地底温泉
地底女王メガドーラさんから事情を聞いた。
今度はこっちの事情を話す。
「なるほど、獣機を味方につけたのはそういう事情か…」
元々は警護用、ヒトを襲うのは本来の機能じゃない。
獣機側にもこちらに協力するものがいるようだ。などなど。
「獣機の本拠地へのう…ちょっと無茶じゃないか?」
「そうか?」
「アイザックとやらの力がどれほどかは知らんが…」
「奴らの数…と言うか数の力を過小に考えておるな。」
「儂はここへ逃げ込む前に…100匹を超える獣機が整然と行動しとるのを見た事がある。」
「あれは圧倒的じゃったぞ。」
100を越える獣機が連携して攻撃してきたら…しかも奴らは個体を犠牲にする事を躊躇わない。
確かに…俺でも対抗できる気がしない。
「レガシまで遠征しとるってことは、かなり分散しとるんだろうが…」
「全体で一千匹はおるんじゃないかの? あやつら。」
「ううむ…」
先生も考え込んだ。
「まあ、正面から行くのは無理だろうなあ。」
「だが、とにかく行ってみないと事情もわからん。」
「せめて、なぜヒト族を襲うのかを確かめないとな。」
メガドーラさんも考えをめぐらせている。
「奴らヒトは襲うが、野獣には無関心だしの。」
「なんでヒトだけなのか…」
「ん? 野獣は襲わないのか?」
そういえば、野獣x獣機は見たことないよな。
「ああ、逆に野獣が獣機にちょっかいを出してるのは見た事がある。」
「その時も追い払うだけで殺すつもりは無いようじゃったが…」
ふーむ。待てよ? 獣機は…どうやって人間とそれ以外を区別認識してるんだ?
俺と初遭遇したときはどうだったっけ?
思い出せ…
記憶データ検索。
いや、デイヴィーさんのおっぱい(第5話)じゃなく…
も少し前。
向こうから攻撃してきてるな…(第4話)
俺を人間扱いした? 俺、人間には見えないんじゃ?
再起動したケルベロスはおっぱいの大きさすら認識してた。
人間と魔道機体の区別がつかないなんてことがあるだろうか?
ヒトを襲う獣機は本来の警備機体としての機能が大幅に制限されている。
認識機能や、判別力も低下してるかもしれない。
外観じゃなく運動とか行動とかが基準なのかな? 2足歩行とか?
そういえば、むかし、何かで読んだ事がある…
人間が、人間を、人間だと、もっとも認識しやすいのが頭から肩へのシルエットだという。
道路標識、非常口、トイレの案内…いろんな表示を見ればなるほど、うなづける話。
第一期ウルトラシリーズの怪獣デザインで知られる前衛芸術家、成田亨。
彼は怪獣や宇宙人をデザインするに当たり、肩のラインにこだわったと言う。
レッドキングやゴモラの怪獣らしさ、バルタン星人|(二代目)、ザラブ星人の異星人っぽさ。
そして人間である事を「喪失」したジャミラ。
人間を示す「肩」と言う記号を消すこと、あるいは変形することで異形を表現した。
だとしたら…試してみる価値はあるかも知れない…
いやあ? どうかなあ? そんなことで? 自信ない。
女王様が獣機を見たいっていうんで、みんなでトンネルの出入り口まで上がってきた。
「あれ? 今何時?」
地下にいたもんで時間がわからない。先生絶賛混乱中。
外は明るい。ええ? もうお昼? 徹夜したあげく、お昼かあ…
あれ? 兄妹がいない。馬獣機もU-69もいないし…
女騎士だけが、住人と話してる。
「ふむ、ふむ。獣機の通行には周期があるんですね。」
「その辺を見計らって屋外作業をしてるわけですね。」
聞き取り調査。妙に役人っぽい。
「ハイエートさんはどうしました?」
「猪を運び込んだらみんな喜んでいたんで、もう少し狩って来るって…」
とか言ってたらデイエートが馬獣機でもどってきた。
「あ、アイザック手伝って。獲物が重い!」
ラグビー猪が2匹に、猪と同じくらいのサイズのウサギ?っぽいのが1匹。
あと、普通サイズのウサギ的なのが3匹。
ほんの1時間ほどで狩って来ちゃった。
この兄妹、ほんま凄すぎ。
地下住民は大喜び!
「肉やー!」
「全員分いけるで!」
「うう、やっとキノコ以外のものが…」
けっこうギリギリなの?
「喜んでもらえて僕もうれしいですよ。」
お兄ちゃんもにこにこ。
イケメン凄腕狩人エルフにすでに女性陣メロメロだぞ。
一部男性からも熱い視線。
これ、ブロックできますよね? 女王様?
あ、夜伽は要らないですから、ほんと。
立候補しないで女王様!
「この子は優秀ですねえ。」
ハイエートがU-69の背中をなでる。
「うまいこと獲物を追い込んでくれましたよ。」
ええ? 意思疎通? できてるのお兄ちゃん?
兄エルフにぴったりくっついてるぞU-69。すりすり状態。
女子だけじゃなく獣機までたらし込んじゃうお兄ちゃん、流石すぎる!
U-69、馬獣機、そして俺をチェックしながら先生と女王は話し込む。
というか議論を交わす。
ちょっと専門的過ぎてついていけない。
魔法光で浮き上がる俺表面の魔法陣について意見交換。
「召喚魔法がこれほどちゃんとした形で残っているのは初めて見た。」
「起動に必要? 魂魄が起動鍵?」
「しかしこれなら物質的なものも召喚できるんじゃないか?」
え? すごい! どうなの? ヘルプ君。
『該当する項目は有りません』
う、冷たい。
…でも、分解用ドライバーとか接続ケーブルとか…召喚してるんじゃ?
「軍では物品引き寄せの固有魔法使いを使っておったろ?」
女王様が女騎士に問いかける。
なるほど、そういう魔法がすでに存在してるんだな。
「そそそ、その辺は最高機密ですので…下級騎士では噂くらいしか…」
「そもそも、【引き寄せ】ですので能力者本人は自然と最前線に配置される事になりますし…」
「敵からも真っ先に狙われる事になりますから…」
先生が顔をしかめた。
「仕事は危険で能力者は少ない。上層部は便利に使いたがる。」
「長生きは出来んのさ!」
吐き捨てるように言った。
「戦時には能力者は強制徴用されたとか…嫌な噂も聞きます。」
女騎士も同調した。
政府や軍の闇部分なんだな。
兄妹エルフは住民と協力して獲物の解体、食事の支度。
女騎士も手伝い。
住人達も続々と地下から上がってきて宴会気分。
俺ら宴会ばっかしてない?
普段のキノコ汁|(泣)なら地下でも作れるが、焼き肉はやっぱ地上近くじゃなきゃ無理。
排気がね…無煙ロースター的な理由で。
トンネルの出口付近でバーベキューパーティが始まった。
付け合せはやっぱりキノコ。
「ま、長居は無理でも今夜くらいはゆっくりしていけ。」
「風呂にでも入っての。」
ほほう!
「風呂があるのか?」
「何年ここで暮らしとると思っとる。風呂くらいあるわい。」
「ま、苦労はしたがな。」
魔王城山は巨大な一つの岩。
岩盤内部には水の手は無い。
普段使いの水は魔法で何とかなるけど、さすがに風呂は難しい。
水脈にたどり着くためには岩盤の底まで下らないといけない。
お風呂も地の底にあるそうだ。
食事の後、女王、先生、女騎士、兄妹エルフで風呂へ向かう。
俺は同行を控えようと思った。
メガドーラ様がエロすぎる!
これを覗くとちょっとシャレにならない気がする。
気圧されてる、俺。セクシープッレッシャー!
そして、デイエートが睨んでくるし。
ところが先生が同行を強要。
「せっかくゆっくりできるんだ。マッサージしろ。」
ああ、まあ、はいはい。
下り坂の通路、元々は石切り場。
切り出した石を運び出すためにそれなりに広い通路が必要だ。
狭いところでも3メートルくらいの幅、高さがある。
けっこう下りますね。
さらに階段状ステップを下ってぽっかりと空間に出る。
ええ? 川? 岩の割れ目から湧き出す地下水。
かなりはっきりした流れを持って下流側の割れ目に吸い込まれている。
地底の川だ。
そのわきに浴槽が作られていた。
工房のお風呂は浴槽のへりをまたいで入る銭湯風。
こっちは掘り下げ、ホテルの大浴場っぽい。
「熱源は何を使ってるんだ?」
「ああ、炎縛鎖を使っとる。」
ええ? あれ、温度調節むずかしいですよ。
「炎縛鎖に合わせた大きさの湯船を作ったのさ。」
なるほど。
覗き込むと、湯船の底に魔法陣がある。
女王様が起動。あっという間にお湯になる。
「はい。」
え? なんですか? この板?
混ぜろ? ああ、お湯の上と下で温度差があるのね。
それだけじゃない? 浴槽周りの岩が暖まるまでちょっと時間がかかる?
あー、なるほどなるほど。
板を動かしてお湯をかき回す。
「なにか…ずいぶん手際がいいの?」
ええ、以前草津温泉で湯もみ体験しましたからね。チョイナチョイナ。
…えーっと、お兄ちゃん? ごく自然に一緒に来ましたけど?
他みんな女性なんですが? いいんですかね?
まあ、それを言ったら俺だってたいがいですがね。
妹のほうは何の疑問も感じて無いようだ。
それは知ってた。
先生も全然気にしてませんね。
それも知ってた。
メガドーラさんはどうなんでしょうか?
ちょっと首をひねってたが、お兄ちゃんの股間を見て納得。
ああ、そういうことね的にうなづくとあっさり受け入れたようだ。
さすが夢魔族。そういうことに関しちゃ専門家と言っていいからね。
はい、女騎士。絶賛混乱中。
「ちょちょちょ? えええ? ふわわ?」
超絶美形達人エルフ男子及び、性別的には男子に分類される感じの魔道機が混浴というシチュエーション。
異議を唱えようと思ったけど、他には誰も疑問に思ってないようなので言い出せない。
え? これ、普通? 意識してる私のほうが変?
え? 大導師、見えちゃってますが? 見られてますよ?
エルフはこれが普通なの?
てな感じの思考がぐるぐる回っているに違いない。
妥協点としてタオルを体に巻いて隅っこの方で浸かることで落ち着いたようだ。
ちら、ちらっと兄エルフ姿態にさりげなく(と本人は思っている)視線をめぐらす。
いや、ちら頻度がどんどん高くなってますよ。
それはもうガン見なのでは?
「ふにゅあー…」
デイエートは甘えん坊の本性を隠しもせずにお兄ちゃんのとなりでリラックス。
プールサイドバタ足的体勢で思いっきり体を伸ばす。
おしりプカリぷかぷか、ネッシー状態。
「あああ、気持ちいいな。…この岩、浴槽にも適してるみたいだな。」
「灯りもこの石なんだろ?」
「ああ、保存魔法効果を解除すると魔力を放出する。」
「それを光に変換しておるんじゃ。」
「便利な石だなー。」
「ああ、いつか採掘を再開できたらいいんじゃがな。」
「【魔王城の石】か。これは売れるなあ。」
先生とメガドーラさんは金儲けの相談か…
そういえば先生、首にはベータ君からもらったお守り?を下げたまま。
全裸にワンポイントでアクセント。意外とエロいですね、そーゆーの。
さて、俺はマッサージの準備でもするか。
幸い、石を切り出した段差がちょうど施用台みたいな感じになってる。
先生から習った洗浄魔法でキレイにしてっと。
このままじゃ冷たいからヒートハンドで岩を温める。
うん、いい感じだ。
揉みますよ!
ということで、まずはお兄ちゃんから。
「え、僕が一番ですか?」
「ハイエートさんにマッサージは初めてですよね。」
「噂には聞いてましたよ。楽しみだなあ。」
…どんな噂ですかね? ちょっと心配ですが。
兄エルフを一番にしたのには、もちろん意味がある。
男子をマッサージにする事で健全性をアピール。
これは、マッサージですよー。健全ですよー。
エッチな下心とか一切無いですよー。
兄エルフの肩から背中へマッサージ。
優男に見えるハイエートだが、そこは弓の達人。
剛弓を難なく引く筋力の持ち主だ。
前から見たときのほっそり感に対し、後姿はかなりマッチョ。
「ああ、これは気持ちいいですねえ…とろけそうですよ。」
喜んでもらえて俺もうれしい。
今度はぜひ、ベータ君にもやってあげたい。うん!
次はー?
「クラリオ、お前もやってもらえ。気持ちいいぞ。」
「えええ、わわわ、私ですか?」
おずおずと台に上がる女騎士。タオルきっちり巻いたまま。
恥じらい女騎士。……ああ、レガシを出てから数日…
モサモサなのか? まあ、いいでしょう。
疲れを癒して差し上げましょう。
ムーン・ヒーリング・バイブレーショォーンンン!
「あひょあああほにょふふふくああああなちょなはははー」
リフレーッシュ!!
ぐにゃぐにゃになった骨抜き女騎士をごろりと脇によけると、次は先生ですね。
「ああ、久しぶりだ。やっぱり気持ちいいな。」
「お、おまえ…神代魔道機にいつもこんな事させておるのかの?」
メガドーラさんはあきれ顔。
「超古代文明の遺産だっていうのに…」
「私がやらせたわけじゃないよなあ。」
先生が俺にふって同意を求める。
「アイザックが自分で学習したんだよな。」
「ほほうー?」
「それじゃあ、儂もやってもらおうかの。」
湯船から上がったメガドーラさんが近づいてきた。
迫ってきた、と言っていい。
男の妄想をさらに二割増しにしたような淫魔肢体。
すごい圧だ!
近づいただけなのに、もう先っちょがくっつきそうなんですけど。
これを揉む?
いかん、せっかくお兄ちゃんを揉んで作った健全的な雰囲気が吹き飛ばされた。
どこをどう揉んでも、性的!
ミッドナイトノベル…いやノクターンノベルになってしまう!
助けを求めるようにデイエートのほうを見てしまう。
ぷいっと顔をそらした。ええ? 止めないんですか?
「ええっと…デイエートさんを先に…」
「あたしはいい!」
え、えええー!?
「では頼もうかの。」
とか言って岩の施用台に腰かけ、そのまま横倒し。
いやその、仰向けなんですけど…
身体を伸ばして、裸身を見せつける。
ふふーん、てな顔で俺を見つめる。挑発的。
そそり立つ双峰。重力、仕事しろ!
いや、その表情がね…あー、キラすけに似てる。
う、いけね! この連想はヤバい! 落ち着け、落ち着け!
女王様本人だけでも限界なのに、そんなこと想像してどうすんの、俺!
「すいません、うつ伏せになっていただけますか?」
「なんじゃ、あんま面白い反応はせんのう。」
「ええ、まあ…ロボ…魔道機ですので。」
内心、ぐるぐるしてますがね。
さて、フォーマットどおり肩から行きますか。
先生が耳元でささやいた。
「本気出してやれ! 大胸筋もだ!」
邪悪な笑み。ええー?
「ひいひい言わしてやれ!」
結論から言うとメガドーラ様、ひいひい言ったりはしませんでした。
もっと、こう、色っぽい反応。
甘い嘆息、せつなげな喘ぎ声、控えめな嬌声。
「あ、そこ痛い」
「もっと強く」
とか普通のこと言ってもエロイ。
聞いてた女騎士が内股もじもじ女騎士になっちゃうくらいエロティック。
今夜は一人演習、待ったなし。
「ふうぅーんん、気持ちよかったのう。」
「なかなかじゃな、アイザック。」
先生、ちっ! て顔。
「ふふふ、じゃが儂をたらし込めるほどでないの。」
この場はメガドーラさんの方が一枚上手ですな。
あうん! ピッタリくっついてきなさいましたぞ!
「学習機能があるんじゃろ? 今夜はベッドで講義してやっても良いぞ。」
胸を押し付けて機体をまさぐる。
もう、硬直しちゃう! 元から硬いですけどね。
ああう、興味はありますが…今日はちょっと消耗しました、マジで。