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甘い衝撃3 拡がる甘噛みの余波

- 翌朝 -



 ビクンッ!! ビクビクビクビク!



- 2時間後 -



 僕は目を覚ました。

 なんだろう、なんか変な感じがする。

 体が少し痙攣しているような……。


 そう思いながらパッと横を見ると、珍しい光景が拡がっていた。


 しゅーんとしたリーンベルさんと、腕を組んで怒っているスズが正座をして向き合っていたんだ。

 なんで僕が寝ている部屋で、こんなことに?


「あの~、どうかしたんですか?」


「ごめんなさい。

 つい出来心で……」


 リーンベルさんが僕と目を合わせようとしない。

 スズの鋭い眼差しがリーンベルさんをとらえ続けている。


「お姉ちゃんがタツヤに甘噛みをして気絶させた」


 え? リーンベルさんに甘噛みしてもらえたんですか?

 記憶にあるようなないような……。

 いつもと違う気がするのは、確かだけど。


「なんでお姉ちゃんは甘噛みしてもいいんですか。

 言い出した本人が甘噛みしたら、説得力がないと思いませんか」


「ご、ごめんなさい」


 スズは激しく怒っているせいか、珍しく流暢に話して問いただしている。


 キレると敬語になるタイプだったのか。

 しかも、反論をさせない逃げ道封鎖型のようだ。


 ……これって、またリーンベルさん遅刻なんじゃね?


「なぜ犯行に及んだんですか」


 もはや容疑者扱いの姉である。

 スズ刑事から言い逃れはできるんだろうか。


「えっと、寝顔が可愛くてですね……。

 私も甘噛みしてみたいなーっと、思いまして。

 ちょっとくらいなら大丈夫と思ったんです。

 まさか、噛んだ瞬間にビクビクビクッてなって、気絶するとは思わなくて」


 そんな一瞬でアウトだったんですか。

 めちゃくちゃ恥ずかしいじゃないですか。

 むしろ、ホラーですよ。


 耳をカプッて噛んだら、いきなりビクビクビクッて動くなんて、恐ろしい現象です。

 色んな意味で自分が心配になってきました。


「10歳の子供に気を使うのではありませんでしたか。

 少なくとも、私は確認してから噛みました。

 お姉ちゃんは寝込みを襲っています。

 どちらが刺激的だと思いますか?」


 スズ刑事はヤバイ。

 すっごい追い込んでいる。

 完全に逃げ道がないもん。


 その言い方だと、後者は犯罪だからね。

 リーンベルさんを怒らせたらヤバいけど、スズも怒らせたらヤバイな。


「は、反省しています」


 僕もなんとなく反省します。

 せっかく甘噛みをしていただけたのに、一瞬で気絶してすいません。

 朝からホラー現象をお見せしてすいません。


「これからは私の甘噛みを許可していただきます」


「それはダm「許可していただきます!」


「は……はい」


 押し負けてるじゃないですか。

 僕はそっちの方がありがたいですけどね。


 む、むしろリーンベルさんの甘噛みも許可しますよ。

 今度は意識がある時にお願いします。


 スズは『勝った』というドヤ顔で、退室していく。


「あの~、リーンベルさん。

 ギルドのお仕事は大丈夫ですか?

 昨日原因を作った僕が言うのもなんですが、2日連続の遅刻は……」


「うっ、タツヤくん、一緒にギルドへ行って仲裁をしていただけると……」


「昨日クッキー300個も渡したんですよ?

 クッキーだとインパクトが少ないと思いますけど」


「プリンとかは……お出しできませんか?」


 リーンベルさんは、僕の顔色をうかがっている。

 この人はわかってやってるな、上目遣いだ。

 卑怯な天使だと思う。


 だが嬉しい、ありがとうございます。


「出してもいいですけど、ギルドで人が倒れても知りませんよ。

 あと、クッキーみたいにバンバン上げるだけの量はありませんからね。

 それと……明日の朝は、頭ナデナデで起こしてもらうことを要求します」


「……それでお願いします」


 やった、頭ナデナデを自然な形(?)でゲットできた!

 明日の朝が楽しみだ。

 またナデナデポイントを攻めてもらいたい。


 撫でまわしすぎて、鼻に指を突っ込んでもらっても構わないよ。

 プリンの在庫は多くないけど、勢いで作った分が残ってるからね。


 僕は寝起きだったけど、そのままリーンベルさんと一緒にギルドへ向かった。

 ギルドに着くと、マールさんとアカネさんが冷たい眼差しでリーンベルさんを見ている。


 冷たい視線を解き放つ2人の元へ向かい、話し合いを始めていく。


「ベル先輩、さすがに2日連続は社会人としてダメだと思います」


 マールさんが先制の正論攻撃をしてきた。

 年下の正論攻撃に、リーンベルさんは大ダメージだ。

 何も言い返すことはできない。


「おっしゃる通りです」


「ベル、さすがに今日はクッキーじゃ誤魔化せないと思うわよ」


 アカネさん、そこは対策済みです。

 リーンベルさんも僕の方を見てくる。

 ゴーサインが出たようだ。


「マールさん。アカネさん。

 たまたまクッキーよりも遥かに幸せを感じるデザートを持ってるんです。

 リーンベルさんとスズが、おいしくて気絶したレベルなんですけど。

 もし今日リーンベルさんが遅刻していなかったら、お渡ししようかなと思いまして……」


「それで手を打とう」


 そう答えたのは、サブマスのヴェロニカさんだ。


 いつの間に現れたんだよ。

 むしろ、聞いていたのか。


 といっても、リーンベルさんの上司なんだけどさ。

 この人は扱いやすいからいいけどね。


 チラッとアカネさんとマールさんを見る。


「ボ、ボクは朝からベル先輩を、み、見かけた気がするけーど?」


 白々しいほど演技が下手くそだ。

 完全に挙動不審になっている。

 この世界で1番演技が下手かもしれない。可愛いけど。


「確かにベルは朝からいたわね、私も見たわ」


 アカネさん、演技うまっ!

 美人でグラマラスボディを持っているだけでなく、演技という才能もあるのか。

 ん? よく見れば胸についてるボタンの形が前と違うぞ。


 ま、まさか、飛ばしたのか!?

 見てみたかった、おっぱいが大きすぎてボタンを弾き飛ばすシーン。


 すると、貧乳のマールさんが強烈なジト目で睨んできた。


 なぜ考えていることがバレたんだろう。

 でも安心してください、僕は貧乳も大好きですから。

 マールさんの胸元もしっかり見ていますよ。


 受付の中に入れてもらって、3人にプリンを手渡す。

 その間にリーンベルさんは何食わぬ顔で受付に座った。


 バタッ


 即効でプリンを掻き込んだヴェロニカさんは、一瞬で気絶してしまった。


 予想通りの展開である。

 幸せそうに倒れているし、なにも問題はないよ。

 この人はこういう人だからね。


 でも、こんな光景を見たことがないマールさんとアカネさんは固まってしまう。

 僕はヴェロニカさんを指差し、2人に警告をする。


「こうならないように気を付けてくださいね。

 意識持ってかれる系のデザートなんで」


「ボクそんなの初めて聞いたよ」


「お姉さんもよ」


「そうですか? 最近こういうので倒し過ぎて、慣れてしまいましたけど」


「「………」」


 当たり前のように言ってしまったけど、普通に考えたらおかしいな。

 なんだよ、意識持ってかれる系のデザートって。

 完全に非常識なことを言ってるよね。

 でも間違ってはいない。

 それに僕はそういう料理もありだと思うんだ。


 だって、最近料理で倒すことが快感になってきたからね。

 もう趣味みたいなものだよ。


 せっかくだから、君達も倒したいと思っているよ。

 絶対に油断しないでね。

 1発でノックアウトしちゃうから。


 どうしたらいいんだろうという感じで、プリンを持ったまま立ち尽くしてしまう2人。

 そこに、リーンベルさんがコソッとやって来る。


「アカネ先輩、マール。

 タツヤくんの言うことは、そのまま受け取った方がいいからね。

 なめらかな甘さが口全体に拡がるから、気をしっかり持たないと一瞬でやられるよ?」


 それだけ言って、受付に戻っていく。

 謎のアドバイスを受けて、2人はさらに混乱することになった。


 僕も同じ立場なら、「こいつら何言ってるんだ?」としか思わないだろう。

 そのリアクションは正しい。


 でも、リーンベルさんの言うことは真実だ。


 そんな先輩からのアドバイスを無視して、何気ない顔で食べようとしている愚かな者がいた。

 ボクっ子のマールさんだ。


 手に持ったスプーンでプリンをすくうと、あまりのなめらかさに「おっ」と少し驚いた。

 そのまま何の迷いもなしに、口へ運んでしまう。


 バタッ


 マールさん、ちゃんと先輩の忠告を聞かなきゃダメだよ。

 なんで気をしっかり持たなかったのかな。

 そんなに嬉しそうな顔で倒れられたら、すごい快感になりますけどね。


 マールさんが倒れるところを見て、アカネさんは真顔になった。

 現実を受け入れることができないんだろう。


「アカネさんで5人目なんですけど、まだ誰も一口目を耐えきる人がいないんですよね。

 大人の魅力を持っているアカネさんに、期待してもいいですか?」


 アカネさんは悟ってしまったようだ。

 これは本気で気を付けないとダメだと。


「わかったわ、ベルの言う通り気をしっかり持つわね」


 アカネさんはプリンをすくうと、同じように一瞬驚いていた。

 でも、そのままの勢いで口に運んでいく。


 一瞬、フラッとして倒れかけたけど、なんとか踏ん張ったようだ。


 さすがアカネさんである。

 ボタンを飛ばしてしまうグラマラスボディを持っているからね。

 きっと彼女のおっぱいは特別製で、なめらかプリンでも勝てないような柔らかいおっぱいなんだろう。


 それなのに、ボタンを弾き飛ばしてしまう暴力的なパワー。

 生まれ変わったら、あのボタンになりたい。

 糸でグルグル巻きにして止められた後、アカネさんのおっぱいを毎日押し付けられるんだ。


「予想外だったわ。本当にベルの言うとおりね。

 う~ん、おいしいわ~」


 アカネさんはなめらかプリンに夢中だ。

 僕はアカネさんが装着している、2つのなめらかプリンに夢中だ。

 だが、直視できない……。


 クソッ、なんてもったいないことをしているんだ。


「はぁ~、幸せ~」


「アカネさんのような美人さんに言われると嬉しいですね。

 ちなみに、もう1つ新作のお菓子があるんですけど、よければ食べませんか?」


「いいの?」


「2人には内緒ですよ?」


 そういって、トリュフチョコレートを手渡してあげる。


「濃厚ですから、気を付けてくださいね」


 アカネさんはクッキーのチョコで見慣れているんだろう。

 何も気にすることなく、そのまま口に入れてしまう。


 バタッ


 言ったじゃないですかー、気を付けてくださいねって。

 なんで油断しちゃったんですかね。


 パッと振り返ると、リーンベルさんは受付で『最後の見てたぞー』と言わんばかりのジト目をしていた。


 だって、悔しいじゃないですか。

 倒したくなるじゃないですか。

 幸せで倒すのが趣味なんですから、許してくださいよ。


 食べた側はおいしくて幸せ、倒した側は快感で幸せ。

 winwinの関係ですよ。


 倒れた3人を放っておいて、リーンベルさんの元へ行く。


「次はもう無理ですからね」


「わかってるよー。

 ごめんね、変なことに巻き込んで」


「こ、今度は起きてる時にやってくれてもいいんですよ?」


「ふ~ん。

 甘噛みされたいんだー。

 ふ~ん。

 頭ナデナデを要求しておいて、甘噛みもされたいんだー。

 ふ~ん」


 突然のふ~ん攻撃により、思わずギルドから走って逃げだしてしまった。


 リーンベルさんの心が読めない……。

 甘噛みするくらいなら脈アリじゃないのか。

 スズも両想いっていってたのに。


 この人は僕にどうしてほしいんだろうか。


 誰か、ふ~ん攻撃について詳しい専門家の人、リーンベルさんの気持ちを教えてほしい。

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