表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/371

お別れするよ



「見張り、交代です。」

しばらくすると女豹戦士が起きて来た。

先生と交代で見張りに着く。

「アンタは寝なくていいのかい?」

俺に話しかけるウェイナさん。

「睡眠は必須ではありません。」

「便利だねえ。」

まあ、起きたまま俺の意識だけ分割して眠ることもできるんだが。

説明がめんどくさいので言わないけど。

「アンタに言うのも何だけど…」

「すごいねえ…エルディー導師は…」

「魔力もだけど、魔法の使い方が奇想天外って言うか。」

ウェイナさんがしみじみとつぶやく。

「アタシも、もいちど魔法の基礎からやってみるよ。」

また一人、影響を与えてしまったようですぞ、先生。

俺も一休みさせてもらうか。

【魂】だけが、うとうとと微睡まどろむ。

『ぴろりーーーん!』

おおう! 何?

『リール&ワイヤーの有用性を確認』

『リール&ワイヤーを収納、融合しました』

え? は? 何言ってんの、ヘルプ君?

下を見ると…リールを止めていたベルトが足元に落ちている。

あれ? リールはどこ行ったの? あれ…まさか…

そーっとちっさい声で「拳骨シュート」

前腕部を外す。特にいつもと変りない。

もいちどくっつけて、っと。

今度は「ワイヤーシュート」

で、はずすと…くっついて来た、ワイヤーが!

ええええー?

「巻き取り」しゅるしゅる、かちん。電源コード巻き取り式。

ええええええー?

取り込んだのか? リールとワイヤーを?

怖い! 守護魔道機体、恐るべし! マジ怖いよこの機体からだ


夜が明けるとみんな活動開始。

半個室のバンガローでみんなぐっすり眠れたようだ。

いいとこだな、ここ。巨大蜘蛛とか出なければだけど。

「湯治場のダンナとやらに言っておけ。」

「長く人が不在だったせいで野獣たちの活動範囲が広がっている。」

「再開には、準備期間が必要だとな。」

「もっとも、まだお客さんが来るようになるのは先の話だろうがな。」

先生の言にウェイナさんたちも、うなづいた。


みんなが出発の準備をしている間に、獣機が捕らえられていた蜘蛛の住処すみかを調べに行く。

メンバーは俺と先生、ハイエート。

住処に転がる白骨を見た先生。

「やっぱりな、温泉の熱で活動が活発になっていたわけか。」

「本来冬眠に近い状態のはずの冬場に、温泉目当ての動物たちを餌にして巨大化したわけだ。」

「あの巨体で妹にも気づかれないなんて、怖いですねえ。」

「まったくだ、世の中、何があるかわからんもんだ。」

周辺をチェックしていた俺だが…これは?

「ハイエートさん、これって?」

崖の一部をくりぬいたような穴、そこに糸…蜘蛛の糸だ。

中を覗き込むと…

「やっぱり産卵してましたね。」

「縛り上げて生きたまま連れ去ろうとしたのは、子供が孵った時のエサにするためか。」

お母さん蜘蛛だったのか…

蜘蛛は蜘蛛で一生懸命生きてただけだが、こっちはこっちの都合があるしな。

知り合い食べられても困るし。

炎縛鎖ファイヤワイヤで焼き払った。ごめんね。


馬車の支度も整った。

ミーハの3戦士とはここでお別れ。

リアル馬くんも彼女らの馬車馬と別れを惜しんでる。

「我々は1か月以内にはレガシに戻るつもりだ。気がむいたら尋ねてこい。」

先生に言われて、ウェイナさんたちがうなづく。

あれ? あんたたちまだ出発しないの?

「オレたちは、もうひとっ風呂浴びてから…」

とベスタさん。

「昨日はちょっとのんびりってわけにいかなかったし…」

とは、シマックさん。

うらやましい。

それじゃ、お元気で。チルタちゃんによろしく。

あと、村長にもね。


先生、俺、女騎士が馬車。兄妹エルフが馬獣機。

湯治場から元の道をたどって大街道へ戻った。

ここで一旦停止。

再起動した犬獣機ハウンドをよびよせる。

昨日のうちに打ち合わせておいた合図を送る。

U-69はある程度、口頭での指示が理解できるようだ。

合図にしたのは超音波信号、いわゆる犬笛。

直接、俺のスピーカーから出力しているんで笛は使ってないけどね。

イヌ系獣人のアトラックさんにも聞こえるかと思ったんだけど…

「いや? 全然聞こえないですよ?」

うーん、そうですか。

直接、電波通信できればいいんだが…どうも神代魔道機と獣機は直接交信ができない。

ミネルヴァもいったん将機ボディを通じてしか通信できなかった。

上位存在からのメールは受信できるのになあ…

来た。犬笛を聞いた獣機が谷を駆け上がってきた。

「おおう!」

「ひひん!」

「ちょわわ!」

アトラックさんと馬くんがびびる! 女騎士も。

「これはちょっと…」

お兄ちゃんも苦笑い。

「ケルベロスとちがって、敵の獣機と区別がつかないのは困りますね。」

「あいつらみたいに色を塗ればいいんだが…塗料なんか無いしなあ。」

「なんか布とか巻いとく?」

デイエートの提案でヘッドアームに適当な手ぬぐいを巻いた。

うん、リボン。

可愛い…くはないよなあ、やっぱり。

だがこいつ、U-69は…ケルベロスと違っておっぱい嗜好が無いな?

先生とデイエートを差別しない。

なぜだろう? 女の子なのかな?

待てよ? タンケイちゃん…か?

ケルベロスは自分たちを組み立ててくれたのがタンケイちゃんだと理解していた。

実際、再起動直後からずいぶん懐いていたし。

その流れで巨乳好きに?

タンケイちゃん罪作りなオンナ!


馬獣機に乗り、犬獣機をお供に連れて大街道を進む。

うーん、怪しい。怪しい集団だ。

え? 一番怪しいのは俺?

この日は一日、ひたすら大街道を進む。

かなり距離を稼いだが、次の基地局の電波圏内に入る直前で停止。

今夜はここで野宿だな。


さて、馬獣機とU-69を捕獲したおかげで今後の行動計画がだいぶ楽になった。

女騎士を交えて相談する。

「明日からは獣機の行動可能領域を進む事になる。」

「電波の届く範囲の広さと獣機の数を考えればそうそう遭遇するとも思えんが…」

「しかし、やつら前のときは街道沿いに待ち伏せしている事がありましたよ。」

マジか? 大街道を進むのは狙われやすい?

「クラリオが確認したのはどのへんまでだ?」

新しい地図を使って確認する。

「えーっと、宿場や村の位置から言うと…」

「ミゾロギィへ行く分岐点とその先の宿場の中間…この辺りですね。」

「大街道に沿って進めるのはあと行程1日分くらいだな…その先は…」

「獣機が繰り返し通行した後が残っていました。獣道、と言うか…」

「獣道…道はあるわけだな。」

「でも、獣機の通り道ですから、ちょっとその先の調査は無理でした。」

女騎士が肩をすくめる。

「1体1ならともかく、群れを成した獣機と戦えるのはアイザック殿くらいですよ…」

地図を辿ると…

なるほど、犬獣機から収集した磁気+慣性ログと一致する。

じつはU-69から得たデータで本拠地の正確な位置はわかっている。

ケルベロスは衝撃を受けたり破壊されたりでデータが断裂、損傷して位置情報が曖昧だった。

しかしU-69は蜘蛛に縛られたくらいでほとんど損傷が無い。

ログテータから今まで辿った経路が判明。本拠地が正確に推定できたのだ。

ここが獣機の本拠地か! よーし!と、思ったけど…

みんなに説明しようと思ったが、そのあたりの地図がまだ無い。

絶対座標、緯度経度だけわかっても地図がなきゃ「どこ」とも言えない。

そもそも、地名がついてないのだ。

地形がどうなってるとか、道がどうなってるかとかもわからない。

正直、陸地かどうかさえわかってないという…。

結局、行ってみるしかないって事だよね。とほほ。

いかに自分が元世界で「地図がある」ことを前提に物事を考えていたか思い知らされた。


「んー? このあたりって…もしかして…」

何です、先生? 何か思い当たることでも?

「昔、来た事あるかも?」

「そりゃあ、獣機が出現する前なら…そういうことも…」

「いつ頃なんです?」

「200年くらい前…だったかな?」

いや、ほんと。おいくつなんですか? 先生?


しばらく考え込んでいた先生だが、

「アトラック。」

「はい?」

「馬車を…馬獣機に付け替える事は可能か?」

「んー、出来るでしょう。多少すれたり当たったりしても文句は言わないでしょうし。」

「お前が馬に乗って帰るのは?」

「え? そりゃ、馬車がいかれた時のためにくらは用意してありますが…」

「クラリオ。」

「ははは、はい?」

「予定ではお前、馬車の警護としてレガシへ引き返すことになっていたが…」

「最後までわたしらに付き合う気はあるか?」

がばっと身を乗り出す、女騎士。

「あああ、あります! 大導師! お供させてください!!」

「いいのか? 危険だし、王軍騎士としての立場もあるだろ?」

「その辺はもうあきらめたって言いますか…」

「もとより騎士の本分は民を守る事にあると思っております。」

「おかしな陰謀に利用されるくらいなら騎士の本分を貫きたいと考えております。」

うーん、純粋心意気女騎士。立派だ!

「レガシにはタモン将軍もおられますし。」

「私は2号さんでもかまいませんので。」

「はい?」

なんか、雑念も混じっているがな。


さて、野宿…なんだけど…

アトラックさんが馬車の中でごそごそ。

両サイドのベンチを跳ね上げると中から敷布団と毛布が!

キャンピングカーか!?

3人くらいは寝れそうだ。

「女子はこっちでどうぞ。」

なるほど、アトラックさん馬車で寝るの平気なわけだよ。

でも、中で寝るのは先生とデイエートな。

女騎士は見張り&ごろ寝だ! 軍人だろ。


さて、次の日。

夜明けとともにアトラックさん、馬獣機を馬車につなぐ作業。

リアル馬くんから外した馬具を馬獣機に取り付ける。

だが、思ったほど簡単じゃなかった。

御者台からじゃコントロールできないので騎手も乗る必要がある。

逆に騎手からは馬車のブレーキとか操作できないので御者も必要。

めんどくさい。馬獣機をリモコン操作できればいいんだけどねえ。

騎手の邪魔にならないよう馬車用背鞍を取り付けるのにちょっと手間取った。

作業終了。

リアル馬くんには騎手用の鞍をつけて、アトラックさんがまたがった。

「では導師。私はここで失礼します。」

「必ず無事でお戻りください。お嬢様が待っておられます。」

アトラックさんとお別れだ。

「ああ、心配するな。」

がつん! と先生が俺の胸板を叩いた。

「コイツがいるからな。」

リアル馬君ともお別れ、ご苦労さん、ありがとう。

走り去るアトラックさんを見送った。

どうかご無事で。

俺たちも移動を開始する。


魔法まとめ

雷神槌:サンダーボルト

炎縛鎖:ファイヤワイヤ

閃光輝:ライトニング

被甲身:バンパー

氷雪虎:スノーレパード

消磁魔法:マグセーフ

旋風大偉:グレートタイフーン

雷神槌豪破:サンダーブレイク

錆腐風:ルストハリケーン


八つ裂き氷輪:アイススラッシュ


氷雪結界:ニヴルヘイム

闇の岩戸:ダークゾーン

闇の堕界:ダークワールド

獄炎の魔恒星:インフェルノスター

水精竜:ウオーターシュート


促成栽培:グロウアップ

反応促進:キャタリスト

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ