地底女王、現る
魔王城こと魔王城山石切り場跡。
時間遅延魔法に囚われた俺は行動不能。
遭遇したのはセクシーファンタジーゴージャスボディブラックレディ!
「侵入者の残りは逃走しました。」
ひょいと顔を出したドワーフ娘が報告。
「妾の拘束陣をレジストするとは…」
「いったい何者だ?」
別の人間の娘が報告。
「封印陣の護符石を配置完了。侵入を食い止めました。」
「侵入者は後退した模様。」
?ブラックレディの女王然とした佇まいに対して、住人達の態度がひどく事務的。
なんかちぐはぐな感じだ。
「警戒を続けておけ。」
「了解!」
さて、人がいなくなると…女王様、俺の方に近づく。
歩くだけでエロいですよ、このヒト。
胸が揺れ…いや、揺れているんじゃない。振れている!
前方に突き出しているから身体の軸の回転が増幅されているんだ。
なんて強靭なクーパー靭帯なんだ! おっぱいスイング!
ちなみにスイぃーーーーんぐっと発声!
「ふーむ、獣機とは違う…変わった魔道機だな…」
「神代魔道機? 稼働しているものは初めて見るが。」
一通りジロジロみるとさして興味もなさそうに離れる。
あれ? 触って確認しないんですか? ナデナデ。
おじいちゃん生臭賢者はゴメンでしたが、女王様なら絶賛許可ですよ。
すぐデイエートの方に興味を移した。ちっ!
「エルフか、ずいぶん暴れておったから、獣のような男おんなかと思ったが…」
「なんと、なかなかの美形ではないか。」
いきなり胸に触れる。もみもみ。
ちょっ? このヒト見かけがエロいけど…中身はもっとエロい?
おっぱいをつかもうとした! けど、つかめませんでした。
デイエートだしな。
「ありゃ? まさか男? いやいや?」
再度確認、ナデナデ。首をひねった。
あなた自身を基準にしてはいけませんよ。
個人差ってものがありますから。
いきなりデイエートのシャツをはだけ、脱がしにかかった。
ええ? 何しますのん? ゆりりんなのすか?
さーてどうしたものか?
どうやら時間を遅延する魔法的なものを施されたらしい。
ヘルプ君の計測によると3600倍に遅くなってる。
動きが遅いってのは単に動くのに時間がかかる、というだけではすまない。
運動エネルギーは速度の二乗に比例して増加する。
ってことは殴る蹴るの威力は1/12960000になるってことか…とほほ。
もちろん勢いをつけるとか、ジャンプするとか無理。
重力加速度にたいして姿勢制御が追いつかないから立つことすら無理だよね。
木偶の坊状態。
だが、俺にはビームランプがある。
物理スイッチがあるわけじゃないから無接点起動。
高速思考していれば発射には影響がない。
正面を向いて固定されたのは幸運だった。
プロジェクタービームは1秒間で60フレーム、1080ラインをスキャンできる。
このスキャンは実は頭部を振動させることで実現している。
1ラインを描くのにかかる時間は1/64800秒。
たとえ3600倍に引き延ばされたとしても、この位置からなら0.05秒もあればビームの照準をセットできる。
もしデイエートに危害を加えるつもりなら、たとえセクシー美女でも容赦はしない。
だが、正直言うとやりたくはない…
ビームで貫通っていうと一見キレイな武器に見えるけど実は最悪。
貫通って言うのは高熱で組織が蒸発して穴が開くってこと。
要するに小さな水蒸気爆発が連続で起こってる。
貫通孔の周囲の細胞はぐちゃぐちゃ。
しかも焼けて死んだ組織が残っているから、言ってみれば傷口に炭をすり込んだような状態だ。
さらにその周囲も火傷してるわけだから…刺し傷や銃弾より性質が悪い。
要するに灼熱の鉄棒を突っ込んだのと大して変わらない。
メカ相手ならともかく生体に使うには非人道的な兵器だ。
たとえ治癒魔法を使っても残滓や空間が邪魔して治りにくい。ってか治らない。
ミーハ村の骸骨塔で女騎士への誤射を恐れてビームが使えなかったのも実はその辺。
うん、ビームは最後の手段だ。もう少し様子を見よう!
うん、状況を判断するためには観察が必要だよね!
じっくり観察、トンちゃんが動ければ別角度からも観察できるのになあ…
「ふんふふーん」
鼻歌交じりで脱がす脱がす。
いそいそ、ウキウキ、楽しそう。
盛り上がる女王様。
盛り上がっていないデイエートの胸が露になる。
「ほほう? つるペタ無い乳、がっかり乳かと思ったが…」
「ここはなかなか。男をそそるようなものを持っているではないか。」
妹エルフの先端突起をちょちょんっと突つく。
なかなかの通人だな、このヒト。ちょっとおっさん臭いけど。
シャツ、下着を全部脱がすと、ズボンも足首まで下ろした。
とうとう下穿きいっちょ状態にしちゃったよ。
で手足を固定。
革手錠、足枷を使って体を伸ばした形で拘束。
あー、先日の蜘蛛といい…こうゆうの好きなんでしょうかね、この世界。
「ふむ、危ない魔道器とか、護符とかは身に付けておらんようじゃな。」
ぱんぱんっとシャツを振って確認。
あ、ちゃんと脱がす理由はあったのね…?
「おっと、意識が無いんじゃ情報を引き出せない。」
「やっぱり反応がないとさびしいからの。」
建前と本音、両方言っちゃってますけど。
魔法陣を展開。
「う、うん・・・」
デイエートが身じろぎ。目を覚ました。
この女王様、精神系の魔法をこともなげに使う。
目覚めたデイエートは状況が呑み込めていない。
目の前にいるゴージャス美人に戸惑っている。
いや? 寝台型拘束台に寝かされたその角度からだと…
女王様のおっぱいしか見えてないよね、下乳しか。
「え、なに?何?」
周囲を見渡す。磔状態の俺と目が合った。
「アイザック! うっ!」
飛び起きようとして拘束具に引っ張られてがくんっとなった。
「ほう、そんなにこの魔道機が大事なのかえ?」
「あ、あなた、だれ?」
やっと本体に気づいた。
戸惑ったように視線を巡らすが…最終的におっぱい見てるね。
「アイザックに何をした!」
「心配はいらん、ちょっとゆっくり動くようにしただけだ。」
ゆっくりしていってね。いやですけど。
「へ、変なことやらせたんじゃないだろうな?」
「え?」
会話がずれてるな。何言ってんのデイエート。
いくら俺だって初対面の人に変なことしませんよ。
「よ、良くはわからんが、よほどこの魔道機が大事と見える。」
「では、よっこらせ…」
掛け声がおばはん臭い。見た目よりトシ食ってるな女王様。
デイエートの革手錠が引き上げられ、同時に寝台が後退する。
天井から吊るされ状態になる。足はつま先立ち。
「う、く! あれ? あたし…裸?」
上下から引っ張られて身体を伸ばした状態。
身動きが取れない。
脇の下やら肋骨のラインやら…お腹から骨盤への起伏とか。
デイエートのマニアックな魅力が強調される。
グッジョブ! 思わず親指立てちゃう。ま、動けませんけどね。
女王様、後ろに回り込むと、耳元にささやいた。
「あいつ、時間の流れは遅いが意識はあるはずじゃぞ…」
「どうじゃ? 魔道機から丸見えじゃ。」
「く! 何をする気だ!?」
「ふっふふ、尋問じゃよ、尋問。」
腰のくびれ部分から脇腹に沿って手を這わす。
じょじょに上げて肋骨の凹凸を指先でたどる。
紅潮、平坦エルフ。女王様、恥辱攻め! 濃いねえ。
「や、やめ…尋問って、質問は…?」
無視! 無言! 背後から巨大な二つの物体を押し付けながら胸をまさぐる。
何だか夢中、鼻息荒い!
先っちょの周りを人差し指でくるり、くるりと撫でる。
「うふふ、なんじゃあ。こりこりになってきたぞお~。」
エルフ肌、白とピンクの境目をスリスリ撫でる。
そのコリコリしたところをクニクニする。
指を振ってプルプルしたり挟んでクイクイしたり。
「んん、ふぅ!」
たまらず、声を上げるデイエート。
せつなげに身をよじる。
テクニシャン! テクニシャンですぞ、女王様!
胸の突起をピンっと弾く!
「くふっ!」
かくんっとあごを引き、身を震わせる妹エルフ。
かみ殺した声が色っぽい。
ここは我慢だ。もう少し様子を見よう。
うん、もう少しだ!
「女王様!」
さっきのドワーフが飛び込んで来た。
「あ、お楽しみ中でしたか?」
「尋問だよ、尋問!」
えー? まだ、なんにも聞かれて無いですけどお!?
「びょ、病人が続出してます!」
「病人?」
「頭痛やめまい、息切れを訴えるものが多数…私も…」
そういや、顔色悪い。
「あれ? あたしも…何だか耳が…」
ええ? デイエートも? 頭振っている。耳?
「まさかさっきの侵入者が…」
「ばかな! 封印陣を配置した。たとえ毒煙を撒いても入ってこれんはずだ。」
入ってこれない?
『急激に気圧が下がっています』
ええ? ヘルプ君? 気圧?
『現在の気圧0.8気圧810.6ヘクトパスカル』
『標高2000メートル級です』
ああー、先生だな。入ってこれないから…引いたのか!
送風魔法を逆に使って地下空洞内の空気を抜いているんだ!
急速に気圧が下がって住人が軽度高山病を起こしてるわけだな。
「石切り場の住人に告ぐ!!」
つぐぅー、つぐぅー、つぐぅー反響。
大音響! 拡声魔法か。
「我々の仲間を開放しろ! さもなくばさらに気圧を下げるぞ!」
「皆殺しだ!!」
皆殺しですかあ~? それだとデイエートもアウトですけどお~?
先生、乱暴だなあ。完全に悪役!
「な? まさか…この声…アイツ? こりゃいかん!!」
焦って飛び出す女王様。
後を追うドワーフ。
「え、ちょっとー! これ…なんとかしてー」
パンツいっちょ裸吊り下げ状態で放置デイエート。
盛り上がったとこだったので内股。もじもじ。
「なんとかして」って言うのは手枷足枷のことだよね?
生殺し状態のことじゃないよね?
デイエートは生殺し、先生は皆殺しってね。
ちょっと残念、いいところだったんですけどね。
いやいや、チャンス。チャンスですよ。ビーム発射!
机の上に魔法護符を貼られて置かれていたトンちゃんに照射。
魔法陣の一部を焼き切る。
通信速度が回復。
トンちゃん、ちょっと俺の身体調べてくれる?
たぶん、キミと同じ護符が貼られていると思うんだ。
飛行可能になったトンちゃん。俺の周囲を一回り。
あったあった。背中の真ん中に護符がくっついている。
えーっと剥がせる? トンちゃん?
無理かー。
デイエートに頼もう。
ビーム発射。吊り下げロープを切り離す。
「アイザック?」
トンちゃんからボイスで会話。
「足枷を切ります。動かないで。」
切断!
「背中の護符を剥がしてください。」
駆け寄るデイエート。っと言っても両足が足枷でつながってる。
ズボンも足首まで下がっているのでぴょんぴょん跳ねて近づいた。
跳ねても揺れたりしないところがせつな寂しい。
護符を剥がしてもらった。
急速に世界が回復する!
高速思考で補正しているつもりだったが…けっこうズレてた。
音が、色彩が、正常化した。
「助かりました。」
デイエートの手枷、足枷を破壊、完全解放。
「よかった…死んじゃったかと思った!」
抱きついてくる。おおう! 裸ですよ!
こりこり、当たってますよ。
俺を守ろうとしてくれたこと。忘れませんよ。
力いっぱい抱きしめたい、ロボでなかったら。
「おまえ…もしかして本当は意識あった?」
抱きついたまま下からじろりと睨みつけてくる。
おっと、
「いつでもビーム撃てた?」
えーっと、
「見てたんだな!」
「いえ、その…」
「いやいや、ホントに動けなかったんですよ…」
「ばか! 怖かったんだぞ…」
「おまえ、死んじゃったかと思ったし…」
ぽかぽか胸板を叩かれる。
そっと背に腕を回す、そっとね。
「ごめんなさい。」
「……途中だった…」
はえ?
「責任とって続き…しろ。」
ぐりぐり、こりこり。
い、いや、今は無理ですからー
「後で…絶対…約束だからな。」
はいはい、善処します。
とにかく、先生と合流しよう。
あ、デイエートは服着てね。
背中から剥がした護符を見る。
『ピロリーーーン!』
おおっと?
『遅延拘束魔法を解析しました』
『レジストが可能です』
早いね、ん? レジストだけ?
『他魔法との共通項があります』
『飛行ユニットを保管していた岩』
『工房での冷蔵庫作成で学習した保存魔法』
『氷雪虎の融解防止』
『反応促進の逆位相』
なるほど、類似魔法のデータがあれば応用が利いて解析が早いわけか。
先生が魔法理論や基礎を重視するのはこういうことなのね。
俺も使えるのかな?
『拘束魔法として使うには脳内魔法陣イメージとの併用が必要と思われます』
魔法の肝心な部分は女王様の頭の中ってことね。