったくの無防備。

そもそも施設を守るっていう考え自体が無いような気がする…

1日観察した限りでは周囲の巡回などは一切行なわれていない。

どうにも…理解しづらい。

まあ、人間じゃないから…機械だからこその非論理的行動と言うのがあるのかも。

そもそも、ヒト族を襲う行動自体が論理的じゃないもんな。

「獣機相手に、夜中である必要は無かったんじゃないか?」

「寝ないだろ、獣機は。」

「あうっ! そそそ、そこは気分て言いますか…」

形から入るタイプ女騎士。


施設の入り口…は開けっ放し。

両開きの金属製の引き戸。

トラックというか、鉄蜘蛛が出入りできるくらい巨大な扉。

って、いましたよ、鉄蜘蛛。

施設内部にずらりと並んでる。

ずらり? いや、せいぜい…数えられますね、15台。

4台4列…で一台分空いてる。

ここ、何か置いてありましたって感じに床が変色してる。

あー、レガシ近くでやられちゃったやつかー。

やったのは俺ですがね。

ブーンと低いうなり音と振動を感じる。

この施設が生きてることの証拠。

鉄蜘蛛の周りには兵機。下半身は獣風、上半身は人間風。

両手で作業するために2足歩行に作られた作業ロボ。

工兵機サテュロス

これまたズラリと並んでる。こっちは100体位いるな。

現在、鉄塔で作業中の奴もいるし、たぶん各地で骸骨塔基地局を建設してるやつもいるはず。

あと、あちこちに作業用の機械みたいなのが置かれている。

フォークリフトにクレーン?

あれは輸送用のターレット?

円形塔型構内運搬自動車、今は無き築地市場でよく見かけた。

それにしても犬獣機ハウンドの姿がないな。

いや? 倉庫の奥、隅のほうに何か積み上げられているものがある。

こりゃあ…残骸?

犬獣機の残骸だ。各地に出撃して破損したヤツとか、故障したヤツとか。

自力で帰還したものや回収したものから使用可能な部品を取り外した残りだな。

獣機墓場。

俺がぶち壊したやつも含まれてるかも知れない。

いつか獣機供養とかしたほうがいいんだろうか?


と、思ったら!

施設の奥、暗がりから走ってきた! 2体。

うひょっ! どきーん!

心臓バクバク! まあ、心臓は無いですけど。

ギリースーツ頼み、鉄蜘蛛の脚の影に隠れてやり過ごす。

奥に、出入り口があるらしい。

近づくと…地下に続くスロープがあった。

うん、バリアフリー。って、違うわ!

四足歩行の犬獣機や作業車両でも行き来できるように作られてる。

さっき見かけた作業用車両がすれ違えるくらいの幅。


メイン施設は地下か?

あー、見取り図。壁に貼ってあったよ。

大型スーパーや、ショッピングセンターにある系。

館内案内図。イオ○モール。

時々、「現在位置」が示されていないやつがあってムカッと来る、あれ。

地下、中央部に…サーバールーム?

ここだ! ここを目指そう!

「なんだ? さあばあるうむ?」

獣機をコントロールしているのはたぶんそこですよ、先生。


この施設、円形のドーム型。

スロープは外周にそってカーブを描いて下っている。

なるほどとは思うけど、まっすぐ向こうが見通せないのは危険じゃないかなあ。

そして、まぎれもなく危険なのは俺たち。

どこまで行ってもカーブの向こうが見えない。

いつ獣機が出てくるかドキドキ。

トンちゃんは連れてくるべきだったか…

偵察、頼むよU-69。

幸い誰とも遭遇しないでしばらく下ると、シャッターが見えてきた。

シャッター? でもこれ、ずいぶん中途半端な半開き。

1m半ぐらいのところまで下がってるって言うか、上がってるって言うか?

U-69がシャッターをくぐってそのまま進む。

ああ、そうか4足歩行の獣機が出入りするためだから、このくらいでいいのか。

いや、でも俺たちは屈まないとくぐれないんですけど。

あ、ちょっと待って先生、粗忽者女騎士!

今の自分たちのカッコ忘れてるよ!

フツーにくぐろうとして…ギリースーツが引っ掛かった。

「おっとっと!」

「あ、ちょわ!」

バサバサっと着ぐるみみたいなスーツが脱げちゃう。

雑! 雑ですよ、アンタら! 行動がね。

俺は違いますからね。

慎重に身をかがめてっと。

這いつくばってシャッターをくぐろうとしたら…

シャッターの向こうには……獣機がいた。


いっぱいいた! どこかへ出撃するところですか?

お出かけですか? レレレのレーーー!!

うわああー!

数が多すぎる、通路一面犬獣機!

向こうも戸惑っているようだ。

まだ攻撃モードになってない。

あわてて女騎士と先生がギリースーツをかぶり直す。

……ダメでした。

一度人間だってばれちゃうと目の前でかぶってもダメだよね。

いっせいにヘッドアームを開いて襲い掛かってきた!

「ちょわわわー、ちょわ! ひええー! てやっ!!」

うるさい! 奇声女騎士!

剣をふるって獣機を払いのけるけどきりが無い!

U-69はどうした?

ああー、踏まれてる! 踏まれてるよ。

次から次へ押し寄せる獣機に飲みこまれた。

「撤退! 撤退しましょう!」

一時退却だ。

被甲身バンパーを発動して防いでた先生をシャッターの外へ。

女騎士の鎧をつかんで、これまた放り出す。

「先生! 氷雪虎スノーレパードを!」

水は俺が出す! 水精竜ウオーターシュート

「氷雪虎!」

シャッターの下を氷の壁で封鎖!

付いて来て出てきちゃった獣機は女騎士が片付けた。

氷の壁。本来なら獣機だったら破れるかもしれない。

でも、いっせいに押し寄せたもんで詰まった。

大渋滞! 獣機なだれ。押し合い圧し合いになって自由が利かない。

U-69も飲み込まれちゃったけど、無事でいてくれよ。

「どうします? この先へは行けませんよ。」

うん、こういう時は大抵……

上のほうを見る。有りました。

通風口!


敵のアジトに潜入したときは通風口。

これはハリウッドでは常識!

ワイヤーアームを使って金網フタをはずし、通風管内に這い上がる。

広さは…うん、大丈夫、女騎士は楽勝。

先生は…おっぱいつっかえませんか?(セクハラ)

大丈夫ですか?

そして俺は、キビシイ。でかいからね。

世の一部の女性方、よく言われる高身長、高学歴、高収入。

高身長は考えたほうがいいかもね。

将来、介護することになったら大変だよ?

余計なお世話!?


こういう時は装甲板をスライドさせて魔道機痩身法。

スラリプロポーションに変形だ。

そして全身を振動させて前進。蛇変化の術! ダッシュワン!

先生、女騎士、付いて来て。

そして、現実はきびしい。

ホコリが…ホコリがあああー

数千年分?のホコリがたまった通風管!

そして!

「虫! むむむ、虫があああーーー!」

「ななな、長い! コイツ長い虫ぃいいー!」

「あああ、足が! 足がいっぱいあるううー!」

「黒いぞ! コイツ黒いぞ!」

「黒くて迅い虫だあああーーー!!」

阿鼻叫喚!

わずか一区画移動したところで、ほうほうのていで転がり出た。

それでも隔壁一枚は通過したらしく、獣機スクラムからは脱出できた。

ここは、工房? 整備工場みたいだ。

工兵機が作業台に向かってお仕事中。

天井から落っこちて来た俺たちだが、こっちには興味が無さそう。

黙々と作業を続けてる。

台の上には犬獣機が置かれている。

部品を分類してるやつ、組み立ててるやつ、そしてコネクタ接続してるやつ。

まあ、無視してくれるんなら御の字ですがね。

壁際をそーっと移動。

右手を手刀にかまえ、身を沈めるようにして、

「はいごめん、通りますよー、ちょっと失礼しますよー」

って感じでへこへこ移動してしまう。

この向うがサーバールームだな。


おっと、開けた場所に出た。

ベランダみたいな手すり付き。

一段さがった広場?には……うわ!

薄暗い中に犬獣機がぎっしり並んでる。

何百体? 千越え? 向こうがかすんで見える。

コミケの待機列?

始皇帝の兵馬俑抗みたいだ。

「うお! これは…」

先生も女騎士も絶句!

これが一斉に襲ってきたら、レガシもミーハ村も…

背筋に冷たいものが走る。

「あれ? でも、あの辺…」

女騎士が指さす方。

きちんと並んだ獣機の列。その一部。

倒れた獣機が周りを巻き込んで列が崩れている。

風に煽られた駐輪場みたい。

視覚センサーフル稼働。

他にも関節が外れてうずくまるように倒れている奴も。

ヘッドアームが外れてぶら下がってる奴とかもいる。

やはり、長すぎたのか……魔道機文明から何千年も過ぎてるって言うからな。

「朽ちかけてるのか? なんとも、哀れだな。」

先生がしみじみつぶやく。

「やはり、廃棄場なのか…?」

「なぜ、ヒト族を襲うことになったのか…?」


感傷に浸ってる場合じゃない。

「こっちです、先生。」

見取り図と慣性センサーでナビゲート。

通路を曲がってその奥へ。

この先で謎が解けるんだろうか?

「ぴろりーーーん!」

おおっとぉ! メールが来た!

【上位存在】!

『気をつけて』

通路の奥から、人?

いや、魔道機! ヒト型魔道機。

下半身獣型関節の兵機とは違う、完全ヒト型。

将機だ!


ラスボスっぽいヒト来た!

背が高い、俺と同じくらいあるぞ!

体形も男性型。やや細身。細マッチョ?

いや、格闘家じゃなくてフィギュアスケーター体形。

そして黒くない! ミネルヴァボディと違って肌色でもない。

銀白色、シルバー!

直感する。これ、耐光線装甲!

雀竜のウロコと同じ構造だ!

俺のビーム、通用しないかも?

頭部はミネルヴァとは違う。

分離とかはしなさそう。作り付け。

やはり、全体に俺の機体に似ている。

向こうがシルバー、こっちが黒。

なんだか、俺のほうが悪っぽい?

顔は俺以上にシンプルな作り。目の部分はバイザー型。

量産機っぽい。すなわちジ○!

そして、俺がガ○ダムだ!

将機が両腕に構えているのは……ビームガン!

ミネルヴァの将機ボディが持っていたのと同じケース型。

背中にも、もう一基ケースを背負っている。

やばっ!

思考加速! マントを開く!

先生と女騎士を包み込む!

シルバー将機がビームを発射!

パルスビーム、連射!

マントが拡散反射!

「あちあちあち!」

先生が悲鳴!

いくら高級雀竜マントと言えど100%反射とはいかない。

連続で耐えられる時間も限られている。

もちろん、俺だってのんびり構えてるわけじゃない。

前腕を外し落とす。

マントのすそからつま先で横に蹴り出した。

くるくる回りながら床を滑るアームパーツ。

エンジン点火! 拳骨シュート! ぶん殴れ!

将機もさすがの反応速度だ!

ビームガンを振って拳骨シュートを狙い撃つ!

狙いは正確だが、腕の追従速度よりシュートの加速の方が速い!

パルスビームが後追いで床を貫く。

舞い上がり、将機めがけて突進する拳骨!

迎え撃つ将機! ビームが命中!!

だが、たとえ直撃を受けても一発では俺の装甲を貫通することは出来ない。

それはミネルヴァボディと戦った時に確認済み。

ビームの弱点は質量が無い事。

固体銃弾と違って向かってくる敵を押し返す力がない。

拳骨シュートの軌道を変えることは出来ないのだ。

そして、このパンチは新兵器!

雷神槌サンダーボルトを刻み込んだ点棒型護符を握り込んでいる。

殴りつけると同時に発動!

サンダーアーム!

将機の全身を雷光が包む。

よろめくシルバー将機。

将機本体は耐えた! だが、ビームガンは耐えられなかった。

ショートし、煙を上げている。

リリース! 両方のビームガンを分離。投げ捨てた。

自由になった腕を後ろに回すと…

背に担いでいたケースから剣を取り出した!

この剣…将機が構えると同時にうなり出した!

振動しているのか? 高周波振動剣?

超音波カッター! 俺の装甲を切り裂ける武器か!?

技術そのものは空想兵器や超技術と言うわけじゃない。

ホビー用に売ってるくらいだからね。

サンデーモデラーにはちょっとお高い。

空気がきな臭く匂う。

剣の振動が空気をオゾン化しているのか?

恐るべき超振動。

人間では構えることすら出来ないだろう。

俺も腰の剣を抜く。

雰囲気を出すために瞳アニメーション、発動!

ダミーアイパネルが輝きを増し、いったん消灯。

まるで黒い影部分が集束するように瞳を作り出す。

鋭い眼光! 正眼に構える!

おやっさんからもらった頑丈剣!

先生の魔法処理エンチャント

タモン兄貴から、アイワさんから、そして女騎士から学んだ剣技!

みんなの力を、今、ここに集めて!

やってやるぜ!!


先生が、将機の背中に遅延拘束護符タイムラプスを張りつけた。

停止、シルバー将機、固まった、ばったり。


「さっさと行くぞ!」

あー、はいはい。

女騎士もガッカリ顔。

そりゃないよって感じ。


さっきの新兵器を解説するとー。

俺は見て記憶した魔法陣を起動できる。

雷神槌や炎縛鎖、起動すると手の甲に魔法陣が浮かび上がる。

そこで、飛ばした拳骨シュートの先で発動できないかやってみた。

ダメだった。繋がってないとダメみたい。

でも、最初の骸骨塔を破壊した時、護符を運んで発動したことを思い出した。

じゃあ、護符を持っていけば代用できるんじゃね?

でも、ディスク型護符は持って行くには不便。

そこで握り込める麻雀点棒型護符を作ってみたわけ。

ちなみに炎縛鎖護符を握って、ファイヤパンチ!ってのも考えてる。

うん、考えてる。


遂にたどり着いた、サーバールーム。

この場所こそが人を襲う獣機のコントロールセンター。

すべての謎が解かれる。

そして決着が……


意外とシンプル。

コンソールとモニター。

椅子とかは無し。

床に何やら転がっているものが…

これ? 鎧? あっちのは…本?

金属鎧やら、皮鎧やら…何人分もあるな。

何でこんなとこに? ちゃんと片付けなさいよ。

あら、中身入ってる。

白骨! ええー?

スピーカーから音声が流れてきた。

『ようこそいらっしゃいました。守護魔道機。』

『わたしは【上位存在】』



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