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モモパンティ VS モモTバック

桃のお話です。


 スズは片手を前に突き出し、戦いの意思をあらわにした。


「今こそモモパンティとモモTバックの決戦の時!

 偉大なるTバックの前では、パンティなど無意味な存在である。

 妖艶な甘みを持つTバックこそ至高のモモ。

 タツヤがパンティに手を加えても、現実は変わらない」


 まるで僕が女性物の下着を改良して、新たなパンティを産みだしたように聞こえてしまう。

 普通に聞いたら誤解が生まれてしまいそうだけど、あえて受け入れよう。


 幼顔の15歳の美少女が、Tバックを履くなんて許せん!

 モモパンティ大好き委員会を代表して、明日の君にモモパンティを履かせたい!


 僕とスズの視線が重なり、バチバチと火花を散らした後、4人の美少女にモモTバックを手渡してあげた。

 彼女達の右手にはモモTバック、左手にはモモパンティのゼリーがある。


 いきなり対決の雰囲気になってしまったので、3人の受付嬢達は置いてきぼりになっていた。


「タツヤはパンティ派、私はTバック派。

 この場でモモパンティ VS モモTバックの戦を始める」


 スズの口から僕の性癖が発表されてしまい、恥ずかしくて仕方がない。

 普通の冒険者は自分の性癖をギルドの受付嬢に知られることはないからね。

 みんな真面目な顔して『うん』って頷いてるけど、受け入れられても複雑な気分になるよ。


 でも今ここで立ち向かわないと、スズだけじゃなく、ボクっ子のマールさんまでTバックの闇に飲み込まれてしまう。

 ボクっ子がTバックを履いて良いのだろうか、否ッ!!

 2人は同い年だから、日本でいえば現役JKなんだぞ。


 現役JKのスカートが捲れてTバックだったら、嬉しいよりも心配になるじゃないか。


 変な男と付き合っていないのか、変な男が付き纏ってこないか、援助交際はしていないのか。

 全然無関係な子だったとしても、気になって仕事に集中できなくなってしまう。

 だから、絶対に僕がパンティ派に変えてみせる。


 こんなことを考えてる時点で、僕がその変な奴に該当すると思う。

 でも安心してほしい、僕は待つ専門だから絶対に害はない。


 32年間もピュアを守り続ける男、【悲しみの魔法使い】をなめるんじゃないよ。


「先行はTバックがいただく!

 さぁ、恥ずかしがらずにTバックの果肉に被りつくがいい!」


 僕が闘う意思を強く持った時、スズは高らかに吠えて開戦の合図を出した。


 右手に持ってたモモTバックを、迷うことなく受付嬢たちは被り付いていく。

 勢いよく被り付けば、当然のようにモモTバックから果汁が溢れ出してしまう。


 じゅるるるる~!


 果肉から溢れ出す甘い汁をこぼさないようにするため、吸い尽くす音が合唱した。

 口いっぱいに拡がっているであろう甘い果実の誘惑に、トロけるような大人の表情を見せてくれる。

 妖艶な甘みに体の自由が奪われ、彼女達の動きは一瞬止まった。

 そして、3人の時が重なるように動き始める。


「「「あぁぁ~……」」」


 果汁と共に大量の空気を吸ったことで、色っぽい甘い吐息が漏れてしまった。

 吸い尽くせなかった果汁が、彼女達の口元からスーッと流れ落ちている。

 たったの1口でTバックの魅力に憑りつかれてしまったのか、3人ともボーッと空を見上げていた。


 その光景を目で楽しみ、耳で感じてしまった僕は心臓が吹き飛びそうだったよ。

 思わず『初心(うぶ)な心』が意識を飛ばしかけたけど、パンティのために踏ん張った。


 ここで倒れたら、誰がスズをパンティ派にするっていうんだ、しっかりしろ!

 モモTバックを許すな!

 モモパンティに栄光あれ!


 しかし、すでにこの場はTバックの魔の力に支配されていた。


「ボクは初めてのTバックに心を奪われてしまったよ。

 だって、Tバックの締め付けない大人の味がボクの心を侵食していくんだもん」


 マールさん、やめてくれ!

 貧乳の元気っ子がTバックを履いてたら、パパが悲しむに決まってるだろ。


 干してある洗濯物を見て「ママはこんなの履いてないぞ?」と手に取ったら、娘から「パパやめてよ、私のTバックに触らないで」って言われるんだ。

 そんなの3時間にわたる家族会議を開く案件だからね。

 同級生だって、せっかくのパンチラが尻チラになったら、高嶺の花すぎて声がかけられないよ。

 みんな君と話す時は前かがみのへっぴり腰になる。


 だから、絶対パンティ派になってほしい。

 元気っ子のTバックに需要はない、キュートなパンティを履いてくれ!


 うっとりしているマールさんに心からエールを送っていると、アカネさんが口を開いた。


「Tバックに被りつくのは恥ずかしかったけど、1度食べたら被りつきたくなるわね。

 私は毎晩Tバックを食べたいわ。

 でも、いざという時にTバックで気合を入れるのもいいかもしれないわね」


 さすがアカネさんだよね。

 Tバック=勝負下着的な発想するのは素晴らしい。

 アカネさんに関しては、そのままTバック派でいるべきだ。


 スキニーパンツでピタッと密着したズボンに、Tバックを履いて体のボディラインを表現してほしい。

 そこには、本来あるはずのパンティが透けないんだ。

 1枚めくったら生のお尻という興奮に、紳士の僕は何度もお尻をチラチラ確認してしまうよ。

 そんな人が前方を歩いていたら、できるだけ一緒の方向へ向かって歩いてほしいと、心の中でお祈りするくらいだ。


 でも、紳士のマナーとしてストーカーや迷惑をかけちゃいけない。

 Tバック履いてくださったお姉さまに「ありがとう」と心の中で感謝し、仕事という戦場へ向かうんだ。

 また、お会いできることを願って。


 アカネさんの言葉に共感するように、天使リーンベルさんはゆっくり頷いていた。


「はぁ~、Tバックは魔の領域ね。

 プリッとした果肉に被りつくと、溢れ出す甘い汁が飛び出してくるの。

 私はTバックにせまられたい、ううん、Tバックになりたい。

 頭の中からTバックの妖艶な甘さが離れないの……。

 Tバック=幸せなのかもしれないね」


 あのリーンベルさんが妖艶な顔付きをして、Tバックを語っている……だと?!

 天使がTバック派でいいのだろうか。

 否ッ!!  パンティに決まってるだろう!


 なぜなら、天使=清楚だからだ。


 もし、目の前に純白のワンピースを着た天使が大空から舞い降りてきたらどうだろうか。

 下から見上げる僕達は、「パンティが見えてほしい」と願うはずだ。

 そこにTバックなんて履かれてたら、「天使なのに性欲が強いのかな」って、変な妄想が拡がっちゃうよ。


 例外として、堕天使だったら黒のTバックであってほしい。

 ついでにムチを持っていただけr(自重


 やっぱり天使であるリーンベルさんには、パンティ以外考えられないだろう。

 風が吹いた時に「キャッ」と言って、恥ずかしそうにスカートを押さえるくらいがちょうどいい。

 口をとがらせて「見たなー」って問い詰められた後、理不尽なお願いを要求されたい。


 それを成立させるには、モモTバックではなくモモパンティが必要である。


 だから、僕は天使リーンベルさんを魔の領域から救い出そうと思う。

 Tバックの闇から、パンティという光の元へ。


 でも、その妖艶な表情は脳内保存させていただきましたよ。

 本当にありがとうございます。


「パンティを食べるまでもなかった。

 3人はTバックにメロメロ。

 やはりパンティよりもTバック」


 スズは僕の目を見つめながら、モモTバックに被り付いた。

 ひと時も目を離すことなく「じゅるるるる」と果汁を吸い、「あぁぁ~」と妖艶な吐息を漏らし、唇に付いた果汁を舌なめずりして拭き取った。


 ありがとうございます!!


 しかし、後攻はモモパンティのターン。

 君達は今からパンティを感じ、パンティを味わい、パンティの魅力に気付くだろう。

 若い女の子は、まずパンティへ進んでほしい。


 そこから少しずつ大人の階段を上り、20歳を過ぎてからTバックを履くべきだ!


 モモの話なのかパンツの話をしているのか、現実と思考が違いすぎて混乱してきた。

 みんなモモを食べながら、パンツについて語っているようにしか思えないから、僕の頭は桃色のパンツ一色だ。


 僕は謎のリミッターを解放し、モモパンティで彼女達に攻め込んでいく。


「残念だよ、スズ。

 今まで君は何度も僕の手(お菓子)で魅了されてきたというのに。

 パンティ(モモ)を感じることなく、決着など付くはずがないじゃないか。

 今からモモパンティの逆襲を始めよう。

 必ずTバックの闇から救い出してみせる」


「私は恐れなどしない。

 Tバックこそ至高である。

 かかってこい、モモパンティ!」


 固い決意をしたスズは、誰よりも先にモモパンティのゼリーに挑む。

 スプーンでゼリーをすくい取り、プルプルっと2回だけ揺らしてゼリーを弄んだ後、そっと口内に流し込んだ。


 予想以上の衝撃だったのか、持っていたスプーンをカランッと落とし、頭を抱えて苦しみ始める。


「うぅ、Tバックとは違うパンティの魅力が頭の中に……。

 プルンとしたパンティの食感。

 果肉も入れることで、パンティ本来の良さも残っている。

 そして、Tバックでは表現できないパンティの綺麗な見た目。

 Tバック派の私が、まさかパンティに敗れるというのか」


 スズの中のパンティとTバックが猛攻を繰り広げている。

 彼女の頭の中は、いま桃色に染められているだろう。


 それを見たマールさんが、続いてモモパンティのゼリーに挑んだ。

 ゼリーを口に入れた瞬間、彼女はパンティで希望の光を取り戻し、Tバックの闇から解放された。


「Tバックも良かったけど、ボクはパンティ派だなー。

 見た目のデザインが綺麗で楽しめるのもいいよね。

 Tバックは大人の果物って感じだったけど、パンティは子供も大人も楽しめる理想のデザートだよ」


 パンティはデザインが綺麗で楽しめる。

 その通りだと思うよ、マールさん。

 ゼリーを食べただけなのに、まさかパンティのデザインに着目されるなんて、驚きを隠せない。


 やっぱりマールさんのような元気っ子のスカートが捲れたときには、パンティが見えてほしいね。

 Tバックを履いててプリッとした果肉が見えたら、現実世界か疑ってしまうよ。

 特に貧乳の女の子はモモパンティがおすすめだ。

 それだけで女子っぽさがアップしちゃうから。


 マールさんがパンティ派になった時、大人の女性代表アカネさんがパンティに挑んだ。

 口にした瞬間、3回『うんうんうん』と頷いて、何かを悟ったようだった。


「私はTバック派だわ、パンティも悪くないけど。

 でも、1度かぶり付いたTバックの魅力には敵わないわ。

 口にした時、衝撃が走ったもの」


 アカネさん、あなたには何も言うことはない。

 Tバック派でいてくれてありがとうございます。


 たわわに実った2つの胸、くびれたウエスト、そしてTバックによる大人の衝撃。

 色気という言葉はあなたのためにあります。

 本当にありがとうございます。


 アカネさんを見守っていると、視界の中に苦しんでいるスズの姿を捉えてしまう。


「私はTバック派。

 でも、このパンティの魅力は……」


 彼女はいま自分と戦っている。

 僕が手を貸してはいけない、自分で答えを導き出すんだ。

 あわよくば、パンティを認めてほしいと思う。


 残るは天使リーンベルさんだけ。

 僕は彼女の方へ振り向くと、ちょうどパンティを口にしたところだった。

 目を閉じてじっくりと味わった後、頬が少し緩んでいく。


「スズのTバックに、タツヤくんのパンティ」


 パンティの前に僕の名前を付けるのはやめてほしい。

 まるで僕が日頃からモモパンティを履いてるド変態みたいになるから。


「スズのTバックを愛したくなる気持ちもわかる。

 でも、私はタツヤくんのパンティがいい。

 このパンティには、夢と浪漫が詰まってる。

 見て、このパンティの果肉を優しく包むパンティを。

 目と心を癒すだけじゃないわ。

 まるで宝物を守っているように見える。

 一口食べれば、パンティの良さが口の中に拡散されて、私はパンティの魅力に引き込まれてしまった。

 スズ、お姉ちゃんはTバックに戻れないよ」


 その言葉に、僕は思わずスタンディングオベーションをしてしまった。

 アカネさんとマールさんが不思議そうな顔で見てくるけど、気にしない。

 天使がパンティ派でいてくれたことが嬉しいんだ。


 それに、今の言葉を聞いた?

 『パンティは宝物を守っている』だって。

 天使の名言に脱帽するよ。


 パンティって、外敵から守るためにあると思うんだ。

 最小限の守備範囲しか守らないTバックだと、防御力が低すぎるよ。

 特に清楚なリーンベルさんは、僕みたいな変な男がこれ以上寄り付かないように守りを固めてほしい。


 Tバックを見たくないのかと聞かれたら、見たいと答えるけどね。


「お姉ちゃんも……パンティ派なの?」


 スズの表情は悲しみに溢れていた。

 リーンベルさんは絶対Tバック派だと思っていたからだろう。

 大好きな姉の好みをわかってあげれなかったことが、悔しかったのかもしれない。


 スズは肩の力を落とし、パンティのゼリーと見つめ合った。

 そして、ようやく自分との戦いに終止符を打つように、笑みを浮かべる。


「私が間違っていた。

 パンティを認めよう。

 でも、Tバックも譲れない。

 私はパンティとTバックのツインスタイルでいこうと思う」


 僕は黙ってうなずいた。


 今まで大好きだったTバックを急にやめることなんてできないんだ。

 少しずつパンティを知り、パンティに近づいてくれればいいよ。

 願わくば、ミニスカートにパンティを合わせてほしい。



 こうして、モモパンティとモモTバックの壮絶な戦いが幕を下ろした。



 いつものリーンベルさんに戻ったので、安心してギルドへ戻ると、慌ただしく仕事を頑張るヴェロニカさんの姿があった。

 忙しくない時間とはいえ、3人で行う仕事を1人でやっているため、当然のように負担がかかってしまう。


 部下である3人の受付嬢達は駆け足でヴェロニカさんの元へ向かい、申し訳なさそうに仕事を代わっていく。

 予想以上に大変だったのか、「ふぅ~」と大きく疲れたようなため息をヴェロニカさんが漏らしたので、約束通りトリュフを渡してあげた。


 今回ばかりは無茶なお願いだったと反省し、追加でクッキーとプリンも渡してあげよう。

 渡すといっても、即効で倒れちゃったから、近くにお供えとして置いておくようなものだけどね。


 なんとなく両手を合わせて感謝を祈り、ギルドを後にした。

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