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集中講座一日目



崩れ落ちた土の処分に時間がかかるってことで、遺跡の内部改造作業は延期。

ミネルヴァはドームやアンテナのシステムを調べるため、接続中。

そんなこんなで次の日。

タマちゃんなオレはベータ君について行って、お屋敷でのマビキラ集中講座を見学する事にした。

絞られてヘロヘロになるマビキラを見物して楽しもう、というのが本音。

教授陣はイオニアお嬢様、エアボウド元学長、兄弟子ベータ君。

あ、イオニアさんも姉弟子か。


緊張の面持ち、マビカ、キラすけ。

お屋敷の一部屋がちゃんと教室っぽくなってる。

黒板!

1時間目はエアボウド生臭導師の魔法歴史学。

2時間目はお嬢様による詠唱魔法講座。

お昼休みをはさんで、

3時間目はベータ君による魔法陣の構成講座

みっちり!

ちなみに明日からはデイヴィーさんが治癒魔法講座もやってくれるという。

と言うか他にも生徒がいるぞ。

ミニイたん!

と、誰? イヌ耳小学校低学年的メイド?

メイド?

実はこの子、カロツェ家警備担当アトラックさんの娘さん。

名前はアイリンクちゃん。

メイド服を着ているのはダットさんの趣味。

パパのお仕事をのぞきに来たアイリンクちゃん。

サジーさんスカジィちゃんのメイド服を見て「着て見たい」と。

たまたま、それを聞きつけたダット姐さん。

(スカジィちゃん→デイシーシー→ダットさん)

たちまち、ミニメイド服を仕立て上げた!

お屋敷で試着会を実施すると、その可愛さにお嬢様もメロメロに!

「門前の小僧、習わぬ経を読む。」

「孟母三遷!」|(異世界ですよね?)

とか、上手い理屈をつけて集中講座にご招待。

うれし可愛い低学年メイドを堪能しようと言う魂胆。

百合王子、ショタ、さらにロリ。

守備範囲が広いぞ、お嬢様。

そして、意外と欲望には忠実。

ちなみにミニイたん用のメイド服も製作中。

明日持ってくるとダットさん。

何やってんですか? もー。

ミニイたんは本来、明日っからデイヴィーさんについて来る予定だった。

エアボウド導師が

「どうせなら最初っから聞かせたほうがいい。」

と言うので、今日もお爺ちゃんの授業だけ参加。


より小っちゃい生徒が参加する事でマビキラのケツに火をつけようという思惑もある。

そして火がついた。

エアボウド大導師、長年学園学長を務めてきただけあって、教え方上手い。

講義、面白い。チビちゃんたちが真剣に聞き入るほど。

そして、的確な質問するアイリンクちゃん。

「エアボウド先生、ユーロデさんは時間魔法使いなのになんで詠唱魔法を研究したの?」

「うむ、いいところに気付いたのう。」

「長い呪文を高速で唱えるために考案された輪唱方式。」

「ユーロデはへリカルの時間魔法を使えばひとりで唱えられるんじゃないか、と考えたんじゃ。」

「まあ、結局それはうまく行かなかったんじゃが…」

「そのために詠唱を学んだのが後の業績に繋がったんじゃな。」

「失敗しても無駄じゃなかったんだー。」

うんうん、いい話。いい質問。満足そうな大導師。

やべ、そんなこと考えもしなかったよ!的な焦りが顔に出てるキラすけ。

あわててノートに書くマビカ。

うん、頑張れ!

そしてオレも勉強になる。

エルディー先生からも色々教わったけど、酒飲みながらとか話のついでとかだったから。

やっぱ、ちゃんと基礎からやらなきゃダメだよね。

思わず学生気分でみんなと机を並べてしまう。

後ろから聴講。


1時間終了、休憩時間。

面白かったとはいえ、幼女に90分授業はきついよ。

その辺、エアボウド導師もわかってて、途中休憩を挟んだけどね。

マビキラのほうが余計休憩してたような気もした。

と? あれ、ミニイたん? とアイリンクちゃん?

オレの前に立ってじーっと見つめてる。

しまった、オレ今アイザックじゃなかった。タマちゃんだ。

注目されてる?

おう! ミニイたんにつかまった! がしっ!

速い! 動き速いぞ! しかも予備動作とか無し、いきなり動く。

子供特有の予測不能技、いきなり幼女無拍子! 

子供の頃はカブトムシとかクワガタとか、つかむの平気だったよね。

あと、蛇とかカエルとか…

今つかめって言われるとちょっと…

そんな感じでキャプチュード!

「むし!」

アイリンクちゃんに見せる。

「ええ、大きい虫ぃ!?」

アイちゃんはちょっと引き気味。

「アイザックさんの使っている小型魔道機ですよ。」

ベータ君が説明してくれる。

「タマちゃんて言うんです。空も飛べるんですよ。」

「えー、すごい!」

「たまたん! とんでとんで!」

飛んでもいいですけど、その前に放してくださいな、ミニイたん。

つかんだまま振り回すのやめてー!


ちょっぴりサービスで室内を飛行。

大ウケ! 幼女大ウケ! キモカワドローン、サイコー!

てなことしてたら、休憩時間終了。

お嬢様講師が入ってきた。

ほほう! 豊かな黒髪をアップに編みこんで気合十分。

女教師感出てる! そしてメガネ。ノリがいいね、お嬢様。

半円形のつり目型メガネ。マンガでしかお目にかかれないやつ。

ザマス眼鏡ざます!

「イオニアさま、虫さん!」

アイリンクちゃんがオレの事お嬢様に紹介。突きつけたとも言う。

「ひいっ!?」

びくっと引く。ぴょん引き! 遠回りされた。ちょっと傷つく。

でも、脚をわきわきさせてキモさ感を増幅。

大レギオンな感じ。

お嬢様の嫌悪の視線がちょっぴり快感。

おしりにくっついて悲鳴を上げさせたい!

イオニアさん、ベータ君からドローンのこと説明された後も腰が引けてる。

まあ、蜘蛛だしな、見た目。


講義をマジメに受ける。

球体に変形! ミニイたんに突っつかれても反応しない。

真摯な姿勢、向学心。断固たる意志を団子状態で表現。

あれ? 年少組は1限目だけじゃなかったの?

イオニアさんがカッコイイので連続受講?

意外と気に入ってるし、集中力もあるなー。

むしろマビカとかの集中力の方があやしい。


お嬢様の講師姿。

エアボウド大導師も聞いているのでちょっと緊張気味。

エロジジイのほうはちょっと雑念入ってますよね? その視線。

お嬢様のボディラインを合法的にガン見。

ちょうど、俺が乗っかっている机の席に座る。

チラチラと興味深げに俺のほう見てる。

お嬢様ラインと魔道機に対する興味が拮抗。

比べんなや! ジジイ。


さて、お嬢様先生は簡単に詠唱魔法について説明した後、お手本を見せる。

「呼吸法についてはエルディー先生から習ってますね?」

「私もあれには苦労しました。」

生臭導師、ちょっとびっくり。

「ほう、あれをマスターしておられるのか…」

詠唱に適した呼吸法。エルフならともかく人間には難しいという。

「では、おなじみのローデングの長呪を唱えてみますね。」

ローデングの長呪は基本中の基本。

効果はほとんど無いが、詠唱に必要な発声の要素がすべて含まれている練習用呪文だ。

イオニアさんの詠唱。

美声だ!

声だけじゃない、発声、韻の踏み方、抑揚、息継ぎの間…

すべてが美しい。

歌? 精霊への願いとも言われる古流呪文がこれほど情感あるものだったとは…


詠唱が終わると、なんともいえない寂しさを感じた。

あー、終わっちゃったよー、もっと聞いてたかったよー

お気に入りのアニメの最終回を見終わった後のような寂寥感。

ロス! お嬢様詠唱ロス!

「やっぱり、イオニアさんの詠唱はステキですね。」

兄弟弟子のベータ君は前にも聞いた事があるんだろう。

「なんと…これほどとは…」

エアボウド導師の口からも感嘆の呟きが。

「かつて聞いたエルフ神殿の巫女の詠唱もこれほどでは…」

「大げさですわ、大導師。」

かろやかに笑うイオニアお嬢様。うーん、ステキレディだ。

「イオニア様、すてきー!」

「すてきすてき!」

年少組も大感激。

キラすけ口ぽかーん。

マビカも感激で目うるうる。

「やっぱり、イオニア様すごい…」


「ほとんど効果が無いといわれる長呪でもきちんと韻を踏み、正しい抑揚、発声を守ればそれなりに効果が上がります。」

「わたしは毎日一回は唱えてますけど…」

ローデングの長呪の効果は体力回復と言われているが?

「お肌がきれいになったような気がします。」

うーん? どうなんだろう? それ? うさんくさ!

「それに…」

並んで座るキラすけとマビカの間に顔を入れるようにして、小声で何か囁いた。

きらーん! 二人の目の色が変わった。

生臭導師とベータ君には聞こえなかっただろうけど、タマちゃんイヤーには聞こえましたよ。

「おっぱいも大きくなりますよ。」

アメ! アメとムチのアメ!

俄然やる気アップのマビキラ!

その先は呪文の文法とか構成とかの講義になった。

曲がりなりにも王立学園で学んでいたマビキラ用なので年少組には無理。

ミニイたんは寝ちゃったし、アイちゃんもグラグラしてる。

サジーさんとスカジィちゃんがそーっと運び出して退場。


イオニアさんの講義を聞いていたエアボウド導師。

「エルディーのヤツ、ずいぶん本気で仕込んだようだな…」

「まあ、命を狙われることもあるとなれば…当然か。」


2時間目も終了。

ぐったりしてるなマビキラ。

この世界、基本1日2食なのでお昼休みはお茶の時間。

高級そうなお菓子が出てきた。

アメ! これもアメか!


「しかし、驚きましたな、イオニア様。」

「王都の正式な魔道士でもこれほどの者はなかなか居りません。」

「たしなむ、と言う域を超えておりますぞ。」

詠唱だけじゃなく講義の内容も生臭導師を驚かせた。

「エルディー先生のおかげですわ。」

「わたくし、固有魔法持ちでもないのに魔法がからきしで…」

「先生がその分、理論をじっくり教えてくださったんです。」

「魔法のほうはなぜか、急に使えるようにはなったんですけど…」

イオニアさんが重力魔法という固有魔法を持っているのは本人も知らない秘密だからね。

「ふーむ、魔法が使えなかった?」

「まあ、固有魔法についてはまだまだわかっておらんことが多いですからな。」

「数百人にひとり、と言われておりますが…実はもっと多いんではないかと思っております。」

ん? と首をかしげるお嬢様。

「どういうことですの?」

「本人も気付いていなかったり、魔法として分類されていなかったり…」

「たとえば、あのエルフの狩人兄妹。」

「お姉さまたちが?」

「あの、神業ともいえる弓の腕前は、おそらく固有魔法と同種のものです。」

「え?」

「ええー?」

「ふひっ!?」

「そういえば、お姉さまもお兄さんも…子供の頃、魔法は苦手だったと…」

そうなのか? でも、魔力は十分あるようだったけど…

「兄の方はエルディーが魔道士にしたかったと嘆くほどの魔力量ですしな。」

うーん、そうか。固有魔法持ちなら子供の頃は魔法が使えない。

そこへ神業の弓の才能があれば、そりゃ魔法使いは目指さないよな。

「固有魔法で有りながら魔法としてカウントされていないものが有るというわけですね。」

「妹さんも同じでしょうな、一族、血縁で同じ固有魔法が現れるというのは良くある事ですから。」

「変わった例では私が以前教えた者の中に言語使い、と言うのも居りました。」

「?」

「どんな国の言葉も1週間も学べば読み書きできる、と言う男で…」

「やはり子供の頃は魔法が使えなかったと言っておりました。」

「これも魔法扱いはされておらなかったのですが、たぶんあれも固有魔法の一種だったのでは…」

ほほう、異世界もの定番の言語魔法。

あったんだなー。まあ、俺の場合は翻訳機能だったけどね。

自分の手を見るイオニアさん。

「ではわたくしも自分で気付いていない固有魔法を持っているのかも?」

う、ぎくり!

「案外、お美しくなる魔法と言うものかも知れませんな。」

エロジジイ、歯の浮くようなこというぞ!

「【魅了チャーム】の魔法と言うことも考えられます。」

「お上手ですわね、大導師。」

いやいや、ちょっと引かれてますよ、大導師。

齢をね、もっと考えた方がいいですよ。ジジイ!

後ろでマビキラがひそひそ。

「顔が四角くならない魔法…?」

そんなに四角いのか? ナビン一族。


「固有魔法のせいでボクは水魔法しか使えない…」

マビカ。

「我は闇使い。あとちょっとファイヤボール…」

キラすけ。

「うーむ、元学長としては責任を感じますな。」

エアボウド導師が渋い顔。

今の王立学園では固有魔法を伸ばす教育は行われていない。

むしろ、魔法が使えないものとして排除されてしまうと言う。

「水魔法は固有魔法としては割と多くの例がみられますな。」

「攻撃魔法ではないので地味ではありますが、実用性はピカイチ。」

「当たりと言っていいでしょう。」

肯定されて照れ臭い顔するマビカ。

そすっとキラすけはハズレだな!

「まあ、キララ嬢の闇魔法と言うのは…」

「私も初めて見るものなのでちょっと見当もつかないと言うか…」

むーって顔でふくれるキラすけ。

「【闇の堕界ダークワールド】!」

導師の顔の周りにダークゾーン発生!

「あ、ちょっ! 見えない! やめてくだされ! やめてー」

「わかりましたって! すごいすごい! すごいですから!」



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