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集中講座二日目



魔法塾の集中講座。

お昼休みの後はベータ君が先生。

魔法陣の構成の講義だ。

先生が使っている魔法陣の幾つかをサンプルに、要素ごとに分解して説明していく。

これは興味深い。

複数の魔法陣を組み合わせて使うのが複合魔法。

だが、単独の魔法陣も実は色んな魔法要素が組み込まれて出来ている。

勉強になる。オレも思わず前のめり。

エアボウド大導師もすっかり生徒。

「なるほど、これが光魔力変換…ふむふむ。」

「しかしこれ、刻むの大変じゃな。」

「工房では原盤から転写して生産してますよ。」

「この細かい線を転写? どうやってるの?」

「その辺はコウベンさんの考案なので、僕にはちょっとわかりませんが…」

俺がちょっとのぞいた限りではメッキと酸を使ったエッチング的なやり方。

「さすがおやっさんだなー。」

キラすけがうなってる。

「習ったことのない要素がいっぱい出てくるー」

マビカも苦しんでるぞ。

「持続効果の斜線が習ったのと違う…」

「エルディーが改良したやつだな。100年は先を行ってるぞ。」

「ベータ君、キミ書物も見んとすらすら説明してるけど…」

「全部、頭に入ってるの?」

エアボウド導師に聞かれて戸惑うベータ君。

「え? そりゃあ暗記してますけど!?」

「マジか!」


ベータ君はたぶん固有魔法持ち。

魔法護符を自由自在に使いこなしてるので気づかないけど。

普通の魔法を使ってるところは見たことがない。

大人になって使えるようになったら…

憶えてる魔法陣は全部、脳内イメージで使用可能。

護符なし、詠唱なしで使えるようになるはず。

とんでもない魔道士になっちゃう?


本日の授業は終了。

マビキラ、脳ぱんぱん!

そういえば頭が少しでかくなったような気がする。(んなわけあるかい!)

「みなさん、お茶をどうぞ。」

ネコミミメイド1号、サジーさんがお茶を持ってきてくれた。

カップを乗せたワゴンを押してるのはイヌミミ幼女メイドアイリンクちゃん。

せっかくメイドのカッコしたんでお手伝い。

ほとんどワゴンに引かれてる感じ。

カワイイ! ちょっとはらはらする感じがこれまたカワイイ。

「お疲れさまでした。マビさん、キラさん。」

メイド幼女を堪能しながらお嬢様も後をついて来た。

むふふな顔。

「ドウゾー。」

ワゴンの影からアイちゃんの声。カワイイ!

ちなみにミニイたんはお昼休み中にデイヴィーさんが迎えに来たとのこと。


明日は、

「生臭導師による歴史の続き」

「デイヴィーさんの治癒魔法指導」

「魔法護符の作製実習」

の三本です。

明日も受講してくださいね。

んがぐ、ぐ!


そんなわけで、タマちゃんなオレはしばらく集中講座に通うことにした。

次の日も朝からお屋敷に登校。

ミニイたんも母親同伴。

デイヴィーさんの治癒魔法講座も楽しみだ。

患部の特定には触診が有効です。

ここは痛くないですか?

この辺かしら?

もっと下?

あらあらこの辺にしこりがあるわね。

あらあらどんどん大きくなっていますね。

すごく硬い、これはお手当てが必要ね。

ってな感じで! ワクワク!


そしてダット姐さんとデイシーシーが来ていた。

もちろんミニイたん用のメイド服着付けのため。

ダット姐さん目の下にクマができてますね。

徹夜で仕立てたんですね。

デイシーシーもクマ出来てるのかもしれないけどガングロ化粧でわからない。

アイリンクちゃんとお母さんも来てる。

アトラックさんの奥さん。優しそう。

(この時点でタマちゃん的にはそう見えました。)

着付けが終わると教室でお披露目。

観客はお嬢様、お母さん二人、タモン兄貴(ダットさんについてきた)

ネコミミメイドーズ、マビキラ、ベータ君、生臭導師、ビクターさんまで。

他にもお屋敷の従業員がのぞいてる。

「さあさ、お着替えできましたよー。」

ダット姐さんにこにこ顔でお披露目だ。

ミニイたんメイド! アイちゃんも一緒に登場。

1+1は∞《無限大》!

かぅわぁいぃいいいー!

イヌ耳低学年&エルフ耳幼女メイド!

お手々つないでてとてとと登場。

「あうううー」

「ふわわわー!」

「萌え死ぬー!」

見物人悶絶! 悶えならぬ萌だえ死ぬ!

ダット姐さんが合図するとくるりと回転。振り付けまで?

本格メイド服より短めに作られたスカートがふわっと舞う!

しかもアイちゃんとミニイたん逆回転。

来るっとまわってお互い顔を見合わせたところでハイタッチ!

ほわわー! ほっほっー!


「いやー寿命が延びた気がするわい。」

大賢者たるエアボウド導師もしわくちゃ!

ビクターさんの頬も緩みまくり。

いかつい系タモン兄貴も目じりがさがってゆるゆるだ。

この気分が幸せってものなのかも知れないね。

こんないいもの、見れないなんて俺本体かわいそう。

いや? 帰ってきたら統合できるよね?

タマちゃんのまま分離独立したりしないよね?


1時間目。

昨日の続きでアイちゃん、ミニイたんも魔法歴史学を受講。

大導師もすっかり二人に合わせた講義内容。

わかりやすく、身振り手振りを交えて絵本読み聞かせ状態。

…うん、マビキラも「この方が良かったレベル」だな、と思ったが口には出さない。

王立学園という最高学府の元学長。

魔法学の頂点にありながら、子供たちにもわかりやすく教えられるこの幅の広さ。

さすがですね、おじいちゃん。


2時間目の治癒魔法講座。

お嬢様とベータ君も受講。

子供たちは退場。

あれ? ミニイたん、おかさんの授業は受けないの?

「治癒魔法はまだ早いと思いますので…」

デイヴィーさんの言葉にうなづく大導師。

「そうじゃな、聞きかじりで使うと危ないからのう。」

危険なの? 治癒魔法?

魔道機体は治癒魔法は全然使えなかった。

生身じゃないと生身の身体は治療できないんだろうか?

「授業の前に言っておきたい事がある。」

ちょっと真剣な表情、エアボウド導師。

「世間では魔法といえば攻撃魔法、みたいな風潮があるが…」

「わしは治癒魔法こそが魔道の極みだと思っておる。」

「たとえば、この彫刻…」

部屋に飾られていた女神っぽい彫刻。おヌード、塗装したい。

「これを破壊するのと、壊れたのを元に戻すのと…」

「どちらが難しい?」

答えるまでもない。壊すんなら床に叩きつければいい。一瞬だ。

だが、それを直そうと思えば…

破片を拾い集め、どれがどの部分か特定し、接着剤でくっつける?

それでも、元通りになんかならないんだよな。

「つまり、そういうことだ。」

「エルディーもしょっちゅう言っていたが…」

「『攻撃魔法なんて簡単だ』ってな。」

ああ、言ってた。吹っ飛ばすんなら簡単だとか、XXするのが一番簡単だとか。

「そして、魔法の主流が攻撃魔法になったのもそういうわけだ。」

「一番簡単だったからだ!」

「自分たちが『一番簡単なモノ』に逃げたのをごまかすために『攻撃魔法こそ魔道の真髄だ』とか言い出したのさ。」

「魔道士なら、本当のこと、を見失うな。」

神妙な顔で聞いてる、マビキラ。

「ま、これもエルディーの受け売りじゃがな。」

大賢者とまで言われる人にこんなこと言わせるエルディー先生。

やっぱりすごいヒトなんだなあ。


デイヴィーさんの講義が始まった。

マビもキラも今のところ魔力がうまいこと使えないので理論だけ習う。

実技はまだまだ先の話。

「たしかに治癒魔法は憶えること多いです。」

「魔法だけじゃなくてヒトの身体とか病気とか……種族の違いもありますし。」

うわ、そうだった。異世界医学、大変だ。

「失敗すると大変ですし…」

「治癒術士が魔道士から分かれているのは両方やると大変だから。」

「エルディー先生やイーディみたいに両方できるのは凄いことなんですよ。」

ちらっとベータ君を見る。お姉さんを持ち上げてますね。

「まあ、魔道士とか言いながら治癒魔法は出来ないやつも多いからな。」

生臭導師が補足する。

「ま、ワシはもちろん両方得意じゃが。」

デイヴィーさんにいいカッコするジジイ。

「だから、ディスカムくんが治癒魔法使ってるのも実はすごいことなのよ。」

顔見合わせるマビキラ。株、上がったかなアイツ。

聞かせてやりたいね、本人にも。


「治癒魔法には大きく分けて3種類あります。」

「一つは患者自身の自然治癒力を加速するもの。」

「民間療法で使える人も多いですね。」

「患者さん本人の体力魔力を消費するので、衰弱したヒトや重傷者には使えません。」


「次は患者さんに術者が魔力を注ぎ込んで回復させるもの。」

「治癒魔法と分けて回復魔法と呼ぶ場合もあります。」

「教会の神官さんが使うのはこれが多いです。」

「理論上は死んでさえいなければ治療が可能です。」

すごいな。

「ただし!」

語気を強める、母エルフ。

「やり方を間違えると術者自身が魔力を消耗して死ぬこともあります。」

げげ! なるほど危険だって言うわけだ。

「普通はあらかじめ魔力を貯めた護符を併用しますね。」

「教会で大きな治療を行うときには信徒を集めて祈りを捧げ、魔力を提供してもらうことが有ります。」

「いわゆる【奇跡】と呼ばれるものですね。」

ほおおー! 魔力の輸血ボランティアみたいなもんか。

「珍しい例じゃが…」

「狭い病室でこれを使ったら、治療を受けた患者は回復したが、周りの患者が悪化したと言うことがあった。」

エアボウド導師が経験談を話してくれる。

「術者が無意識のうちに周囲から魔力を集めてしまったんだな。」

「そんな術者がいたんですか?」

デイヴィーさんも初めて聞く話。

「ああ、ちょっと変わった種族だったんでな。」


「そして3番目が魔法医師。士ではなく師、マスターです。」

「これはもう、魔法使いと言うより魔法も使えるお医者さんですね。」

「経験と知識によって体の悪いところだけに必要な治療を行う。」

「透視能力や念動力と治癒魔法・回復魔法を合わせて使います。」

「頭や体の奥にある血管の詰まりを取ったり、修復したり。」

「悪い腫れものを焼いたり取り出したりする術者もいるんですよ。」

「ケガを治す時も太い血管を先につないだり切れた神経だけをつないだり。」

なるほど、外科医か。

メスで切らずに手術したり治癒魔法を併用したりできれば最高だもんな。

「魔力を少ししか使わないから副作用も少ないんです。」

熱心に聞いてたマビカが質問。

「副作用?」

「ふふ、実はですね…」

「三か月かかるケガを魔法で三日で治したとしますね。」

「治ったところは三か月分歳をとってるんですよ。」

「えええー!?」

「死にかけのヒトを回復魔法で完全に治したら5年くらいは寿命が縮んでるでしょうね。」

「ひええー!」

「ふひ! まじか!?」

マビカ、キラすけビビった! 俺もビビった。

魔法っても万能じゃないんだなー。

「エルフやドワーフは寿命が長いですし…」

「獣人や人間も若いヒトだったらそんなに気にならないかもしれないけど…」

「お年寄りだとちょっと困るかもしれないですね。」

後期高齢者! 後期だからね! 後がないからね!

いや、俺が言ってるんじゃないですよ。政府が言ってるんですよ。

語感が気に食わねえってんで、日本の得意技で

痴呆>認知症、精神分裂病>統合失調症みたいに

これも言い換えようって話もあったんだけど立ち消えになったよね。

俺的には「ファイナリスト」とか「サバイバー」とかがいいんじゃないかと思った。(不謹慎)


エアボウド導師の補足では、透視能力者や念動者、医師、薬師、治癒術者に共感精神感応者を加えてチーム医療をやってる「医療冒険者パーティ」と言うのもいるらしい。

異世界医療マンガが描けそうだな。

デイヴィーさんの授業は、今後学んでいかなければならない資料を提示して終わった。

すげえ量! 天を仰ぐマビカ。まあ、先は長い。頑張れ!


3時間目はベータ君の魔法陣講座。

この日は専用定規やコンパスを使っての製図の勉強。

昨日習った魔法の構成要素を護符に刻んでいく。

俺|(魔道機本体)が作った護符はあくまで先生のを模写・縮小しただけ。

新たな魔法陣が刻めるわけじゃない。

「一つ新しい要素を加えるとバランスが崩れて作動しなくなったりする。」

「オリジナルの魔法陣を作れる奴なんかほんの一握りじゃよ。」

とは、大導師の弁。

マビカ苦戦してる。ちょっとぶきっちょ。

キラすけの方は意外と得意そう。集中がすごい。

でもお前、線一本引くたびに歯食いしばったり、口尖らせたり。

余計な力が入ってる。すげえ変顔してるぞ。


出来上がった魔法陣にイオニアさんと大導師が魔力を込めると動作試験。

氷雪虎スノーレパード!」

カップの水が氷結!

「やったー!」

「くくく、また一つ我が野望に近づいた!」


今日のお勉強は終了。

マビキラは工房の食堂でディスカムと合流するとのこと。

タマちゃんな俺もなんとなく付いていくことにした。

いたな、ディスカム。今は工房で見習い作業。

仕事を終えて食堂に出てきたところ。

上半身は袖なしシャツ姿。首にタオル巻いて労働感を出してるな。

「あ、『すごいディスカム』だー!」

マビカが手を振る。

「くくく、『すごいディスカムくん』今日、何食べる?」

「え、何それ? なに?」

うろたえるディスカム。



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