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本家夢幻投影


先生の旧友、夢魔女王の支配する地下コロニー。

実質的には獣機からの避難所なわけだが。

とにかく安全ではあるので数日ぶりにゆっくりできる。

メガドーラさんの手配してくれた寝室に分かれてそれぞれ眠りについた。

女騎士は一人部屋、良かったね。演習は控えめにね。

兄妹エルフで一部屋、先生はメガドーラさんの部屋へ。

俺は例のSMルームで待機することにした。

ここは先生と夢魔女王の居る寝室の手前にある。

研究室を兼ねていると言っていた。

なるほど、机の上には作りかけの護符とか工具とかが置かれている。

この護符…石? ここでとれる石か?

大街道の舗装に使われているタイルもこの石で出来ている。

魔法力を帯びていて獣避けや保存魔法の効果があるという。

ここに閉じ込められた夢魔女王が暇に任せて研究した結果、明らかになった。

コロニーにいる元違法採掘者の技術で、石を薄く割り取って削ってカード型に加工。

そこに女王が魔法陣を刻む。

時間遅延拘束タイムラプス被甲身牢獄バンパージェイル

拘束系が得意なんだろうか? 女王様。

好きこそものの上手なれ。

SMルームにしか見えない研究室を見回しながらそんなことを考える。

部屋の隅に護符が積まれている。かなりの…凄い数だ。

備蓄? いや、いつかここを脱出するための準備か?

住民たちに装備させるために用意していたんだ。

ただのエロいヒトじゃないね、夢魔女王。

…当然だが、メガドーラお祖母ちゃんは夢幻投影ドリームキャスト出来るんだよな?

キラすけの夢にも出て来たって言うし。

あいつの【黒き宝玉】のイメージはお祖母ちゃんの影響が大きいんだな。


机の上の石製カードを見る。

カードにしても、先生のディスクにしても魔法陣を彫り込むためにはそれなりの面積が必要。

先生は複合魔法の旋風大偉グレートタイフーン雷神槌豪破サンダーブレイクはキューブに刻み込んでた。

5つの魔法陣を同時使用する錆腐風ルストハリケーンみたいなのを一枚に書き込むのはむずかしい。

俺が錆腐風を一枚のディスクに刻み込めたのはこの機体の微細加工技術があったから。

人間では無理。

机の上に転がっているカード。

形をそろえるために切り落とした部分。食パンの耳みたいなのがある。

パン耳、オーブントースターで焼くと美味しいよね。カリカリ。

この半端部分…俺なら魔法陣刻めるんじゃないかな?

ちょうど工具もあるし。よし、ちょっくらチャレンジ。

以前から考えていた新兵器が実現できるかも。

しばらく作業に没頭。


うん? 部屋の入り口に、デイエート?

そーっとのぞいてる。

360度視界で見えてるけど、気付かないフリ。

抜き足差し足、近づいてくる。

なんだよそりゃ? かわいいぞ。コイツめ。

背後に立つと肩越しに俺の作業を覗き込む。

「何やってんの?」

「びっくりさせないでください、デイエートさん。」

ホントは全然驚いてないけどね。

毛布を身体に羽織って前を合わせ、合わせ目をきゅっと握っている。

「眠れないのですか?」

振り返るように椅子を動かして向かい合う。

「眠れない!」

小さいけど怒ったような声。

「どうされまし…」

がばっと毛布を開いた。

おっと服着てない。白い白いエルフ肌。

寝る時裸族は先生の影響だろうか?

抱きつくように膝に乗っかってきた。

そのまま俺の背中にまで毛布を巻き付ける。

「続き、するって言った。」

耳元でささやく。

先っちょがつんつん当たるよ。

ええー? いや、そりゃ言ったけど。

「こんなところでですか? 奥の部屋では先生とメガドーラさんが…」

「じゃあ、お風呂行く。」

「あたしだけマッサージされてない。」

いや、お前がいいって言ったんじゃん。

お風呂場だってもう終わってるんじゃないかな。

しょうがないなあ。

「じゃあ、行ってみますか。」

そのまま抱き上げる。

壊れかけ獣機による感電事故……

あん時もこうやって運んだっけ。

ダミーアイの灯りで下り通路を通ってお風呂場に…

魔法石を使った灯りを点灯する。

やっぱり、お湯もさめちゃってるし、石の施用台も冷えちゃってるな。

「台を温め直しますから、ちょっと待ってください。」

「そこへ寝ろ。」

え?

「お前がそこに寝るの。身体、暖められるんでしょ。」

えーっと…仕方ない。言う通りにしますよ。

石の台の上に寝転ぶと、ヒートボディ。

ちょっと温度を上げる。

その俺に覆いかぶさるようにデイエートが乗っかって来た。

デイエートも小さいわけじゃないが、それでも俺の方が体格的に一回り以上大きい。

完全に俺の上に乗っかっちゃう。

この体勢、思い出す。

「遅延魔法で拘束されたとき…守ろうとしてくださったの…」

「うれしかったです。」

「やっぱり見えてた!」

あ、いけね。

「見てたんなら…出来るでしょ。」

え?

おんなじ様に続き…して…」

毛布をひっぱり上げて二人の身体を覆う。

参考にさせてもらいますよ、夢魔女王のテクニック。

真黒しんこく女帝エンプレス】ことメガドーラさんの夜の講義、受けとけば良かったかな?


記録の中のテクニックをトレースしてデイエートの身体に刻んでいく。

皮膚と粘膜の境界をたどり、その先端を捏ね、震わせ、弾き、挟む。

その身体が熱くなっていくのがわかる。

よじるように、小刻みに身を震わせる妹エルフ。

この先はもう記録がない…けど…ふくらみをつまんで軽く引っ張る。

俺の上で身を強張らせるデイエート。すぐにくったりと力を抜いて身を預けて来た。

ぴったり身体がくっつく。

「硬くないですか?」

「硬い…でも…悪くないよ…」

顔のパネルに唇を押し当てて来た。

もどかしい。もっと…受け入れることができたら…

うん? この感覚? 深いところへ引っ張り込まれるような…

これ…!?

口唇を押し割ってデイエートが入ってきた。

え? 口は無いよね? 俺?

でも、熱くて、柔らかくて、甘い?

思わず、視界の隅で自分の手を確かめる。

ロボだよね?

デイエートが腕を立ててわずかに体を離す。

「え? 何これ?」

俺の顔を見つめる。ぼうっとした表情。

「そっか…夢かあ…」

そうか、夢か。

デイエートを抱きしめて口唇を合わせる。

今度はこちらから入って行く。

熱いかたまりを奥まで。

お互いを貪りあう、融けあうような快感に身を任せて。

そうだ、これは夢。【夢幻投影ドーリームキャスト


濃密な時間の後…

意識がゆっくりと現実へと回帰する。

心地よい脱力感。

身体の上でデイエートが寝息を立てている。

よくこんな硬いものの上で眠れるなあ。

ふと気付くと全天視界が浴場入口の通路の角に人影を捕らえている。

顔だけ出してこっちを見ているのはメガドーラさん。

俺が見ているのに気付いているのかいないのか?

にまーっと笑う。

ああ、ホントにキラすけそっくりだよ。




次の日の朝。

地下で暮らしているにもかかわらず、住人たちは早起きだ。

ゾロゾロ下層から上層へ上がってくると、トンネルの出口近くへ。

「朝は光を浴びないといけないって女王が…」

メラトニン分泌のリズムをリセットするわけですな。

さすが夢魔女王様。睡眠の専門家だ。

「アマテラス体操! だいいちぃーい!」

は?

ちゃーんちゃかちゃちゃちゃちゃ、ちゃーんちゃか…

これ、日課? 動的ストレッチ体操!

女王様も一緒にやるんですね。

ちょっと目の毒ですよ、揺れ揺れ!

元気いっぱい女騎士、力いっぱい参加! なじんでる。

お兄ちゃんも混じってるぞ。ちょっと照れてる。

デイエートは…寝てるか。昨日アレでしたしね。

先生は?

「あいつはダメじゃ、わかってた。」

ねぼすけ先生は不参加。スタンプはもらえませんね。


「アマテラス体操! だいにぃーい!」

第二もあるのかよ!

女王様のとなりで俺も参加。

「身体を大きく反らしーぃ!」

う、曲がらない。硬い魔道機ボディ。

「どうじゃった? 昨日は。」

にまにま、冷やかし笑いのメガドーラさんが声をかけてくる。

「ええっと、そのー…あの…」

「ありがとうございました。」

素直にお礼を言う。大変気持ち良うございました。

「しかし…夢と夢を…繋ぐことが出来るのですか?」

「正確にいえば同調させている、といった方が近いかな。」

「夢魔能力の本質は精神的障壁の解除じゃ。」

「近接した対象者の障壁を解除すれば自然と同調が起こる。」

「基本的なストーリーを共有できるが…見えているものが同じかどうか?まではわからんよ。」

ふーむ。

デイエートには俺がどんな風に、見えていたんだろうな。


「しかし…なかなか面白い精神構造をしとるの。」

「複数の人格、多層構造、もっとも特徴的なのは同一人格の多重化か。」

ヘルプ君や魂である俺の存在、マルチタスクとかですね。

「頭脳の容量が大きいこと、思考速度が速いことによって可能になっとるわけじゃな。」

「遅延拘束魔法を抜け出したのも思考の加速によるものじゃな。」

昨日のあんなことで魔道機体の脳構造まで解析したのか?

女王を称する強力な夢魔能力。

エルディー先生に匹敵すると言う魔導師としての知見。

恐るべきお人だ。

このヒトも【魔人】だよな。

「だが…」

え? 何ですか?

「まだまだ…広大な領域があるぞ。」

「【魂】さんに言っとくが…その機体、まだまだ何が出てくるかわからんぞ。」

理由わけあり物件か…肝に銘じます。


「もう1日滞在させてもらうぞ。」

先生の言葉にうなづく女王様。

これから先は獣機の活動が活発な地域になる。

装備を整える。

魔王城山の石を使って護符を新造。

剣や弓にも魔法処理を施しなおす。

滞在を聞いた兄妹エルフは食料調達。

自分たちの分だけじゃなく、地下住民のためにもちょっと本気で狩猟に出かけた。

「運ぶ時には呼んでください。」

お兄ちゃんにトンちゃんを預ける。

妹エルフの方は起きて来た時に

「おはよ。」

って言ったきり、何かそっけない。

正直、俺もちょっと照れくさい。

デイエートは夢魔族の事も幻夢投影の事も知らないから、単に夢だと思ってるだろうけど…


俺は俺で昨晩の作業の続き。小型護符を量産する。

「わわわ、私はどうしたら?」

おろおろ女騎士。いや、あんたは別に休んでていいよ。

「わたしの手伝いをしろ。ちょっと試してみたい事もあるしな。」

あー、そうか。俺もアレを試して見るか…女騎士で。

人体実験には最適な人材だしな。



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