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 ついついドヤ顔でステータスを見せたら、異世界人であることまでバレてしまった。

 スキル【異世界言語】を持ってるからね。


 ハッハッハ、ちゃんと説明するので変な目で見ないでください。

 32歳のオッサンが小型化しただけです。

 若返りなんてよくあることですよ。

 最近だと、性別が変わっちゃう変態さんもいらっしゃいますからね。


 それから自分のことをしぶしぶ話し続けることになった。



・異世界からやってきたこと(若返ったことは言ってない)


・なぜ異世界に来たのか理由がわからないこと


・気が付けば人からハイエルフになっていたこと


・この世界にやってきて数か月しか経ってないこと


・僕が作った料理とお菓子はステータスが上がること



「それともう1つ気になることがあります。

 スズにも言うの忘れてたんだけど、実は……」



・オーガに襲われたフィオナさんを助ける時に胸騒ぎがしたこと


・胸騒ぎが2時間近く前に起こり、フィオナさんの元に呼ばれているように感じたこと


・ハイエルフの血と胸騒ぎが関係していると思うこと


・今回も同じように胸騒ぎが起こったこと



「もしかしたら、神獣とハイエルフの血が反応しているのかもしれません」


 僕は真面目な話をしたつもりだったんだけど、フィオナさんは途中からモジモジし始めた。

 どうやら1人で妄想モードに突入してしまったみたいだ。

 今はほっぺたに両手を添えて、とても恥ずかしそうにしている。


「私とタツヤさんは、運命のように引き寄せられたんですね。

 きっと小指に赤い糸が付いていて、私が引っ張ってしまったんでしょう。

 その興奮が胸騒ぎとなって、心を締め付け……」


 そういう妄想は父親の前でやらないでね。

 国王はメンタルが強いから気にしている様子はないけど、僕が気になって仕方がないよ。


 父親の前でイチャイチャする勇気はないんだ。

 電車の中でチュッチュする恋人ぐらい難易度が高いよ。


「フィオナが神獣と出会ってからワシも色々調べたが、もう1度調べなおしてみよう。

 何かあったら連絡するし、困った時はサポートもする。

 気軽に声をかけてくれ。

 あと、不死鳥(フェニックス)の4人が異常な活躍をしたのは、ユニークスキルのおかげか?」


「えっと、不死鳥(フェニックス)の4人が頑張った部分は大きいですよ。

 スタンピードが始まる10分前に、料理は食べてもらいましたけど。

 口外しないように約束していますから、誤魔化してくれていると思います」


 妄想から帰ってきたのか、フィオナさんがクスッと笑った。


「確かに広めない方がいいですね。

 危険を伴うことになりそうです。

 あのステータスではあっさり負けてしまいますもの」


「笑わないでくださいよ、僕だってレベル1で成長が止まってて、困惑してるんですから。

 世界が危険だというのに、肝心のハイエルフがゴブリン以下のステータスって、どういうことなのか聞きたいくらいですよ」


「ふふふ、いいではないですか。

 弱くて可愛い男の子なんて、愛おしくてたまりません。

 それなのに、2度も命を助けてくださるなんて……いいですわ!」


 フィオナさんの真面目っぽい印象はどこにいったんだろう。

 どうやら再び変態モードに突入してしまったようだ。

 愛情が高まってくれる分には嬉しいんだけどさ。


 いっぱい可愛がってもらいたいし……いろんな意味で。


 やっぱり国王はフィオナさんの反応を気にする様子はなかった。

 精神32万の僕とは比べ物にならないほどの強メンタルだ。


「ハイエルフの末裔と聞かれた時はどうしようと思っていたが、まさか本人だとは。

 だが、それなら気を付けてくれ。

 まだ他にもダークエルフがいるとワシは考えておる。

 今は国際的なテロ組織という扱いにして、獣人国に協力要請している。

 その関係でまだ仕事が残っておるから、ワシは席を外すぞ」


 そう言った国王は椅子から立ち上がり、足早に部屋を出ていった。

 長時間話しこんじゃったけど、本当に忙しかったんだろう。


 今度またおいしいものを作ってあげるね、パパ。


「不思議な方だとは思っていましたが、異世界人だったのですね」


「……嫌いに、なりましたか?」


「大好きですよ、出会った時からずっと。

 本当に好いているのですから、もっと私に振り向いてください。

 スズばかりに愛情がいっていますよ」


 そういうの言われたら、一瞬で恋に落ちちゃうイチコロな男ですよ。

 すでに振り向きまくっているのに、まだ欲しいんですか?

 フィオナさんって、意外に欲しがりさんなんですね。


 でも、僕は32年間待ち続けた待ち専門です。

 だから、好きなタイミングで奇襲をかけて来てください。


 トイレ以外で。


「フィオナは思っている以上に本気。

 一緒に看病してきた私はわかる。

 2人で体を洗うのを取り合った」


 はい、タイムアウト入りまーす。


 この火猫は不意に恐ろしいワードをぶち込んでくるから、本当に困る。

 いま「僕の体を洗った」って言わなかったか。

 看病されている間に体を洗われた記憶なんて1度もないよ。

 君達は僕が目を覚まさない間に、どんな看病をしていたんだ。


 正直めちゃくちゃありがたいことだと思う。

 ありがとうございますと、全力で土下座して感謝したいほどに。


 けど、僕にも準備をさせてほしい。

 だって、僕のサイズってかなり小さめだから……。


 小さい時って、歯ブラシに出す歯磨き粉ぐらいしかないし。

 元気になっても、簡単に手で隠れちゃう…って、おい!

 な、何を言わせるんだ、恥ずかしい。


「あの~、体を洗うとは?」


「初日はスズも力を使いすぎてダウンしてたので、独り占めできたのです。

 2日目からタツヤさんが目覚めるまでは、2人で体を洗いましたよ。

 1日置きで前と後ろを交代して洗いました。

 私は前も後ろもどちらも好きですよ。

 その……小さくて可愛いと思いましたし、愛おしかったですよ」


 なんでそんな恥ずかしそうに言うのかな。

 何が小さかったのか詳しく聞いてみたいよ。

 ハッキリ言ってもらった方が楽になるから。


「私は小さくても気にしない。

 大きくなったら私の手に納まるピッタリサイズだった。

 相性がいいのかもしれない。

 それに、前から私のことを見て膨らんでいる。

 手を繋いだときも膨らみっぱなしだった。

 むしろ、膨らんでいない時間は滅多にない。

 大丈夫、私たちは相性がいい、小さくても問題はない」


 君の手にピッタリサイズか。

 そいつは相性ピッタリだ、ハハハ。

 よく見ると君の手はけっこう小さいから、改めて現実にビックリしているよ。

 でも、君との相性が良いのであれば気にしない。


 今の君の発言ですごい自信がなくなったから、ちゃんと責任は取ってくれよ。


「スズ! 膨らむ話について詳しく聞かせてください!」


「聞かなくていいですよ!」


 心臓が猛スピードで動くんだから、そりゃ終始膨らみますよ。

 あなたの膝の上に座らせてもらった1週間は、朝から晩まで元気でしたから。

 というか、フィオナさんって意外に変態ですよね。

 僕としてはそういう変態さんの方が助かりますから、別にいいんですけど。


 いや、でも何の話か言及していないのに、変態と決めつけるのは失礼だ。

 僕が思っているものと違うかもしれないし。

 だって、人の体で膨らむものってたくさんあるからね。


 鼻ちょうちんでしょ、肺でしょ、ほっぺたでしょ。

 僕は子供だから、夢もいっぱい膨らんじゃうよ。


「聞かなくてもすぐにわかる。

 言葉でも一瞬で反応するから。

 なんだったら、いm「ストーーーップ!」」


 目線を1番危険な場所に送ってこないで!

 フィオナさんがモジモジし始めた頃から、僕は最高に膨らんでいるよ。

 小さいから気付かれにくい……けど、さ……。

 いや、うん、なんでもない。


 それにしても、スズはいったいどこまで知っているんだろう。

 基本へっぴり腰で過ごしているのもバレてるのかな。


 じゃあ、興奮しまくってるの知ってて、部屋では薄着で接してくれてたの?

 なんなのそれは、作戦なの?

 だとしたら、その作戦は有効すぎるよ。

 僕なんて「好き」って言われたらシャキーン! だからね。


 フィ、フィオナさん、しゃがんで確認しないで……。

 さすがに恥ずかしいから。


 ここは話題を変えよう。


「そ、そういえばリーンベルさんは元気かな?

 心配かけてるよね」


「………忘れてた」


 えっ、スズさん? 忘れてたとは?


「タツヤが起きたら連絡するって言っておいた。

 ギルドに行って連絡してくる」


 話題を逸らすどころか、スズさんを追い出す形になってしまった。

 でも、今はそれで正解だ。

 フィオナさんの前で膨らむ話を続けてほしくない。


 だから、もうそれ以上しゃがんだまま観察しないで……。


 スズと入れ替わるように、不死鳥(フェニックス)の3人が来てくれた。

 そのおかげでフィオナさんの観察プレイが終わりを迎える。


 続きは今晩にでもお願いします。

 ベッドの上でじっくり観察してください。

 ムードって大事ですからね。


 カイルさんは部屋に入ってくると、フィオナさんがやっていたことが気になったようだ。

 僕の椅子の下を1度覗き込んで、首を(かし)げていた。


 きっと2人が見ている場所は違っただろう。

 1人は地面、1人は股間だ。


「もう元気になったんだってな」


 お、おう。君も股間を見ていたのか?!

 奇跡的なシンクロはやめてくれ。


「ちょっと痩せちゃったね~」


 あっ、久しぶりのシロップさんに癒される。

 最近ちょっとハードなプレイが目立つからね。

 久しぶりに見る垂れうさ耳に、自然と頬が緩んでしまうよ。


 ニコッと笑顔を作ってくれているものの、シロップさんの目元にはクマがある。

 よく見れば、カイルさんとザックにも同じクマがあった。


 きっと3人ともリリアさんの看病を寝ずに続けているんだろう。

 ちょっと前までスズとフィオナさんも、同じようにクマがあったからね。


「僕はもう大丈夫です。

 問題なく動ける様にもなりました」


「よかったね~」


 ザックさんもうなずいている。


「リリアさんのお見舞いに行こうと思ってましたけど、具合はどうですか?」


「そうだな、是非来てやってくれ。

 あいつならクッキーで目を覚ましそうだ。

 あの時も自分だけクッキーを大量に隠し持っていて、最後まで食べてたからな。

 どうやらクッキーでステータス3倍になるみたいだぞ」


「え? シロップさんだけじゃなかったんですか?

 てっきり獣人が覚醒してパワーアップするものだと思ってましたけど」


「どうなんだかな……、俺達もサッパリわからない。

 寡黙なやつだと思ってたが、最後はベラベラと説教をしてきやがったよ。

 まったく、目が覚めたら赤面するぐらい話を聞いてやるつもりだ」


 自分の大好物を食べると、ステータスが2倍ではなくて3倍になるのかな。

 いや、それならスズはホロホロ鳥を食べて3倍になるはず。


 うーん、よくわからない。

 料理の効果については、一度研究しないとダメだな。


 でも、ステが3倍に上がっちゃうほどクッキーが好きなら、本当に起きるかもしれない。

 リリアさんは甘いものにめちゃくちゃ弱いし、匂いだけでも飛び起きそうな気がする。


「フィオナさん、リリアさんの部屋でクッキーを焼いてもいいですか?

 持ち運びできる魔石オーブンがありますので。

 クッキーを焼いた時に出る香りで、リリアさんが反応するかもしれません」


「わかりました。

 彼女は両手にクッキーを持って食べるほど好きでしたからね。

 本当に目を覚ますかもしれませんね、ふふふ」


 冗談なのか本気なのかわからなかったけど、みんなが作ることに賛成してくれた。

 少なくとも、リリアさんが喜ぶだろうという思いだけは、全員一致していただろう。

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