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北遺跡改造計画

あけましておめでとうございます。

もうしばらくお付き合いください。



やあ、オレ、タマちゃん!

何言ってんだ? と思うでしょう!?

うん、オレもそう思う。

でもこれが現状。

アトラックさんの馬車に乗ってレガシの街を旅立った俺。

それを見送ったミネルヴァ、そして蜘蛛型偵察ドローンタマちゃん。

それがオレ。

魔道機体本体と外部接続機体のリンクが切れたなー、と思ったらタマちゃんになってた。

今のオレはタマちゃんと意識共有してた分割思考の一部と思われる。

理屈はわからないが、どうやら独立してタマちゃんの演算回路の中で活動してるみたいだ。

おそらく、距離が離れすぎた際の緊急システムみたいなもの?

最初はちょっと戸惑ったけど。(2分くらい)

やはり分割思考の一つである補助人格だったナビ君。

それが今はフクロウ型魔道機+将機ボディで別人格ミネルヴァとしてすでに独立してる。

だから、まあ、そういうこともあるよね。って感じで受け入れた。

蜘蛛型ドローンですが、何か?


蜘蛛型といっても本物の蜘蛛とはだいぶ違う。

6本脚。翅があって飛べる。翅はテントウムシ風に折りたたんで収納。

飛行してる姿は蜂っぽい。

脚とおしりをたたむと球体になる。

ぜんぜん蜘蛛じゃねえ! って気もします。

ちなみに糸は出せない。

あれ? 待てよ? おしり部分に…ワイヤーがあるぞ!

ぶら下がったりできるってことか? うーん今まで気付かなかった。


自立意識を自覚したのはポシェットの中。

護符ディスクとかドローンとかを持ち運べるようにミネルヴァにプレゼントしたやつ。

球体モードを解いてカバーから脚を突き出す。

ほほう、足の先にも視覚センサーが?

魔道機体の時には統合されたイメージを受け取っていたからわかんなかったな。

…これ、ミネルヴァに事情を説明したほうがいいだろうか?

……いや、待てよ。どうもミネルヴァは俺の事を信用していないからな。

のぞき…警備活動に制限を課そうとする事が多い。

黙ってよっと。

オレは華麗で自由な蜘蛛だ! ファビュラス・フリー・スパイダー!


ポシェットは北遺跡前の丸太ベンチに置かれていた。

ミネルヴァは遺跡入口の前でぴょんぴょんしてる。

何やってんの?

自分の思い通りに動く身体がうれしいのか。

俺がいなくなってうれしいとかじゃないよね?

亭主、元気で留守がいい!

まあ、亭主じゃないですけどお…

ただ、はたから見ると裸の球体関節人形が野外露出してるみたいに見えるから…

ケルベロ2号はのんびりしてる。

寝転んでる。

いや、お前寝転ぶ必要ないだろ? ロボだろ?

立っててもエネルギー消費変わらないだろ?

いかんな。緩んでる。

カロツェ家に配備されたケルベロ1号は頑張ってたのに。


「ミネルヴァさーん!」

おっと、ベータ君がやって来た。

今日明日はお休みで、明後日から御屋敷でマビキラの勉強の講師の予定。

ん? タンケイちゃんもいっしょだ。

二人してそれぞれ梯子を担いでる。

ああ、新しく発見された遺跡上部の空間の調査だね。

この空間は飛行ユニットの格納庫。

ただし飛行ユニットがどうやって出入りするのかは不明。

遺跡は草木に覆われてるしね。

でも、あそこ、飛行ユニットの爆装用パーツが保管されている。

ミサイルや爆弾らしきものもあった。注意してね。

まあ、その辺はミネルヴァが気を使ってくれるだろう。

「ミネルヴァさん…」

ベータ君が微妙に視線を逸らしながら注意する。

「…外ではマントを羽織ってください。」

「え? 何か不都合がありましたか?」

こいつ、俺がエロい事しようとすると文句言うくせに、自分のエロさには無頓着。

メカフェチ系属性持ちのベータ君を困らせる。

「まあ、まあ。梯子ができたんで上の空間に上がって見るっす。」

タンケイちゃんが抱えている梯子。鉄製?

けっこう重そうだけど、意外とパワーあるぞ。

まあ、もう見習いは卒業して一人前の職人だもんな。


三人で(二人と一体)両脇に梯子を持ってゾロゾロ遺跡の中に。

運転手はキミだ、車掌はボクだっぽい体制。

おーい、ポシェット忘れてるよ。

まあ、仕方ない。翅と脚を展開。忘れ物を掴んで飛行。

三人のあとを追う。

遺跡の中に入ると、タンケイちゃんが苦闘中。

かつて俺を固定していた拘束台。

上部空間へ続くハッチはちょうどその真上。

梯子を立てようとしたら拘束台の椅子部分が引っかかった。

「あう! 長さだけ測って立てる時の事考えて無かったっす。」

「こっちの背もたれ側から立てればいけそうですよ。」

おっと、梯子にぶつかりそう。旋回!

「わ、びっくりした。」

ベータ君がオレに気付いた。

「あ、小型の魔道機ですね。ポシェット?」

「忘れ物、持ってきてくれたんすか?」

「おやっさんから聞いてたっすけど便利っすねー。」

女騎士騒ぎの時、おやっさんと組合長に見せたっけか。

「ミーちゃんが動かしてるんすか?」

ミーちゃん!? タンケイちゃん、そんなに仲良し!?

そのミーちゃん、戸惑ってる。

「いえ、動かしてませんよ? 自立行動してる?」

おっといかん俺だって事がバレると警戒されちゃうぞ。

「本体ト・接続ガ・キレタ時ノ・自立モード・デス」

ごまかせたかな? 

「凄いですね。さすがアイザックさんの魔道機ですね。」

ベータ君とタンケイちゃんは素直に感心してくれる。

うまくだませ…いや、嘘は言ってないですよ。

「そうですね…」

ミネルヴァは疑っているな。

オレ、タマちゃん、無害なドローンですよー。


何とか梯子を突っ込んで基部は拘束台に固定。

タンケイちゃんがカンテラを持って上ろうとするが苦労してる。

手は二本しかないからね。

そこでオレが手助け、タマちゃんライトで照らす。

大丈夫? タンケイちゃん? 胸つかえたりしない?(セクハラ)

まあ、身長2メートル近い魔道機本体でも十分な広さのある縦穴なんで、大丈夫なんですけどね。

ベータ君が下から二本目の梯子を突っ込んだのをタンケイちゃんが縦穴内部で接続。

縦穴上部には鉄の格子、側溝のフタみたいなのがはまってたはずだが、大丈夫かな。

「あ、フタ。こらしょっ! 動くっすね。」

「うわ! 広いっす。」

「いま、梯子の上を固定するっすからちょっと待ってください。」

トンテンカン、トンテンカンと金属音。

「よしっと。上がってきていいっすよー!」

作業が早いぞ職人タンケイちゃん。

「僕らもカンテラを持って行きましょう。」

「ミネルヴァさん先に… い、いえ僕が先に行きます。」

想像したね、ベータ君。下から見上げるミネルバの股関節構造を。

うん、オレは一番最後。ミネルヴァの後から上がろう、そうしよう。


遺跡の上部空間、飛行ユニットの格納庫。

うーん、前回もタマちゃんで見回したけど…

今回はベータ君たちがいて対比物があるせいか広さがはっきりわかる。

「うわ! 広い!!」

広いな。ちょっと広すぎる?

これだと遺跡の上半分、前方後円墳の「円」の部分がほとんど空洞って事に?

つまり、壁が薄いってことだ。

…ドーム部分、石とか土とかじゃないってこと?

金属か何かで出来たドーム? でも遺跡の内外装は石作りに見えたけど…

まさか…偽装されているのか?

「これ、なんでしょう?」

ベータ君が指すのは飛行ユニット用コンテナ。

「飛行魔道機に取り付ける運搬用の箱です。」

ミネルヴァが説明。

「なるほど、格納庫だって言ってましたもんね。」

「なんかこれ、筒とか壺みたいなのがいっぱいあるっす。」

「いったい何すか? これ。」

ああ、タンケイちゃん。それ爆弾とミサイルだから気をつけて…

ミネルヴァの返答が衝撃的だった。

「さあ? ボクのデータには有りません。」

な、なんだって!!

飛行ユニットの存在も、ドローンが内蔵されている事も、

そして格納庫やコンテナの存在も知っていたナビ君…ミネルヴァが、爆弾やミサイルの用途を知らない??

情報が秘匿されているのか?

いや? 俺本体と分離した際に情報が移管されなかったのか!?

考えられる。空爆用装備の危険性を考えれば…

実際、今タマちゃん状態のオレには具体的な使用マニュアルはない。

魂としての「俺」の記憶でミサイルや爆弾だって判別できるだけだ。

「古の協定」か?

だが、悪い事じゃない。知らないほうがいい事もある。

「危険物ダト・思ワレ・マス」

ぎょっとするタンケイちゃん。

「さ、触んないほうがいいっすね…」

「先回調べた時も、アイザックさんあまり乗り気じゃありませんでしたし…」

「あまり、触らないほうがいいでしょうね。」

ベータ君、俺の事良く見てる。


結局、飛行ユニットの出入り口については不明のまま。

どこにも扉みたいなものは見当たらない。

「梯子だけ付けて、上は後回しにしたほうがいいっすね。」

「そうですね、先生やアイザックさんのいないときに迂闊な事はしない方がいいですね。」

そうですね、安全第一でお願いします。


その後はさらに地下のスペースをチェック。

ケルベロ2号は梯子が使えない。

上にも下にも入れないので不満そう。

改装すれば地下には入れるようになるからね。

遺跡の構造は発掘時にすでに調査済みなので、主に装備品のチェック。

「カンテラいっぱい必要っすね。」

「明日っから兄弟子たちも来て作業始めるっすから…」

「僕は明日は付き合いますが…明後日からはお屋敷で授業ですので…」

二人そろってミネルヴァを見る。

「ここの監督はミネルヴァさん、お願いしますよ。」

「ミーちゃんよろしく頼むっす。」

力強くうなずく、ミーちゃん。

「わかりました。お任せください。」


…その時、まさかあんなことになるとは…誰も思っていなかったのです。


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